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3話
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挨拶文を作り終え、幼い頃のことを思い出している間に、ピエトロの淹れた紅茶はすっかり冷めていた。居間に差し込む日差しも消え、外は薄暗くなっていた。
夕日が沈んだ空を眺めているファブリツィオの感情は表に出ていない。誰にも、今の彼の気持ちを悟ることはできなかった。
冷めきってしまった紅茶が美味しく飲めなくなった頃、部屋の呼び出し音が鳴らされた。
対応に出たピエトロの声が居間の扉の向こう側から聞こえる。どうやら客人は、ファブリツィオへ挨拶に訪れた様だ。
ソファーセットのローテーブルに散らばっているメモ用紙や万年筆を学生鞄に仕舞い、いつもの定位置である勉強机の横に置かれたコートラックへ掛ける。
ピエトロが客人の名を報告する声を背中にで受け止める。
「殿下、ヴァレリオ・デ・ジェンマ子爵子息がご挨拶をしたいと来られております」
ヴァレリオか……タイムリーだな。
「分かった、入ってもらってくれ」
「はい、承知致しました」
ピエトロの案内で居間に入って来たのは、青銀の髪に薄紫の瞳をした少年だ。
ヴァレリアに面立ちが似ている一つ年下のヴァレリオは、ヴァレリアの親戚筋だ。
ヴァレリオは居間へ通されると、臣下の礼をしてお決まりの口上を述べる。
「ご無沙汰しております、ファブリツィオ殿下。今年から私もこちらの学園に通う事となりましたので、ご挨拶に参りました。ファブリツィオ殿下に置かれましてはご機嫌麗しく、ご健勝の事、大変喜ばしく、ご尊顔を拝し至極恐悦にございます」
決まり文句ではあるが、貴族子息たちは言いづらい文言を幼い頃から、詰まらずに言える様に練習する。
一生懸命に練習した成果なのだから、最後まで聞かないと失礼だと思っているファブリツィオは、途中で遮ったりしない。
普通は「堅苦しい挨拶はいい」というお約束があるが、彼は真面目なので、いつも最後まで言わせる。
小さい頃は舌を噛んでいたのに、成長したなぁ、ヴァレリオ。
「うん、久しいな。ヴァレリオ、座ってくれ」
「はい、御前失礼致します」
久しぶりに会ったが、益々、ヴァレリアの祖父に似てきたな……。しっかりしろ、俺は王族だぞ!ヴァレリオとあの祖父を一緒にしたら駄目だ。引き攣ってもいいから、笑顔だ! 頑張れ、俺!
自身にエールを送る情けない王族だ。
「もう、16か。早いなっていうか、一つ下なだけだったか」
「はい」
ピエトロが新しく淹れてくれた紅茶に口を付けると、ヴァレリオも優雅に口を付ける。
ヴァレリオが茶器を置く所作ひとつに、亡き前侯爵の影が重なる。背筋に氷を這わされたような悪寒に、ファブリツィオは無意識に指先を強張らせた
ヴァレリオは少しだけややこしい経歴を持つ。彼はヴァレリアの祖父と、ストラーネオ侯爵家でお針子をしていたメイドとの間にできた庶子だ。
ヴァレリアの両親に中々子供ができず、やっと生まれたのは女児だった。ヴァレリアが生まれて直ぐに、跡取りを作る為だと言い、祖父はお針子に手を付けた。
ヴァレリアの祖父が生きている間はストラーネオ家が引き取って育てていたが、数年前に祖父が亡くなると、ヴァレリオとお針子の母がストラーネオ家を出たいと希望した。
ヴァレリアの祖母が今までの謝罪と感謝の意味も込めて、誰も継いでいないジェンマ子爵位をヴァレリオへ譲った。
ヴァレリオの母がジェンマ領出身で、ストラーネオ家にお針子で入ったのも、祖母の伝手だった。
「元気そうで何よりだ。そなたの母上はお元気か?」
