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第四章 新天地

新たな役職~賢人side~ー2

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 社長はニヤリと笑った。

「例の問題解決に一役買ったふたりだな」

「はいそうです。非常に有能なので管理職候補の女性でもありますが、ここの方が適役です。他の部署に今から入れると年齢的にも他の女性とかちあってしまう」

「なるほど。彼女達の素質を人間関係で潰さず、新しいことに使うわけだ」

「はい」

 社長はうなずいた。

「賢人君。君はやはり役員企画室が向いているな。ただ、そろそろ違うことをやりたいだろう。営業のほうの管轄もしながら新しい道を探ってくれないか?」

「前向きに考えさせて頂きます。まだ、時間がありますので……縁談の件、すみませんでした。ありがとうございました」

 俺は、社長室を出て陽樹の所へ向かった。

「おお、終わったか?」

 陽樹がデスクでパソコンを見ていたが、俺に気付いて顔を上げた。

「ありがとうございました、おかげさまで縁談はなくなりました」

「いや、聞いたか?瞳がミツハシフードサービスに入りたいっていう話」

「聞きました。良かったですね」

「いやはや、達也君のお相手はなかなかだな。恋のライバルだったのに瞳を素直にさせるとは……その点からしてもあいつに勝ち目はなかった」

「専務。社長から機構改正と来季の構想を聞きました」

「やってくれるよな?」

「財団で今回解決に一役買ってくれた女性二人を役員企画室へ入れて下さい。社長の了承を先ほど得てます」

「は?」

「役員企画室の担当役員も続けさせて頂きます。もちろん営業一部と二部の担当本部長になってもいいですが、そちらは部長中心で今と同じようにします」

「……ふーん。何を考えてる?」

「京子さんも企画室に入れます。もちろん秘書は続けてもらって構いません。ですが、今もほとんど企画室のような立ち位置です」

「なるほどな。企画室にいる女性達と秘書室の女性達をうまく使い分けるわけだな」

「ええ。そして財団のふたりはあそこで新しい道を一緒に作ってもらいます。彼女達は同期なので他へ入れるよりは即戦力として期待できます」

「まあ、そうだろうな。お前がよく知っているらしいから……」

 ニヤニヤと俺を見て笑っている。何だ、一体?

「文也に聞いたぞ」

 あいつ……まさか、里沙のこと話したのか……。

「お前が京子にまで頼んで縁談を回避する理由は、好きな女が出来たからだろ?京子に言われなくても俺だって気付いた」

「……ご想像にお任せします」

「北村さんだっけ?文也がそっちのほうに使いたいと言うくらいの逸材らしいな」

 そっちとは情報部。でも絶対それはさせない。危険も多いからだ。俺は陽樹を睨んだ。

「ああ、わかったよ、睨むな。お前、本気出すと怖いな……」

「よく言いますよね。京子さんに同じ事言われてたら専務は俺のこと殴ったんじゃないですか?」

「はは……確かに。殴るだけじゃなくて、左遷するだろうな」

 おいおい……。

「財団についても社長に提案してあります。おふたりで検討して下さい」

「それで?残るんだよな、うちに……」

「そうですね。彼女達のこともありますから……」

「は!お前が女を理由に残るとは驚きだ」

「よく言いますよね。そっくりそのままそのお言葉お返しします」

「いや、楽しみだな。お前がそこまで惚れ込んだ女性とはどんな人なのか。会うのが楽しみだ」

 後ろのドアから京子さんが入ってきた。

「鈴村さん。約束したわよね。私が先よ」

「何の約束だ?」

「彼女を専務より先に、京子さんに会わせるという約束ですよ」

「はあ?」

「先ほど社長に言われました。私を企画室へ入れたいそうですね?」

「ええ。正式に秘書室兼務で異動してもらいます。すでにほとんど企画室でしたが……」

「……ありがとう。とても嬉しいです」

「……京子、お前」

 専務が驚いて立ちあがった。

「女性の立場を改革しようとしてくれている。女性代表として鈴村さんには頭を下げさせて下さい」

 京子さんは結んだ長い黒髪を後ろに流して丁寧に俺に頭を下げてくれた。

「いえ。京子さんの能力を見ていてずっともったいないと思っていました。俺が出来ることから変えていきますから協力して下さい」

「もちろんです。こちらこそよろしく」

「……なんだよ、京子。先に、俺に相談しろよ。俺だってお前を企画室に入れることはできたぞ」

「嘘ばっかり。入れる気はなかったでしょ。社長もそう。ここは見かけの秘書らしさにこだわっていたものね。でもだからこそ結婚しても秘書を続けていられる会社だった」

「……京子」

「鈴村さんの新しい考えがうちを変えていくでしょう。陽樹さんにも、俊樹さんにも、あなたは必要だわ」

「ありがとうございます。努力します」

 二人を残し部屋を出た。

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