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奏多と陽茉莉の場合(中編上)
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結局、持ち帰ったバレンタインチョコは、奏多の姉に見張られ、無理やり奏多の腹に収まった。 佐和が奏多の姉に愚痴ったらしい。 次の日、少しの寝不足と、胃もたれを抱えて奏多は登校した。
(うぅ、まだ口の中が甘いっ)
奏多のクラスメートたちが朝からざわついていた。 教室の前の廊下に学年一の美少女が誰かを待っていたからだ。 奏多は昨日の事が頭から離れず、眠れなかった為、寝不足気味で学校に来ていた。 陽茉莉に気づかなかった奏多は、自分のクラスの前で欠伸をして扉を開けた。
「デカい欠伸ね」
背後から声をかけられ、自分だとは思わず、気にせずに教室に入る。 しかし、1歩教室に踏み出した所で、腰を強く引かれた。 振り向くと陽茉莉の顔が奏多の視界に飛び込んで来た。
「えっ!!」
「ちょっと、無視しないでよっ!!」
「ああ、ごめんっ! 俺の事だと思わなかったからっ」
(えっ! 新太陽茉莉!! 朝からラッキー!)
ぐいっと引っ張られ『ん?』と首を傾げると、パーカーの裾を陽茉莉が引っ張っていた。 陽茉莉の顔を見て奏多は固まった。 じっと強い眼差しで奏多を見ると、陽茉莉は顎をくいっと教室の外へ動かした。
仕草で察した奏多は、素直に陽茉莉について行った。 陽茉莉はトレーナーに制服のスカートで、襟元からシャツの襟を出していた。 肩を過ぎたくらいの茶髪でストレートの髪が、背中で揺れている。
奏多が連れて来られたのは、昨日と同じ3年の校舎裏だ。 奏多の方を振り向くと、大きな瞳でぶしつけに上から下まで眺めまわしてきた。 陽茉莉の視線に奏多は居心地悪そうに身動ぎした。
「まぁまぁね。 昨日は、変な所見せちゃってごめん」
陽茉莉は、瞳を泳がせながら言った。
「いや、俺もわざと見たわけじゃないけど、ごめん。 全くの偶然で。 あ、誰にも言ってないから」
陽茉莉からの呼び出しの理由はこれだろうと辺りを付けた。 誰だって面白半分で言いふらされたらいやだろうと思ったから、奏多は昨日事は誰にも言っていない。
「別にその事で呼び出したんじゃないから」
「えっ、そうか、」
(じゃ、何の用があるんだ?)
陽茉莉から思ってもいない言葉がボソッと飛び出した。
「私と付き合って欲しいの」
一瞬何を言われているのか分からず、奏多は固まった。 そして、奏多の口から間抜けな声が零れた。
「えええええええっ?! い、今、なんて?! え、ええええ」
「ちょっと!! 落ち着きなさいよっ!! だから、私と付き合ってって言ってんの?! あんたモテるんでしょ?! 告白された事ぐらいあるでしょ! 何で、そんな信じられないって顔してんのよ!」
陽茉莉の言葉に衝撃を受けたが、確かに奏多はモテる。 告白をされた事も何回もある。 しかし、一目惚れした相手から告白される経験はなかった。 いや待てと、奏多は昨日の事を思い出した。
ムスッと口を尖らせている陽茉莉に向き合うと、疑問をぶつけた。
「でも、昨日、振られてたよね? あの人の事が好きなんじゃないの?」
陽茉莉は奏多をキッと睨みつけた後、噛みついて来た。
「それはもういいからっ!! 折角、忘れてたのに思い出させないでよっ!!」
(ええええっ。 なんか、大分思ってた印象と違うな。 可愛い顔してるのに、性格キツイんだな)
「もういいわっ! じゃ、暫くでいいから、振りだけでもして欲しんだけど」
一瞬、無言になった奏多は、直ぐに質問を返した。
「なんで?」
「何でって」
奏多のツッコミに黙り込んでしまう陽茉莉
「振りをして欲しいって事は、それなりに理由があるんでしょ?」
「理由を言ったら、彼氏の振りしてくれるの?」
「理由次第かな」
(新太のお願いなら何でも聞いてあげたいけど、嫌な予感がするんだよなっ)
