『私に嫌われて見せてよ』~もしかして私、悪役令嬢?! ~

伊織愁

文字の大きさ
25 / 27

25話

しおりを挟む
 大聖堂に厳かな空気が漂い、満月の光に照らされた創造主の像が世界の平和を喜んでいるのか、微笑んでいる様に見える。 像の周囲には光妖精が現れ、満月の光と楽し気に遊んでいる。

 満月が明るく照らしている倉庫街で蠢く複数の人影がある。 『呪いの木箱』の取引が深夜に行われていた。 如何にも何処かの高位貴族の様な紳士と、神経質そうな初老の紳士が向かい合っていた。

 彼らの間に『呪いの木箱』と、お金が入っているだろう大きな袋が二つ程、地面に置かれている。

 取引が行われている倉庫は、ガッドが偽名を使って使い捨ての為に借りた倉庫だ。 取引現場を押さえられても、ガッドの名前は出ないだろうと踏んでいる。 しかし、もう既にガッドの知らぬ間に、リュシアンに全ての倉庫が抑えられていた。

 『呪いの木箱』とお金が入っている袋に、侍従だと思われる二人の男が手を掛ける。 受け取った二人の男は中身を確認し、お互いの主に無言で頷く。 高位貴族の紳士と初老の紳士も、無言で頷いた。
 
 『呪いの木箱』とお金が交換され、取引が無事に終わった。 木箱の重い音と、大量のお金が入っているだろう袋がずっしりとした鈍い音を鳴らした。

 倉庫街で蠢いていた複数の人影、先頭にいた人物が取引現場を確認して合図を送る。

 合図を確認した複数の人影は主にリュシアンの警護や指示通りに暗躍する部隊、近衛騎士団特殊部隊の騎士だ。 取引をしていた紳士たちは油断していたのか、直ぐには帰らず、酒を酌み交わそうとしていた。 特殊部隊が取引現場へ乗り込み、グラスを掲げていた紳士たちは突然の事に固まっていた。

 「なっ! どういう事だこれはっ?!」
 「……まさか、取引がバレていたのかっ?!」
 
 慌てふためく取引をしていた紳士たち。 訳も分からず、何も出来ないまま騎士たちに縄で縛られていった。

 「まぁ、そういう事だね。 ずっとジュレ家の倉庫は見張っていたからね」

 特殊部隊の騎士たちがサッと割れて道を作る。 出来た道を歩く足音が倉庫内で大きく響く。

 紳士たちの前に姿を現したのは、ルブラルン王国の王太子、リュシアンだ。 リュシアンの姿を見た二人の紳士は、とても驚いた表情を浮かべている。 驚愕に震える二人の紳士を見て、リュシアンは不思議そうに首を傾げた。

 「ん? 何故、そんなに驚く? 私の顔を知らないなんて事、ないだろう?」

 黒い笑みを浮かべたリュシアンからは、とても底冷えする様な冷気が漂っていた。 『連行しろ』と指示を出すリュシアンの声には怒りが混じっている。 特殊部隊の騎士たちが紳士たちを連れていく。

 特殊部隊に連れて行かれながら、初老の紳士が顔を歪め、リュシアンに向かって毒を吐く。

 「ふんっ、笑っていられるのも今の内だっ! 帰ったら大事な物が無くなっているかもなっ」

 悪態を付いて来る初老の紳士に向けて、リュシアンが小さく笑みを作る。

 「さぁ、それはどうでしょうね」

 リュシアンの王子然とした佇まいが消え、言葉遣いも丁寧になった。 悪態を付いていた初老の紳士の顔が、リュシアンの正体に気づき、驚きで瞳と口を大きく開けた。

 ◇

 少し時間を遡る。

 「なるほど、前世の記憶ね。 それで、エディは私が真実の愛を見つけて婚約破棄する前に、私から離れようとしたのか?」
 「えと……はいっ」

 ダンスパーティーの後、王太子宮に連れて来られたエディは光妖精と契約した。 そして、リュシアンから聞いた事がない歌の説明を求められ、全てを吐いた後である。

 「……魔王になって、リュシアンに殺される訳にはいきませんからっ」
 「私はエディを殺したりしないけどね。 でも、エディの最悪の未来は回避出来ているんじゃないかな?」
 