「ええ、ジェンマ領で元気に仕立て屋をしながら、領地経営もしています。卒業後は私が爵位を継いで、母と二人で頑張ります。私たちは幸せですから、悲しい顔しないで下さい」
えっ、俺、顔に出てたか?!笑わないでくれ。
ヴァレリオは苦笑を零す。
「相変わらず分かりやすいですね、殿下」
「……っ」
「まだ、悔いておられるんですか?姉上を祖父から守れなかったこと」
ストラーネオ前侯爵か……ヴァレリアの祖父は恐ろしい人だったからな。
「……情けない顔をしているか?」
「はい、きっと姉上も殿下の気持ちは分かっていると思いますよ。だから、殿下の噂を知っていても何も言わないのでしょう?」
「お前は、相変わらず見てきた様に言うな」
やっぱり知っていたか。ヴァレリオのこういう所が苦手だ。何かも見透かしたような所。もの凄く優秀で、兄上たちから気に入られていた所……子供の頃の俺は、本当に空回っていたな。
「格好悪いよな、クローチェ伯爵令嬢との事は、全くの逃げだった」
「……かの令嬢の事をファミリーネームで呼ぶという事は、もう姉上から逃げないという事でしょうか?」
「全く会っていなかったのに、この一瞬でよく分かるな……」
もの凄く良い笑顔をするな……。
ヴァレリオの笑みは『姉上をよろしくお願いします』と言っていた。ヴァレリオの言わんとしている事に気づき、ファブリツィオは口を引き結んだ。
紅茶を飲み終えた後、居間に置かれている柱時計が18時を知らせる鐘を鳴らし、居間で響き渡った。
「夕食の時間か、学園の案内パンフレットにも書いてあったと思うが、寮母が少しうるさい人でな。時間通りに夕食を摂らないと、夕食抜きになってしまうんだ。一緒に行こう、カフェテリアへ案内する」
「ありがとうございます、喜んでご一緒させて頂きます」
ピエトロは学生寮のカフェテリアまではついて来ない。ピエトロの見送りを受け、ファブリツィオはヴァレリオと部屋を出て行った。
◇
学園寮のカフェテリアは、女子寮と男子寮の間にある。奥のコの字型の建物が女子寮で、手前の同じ様な建物が男子寮だ。
一階のカフェテリアは男女共用で、二階はサロン、主に貴族子女が友人たちとお茶会や食事の後、談笑する目的で使われている。三階は王族専用執務室だ。
王族は学業とは別に公務があり、王宮と連絡を取り合いながら執務を行い、授業を受けられるよう特別に学園から用意されている。
カフェテリアの玄関ホールに入ると、まだ、一週間の休みがあるというのに、まぁまぁな人数の生徒たちが学園に戻って来ていた。王族と公爵家の生徒は、一般生徒とは別の場所に食堂が用意されている。
各国の王族や要人の子女が通う事もある学園は、毒殺を防ぐ為、厨房も別に作られ、万全な体制が取られている。
真っ直ぐにカフェテリアへ進むヴァレリオに声を掛けた。
「ヴァレリオ、一緒に夕食をどうだ?場所が違うだけで、メニューは同じだけどな」
「王族専用の食堂で……ですか?私の様な下位貴族がご一緒しても宜しいんでしょうか?」
ああ、そうか。ヴァレリオは知らないか。不安げな顔がヴァレリアに似ているな。
王族か公爵家の招待があれば、王族専用の食堂へ入れる事を知り、ヴァレリオは納得した様な表情を浮かべた。暫し悩んでいたが、ヴァレリオは頭を下げた。
「畏れ多いですが、入寮早々に目立ちたくはありませんから、ご遠慮させていただきます。次にお誘い頂けるのでしたら、姉上も一緒にお願い致します」
やっぱり、そう来るよな……俺がヴァレリオだとしても、同じ返事をする。
「……そうか、分かった。次はヴァレリアも一緒に誘うとしよう。後、きっと生徒会から勧誘があると思うから、今の内に考えておいてくれ」
「はい、楽しみにしております。生徒会の件、入学式までに考えさせて頂きます」