口に指をかけて考え込んだ陽茉莉は、小さく息をつくと諦めたように笑った。
「やっぱりいいわ。 他、探す。 あんたの顔、まぁまぁタイプだったからいいかと思ったんだけどね」
陽茉莉の『他、探す』の言葉に、反射的に奏多の身体が動いた。
「待って。 他って俺以外の男に彼氏の振りしてもらうって事?」
「そうだけど」
「それは却下だな」
陽茉莉は奏多の話を聞いて、怪訝そうに顔を顰めた。
「新太のお願いを聞く代わりに、俺のお願いも聞いてよ。 だって、新太のお願いだけ聞くのは、俺にメリットがないでしょ? 自分の願いだけ聞いて貰って、他人の願いは聞かないなんて自分勝手な事、言わないよね?」
突然、奏多が人が変わったように感じた陽茉莉の身体が、小さく跳ねた。 視線を外して、少し考えていた陽茉莉が答えを出してきた。
「分かった。 一宮の願いも聞くよ、それでいいでしょ。 で、一宮の願いは?」
「そうだな、今は思いつかないから、思いついたら言うよ。 それで、恋人同士なんだから、奏多って呼んでよ。 俺も陽茉莉って呼ぶからさ」
陽茉莉は眉間に皺を寄せたが、渋々了承した。
「分かった。 それで振りをしてくれるなら、これからよろしく。 奏多」
「良かった。 じゃ、これからよろしくな、陽茉莉」
陽茉莉から『奏多』呼びされ、心臓が痛いほど跳ねた。 自然と笑みが零れる。 奏多の笑みに陽茉莉は真っ赤になって直視できない様だった。 微妙な空気が漂う2人に、HRを知らせる鐘が鳴った。
「じゃ、話の続きは昼休みにな」
「分かった、誰にも聞かれたくないから、屋上でね」
「了解!」
奏多が了承すると、陽茉莉はホッとした様な表情を浮かべた。 最後は笑顔を奏多に返して自身の教室に帰って行った。 教室に戻って行く陽茉莉の後ろ姿を見送りながら、奏多は小さく息を吐いた。
――お昼休みの鐘が鳴る。 今日も屋上は誰も居ない。
屋上に一つしかないベンチに腰掛け、陽茉莉はメモ用紙を拡げた。 メモ用紙には、自身で奏多の身辺調査をした時のメモが書かれていた。 この1ヵ月で調べて分かった事。
『一宮奏多、16歳 1年D組 一般生徒で、成績は上の下。 中学時は空手部で全中大会で準優勝をしているが、スポーツ特待生になれず、現在は部活動をしていない。 爽やかな甘い容姿で、女子に人気があり、1年生で10本の指に入るイケメンだ。 どんな美女が告白しても落ちない。 女子では幼馴染の中島佐和と仲がいい』
「この1ヵ月、後をつけて調べた結果、学校内にも学校外にも彼女なし。 なんで、今は空手やってないんだろう。 中学で準優勝してるのに。 やっぱり、特待生になれなかったからかな。 でも、奏多なら」
ぼそりと呟いた陽茉莉の独り言は風に攫われて掻き消えた。 屋上の扉が軋みながら開けられ、陽茉莉の前に爽やかイケメンがお目見めした。
「早いなっ、陽茉莉。 授業、ちゃんと出てた?」
「出てたわよ。 4時間目、体育だったのっ」
「そっか」
奏多はにっこり笑って陽茉莉の隣に腰掛けた。
「話の前にお弁当、食べていい?」
「うん、私もお腹空いてるし」
「ああ、体育だったらお腹空いてるよな」
奏多はお弁当を広げると、美味しそうな匂いが陽茉莉の所まで漂ってきた。 奏多のお弁当を見ると、保温できるタイプのお弁当箱で、ご飯から微かに湯気が出ていた。 お味噌汁まである。 対照的に冷たそうなおかずを見て、首を傾げた。
「それって、おかずは温かくないの?」
「うん、おかずは冷たいまま入れるんだってさ。 温かいままだと腐るらしい。 ご飯とお味噌汁はあったかいよ。 おかずは食堂だとチンが出来るんだけどな。 しかもさ、お味噌汁なしの時は、ご飯もあんまり温かくない。 冷たくもないけど」
「ふ~ん、そうなんだ。 でもいいね、それ。 私も今度からそのお弁当箱にしてもらおうかな」
「こっちにすると、普通のお弁当箱に戻れなくなるよ」
美味しそうにお弁当を頬張る奏多を微笑ましく見つめた。 お弁当を食べた後、陽茉莉は決然とした表情で奏多を見た。 陽茉莉の話を聞いた奏多は『えっ』と顔を顰めた。
