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第一章 入社と出会い
同期ー1
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「今期の提案賞は新村君と森川さんの商品に決まりました。おめでとう」
私達はハイタッチすると抱き合って喜んだ。
今日は新商品提案プロジェクトの最終選考。
去年も最終選考まで残ったが惜しくも三位だった。
今年こそはと臨んだ結果、第一位になった。嬉しい。
「やったな、森川さん。おめでとう」
部長が褒めてくれた。長田さんが睨んでる。すっかり嫌われたなー。
指導員だったのに、今や私の方が商品に詳しい。申し訳ないけどしょうがない。
「新村君。君も良く頑張ったね。森川さんの時間がないところをよくフォローした。たいしたもんだ」
部長が巧の背中をバンバン叩いてる。痛そうだよ。
「先輩。かっこよかったです。惚れ直しましたー」
巧の側で目にハートをつけている新入社員の渋谷奈々ちゃん。
「ああ、渋谷。色々手伝ってもらってありがとうな」
「えー?何でも言って下さい。先輩のためなら火の中水の中土の中です」
「は?土の中?」
私は、とりあえずこの場を去り、本部長室へ戻ろうとした。
すると、巧に腕を捕まれた。
「菜摘。祝勝会しようぜ。夜空けとけよ。今日くらいいいだろ?」
「そうだね。そうしよう。メールするね」
「ああ」
そう言うと、別れた。
「本部長失礼します」
久しぶりにこの部屋へ来た。
ここ一週間は全くこっちの仕事をしていなかった。迷惑をかけたと自覚してる。
「え?」
目の前の状況に驚いた。
すごい書類の山。どういうことよ……。
「森川さん。おかえり。待ってたよ。どうにかしてくれ……」
書類の中にいるのだろう。顔が見えない……埋もれてるよ。
「どうして、こんなことに?」
疲れた顔をこちらに見せる。
「それはそうだろう。有能な秘書が一週間も俺を放置してお出かけしてる。可哀想な俺は仕事が相変わらずたくさんあるのに、整理整頓する時間も無い」
「はあ……それにしたって」
「そうそう、おめでとう。俺の苦しみも無駄にならなくて良かったよ」
そう言われたら何も言い返せないじゃん。
「本部長のお陰で思う存分仕事ができました。いい提案できました」
「そりゃそうだろうね。俺の涙を無視してそっちに注力してたんだしね」
「そんな言い方卑怯です」
「うるさい。俺だって大変だったんだよ。さっさとこっちに戻れ」
「……あの。今日は残業できないです。お許し下さい」
「……祝勝会か?」
「はい。すみません」
「いいけど、飲み過ぎるなよ。明日からしっかり頼みたい」
「はい。そうします」
私は時間までとにかく本部長の周りの書類をかたづけることに集中した。
あっという間に時間となってしまった。
就業前に巧へ連絡すると、珍しく少し駅から遠い個室の料理屋を待ち合わせ場所に指定された。
いつもは近くの居酒屋なんだけど、今日は特別ってことかしら?
実は今日は表彰式もあるからスーツで出社していた。こじゃれた所でもだから大丈夫。
少しお金を下ろして合流。
絶対高い店だと思う。ふたりだと男の巧に全部支払わせるの嫌だから、自分の分を持って行くのだ。
「いらっしゃいませ」
暖簾をくぐると着物を着た人が迎えてくれた。巧の名前を告げると二階へ案内された。ふすまを開けると掘りごたつ。巧が座っていた。
「遅れてごめん」
「いや。俺も今来たとこだよ」
「カンパーイ」
ふたりでビールを飲み干す。
「巧。この店すごいね。雰囲気もいいし、このお通しもしゃれてる」
「そうだろ?噂には聞いていたけど、何か普段入れない感があるからさ。今日はうってつけだと思ったんだ」
「ありがとね」
「ああ」
「……そうじゃなくて。あの、いつも色々フォローしてくれてたんでしょ。私、影で色々言われてるから……」
「……菜摘、お前。そうか、それでこの間もおかしかったんだな」
「え?」
「疲れてるのかと思ったけど、やっぱり違ったな。何か言われたのか?お前って好きなことやってるからいつも元気だし、変だと思ったんだ。心ここにあらずなんて初めてだったからさ」
