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3善意は時に悪用されます
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「悠生。今日一緒に商店街の方へ寄り道しないか?」
珍しく、時成が誘ってきた。放課後に遊びに行くタイプではなかったのに。もちろん嬉しい。でも。
「放課後デートみたいなことは、時成のことが好きな女の子たちと行ってもいいんじゃないかな」
そう。この仏頂面の幼馴染は女の子にモテる。しかし彼女が出来たことはない。僕もないけど。
「いや、そうじゃなくて。俺が、悠生と遊びたいんだよ」
「え。ほんとに? 僕なんかといても普通でしかないと思うけど……」
「その普通を過ごしたいんだ。いいだろ?」
表情があまり外に出ない時成にしては、珍しく声が弾んでいた。理由はわからないけど、時成は僕と遊びに行きたいらしい。よっし任せろ! 他の友達と遊びに行った時に見つけた、お勧めの団子屋さん紹介してやる!
うきうきるんるんで歩いていたら、角から出てきた男と衝突しそうになった。でも防げたのは、咄嗟に時成が僕の方を抱いて引き寄せたから。
「あっぶね……」
「気をつけろよ?」
「うん。ありがと」
僕よりも時成の方がホッとしていたのが印象的だった。僕がぶつかったら因縁でもつけられると思ったのだろう。まあ、実際そうなりそうなんだけど。
「時成、あそこの団子屋さん! 美味しかったんだよ」
「へえ~。気になるな」
「じゃあ食べよ! すいませ~ん、みたらし団子二つください!」
店番している婆ちゃんに頼んで用意してもらう。わくわくと待っている間……時成は団子よりも周りをキョロキョロと見渡している。
「そんな焦んなくても見回りたいところは全部付き合ってやるぜ~?」
「あ、ああ。……そうだな。美味しそうな匂いだ」
警戒しているような顔だったが、団子の香ばしい匂いに時成も覗き込んでは少し口元が緩んでいた。いつも柔らかい顔してればいいのに。
お金を払って団子を手渡され、店の前にあるベンチに座って出来立てのものを頬張る。熱くてモチモチ、濃い味が丁度良い。
「ん~! 美味しい~!」
「ああ。美味しいな」
「わかりにくいな~、もっと感情露わにしろよ~!」
「これでも素直に表現してる方なんだが……」
「わかりにくい~」
「悠生の表現力の方が高いんだよ」
それを言われたら悪い気はしないけど。
「この後、どこ行く?」
「そうだな……悠生が行きたいとこは?」
「え。誘ったのは時成だからどこか行きたい場所があるのかと思った」
「あー……なんていうかな。俺は商店街に来たかったというより、この時間を悠生と過ごしたかったというか……」
そんな大真面目な顔で言われると。ただの幼馴染のはずなのに、少し胸が高鳴ってしまった。トクトクと鼓動が鳴って顔が熱くなっていくのを誤魔化すように頭をかいて「へへ」と笑えば時成も僕を見て、僅かに微笑んでくれる。
あれあれ。どうしたの。いつも怒ったような顔しかしてないのに。そんな顔されたら、男の僕でもドキドキしちゃう。不意に見せる笑顔に、きっと学校中の女の子たちはノックアウトされてるんだ。ずっと近くにいたはずなのに気付かなかったな。
と、目の前でオロオロしている小さな男の子を見つける。迷子かな。暫く見つめても両親らしい人が来ないことを確認してから「どうしたの?」と声をかけてみる。
「あ、あの。おトイレ探してて……」
「そうなんだ。隣の店の中にトイレあったから一緒に行こっか」
歩き出そうとすれば「悠生、俺も行く」と時成も立ち上がる。