「私、入学した時からストーカーにあってるの」
「えっ。 ストーカー?!」
こくんと陽茉莉は頷いた。
「まじで? 間違いじゃなくて?」
「毎日、家の前で待ち伏せされたりして、ずっと付き合ってくれって言われてて。 ちゃんと断ったんだけど、しつこくて。 だからっ」
「俺に彼氏の振りをしてくれって事か」
陽茉莉の表情は嘘を言っている様に見えない。 『う~ん』と考えた後、奏多は昨日の事を思い出した。 奏多の脳裏に、アクセジャラジャのイケメンが思い浮かんだ。
「昨日の人は? それもストーカーの虫除けの為?」
陽茉莉は、泣き出しそうな顔をして、傷ついた表情をした。 奏多の胸にぞわりと心が騒ぐ。 陽茉莉の表情で、奏多は全てを察した。
(ふむ、昨日の人の事は本気だったのか。 まぁ、付き合えればストーカーからも逃げれるしな)
「先輩の事はもういいの。 彼女がいるし、一筋って言ってたし。 私が入る隙なんてないしね。 それに、伝えたかっただけなの。 先輩、来年の9月には留学するから」
「そうか」
「うん、振られるの分かってたしね」
眉を下げて泣きそうな顔で笑った陽茉莉に、また、ぞくりと奏多の心が蠢いた。
(う~ん、やばいな。 今、めっちゃキタ。 俺ってサドだっけ? 新たな自分を発見したよ)
それよりも奏多は、今朝の傍若無人振りが陽茉莉から無くなっているのが気になった。
「なんか、元気ないな。 昼までにそのストーカ―となんかあった?」
陽茉莉は『うっ』と声を詰まらせた。
(やっぱり、なんかあったか)
突然、けたたましく屋上の扉を蹴り開ける音が響いた。 騒音に2人が何事かと振り返ると、ごつくてゴリラみたいな男が立っていた。 陽茉莉はササッと、奏多の後ろに隠れた。 ゴリラ男をじっと見ていると、益々ゴリラに見えて、奏多は必死に笑いを堪えていた。
「お前!! 俺の陽茉莉に馴れ馴れしくするなっ!」
「えええっ」
お決まりのセリフ、力でねじ伏せるタイプにお約束な感じを受け、奏多は辟易した表情を浮かべた。
(うぅ、まだ口の中が甘いっ)
奏多のクラスメートたちが朝からざわついていた。 教室の前の廊下に学年一の美少女が誰かを待っていたからだ。 奏多は昨日の事が頭から離れず、眠れなかった為、寝不足気味で学校に来ていた。 陽茉莉に気づかなかった奏多は、自分のクラスの前で欠伸をして扉を開けた。
「デカい欠伸ね」
背後から声をかけられ、自分だとは思わず、気にせずに教室に入る。 しかし、1歩教室に踏み出した所で、腰を強く引かれた。 振り向くと陽茉莉の顔が奏多の視界に飛び込んで来た。
「えっ!!」
「ちょっと、無視しないでよっ!!」
「ああ、ごめんっ! 俺の事だと思わなかったからっ」
(えっ! 新太陽茉莉!! 朝からラッキー!)
ぐいっと引っ張られ『ん?』と首を傾げると、パーカーの裾を陽茉莉が引っ張っていた。 陽茉莉の顔を見て奏多は固まった。 じっと強い眼差しで奏多を見ると、陽茉莉は顎をくいっと教室の外へ動かした。
仕草で察した奏多は、素直に陽茉莉について行った。 陽茉莉はトレーナーに制服のスカートで、襟元からシャツの襟を出していた。 肩を過ぎたくらいの茶髪でストレートの髪が、背中で揺れている。
奏多が連れて来られたのは、昨日と同じ3年の校舎裏だ。 奏多の方を振り向くと、大きな瞳でぶしつけに上から下まで眺めまわしてきた。 陽茉莉の視線に奏多は居心地悪そうに身動ぎした。
「まぁまぁね。 昨日は、変な所見せちゃってごめん」
陽茉莉は、瞳を泳がせながら言った。
「いや、俺もわざと見たわけじゃないけど、ごめん。 全くの偶然で。 あ、誰にも言ってないから」
陽茉莉からの呼び出しの理由はこれだろうと辺りを付けた。 誰だって面白半分で言いふらされたらいやだろうと思ったから、奏多は昨日事は誰にも言っていない。
「別にその事で呼び出したんじゃないから」
「えっ、そうか、」
(じゃ、何の用があるんだ?)