出てきた前菜をゆっくり食べながら話す。
「私さ。何も考えずこの二年働いてきて、陰口に気付いたの本当に最近なの。馬鹿だよね。もう少し気をつけて人と接していればそんなことにならなかったのに……」
私達はハイタッチすると抱き合って喜んだ。
今日は新商品提案プロジェクトの最終選考。
去年も最終選考まで残ったが惜しくも三位だった。
今年こそはと臨んだ結果、第一位になった。嬉しい。
「やったな、森川さん。おめでとう」
部長が褒めてくれた。長田さんが睨んでる。すっかり嫌われたなー。
指導員だったのに、今や私の方が商品に詳しい。申し訳ないけどしょうがない。
「新村君。君も良く頑張ったね。森川さんの時間がないところをよくフォローした。たいしたもんだ」
部長が巧の背中をバンバン叩いてる。痛そうだよ。
「先輩。かっこよかったです。惚れ直しましたー」
巧の側で目にハートをつけている新入社員の渋谷奈々ちゃん。
「ああ、渋谷。色々手伝ってもらってありがとうな」
「えー?何でも言って下さい。先輩のためなら火の中水の中土の中です」
「は?土の中?」
私は、とりあえずこの場を去り、本部長室へ戻ろうとした。
すると、巧に腕を捕まれた。
「菜摘。祝勝会しようぜ。夜空けとけよ。今日くらいいいだろ?」
「そうだね。そうしよう。メールするね」
「ああ」
そう言うと、別れた。
「本部長失礼します」
久しぶりにこの部屋へ来た。
ここ一週間は全くこっちの仕事をしていなかった。迷惑をかけたと自覚してる。
「え?」
目の前の状況に驚いた。
すごい書類の山。どういうことよ……。
「森川さん。おかえり。待ってたよ。どうにかしてくれ……」
書類の中にいるのだろう。顔が見えない……埋もれてるよ。
「どうして、こんなことに?」
疲れた顔をこちらに見せる。
「それはそうだろう。有能な秘書が一週間も俺を放置してお出かけしてる。可哀想な俺は仕事が相変わらずたくさんあるのに、整理整頓する時間も無い」
「はあ……それにしたって」
「そうそう、おめでとう。俺の苦しみも無駄にならなくて良かったよ」
そう言われたら何も言い返せないじゃん。
「本部長のお陰で思う存分仕事ができました。いい提案できました」
「そりゃそうだろうね。俺の涙を無視してそっちに注力してたんだしね」
「そんな言い方卑怯です」
「うるさい。俺だって大変だったんだよ。さっさとこっちに戻れ」
「……あの。今日は残業できないです。お許し下さい」
「……祝勝会か?」
「はい。すみません」
「いいけど、飲み過ぎるなよ。明日からしっかり頼みたい」
「はい。そうします」
私は時間までとにかく本部長の周りの書類をかたづけることに集中した。
あっという間に時間となってしまった。
就業前に巧へ連絡すると、珍しく少し駅から遠い個室の料理屋を待ち合わせ場所に指定された。
いつもは近くの居酒屋なんだけど、今日は特別ってことかしら?
実は今日は表彰式もあるからスーツで出社していた。こじゃれた所でもだから大丈夫。
少しお金を下ろして合流。
絶対高い店だと思う。ふたりだと男の巧に全部支払わせるの嫌だから、自分の分を持って行くのだ。
「いらっしゃいませ」
暖簾をくぐると着物を着た人が迎えてくれた。巧の名前を告げると二階へ案内された。ふすまを開けると掘りごたつ。巧が座っていた。
「遅れてごめん」
「いや。俺も今来たとこだよ」
「カンパーイ」
ふたりでビールを飲み干す。
「巧。この店すごいね。雰囲気もいいし、このお通しもしゃれてる」
「そうだろ?噂には聞いていたけど、何か普段入れない感があるからさ。今日はうってつけだと思ったんだ」
「ありがとね」
「ああ」
「……そうじゃなくて。あの、いつも色々フォローしてくれてたんでしょ。私、影で色々言われてるから……」
「……菜摘、お前。そうか、それでこの間もおかしかったんだな」
「え?」
「疲れてるのかと思ったけど、やっぱり違ったな。何か言われたのか?お前って好きなことやってるからいつも元気だし、変だと思ったんだ。心ここにあらずなんて初めてだったからさ」
出てきた前菜をゆっくり食べながら話す。
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