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第三章 愛と迷い
彼女の為に~賢人side~ー2
しおりを挟むこちらをじっと正面から見据えて言い放つ。彼女に俺の仕事を預けてもやっていけると思うんだよな。この洞察力。切り札を見せるタイミング。
「……ご想像にお任せしますよ」
「あら、そんなんでいいのかしら?本気でどうにかしたいんなら私にもきちんと頼まないとだめじゃないの?この問題は瞳さんから社長を説得してもらうのが一番だと思うのよ」
確かにそうだ。陽樹から社長に言ったんじゃ、同じ事の繰り返しだもんな。瞳さんに弱い社長は、彼女に強く言われたら頷くかもしれない。
「それを言うならどうして瞳さんはさっさと強く社長に頼まないんですかね?俺とは全く考えていないと言ってたのに」
「それはそれ。彼女にも理由があるのよ。あなたとは結婚しないけど、とりあえずあなたを置いておけば他があてがわれることはない」
「……なるほど」
「京子さんならどうにか出来るって事ですか?」
「うーん。私より瞳さんをうまく操れる人に頼むのよ」
「誰ですそれ?」
「……内緒」
人差し指を口の前に立てて笑う。可愛いところもあるんだよな。俺には鋭いところしか見せないけど。たまにこういう仕草を見ることがある。
「まあ、どうでもいいですけど、お願いしますよ」
「あなたのお相手にきちんと説明したほうがいいんじゃないの?さっきの話じゃないけれど、本社の人を通してあなたの噂を耳にして誤解する可能性もあると思うけどね」
言われてみればその通り。里沙がこのことを知れば身を引く可能性もある。顔色の変わった俺を見て、京子さんは言う。
「きちんとつなぎ止めるための言葉や態度を示さないと、女は不安で、より安心出来る人に流れるわよ。あなたが選ぶ相手だもの美人で出来る子なんでしょ?」
「ご忠告身にしみました。とにかく、早急に瞳さんとのことお願いします。あと、このこと陽樹には……」
「わかってるわ。内緒にしておく。でもうまくいったら私に彼より先に彼女を紹介してね」
ウインクして長い髪を翻し出て行った。敵わないな、全く。でも女性としての視点は的確でのんきに構えすぎたと反省をした。
彼女と別れてから一週間。連絡を出来ずにいる。というか、社長が縁談破棄にすぐ応じてくれると思ったのが裏目に出て、まだ解決していない。だから、彼女に連絡しずらい。何故か、彼女も連絡してこない。
彼女は秘書を外れ、会計部のフロアに降りた。同期の男性と付き合っていたが、そいつと別れてからというもの、会計部の男だけでなく、他の部の連中も彼女をねらっているという噂をあそこで働いているときから耳にしていた。
彼女を狼の巣に落としてそのままでいていいのか……俺は馬鹿だったかもしれない。京子さんに言われたことを反芻するうちだんだん心配になってきた。
今日は金曜日だ。別れて一週間。彼女はどうしているだろう。仕事が終わったら連絡してみようと思っていた。
ところが、会議からあがってきた陽樹が仕事を持ってきた。お陰でまた残業だ。
時間を見たら二十時近い。意を決して里沙にメールをした。一段落して返事を確認したら既読にもなっていない。どういうことだ?俺は猛烈に心配になってきた。
陽樹は京子さんとディナーなのでとっくに退勤している。俺は急いで片付けはじめた。ビルを出たところでもう一度今度は彼女に電話しようとしたら、逆に電話がかかってきた。
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