 リュシアンに言われ、エディは首を傾げた。

 「エディ、魔王になる条件は色々ある。 虹色の魔力を保持していない事が一番だけど、もう一つ重要な事がある。 願う者の精神が病んでいなければならない。 エディは病んでもいないし、虹色の魔力を保持して生まれている。 それだけでもう、全ての最悪な未来が回避されているんだよ。 ブリエ嬢がどんなに、エディを魔王にしてくれってお願いしても叶わないんだよ」

 目から鱗である。 エディは全く持って、魔王になる条件を考えていなかった。 虹色の魔力を保持していない者が創造主に願ったら、全ての者が魔王になると思っていたのだ。

 「そんな事したら、魔王だらけになるね。 ただ、何も起こらないだけだよ。 少しくらいの闇を心に抱えているだけでは、魔王にはならない。 魔王になるくらい病んでいないと駄目なんだよ」
 「なるほど、そうなんですねっ?!」
 
 魔王になるほど、エディは病んでいない。 自身が魔王にはならないと分かり、エディはホッと胸を撫で下ろす。 安心したら、身体が空腹を訴えてくる。 ガゼボのテーブルに用意されているお菓子に視線をやり、エディはワッフルに手を伸ばした。
 
 ワッフルは、ハチミツとバターがタップリと掛けられており、ハチミツが煌めいてとても美味しそうだ。 エディがワッフルを切り分け、口に運んだ時だ。 王太子宮に侍従が報告に訪れた。

 リュシアンが対応し、侍従の報告を聞くと、とてもいい笑顔を浮かべる。 リュシアンの笑みには、何かを企んでいる様な色を滲ませている。 リュシアンの黒い笑みにエディは小さく悲鳴を上げた。

 ◇

 誰もが寝静まった深夜、夜空に浮かぶ満月の明かりが王城を明るく照らしていた。 大聖堂で流れる厳かな空気が漂う中、大聖堂へ訪れる人影が複数人いる。

 大聖堂へ続く門を潜ったエディの胸は、緊張で張り裂けそうになっていた。 大きく息を吸い込み、エディは大聖堂の扉を開けた。

 今夜、エディが大聖堂を訪れるという話を、ガッドとリラの二人に知られる様、リュシアンの指示で、自然に流した。 カフェテリアでロジェと話していれば、自然と彼らの耳に入ると、リュシアンから聞いてはいるが、エディは半信半疑だった。

 大聖堂へ入ったエディは、とても厳かな空気が漂っている堂内に、息を呑んだ。

 閉じられた両扉の前で深呼吸をした後、エディは祭壇へ向かう。 創造主に祈りを捧げる為、胸の前で両手を組んで、瞳を閉じる。 しかし、エディは創造主に願いを請う事はしなかった。

 何故か、リュシアンからは創造主に願いを請う振りをしてほしいと言われたのだ。

 (まぁ、リュシアンから祈るなって言われても、今夜は祈るなんて無理だけどねっ!)

 エディの頭の中では、後に起こるであろう事で頭がいっぱいで、創造主に願う事など出来ない。

 リュシアンがガッドと対決をすると聞き、エディは心配でならないのだ。 自分の願いを言っている場合ではない。 エディは『リュシアンが無事であるように』と、ただ祈りを捧げた。

 『ふふっ』と誰かが笑う声が聞こえた様な気配を感じ、エディは顔を上げて周囲を見回した。
 
 顔を上げた瞬間、創造主の像の後ろから人が飛び出して来た。 リラである。 魔王にならないエディを見て、信じられないという表情をしていた。

 (……いや、貴方も小説とは異なってるって言ってたわよね?)

 「どうしてっ……どうして魔王にならないのっ!」
 「どうしてと言われましても、私の精神が魔王になるほど、病んでいないって事なんだけど……」

 (うん、だから、もう小説とは違うんだよ)

 突然、厳しい表情したリラから魔法が放たれる。 いつの間に火妖精を呼び出していたのか、火妖精はリラを背後の庇い、両手を伸ばした掌から炎をエディに向かって放った。

 ◇

 エディとリラが対面している頃、リュシアンもエディを攫う為に現れたガッドと対面していた。

 エディが大聖堂へ入って行った後、前庭の植え込みからガッドが出て来る姿をリュシアンは見ていた。 ガッドは真っ直ぐに大聖堂へ向かっていく。 前庭を中ほど行ったところでリュシアンは、ガッドの歩みを止める為、彼の目の前へ現れた。