陽茉莉から思ってもいない言葉がボソッと飛び出した。
「私と付き合って欲しいの」
一瞬何を言われているのか分からず、奏多は固まった。 そして、奏多の口から間抜けな声が零れた。
「えええええええっ?! い、今、なんて?! え、ええええ」
「ちょっと!! 落ち着きなさいよっ!! だから、私と付き合ってって言ってんの?! あんたモテるんでしょ?! 告白された事ぐらいあるでしょ! 何で、そんな信じられないって顔してんのよ!」
陽茉莉の言葉に衝撃を受けたが、確かに奏多はモテる。 告白をされた事も何回もある。 しかし、一目惚れした相手から告白される経験はなかった。 いや待てと、奏多は昨日の事を思い出した。
ムスッと口を尖らせている陽茉莉に向き合うと、疑問をぶつけた。
「でも、昨日、振られてたよね? あの人の事が好きなんじゃないの?」
陽茉莉は奏多をキッと睨みつけた後、噛みついて来た。
「それはもういいからっ!! 折角、忘れてたのに思い出させないでよっ!!」
(ええええっ。 なんか、大分思ってた印象と違うな。 可愛い顔してるのに、性格キツイんだな)
「もういいわっ! じゃ、暫くでいいから、振りだけでもして欲しんだけど」
一瞬、無言になった奏多は、直ぐに質問を返した。
「なんで?」
「何でって」
奏多のツッコミに黙り込んでしまう陽茉莉
「振りをして欲しいって事は、それなりに理由があるんでしょ?」
「理由を言ったら、彼氏の振りしてくれるの?」
「理由次第かな」
(新太のお願いなら何でも聞いてあげたいけど、嫌な予感がするんだよなっ)
口に指をかけて考え込んだ陽茉莉は、小さく息をつくと諦めたように笑った。
「やっぱりいいわ。 他、探す。 あんたの顔、まぁまぁタイプだったからいいかと思ったんだけどね」
陽茉莉の『他、探す』の言葉に、反射的に奏多の身体が動いた。
「待って。 他って俺以外の男に彼氏の振りしてもらうって事?」
「そうだけど」
「それは却下だな」
陽茉莉は奏多の話を聞いて、怪訝そうに顔を顰めた。
「新太のお願いを聞く代わりに、俺のお願いも聞いてよ。 だって、新太のお願いだけ聞くのは、俺にメリットがないでしょ? 自分の願いだけ聞いて貰って、他人の願いは聞かないなんて自分勝手な事、言わないよね?」
突然、奏多が人が変わったように感じた陽茉莉の身体が、小さく跳ねた。 視線を外して、少し考えていた陽茉莉が答えを出してきた。
「分かった。 一宮の願いも聞くよ、それでいいでしょ。 で、一宮の願いは?」
「そうだな、今は思いつかないから、思いついたら言うよ。 それで、恋人同士なんだから、奏多って呼んでよ。 俺も陽茉莉って呼ぶからさ」
陽茉莉は眉間に皺を寄せたが、渋々了承した。
「分かった。 それで振りをしてくれるなら、これからよろしく。 奏多」
「良かった。 じゃ、これからよろしくな、陽茉莉」
陽茉莉から『奏多』呼びされ、心臓が痛いほど跳ねた。 自然と笑みが零れる。 奏多の笑みに陽茉莉は真っ赤になって直視できない様だった。 微妙な空気が漂う2人に、HRを知らせる鐘が鳴った。
「じゃ、話の続きは昼休みにな」
「分かった、誰にも聞かれたくないから、屋上でね」
「了解!」
奏多が了承すると、陽茉莉はホッとした様な表情を浮かべた。 最後は笑顔を奏多に返して自身の教室に帰って行った。 教室に戻って行く陽茉莉の後ろ姿を見送りながら、奏多は小さく息を吐いた。
――お昼休みの鐘が鳴る。 今日も屋上は誰も居ない。
屋上に一つしかないベンチに腰掛け、陽茉莉はメモ用紙を拡げた。 メモ用紙には、自身で奏多の身辺調査をした時のメモが書かれていた。 この1ヵ月で調べて分かった事。