「いいよ。すぐ隣だし。少し待ってて」
「……。いや、やっぱ俺も」
「そう? いいけど……」
変に過保護になってきたかな、と思いながら。男の子をトイレに連れて行く。中に入って、もう大丈夫かなと別れようときた時。不意に男の子は振り返って「お兄ちゃん、ごめんなさい!」と勢いよく頭を下げてから全速力でトイレから出ていった。
「え、なに?」
「……悠生、俺らも早くここから出──」
時成の言葉が途絶える。振り返ると、気を失って倒れていた。見知らぬ男たちが数人。手にはバット。時成は、背後から殴られて……。
「はは、あの坊主まあまあ良いカモ連れてきたじゃないか。バイト代かさ増しさせただけあるわ」
倒れた時成はそのままに、男たちはどんどん僕ににじり寄って来る。え、なに。なんか、危ない雰囲気。でも、それよりも時成が心配。
「と、時成──」
「おっと行かせねえよ? お前は、俺らを楽しませろよ」
一人は僕の肩を掴むと個室に連れ込み鍵をかけてきまう。小さな場所に僕と男たち三人。口にタオルを詰め込また上にガムテープで声が出せないようにされ、あれよあれよと制服を脱がされていく。やばい、どうしよう、こわい。時成、ときなり。
二人に体を押さえつけられ、残りの一人が手にローションをつけるといきなり指を三本突っ込んできた。信じられないけど、体はそれが当たり前のように受け入れている。痛みは無く、むしろ中のしこりを刺激されると快感を拾っていく。さっきまで同じことをしているようだった。知らないはずなのに、体は知っている。
トイレだからか全て静かに行われる。でも行為は激しい。指で中を掻き回されるとぐちゃぐちゃと大きな音が響き渡る。時成に聞こえてしまうのではないかと恐れるくらい。時成、助けて。でも、気付かないでいてほしい。僕がこんなことされてるなんて、一生知らないでいてほしい。
粗方解された後、便器に座らされ足を大きく開かれる。そのまま腰を掴まれぐちょん! と男の勃起したモノが中に入ってきた。衝撃に目を見開き、しかし悲鳴は詰め込まれたタオルによって漏れず、ギシギシと嫌な音を立てて体が陵辱されていく。
心が枯れていくようだった。久々に時成と遊びに来れて嬉しかったのに。こんな目に遭ってしまうなんて。体を揺すられブレる視界の中、歪んだ男の笑みと天井の照明が眩しい。勝手に涙がポロポロ溢れ出し止まらない。早く、早く終わって。
散々腰振った後、どぷりと容赦なく中に射精された。呆然としてる間に二人目も中に入れてきて、また激しく腰を打ち付けて来る。
「ンッ、んんっ、……んぅ……っ!」
鼻からしか呼吸が出来ないから苦しい。意識朦朧とする中、また体の中に熱いものが注がれ、そして三人目。
どうして今、優しく微笑んでくれる時成の顔が浮かぶのだろう。あの時感じたふわふわ浮かれた感情とは真逆の現状に、益々打ちのめされて涙がまた溢れて来る。
三人の精液が注がれ、鍵を開けて男たちはいなくなっていく。僕は便器の上で足を大きく開いたまま、尻穴からコポポ……と音を立てながら白濁を溢れさせていく。
暫く動けない。体が震えている。でも、少し先にはあれから倒れたままの時成の投げ出された手が見える。……助けなきゃ。
ガムテープを剥がし、口に詰め込まれたタオルを吐き出し……、ゆっくり時成に近づいていく。息はしている。安心する。
「と、時成……とき、ちゃん」
肩に触れ、少し揺らす。伸ばした自分の腕を見て気づく。僕、裸のままだった。そして強く掴まれた手首の痣が大きく残っている。
「……。……っ、ゆうき?」