 瞳を大きく開けたガッドの表情は、『何故、お前が今、ここに居るんだ』と言っていた。

 「こんばんわ、ガッド。 こんな深夜に大聖堂へ何の用かな?」
 「貴様には関係ないっ!」
 「そう。 エディを攫う為に訪れたのかと思っていたが、違うのか」
 「なっ! そんな事をする訳ないだろう……確かに俺は女神を愛しているが、王太子の婚約者を攫うなど、そこまで愚かではないっ」
 
 ガッドの言い分に、リュシアンは『ふ~ん』と、緑の瞳を細めた。
 
 「そうか、それよりも君のサージェントはどうした? いつも一緒に居るだろう?」
 「……っ夜中だからなっ、ヨアンは屋敷で休んでもらっているっ」
 「なるほどね、休んでもらっているのか。 では、これは誰なのだろうな」

 リュシアンはジャケットの内ポットから水晶を取り出した。 水晶に映し出されている映像を見たガッドは、瞳と口を僅かに開けた。 リュシアンはガッドに良く見える様に掲げ、首を傾げた。

 「これに映っているのは、ガッドのサージェントだろう? 水晶に映っている場所が、何処か分かるかな?」
 「……っ」

 水晶にはリュシアンのサージェントであるアンリも映し出されていた。 ヨアンが縄で縛られているという事は、ガッドの企みは失敗したという事だ。 初老の紳士はヨアンが化けていた姿だった。

 アンリもリュシアンに化けていたが、正体を現すまで、ヨアンは気づかなかった。

 ガッドは水晶でヨアンが尋問されている様子を眺め、悔しそうに口を歪めた。 リュシアンの声が前庭に低く響く。

 「ガッド、次は許さないと私は言ったはずだ。 さぁ、大人しく牢獄に入ってもらおうか。 他にも色々と証拠は掴んでいるからね」

 口元に笑みを浮かべたガッドは土妖精を呼び出し、土妖精にステッキを作るように命じた。

 溜息を吐いたリュシアンは、自身も土妖精を呼び出した。 呼び出した土妖精は直ぐに理解した様で、リュシアンの為にステッキを作り出し、差し出してくれる。 土妖精の瞳はリュシアンに褒めてもらいたくて、瞳が期待で煌めいていた。

 「ありがとう、とてもいい出来だ。 今は持ち合わせがないから、植物の種は後であげるよ」

 笑顔でリュシアンがお礼を言うと、土妖精は満足げに頷いて軽い音を鳴らした後、姿を消した。

 本当は直ぐにでも、植物の種を上げなくてはいけないが、今はガッドとの戦いに集中する。 リュシアンは瞳を眇め、目の前で構えるガッドを見つめた。

 ガッドのステッキがリュシアンの足を狙って殴りつけて来る。 余裕でガッドの攻撃を避け、リュシアンもガッドの足を狙う。 足を狙うと見せかけ、リュシアンはガッドの横っ面を、拳に思いっきり力を入れて殴りつけた。 よろけたガッドは、口から血を飛ばした。

 ステッキのぶつかり合う音が前庭に響き、たまに顔面に入る拳の音が混じる。

 リュシアンに攻撃が当たらないので、ガッドはステッキを投げ捨て、風妖精を呼び出した。 風妖精の掌から暴風が放たれ、リュシアンに向かう。 ステッキを投げ捨てたガッドを見て、リュシアンは直ぐに反応した。 闇妖精を呼び出す。 闇妖精はどんな攻撃も防ぐ。

 リュシアンの前に黒い防壁が作られると、ガッドの風妖精が放った魔法を防いだ。

 次の攻撃を仕掛けようとしているガッドに笑顔で応じる。 ガッドの頭上から大量の土の礫が降り注いだ。 肩まで埋まってしまったガッド。 ガッドが抜け出す前に、首に当身をして気絶させる。

 ガッドは小さく呻き声を上げた後、意識を手放した。 リュシアンの溜息が、土に埋まったガッドへ落ちる。

 「ガッドを掘り出した後、牢獄へ連行して、尋問しておけ。 余罪を全て吐かせるんだ」
 「「「「はっ」」」」

 植え込みの陰や大聖堂の陰から特殊部隊の騎士たちが現れ、土に埋まったガッドを掘り出し、連行していく。 騎士たちに運ばれていくガッドを見届けた後、リュシアンは大聖堂の扉へ向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...