「ああ、頼む……」
ヴァレリオと別れたファブリツィオは、カフェテリアの隣にある王族専用の食堂へ向かった。食堂の両扉を開けると、中から明るい話し声が聞こえ、既に公爵子息であるアドルフォが、カーティアと他の生徒会メンバーを招待して夕食の席についていた。彼らはファブリツィオに気づくと、口々に声を掛けて来た。
行き成り、難関が。どうして、もうコイツらが来ているんだ?いつもは二・三日前にならないと、学園寮に戻って来ないだろう……入学式まで顔を合わせないで済むと思ってたのに。
「ファブリツィオ殿下。やはり、もう学園寮へ戻っておられたんですね。お父様から、殿下はもう王宮を出たとお聞きしまして。もしかして生徒会の急ぎの仕事があったかと思い、皆を誘って私たちも早めに戻って参りました」
「殿下が一週間も前に学園へ戻るなんて、珍しいですね。まぁ、殿下は見た目と違って真面目な所がありますからね」
「で、何か急ぎの用があるのなら、俺たちも手伝うぞ。言ってくれ」
「……どうしたのさ、ボケっとしちゃって ファブリツィオ殿下?」
いつものメンバーで、いつもの様な楽しそうな雰囲気。しかし、彼らが口づけをしていた映像が脳裏で駆け巡り、胃が不快感で蠢いた。
様子がおかしいファブリツィオを心配して、カーティアがそっと腕に触れてくる。
彼女には触れられたくなくて、さり気無くカーティアの手を避けた。
「どうかなさいました?もしかしてご気分が優れないのでは?」
カーティアの背後に、ピエトロに見せられた映像が幻となって見える。心配気な表情を浮かべるカーティアを見て、ファブリツィオは僅かに瞳を見開いた。
そんな顔をして、俺に近づくのか?俺以外の奴とキスをしておいて……自分は穢れのない淑女ですって顔をして……。
「ファブリツィオ殿下?本当にどうした?顔色が悪いぞ」
「サヴェリオ……」
サヴェリオ、お前はカーティアと抱きしめ合ってキスをしていたな。
「ファブリツィオ殿下、気分が優れないのでしたら、私が部屋までお送り致します」
「アドルフォ……」
「はい」
アドルフォ、お前はカーティアをソファに押し倒してキスをしていたな。
「何か、いつもと様子が違うけど。なんかあったの?僕の事、分かる?」
「フラヴィオ……」
「うん、合ってるね」
フラヴィオ、お前はカーティアを膝の上に乗せてバードキスをしていたな。
全ての場所が生徒会室だった。
まさか、生徒会室で不埒な行為に及んでいるとは思わなかったよ。 皆、平然として俺のそばに居たのか!
顔が合わせられないと思っていた彼らは、友人面して平気で裏切り、平然としてファブリツィオへいつも通りに話しかけてくる。
俺には、お前たちの神経が分からない。よく平然として俺に話しかけられるな!
食欲を失くし、ふらつきながらファブリツィオは踵を返した。しかし、カーティアが追い縋って来る。
「ファブリツィオ殿下!お待ちください。お一人では危険です! 私が、」
カーティアの伸ばした手が、軽い音を鳴らして弾かれる。食堂内がしんと静まり返り、ファブリツィオの様子に皆が息を呑んだ。
弾かれた手を押さえ、カーティアは何が起こったのか理解が出来ない様で、大きな瞳で何度も瞬きを繰り返していた。
「すまないが、気分が悪い。俺抜きで夕食を続けてくれ」
こいつらと一緒に食事を摂る気にはなれない。部屋でピエトロに軽食を用意させよう。
「殿下?」
「殿下は、どうされたんだ?」
「……今まで、私にあんなに冷たい事なんてなかったのに、どうして?」
ファブリツィオが王族専用の食堂を出て行った後、目に涙を浮かべて悲しんでいるカーティアを、宰相の次男であるアドルフォが優しく抱きしめた。
騎士団総団長の次男サヴェリオは、カーティアの背後から両肩に手を置いた。
