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企み~黒沢side2
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日傘専務は総帥に煙たがられて、崇さんの海外長期出張を機に冷遇され更迭された。そして私の瀬川常務がようやく専務になった。しかも香月さんも一緒に支社へ左遷され秘書課を追われたのだ。伸吾は可愛くない女だと言っていた彼女とすぐに別れた。
私の天下が来た!そう思った。
ところが、海外へ行く崇さんに外から縁談がもたらされた。焦っていたら、すぐに彼が縁談を断った。どうやら総帥と日傘専務のことで喧嘩したらしい。私にとっては完全勝利が目前だった。おそらく、海外から戻ったタイミングで婚約だろうと父からも言われていたのだ。
* * * *
あとは崇さんが帰ってくるのを待つだけだった。一年後に戻ると言っていたので楽しみにしていた。
ところが、半年後。急に崇さんが一旦帰国した。そのまま総帥となにやら話し合い、翌日からいなくなった。海外へ戻ったのかとみんなは言っていたが、辰巳秘書は相変わらず海外についていかないし、元気がない。
すると、驚いたことに香月さんの親友で同期の住谷さんが騒いでいるのが耳に入った。
「御曹司、神奈川の支社へ行っているらしいわよ。菜々から連絡があったの」
「どういうこと!?何でお戻りになったの?」
私は嫌な予感しかしなかった。まさか、彼女の異動を皆が内密にしていたのに、彼に漏れた?
「さあ?黒沢さんならご存じかと思ったけどそうじゃないんですね、びっくりです」
この気の強い香月さんの同期は本当に気に入らない。虐めても、虐めても、涙ひとつ見せない。香月さんはすぐにメンタルやられていたのに……。
* * * *
翌週、崇さんは本部へまた急に戻ってきた。でもひとりだった。安心していたらとんでもないことを皆の前で言った。
「明日から、神奈川支社へ半年前に行った香月さんが戻ってくる。そして、彼女が辰巳に代わって俺の専属秘書になる予定だ。みんなよろしく頼む」
ざわざわと皆が顔を見合わせ話し出した。総帥が許さないだろうと皆が言う。男性秘書しか御曹司にはつけないというきまりがあるのだ。だから私は瀬川さんで我慢していたのに!
「ああ、言い忘れたがこのことは父もわかっている。彼女を問い詰めるようなことはしないように。時間をもらって悪かったな。仕事に戻ってくれ」
「あ、あの……崇さん」
私は彼に言った。彼は相変わらずのクールな瞳をこちらに向けた。
「何かな、黒沢さん」
「その、女性秘書が許されるなら、立候補したい人はいると思います。私の方が香月さんより秘書経験もありますし、よろしければ……」
彼は手を上げて私の言葉を制した。
「悪いが、俺は香月さんに決めたから、黒沢さんは瀬川専務にこのままお仕えして下さい。彼も昇格してさぞかし忙しいでしょう。何しろ、日傘専務の代わりだそうだし、さぞかし忙しいことだろう。君も覚悟してくれ」
最後は冷たい目を向けた。日傘専務を追い出したのは瀬川専務と志村専務。彼はいきさつを知ったのかもしれない。
実は総帥は日傘専務を更迭するつもりはなかったらしいが、うちの父が瀬川専務を巻き込んで数人の取締役と多数決で有利になるよう裏で仕組んだと後で聞いた。全ては先々のお前のためだと父は言っていた。
彼女が戻ってきて二ヶ月。見るからに彼女を特別扱いし、彼女には優しいまなざしを向ける彼を見て、皆私の顔色をうかがいながら噂するようになった。
こんなはずではなかった。今頃盛大に婚約披露のパーティーが行われるはずだったのだ。
しかも、伸吾まで崇さんから目の敵にされて営業へ飛ばされた。飛ばされた日の夜のことだ。いつものホテルで彼の鬱憤を身体で受け止めた。ふたりの怒りの源は一緒になった。
「伸吾……聞きたいことがあるのよ」
ベッドに身を起こして私はシャワーから戻ってきてビールを飲んでいる伸吾に言った。
「ああ、何でも聞けよ。今日はお前のお陰でだいぶスッキリした」
「あの子、机の鍵をどこにつけて持ってるか、あんたなら知ってる?」
あの子が誰かすぐにわかったんだろう。聞き返しもせず伸吾は私を見た。
「おいおい。美保何する気だ?相手は御曹司秘書だぞ。いくらお前でもやり過ぎるとまずいぞ」
「ちょっと拝見させていただくだけよ」
伸吾は秘書出身だからピンと来たんだろう。ベッドに乗り上げると私の横に来て耳元で囁いた。
「……アイツはいつも羊のキーホルダーに家の鍵と机の鍵、ロッカーの鍵も付けてる」
「ありがと。うまくいったらたっぷりお礼をするわ」
伸吾の頬にお礼のキスをすると、彼は私の身体に覆い被さってきた。
「ああ、そうしてくれ。俺とお前の相性は最高だ。あんなマグロ女、御曹司にどうせすぐ捨てられるから何もしなくてもお前におちてくるぞ」
「……うふふ」
待ってなさい、香月さん。崇さんは返してもらう。その夜は伸吾と朝までそこで過ごした。
その頃、父は香月さんの実家へ手を伸ばしていた。私は仕掛けるなら彼女に大きなダメージが出そうな相手先を選んだ。
計画は成功したかに見えた。まさか、その相手先に足下を掬われるとは思いもしなかった。
私の天下が来た!そう思った。
ところが、海外へ行く崇さんに外から縁談がもたらされた。焦っていたら、すぐに彼が縁談を断った。どうやら総帥と日傘専務のことで喧嘩したらしい。私にとっては完全勝利が目前だった。おそらく、海外から戻ったタイミングで婚約だろうと父からも言われていたのだ。
* * * *
あとは崇さんが帰ってくるのを待つだけだった。一年後に戻ると言っていたので楽しみにしていた。
ところが、半年後。急に崇さんが一旦帰国した。そのまま総帥となにやら話し合い、翌日からいなくなった。海外へ戻ったのかとみんなは言っていたが、辰巳秘書は相変わらず海外についていかないし、元気がない。
すると、驚いたことに香月さんの親友で同期の住谷さんが騒いでいるのが耳に入った。
「御曹司、神奈川の支社へ行っているらしいわよ。菜々から連絡があったの」
「どういうこと!?何でお戻りになったの?」
私は嫌な予感しかしなかった。まさか、彼女の異動を皆が内密にしていたのに、彼に漏れた?