あ、よかった。目を覚ました。後頭部が痛むのか手で押さえて呻きながら体を起こす。そして僕を見て……「また、お前は」と項垂れる。
「またって、なにかな」
「……」
「僕が知らないところで、僕って被害に何回か遭ってるってこと? はは、そんなわけないよね」
「……」
「冗談なんだから、笑って誤魔化してよ」
へへ、と渇いた笑みが漏れる。いつ人が入って来るかもわからないし、早く制服を着なきゃ。
震えながら制服を着直していけば、汚れまくった僕の体を時成はぎゅっと抱きしめる。
「ごめん」
「なにが」
「守ってやれなくて」
「いや……あれは、僕が悪かったよ。小さい男の子を利用して連れ込まれるとは思わなかったし。楽しい思い出になるはずだったのに、最悪にさせて僕の方こそごめんね」
「悠生。悠生……ごめん。本当に、ごめん。俺はいつも……肝心な時に、なにもしてやれない……」
不可抗力だ。背後から殴られるなんて普通は想定出来ない。何を必要以上に謝っているのだろう。変な人たちに目をつけられて運がないだけだったのに。
「謝らないでよ。……いいから、家に帰ろうよ」
「……うん」
乱れた髪もある程度綺麗にしてから何でもない風に装い、ナイーブになっている時成の手を引いて歩き出す。途中から電車を使って最寄りの駅まで乗る間、時成は僕の腰に腕をしっかり回して逸れないようにしていた。ほんとに過保護なんだから。
家に着いた時は夕方から夜になりかけていた。藍色になっていく空を見上げながら、時成は「夜だ……」と呟く。そんなに珍しくもないはずなのに。
「何日ぶりに見るんだろう」
「……夜は毎日来るでしょ?」
「そうだけど。……今日は、大丈夫だったということ、か……?」
「何を一人で言ってるのかわからないけど。僕はもう疲れたから寝るよ。家まで送ってくれてありがとう。おやすみ」
「……おやすみ」
にこ、と手を振れば。幾分か安心したように肩を撫で下ろして手を振り返してくれた。歩いていく時成の背中を見つめていれば。忘れていたのを思い出させるように尻穴からドロッと白濁が溢れてきた。
「……汚い、な」
尻穴に力を込めて止めようとするも、ドプップシャッととめどなく溢れて来る。ああ、僕犯されたんだ。見ず知らずの男たちに、心と体を、殺されたんだ。
「……はは、」
電車の中でも、汚い体を時成に触らせてしまった。今更ながらに申し訳なさが募り、家の鍵を開けキッチンに駆け込む。パート終わりに買い物をしているのか、幸い母はいない。ごめん、母さんと心の中で謝りながら、刃を首に当て、強く引く。生温かい血液が体を包み込み、視界は一気に暗くなって──
目を覚ますと、帰りのHRは終わったのか教室には誰もいなかった……いや、一人だけ残っている。僕と同じように、時成も机にうつ伏せで眠っていたようだった。
「……時成?」
いつもなら気にせず置いていくのだけれど。
なんだか頼りない背中に、思わず声をかけてしまうのだった。
珍しく、時成が誘ってきた。放課後に遊びに行くタイプではなかったのに。もちろん嬉しい。でも。
「放課後デートみたいなことは、時成のことが好きな女の子たちと行ってもいいんじゃないかな」
そう。この仏頂面の幼馴染は女の子にモテる。しかし彼女が出来たことはない。僕もないけど。
「いや、そうじゃなくて。俺が、悠生と遊びたいんだよ」
「え。ほんとに? 僕なんかといても普通でしかないと思うけど……」
「その普通を過ごしたいんだ。いいだろ?」
表情があまり外に出ない時成にしては、珍しく声が弾んでいた。理由はわからないけど、時成は僕と遊びに行きたいらしい。よっし任せろ! 他の友達と遊びに行った時に見つけた、お勧めの団子屋さん紹介してやる!