財務大臣の三男フラヴィオは、『大丈夫だよ、虫の居所が悪かっただけだよ』と優しくカーティアに微笑みかけた。
しかし、目の前で二人の男性にサンドイッチ状態で慰めてもらっているカーティアを、フラヴィオは冷めた目で眺めていた。
う~ん、殿下の様子を思うに、きっと僕たちの関係がバレたんだろうな。カーティアと僕たちのこと、もの凄い顔で睨みつけてたし、殿下って本当は純粋で潔癖な人だからね。僕たちのことを許せないんだろうな。今までは上手く騙せてたけど、どうするのかな?カーティア。
フラヴィオは三人にバレないように食堂を離れ、「もう離れ時だね」と呟いた。
◇
鼻歌を歌いながら、フライパンを振り、肉に火が通る匂いが広がる。
ピエトロのお腹が空腹を訴え、怪獣のように吠えまくる。
居間の簡易キッチンで、ピエトロは自身の夕食を作っていた。玄関の扉を開ける音が耳に届き、コンロの火を止める。
ファブリツィオがもう戻って来たのかと、ピエトロは慌てて玄関へ走った。
「殿下、どうされました?お食事は済ませられたんですか?」
「……いや」
青い顔をしたファブリツィオは、身体の力が抜けたのか、冷たいだろう床に頽れていく。
しゃがみ込んでしまったファブリツィオが心配になり、ピエトロは顔を覗き込む。
ファブリツィオが自嘲気味に笑いを零す。
「殿下?!」ピエトロは正直に狼狽えた。
とうとう壊れましたか?!
「……お前に見せられた映像を思い出したら、あいつらと呑気に食事なんてできなかった……人間不信になりそうだ」
「殿下……」
「補佐候補を改める必要がある。もうあいつらは信用が出来ない」
「分かりました、直ぐに選定しましょう」
「……いや、ヴァレリオと……」
呟くファブリツィオの目をじっと見つめる。何かを察した主人は、分かりやすく狼狽えた。
ジェンマ子爵子息にお願いするのでしたら、ストラーネオ侯爵令嬢にもお願いしたらどうでしょう?口に出さず表情で訴えてみる。あ、眉間に皺を寄せてもの凄い顔で固まりましたね。
「……分かった、あいつ、いや、ヴァレリアには公務を手伝ってもらっているからな。今以上の負担は掛けられないが、声だけ掛けてみる!これでいいか……」
「はい、頑張って下さいね。お二人の仲が改善されないと、ストラーネオ侯爵令嬢がいつまで殿下の婚約者で居られるか分かりませんよ」
「……どういう事だ!」
おや、婚約解消は考えてなかったという顔ですね。まさか、今更、焦っているのですか?
「ストラーネオ侯爵令嬢の祖父であられる前ストラーネオ侯爵が亡くなった後、マウリツィオ王太子殿下の婚約者候補に戻そうかという話になりまして。ややこしい方が亡くなって、外戚としても問題がなくなりましたからね」
「お、俺は知らないぞ、そんな話!」
「ええ、そうでしょうね。当時、殿下は前侯爵からストラーネオ侯爵令嬢を守れなくて、落ち込んでウジウジしていらっしゃって、誰ともお話をしなくなりましたでしょう」
「……っ」
「ですが、当のご本人であるストラーネオ侯爵令嬢が殿下の婚約者のままが良いと仰って、当人が言うならばと、今に至るのですよ」
「ヴァレリアが……」ファブリツィオの表情が少しだけ明るくなる。
あれま、嬉しそうな顔をして。やっぱり殿下の心の中には、ストラーネオ侯爵令嬢がおられるんですね。全く、殿下は世話が焼けますね。
「殿下、私からミッションを与えます」
「ミッション?」ファブリツィオの表情に、一瞬で警戒の色が走る。
「そんなに警戒しないで下さい。簡単ですよ。ストラーネオ侯爵令嬢を生徒会に勧誘する事。観劇デートに誘う事。クローチェ伯爵令嬢とは距離を取り、一生徒として扱う事」