『一宮奏多、16歳 1年D組 一般生徒で、成績は上の下。 中学時は空手部で全中大会で準優勝をしているが、スポーツ特待生になれず、現在は部活動をしていない。 爽やかな甘い容姿で、女子に人気があり、1年生で10本の指に入るイケメンだ。 どんな美女が告白しても落ちない。 女子では幼馴染の中島佐和と仲がいい』
「この1ヵ月、後をつけて調べた結果、学校内にも学校外にも彼女なし。 なんで、今は空手やってないんだろう。 中学で準優勝してるのに。 やっぱり、特待生になれなかったからかな。 でも、奏多なら」
ぼそりと呟いた陽茉莉の独り言は風に攫われて掻き消えた。 屋上の扉が軋みながら開けられ、陽茉莉の前に爽やかイケメンがお目見めした。
「早いなっ、陽茉莉。 授業、ちゃんと出てた?」
「出てたわよ。 4時間目、体育だったのっ」
「そっか」
奏多はにっこり笑って陽茉莉の隣に腰掛けた。
「話の前にお弁当、食べていい?」
「うん、私もお腹空いてるし」
「ああ、体育だったらお腹空いてるよな」
奏多はお弁当を広げると、美味しそうな匂いが陽茉莉の所まで漂ってきた。 奏多のお弁当を見ると、保温できるタイプのお弁当箱で、ご飯から微かに湯気が出ていた。 お味噌汁まである。 対照的に冷たそうなおかずを見て、首を傾げた。
「それって、おかずは温かくないの?」
「うん、おかずは冷たいまま入れるんだってさ。 温かいままだと腐るらしい。 ご飯とお味噌汁はあったかいよ。 おかずは食堂だとチンが出来るんだけどな。 しかもさ、お味噌汁なしの時は、ご飯もあんまり温かくない。 冷たくもないけど」
「ふ~ん、そうなんだ。 でもいいね、それ。 私も今度からそのお弁当箱にしてもらおうかな」
「こっちにすると、普通のお弁当箱に戻れなくなるよ」
美味しそうにお弁当を頬張る奏多を微笑ましく見つめた。 お弁当を食べた後、陽茉莉は決然とした表情で奏多を見た。 陽茉莉の話を聞いた奏多は『えっ』と顔を顰めた。
「私、入学した時からストーカーにあってるの」
「えっ。 ストーカー?!」
こくんと陽茉莉は頷いた。
「まじで? 間違いじゃなくて?」
「毎日、家の前で待ち伏せされたりして、ずっと付き合ってくれって言われてて。 ちゃんと断ったんだけど、しつこくて。 だからっ」
「俺に彼氏の振りをしてくれって事か」
陽茉莉の表情は嘘を言っている様に見えない。 『う~ん』と考えた後、奏多は昨日の事を思い出した。 奏多の脳裏に、アクセジャラジャのイケメンが思い浮かんだ。
「昨日の人は? それもストーカーの虫除けの為?」
陽茉莉は、泣き出しそうな顔をして、傷ついた表情をした。 奏多の胸にぞわりと心が騒ぐ。 陽茉莉の表情で、奏多は全てを察した。
(ふむ、昨日の人の事は本気だったのか。 まぁ、付き合えればストーカーからも逃げれるしな)
「先輩の事はもういいの。 彼女がいるし、一筋って言ってたし。 私が入る隙なんてないしね。 それに、伝えたかっただけなの。 先輩、来年の9月には留学するから」
「そうか」
「うん、振られるの分かってたしね」
眉を下げて泣きそうな顔で笑った陽茉莉に、また、ぞくりと奏多の心が蠢いた。
(う~ん、やばいな。 今、めっちゃキタ。 俺ってサドだっけ? 新たな自分を発見したよ)
それよりも奏多は、今朝の傍若無人振りが陽茉莉から無くなっているのが気になった。
「なんか、元気ないな。 昼までにそのストーカ―となんかあった?」
陽茉莉は『うっ』と声を詰まらせた。
(やっぱり、なんかあったか)
突然、けたたましく屋上の扉を蹴り開ける音が響いた。 騒音に2人が何事かと振り返ると、ごつくてゴリラみたいな男が立っていた。 陽茉莉はササッと、奏多の後ろに隠れた。 ゴリラ男をじっと見ていると、益々ゴリラに見えて、奏多は必死に笑いを堪えていた。
「お前!! 俺の陽茉莉に馴れ馴れしくするなっ!」
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