うきうきるんるんで歩いていたら、角から出てきた男と衝突しそうになった。でも防げたのは、咄嗟に時成が僕の方を抱いて引き寄せたから。
「あっぶね……」
「気をつけろよ?」
「うん。ありがと」
僕よりも時成の方がホッとしていたのが印象的だった。僕がぶつかったら因縁でもつけられると思ったのだろう。まあ、実際そうなりそうなんだけど。
「時成、あそこの団子屋さん! 美味しかったんだよ」
「へえ~。気になるな」
「じゃあ食べよ! すいませ~ん、みたらし団子二つください!」
店番している婆ちゃんに頼んで用意してもらう。わくわくと待っている間……時成は団子よりも周りをキョロキョロと見渡している。
「そんな焦んなくても見回りたいところは全部付き合ってやるぜ~?」
「あ、ああ。……そうだな。美味しそうな匂いだ」
警戒しているような顔だったが、団子の香ばしい匂いに時成も覗き込んでは少し口元が緩んでいた。いつも柔らかい顔してればいいのに。
お金を払って団子を手渡され、店の前にあるベンチに座って出来立てのものを頬張る。熱くてモチモチ、濃い味が丁度良い。
「ん~! 美味しい~!」
「ああ。美味しいな」
「わかりにくいな~、もっと感情露わにしろよ~!」
「これでも素直に表現してる方なんだが……」
「わかりにくい~」
「悠生の表現力の方が高いんだよ」
それを言われたら悪い気はしないけど。
「この後、どこ行く?」
「そうだな……悠生が行きたいとこは?」
「え。誘ったのは時成だからどこか行きたい場所があるのかと思った」
「あー……なんていうかな。俺は商店街に来たかったというより、この時間を悠生と過ごしたかったというか……」
そんな大真面目な顔で言われると。ただの幼馴染のはずなのに、少し胸が高鳴ってしまった。トクトクと鼓動が鳴って顔が熱くなっていくのを誤魔化すように頭をかいて「へへ」と笑えば時成も僕を見て、僅かに微笑んでくれる。
あれあれ。どうしたの。いつも怒ったような顔しかしてないのに。そんな顔されたら、男の僕でもドキドキしちゃう。不意に見せる笑顔に、きっと学校中の女の子たちはノックアウトされてるんだ。ずっと近くにいたはずなのに気付かなかったな。
と、目の前でオロオロしている小さな男の子を見つける。迷子かな。暫く見つめても両親らしい人が来ないことを確認してから「どうしたの?」と声をかけてみる。
「あ、あの。おトイレ探してて……」
「そうなんだ。隣の店の中にトイレあったから一緒に行こっか」
歩き出そうとすれば「悠生、俺も行く」と時成も立ち上がる。
「いいよ。すぐ隣だし。少し待ってて」
「……。いや、やっぱ俺も」
「そう? いいけど……」
変に過保護になってきたかな、と思いながら。男の子をトイレに連れて行く。中に入って、もう大丈夫かなと別れようときた時。不意に男の子は振り返って「お兄ちゃん、ごめんなさい!」と勢いよく頭を下げてから全速力でトイレから出ていった。
「え、なに?」
「……悠生、俺らも早くここから出──」
時成の言葉が途絶える。振り返ると、気を失って倒れていた。見知らぬ男たちが数人。手にはバット。時成は、背後から殴られて……。
「はは、あの坊主まあまあ良いカモ連れてきたじゃないか。バイト代かさ増しさせただけあるわ」
倒れた時成はそのままに、男たちはどんどん僕ににじり寄って来る。え、なに。なんか、危ない雰囲気。でも、それよりも時成が心配。
「と、時成──」
「おっと行かせねえよ? お前は、俺らを楽しませろよ」
一人は僕の肩を掴むと個室に連れ込み鍵をかけてきまう。小さな場所に僕と男たち三人。口にタオルを詰め込また上にガムテープで声が出せないようにされ、あれよあれよと制服を脱がされていく。やばい、どうしよう、こわい。時成、ときなり。
二人に体を押さえつけられ、残りの一人が手にローションをつけるといきなり指を三本突っ込んできた。信じられないけど、体はそれが当たり前のように受け入れている。痛みは無く、むしろ中のしこりを刺激されると快感を拾っていく。さっきまで同じことをしているようだった。知らないはずなのに、体は知っている。
トイレだからか全て静かに行われる。でも行為は激しい。指で中を掻き回されるとぐちゃぐちゃと大きな音が響き渡る。時成に聞こえてしまうのではないかと恐れるくらい。時成、助けて。でも、気付かないでいてほしい。僕がこんなことされてるなんて、一生知らないでいてほしい。
粗方解された後、便器に座らされ足を大きく開かれる。そのまま腰を掴まれぐちょん! と男の勃起したモノが中に入ってきた。衝撃に目を見開き、しかし悲鳴は詰め込まれたタオルによって漏れず、ギシギシと嫌な音を立てて体が陵辱されていく。