「さあ?黒沢さんならご存じかと思ったけどそうじゃないんですね、びっくりです」
この気の強い香月さんの同期は本当に気に入らない。虐めても、虐めても、涙ひとつ見せない。香月さんはすぐにメンタルやられていたのに……。
* * * *
翌週、崇さんは本部へまた急に戻ってきた。でもひとりだった。安心していたらとんでもないことを皆の前で言った。
「明日から、神奈川支社へ半年前に行った香月さんが戻ってくる。そして、彼女が辰巳に代わって俺の専属秘書になる予定だ。みんなよろしく頼む」
ざわざわと皆が顔を見合わせ話し出した。総帥が許さないだろうと皆が言う。男性秘書しか御曹司にはつけないというきまりがあるのだ。だから私は瀬川さんで我慢していたのに!
「ああ、言い忘れたがこのことは父もわかっている。彼女を問い詰めるようなことはしないように。時間をもらって悪かったな。仕事に戻ってくれ」
「あ、あの……崇さん」
私は彼に言った。彼は相変わらずのクールな瞳をこちらに向けた。
「何かな、黒沢さん」
「その、女性秘書が許されるなら、立候補したい人はいると思います。私の方が香月さんより秘書経験もありますし、よろしければ……」
彼は手を上げて私の言葉を制した。
「悪いが、俺は香月さんに決めたから、黒沢さんは瀬川専務にこのままお仕えして下さい。彼も昇格してさぞかし忙しいでしょう。何しろ、日傘専務の代わりだそうだし、さぞかし忙しいことだろう。君も覚悟してくれ」
最後は冷たい目を向けた。日傘専務を追い出したのは瀬川専務と志村専務。彼はいきさつを知ったのかもしれない。
実は総帥は日傘専務を更迭するつもりはなかったらしいが、うちの父が瀬川専務を巻き込んで数人の取締役と多数決で有利になるよう裏で仕組んだと後で聞いた。全ては先々のお前のためだと父は言っていた。
彼女が戻ってきて二ヶ月。見るからに彼女を特別扱いし、彼女には優しいまなざしを向ける彼を見て、皆私の顔色をうかがいながら噂するようになった。
こんなはずではなかった。今頃盛大に婚約披露のパーティーが行われるはずだったのだ。
しかも、伸吾まで崇さんから目の敵にされて営業へ飛ばされた。飛ばされた日の夜のことだ。いつものホテルで彼の鬱憤を身体で受け止めた。ふたりの怒りの源は一緒になった。
「伸吾……聞きたいことがあるのよ」
ベッドに身を起こして私はシャワーから戻ってきてビールを飲んでいる伸吾に言った。
「ああ、何でも聞けよ。今日はお前のお陰でだいぶスッキリした」
「あの子、机の鍵をどこにつけて持ってるか、あんたなら知ってる?」
あの子が誰かすぐにわかったんだろう。聞き返しもせず伸吾は私を見た。
「おいおい。美保何する気だ?相手は御曹司秘書だぞ。いくらお前でもやり過ぎるとまずいぞ」
「ちょっと拝見させていただくだけよ」
伸吾は秘書出身だからピンと来たんだろう。ベッドに乗り上げると私の横に来て耳元で囁いた。
「……アイツはいつも羊のキーホルダーに家の鍵と机の鍵、ロッカーの鍵も付けてる」
「ありがと。うまくいったらたっぷりお礼をするわ」
伸吾の頬にお礼のキスをすると、彼は私の身体に覆い被さってきた。
「ああ、そうしてくれ。俺とお前の相性は最高だ。あんなマグロ女、御曹司にどうせすぐ捨てられるから何もしなくてもお前におちてくるぞ」
「……うふふ」
待ってなさい、香月さん。崇さんは返してもらう。その夜は伸吾と朝までそこで過ごした。
その頃、父は香月さんの実家へ手を伸ばしていた。私は仕掛けるなら彼女に大きなダメージが出そうな相手先を選んだ。
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