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第四章 新天地

新たな役職~賢人side~ー1

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 社長室へ呼ばれて入るとソファーへ瞳さんが座っている。社長は俺が入ってきたのを見て、彼女の横に腰掛けた。俺は目の前に座った。

「お久しぶりです。賢人さん」

「本当に。元気そうだね」

「ええ。ようやくお父様が諦めてくれて元気が出てきたわ」

 俺は笑ってしまった。そうか、縁談がなくなるんだな。お互いやっと自由になれる。

「こら、瞳。賢人君、本当に残念だが瞳との話はなかったことにするよ」

 社長が俺を見て言った。

「ありがとうございます」

 立ち上がり頭を下げた。

「賢人さん、縁談の件そのままにしていてごめんなさい。賢人さんを断るとまた他の人をお父様が連れてきそうで、賢人さんを風よけにしていたの」

 横で社長が頭を抱えている。

「瞳、お前……」

「だって、お父様懲りないんですもの。賢人さんは何度も断っていたでしょ?私達そういう関係には絶対なれないもの」

「その通りです、社長。彼女は専務の妹ですが、自分にとっても妹みたいなものです」

「……だから頼みたかったんだよ。君のいうことなら聞くと思ってね」

「それはどうかしら?お父様は私のことわかってないわね」

 俺も苦笑い。瞳さんは本当に頑固。俺の言う事なんて聞くわけない。

「賢人さん。私、ミツハシフードサービスからお兄様が戻ってくるのと交換で来春からあちらに入社しようかと思っているの」

「え?まさか……」

 彼女の思い人はミツハシフードサービスの次期社長。彼には婚約者がいるはずだ。

「ううん、そうじゃないの。達也さんの婚約者の平野奈由さんと何故か気が合って、親友になってしまって。彼女がいるからあちらの秘書室へ行こうと思って……」

「お嬢様暮らしをさせていたのが良くないと達也君にも言われてね。奈由さんのように働かせてみようかと思って。わがままだが、奈由さんと一緒なら働けるかもしれないとおもってね」

「それは良かったですね。視野が広がってきっと楽しいですよ」

「ええ。ありがとう。私もそう思う」

「瞳。彼と話があるから先に出なさい」

「はい。じゃあね、賢人さん」

「ああ。頑張って」

 手を振って出て行った。いや、わがままな瞳さんを恋のライバルが調教したとは驚きだ。

「賢人君。実は俊樹が来春から帰ってくる。その後の6月末の総会で俊樹を取締役待遇にして、陽樹を先に機構改正で副社長に内々で昇格させる予定だ」

 予想通りだった。陽樹さんからそうなるかもしれないと聞いていたのだ。

「はい」

「それで、陽樹は副社長になったら営業部の個別担当役員を外れる。全社を見る位置につくのでね」

「はい」

 それも予想通り。

「君には、陽樹の見ていた営業一部と二部を管轄する本部長取締役に就任してもらう予定だ」

 ガタン!驚いて机にぶつかってしまった。

「……社長、それは」

「賢人君。君を陽樹の下に付けるのは六月までだ。君のことは大学時代話したときからかなりの逸材だとわかっていた。陽樹を育ててくれてありがとう。どうだろう?他社へ行くくらいならうちで力を発揮してくれないか?君の今までの成果を見ればいずれ君には副社長くらいにはなってもらいたいんだ」

「それは……買いかぶりです。社長、聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「財団はどこに入りますか?」

「そうだな、文化部があった営業二部に入れようかと思っている。君はどう思う?」

「営利組織ではないので、うちに入れて同じ事をさせるなら無理があります。二部の三課にそれをやる部署を作り、提携美術館やコンサートホールなどを関根部長の親しくしているところだけに絞って続けさせましょう。そのほうがいいと思います」

「なるほど。ということは他の人間はかなりあまりそうだな」

「各部署にそれぞれ何人かずつ配属させたらどうでしょう?来年は新入社員を少し抑えて……」

「うーん。そうだな。まあ、実は財団は依願退職がかなり出そうなんだ。思ったほどこっちには来ない」

「そうだったんですね」

「で?話がそれたが先ほどの役職受けてもらえるかい?」

「このことは陽樹専務には話してあるんですよね?」

「もちろん」

「役員企画室の担当をそのままさせてもらえますか?」

「え?無理だろ。忙しいぞ」

「いいえ。もし私が役員になったら、営業一部と二部は実質今の部長に任せてしばらく回すことになるでしょう。関根部長も来るので、二部はいずれ彼に任せてもいいと思います」

「なるほど」

「もし役員企画室の担当役員が出来るならば、改革して女性を入れたいのです」

「なんだと?」

「専務秘書の京子さんも秘書室から移ってもらいます。秘書はもちろん続けてもらってもいいんですが、そのほうが効率もいい。彼女にはその素質もある。それと、財団から来る女性二人をここへ入れます。素質があると思います」

 
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