心が枯れていくようだった。久々に時成と遊びに来れて嬉しかったのに。こんな目に遭ってしまうなんて。体を揺すられブレる視界の中、歪んだ男の笑みと天井の照明が眩しい。勝手に涙がポロポロ溢れ出し止まらない。早く、早く終わって。
散々腰振った後、どぷりと容赦なく中に射精された。呆然としてる間に二人目も中に入れてきて、また激しく腰を打ち付けて来る。
「ンッ、んんっ、……んぅ……っ!」
鼻からしか呼吸が出来ないから苦しい。意識朦朧とする中、また体の中に熱いものが注がれ、そして三人目。
どうして今、優しく微笑んでくれる時成の顔が浮かぶのだろう。あの時感じたふわふわ浮かれた感情とは真逆の現状に、益々打ちのめされて涙がまた溢れて来る。
三人の精液が注がれ、鍵を開けて男たちはいなくなっていく。僕は便器の上で足を大きく開いたまま、尻穴からコポポ……と音を立てながら白濁を溢れさせていく。
暫く動けない。体が震えている。でも、少し先にはあれから倒れたままの時成の投げ出された手が見える。……助けなきゃ。
ガムテープを剥がし、口に詰め込まれたタオルを吐き出し……、ゆっくり時成に近づいていく。息はしている。安心する。
「と、時成……とき、ちゃん」
肩に触れ、少し揺らす。伸ばした自分の腕を見て気づく。僕、裸のままだった。そして強く掴まれた手首の痣が大きく残っている。
「……。……っ、ゆうき?」
あ、よかった。目を覚ました。後頭部が痛むのか手で押さえて呻きながら体を起こす。そして僕を見て……「また、お前は」と項垂れる。
「またって、なにかな」
「……」
「僕が知らないところで、僕って被害に何回か遭ってるってこと? はは、そんなわけないよね」
「……」
「冗談なんだから、笑って誤魔化してよ」
へへ、と渇いた笑みが漏れる。いつ人が入って来るかもわからないし、早く制服を着なきゃ。
震えながら制服を着直していけば、汚れまくった僕の体を時成はぎゅっと抱きしめる。
「ごめん」
「なにが」
「守ってやれなくて」
「いや……あれは、僕が悪かったよ。小さい男の子を利用して連れ込まれるとは思わなかったし。楽しい思い出になるはずだったのに、最悪にさせて僕の方こそごめんね」
「悠生。悠生……ごめん。本当に、ごめん。俺はいつも……肝心な時に、なにもしてやれない……」
不可抗力だ。背後から殴られるなんて普通は想定出来ない。何を必要以上に謝っているのだろう。変な人たちに目をつけられて運がないだけだったのに。
「謝らないでよ。……いいから、家に帰ろうよ」
「……うん」
乱れた髪もある程度綺麗にしてから何でもない風に装い、ナイーブになっている時成の手を引いて歩き出す。途中から電車を使って最寄りの駅まで乗る間、時成は僕の腰に腕をしっかり回して逸れないようにしていた。ほんとに過保護なんだから。
家に着いた時は夕方から夜になりかけていた。藍色になっていく空を見上げながら、時成は「夜だ……」と呟く。そんなに珍しくもないはずなのに。
「何日ぶりに見るんだろう」
「……夜は毎日来るでしょ?」
「そうだけど。……今日は、大丈夫だったということ、か……?」
「何を一人で言ってるのかわからないけど。僕はもう疲れたから寝るよ。家まで送ってくれてありがとう。おやすみ」
「……おやすみ」
にこ、と手を振れば。幾分か安心したように肩を撫で下ろして手を振り返してくれた。歩いていく時成の背中を見つめていれば。忘れていたのを思い出させるように尻穴からドロッと白濁が溢れてきた。
「……汚い、な」
尻穴に力を込めて止めようとするも、ドプップシャッととめどなく溢れて来る。ああ、僕犯されたんだ。見ず知らずの男たちに、心と体を、殺されたんだ。
「……はは、」
電車の中でも、汚い体を時成に触らせてしまった。今更ながらに申し訳なさが募り、家の鍵を開けキッチンに駆け込む。パート終わりに買い物をしているのか、幸い母はいない。ごめん、母さんと心の中で謝りながら、刃を首に当て、強く引く。生温かい血液が体を包み込み、視界は一気に暗くなって──
目を覚ますと、帰りのHRは終わったのか教室には誰もいなかった……いや、一人だけ残っている。僕と同じように、時成も机にうつ伏せで眠っていたようだった。
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いつもなら気にせず置いていくのだけれど。
なんだか頼りない背中に、思わず声をかけてしまうのだった。
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