「ちょっと待て!二つは分かるが、観劇デートってなんだ?!」突然の聞き慣れない言葉にファブリツィオは慌てた。
「観劇デートにお誘いして、ストラーネオ侯爵令嬢との仲を改善するんですよ。頑張って下さいね」
「……っ」
少し絶望的な顔をしてますけど、まぁ、不器用な殿下がストラーネオ侯爵令嬢に素直に謝れるかどうかにかかってますね。
殿下、頑張らないと、後ろから王太子殿下が彼女を狙ってますからね。
夕日が沈んだ空を眺めているファブリツィオの感情は表に出ていない。誰にも、今の彼の気持ちを悟ることはできなかった。
冷めきってしまった紅茶が美味しく飲めなくなった頃、部屋の呼び出し音が鳴らされた。
対応に出たピエトロの声が居間の扉の向こう側から聞こえる。どうやら客人は、ファブリツィオへ挨拶に訪れた様だ。
ソファーセットのローテーブルに散らばっているメモ用紙や万年筆を学生鞄に仕舞い、いつもの定位置である勉強机の横に置かれたコートラックへ掛ける。
ピエトロが客人の名を報告する声を背中にで受け止める。
「殿下、ヴァレリオ・デ・ジェンマ子爵子息がご挨拶をしたいと来られております」
ヴァレリオか……タイムリーだな。
「分かった、入ってもらってくれ」
「はい、承知致しました」
ピエトロの案内で居間に入って来たのは、青銀の髪に薄紫の瞳をした少年だ。
ヴァレリアに面立ちが似ている一つ年下のヴァレリオは、ヴァレリアの親戚筋だ。
ヴァレリオは居間へ通されると、臣下の礼をしてお決まりの口上を述べる。
「ご無沙汰しております、ファブリツィオ殿下。今年から私もこちらの学園に通う事となりましたので、ご挨拶に参りました。ファブリツィオ殿下に置かれましてはご機嫌麗しく、ご健勝の事、大変喜ばしく、ご尊顔を拝し至極恐悦にございます」
決まり文句ではあるが、貴族子息たちは言いづらい文言を幼い頃から、詰まらずに言える様に練習する。
一生懸命に練習した成果なのだから、最後まで聞かないと失礼だと思っているファブリツィオは、途中で遮ったりしない。
普通は「堅苦しい挨拶はいい」というお約束があるが、彼は真面目なので、いつも最後まで言わせる。
小さい頃は舌を噛んでいたのに、成長したなぁ、ヴァレリオ。
「うん、久しいな。ヴァレリオ、座ってくれ」
「はい、御前失礼致します」
久しぶりに会ったが、益々、ヴァレリアの祖父に似てきたな……。しっかりしろ、俺は王族だぞ!ヴァレリオとあの祖父を一緒にしたら駄目だ。引き攣ってもいいから、笑顔だ! 頑張れ、俺!
自身にエールを送る情けない王族だ。
「もう、16か。早いなっていうか、一つ下なだけだったか」
「はい」
ピエトロが新しく淹れてくれた紅茶に口を付けると、ヴァレリオも優雅に口を付ける。
ヴァレリオが茶器を置く所作ひとつに、亡き前侯爵の影が重なる。背筋に氷を這わされたような悪寒に、ファブリツィオは無意識に指先を強張らせた
ヴァレリオは少しだけややこしい経歴を持つ。彼はヴァレリアの祖父と、ストラーネオ侯爵家でお針子をしていたメイドとの間にできた庶子だ。
ヴァレリアの両親に中々子供ができず、やっと生まれたのは女児だった。ヴァレリアが生まれて直ぐに、跡取りを作る為だと言い、祖父はお針子に手を付けた。
ヴァレリアの祖父が生きている間はストラーネオ家が引き取って育てていたが、数年前に祖父が亡くなると、ヴァレリオとお針子の母がストラーネオ家を出たいと希望した。
ヴァレリアの祖母が今までの謝罪と感謝の意味も込めて、誰も継いでいないジェンマ子爵位をヴァレリオへ譲った。
ヴァレリオの母がジェンマ領出身で、ストラーネオ家にお針子で入ったのも、祖母の伝手だった。
「元気そうで何よりだ。そなたの母上はお元気か?」
「ええ、ジェンマ領で元気に仕立て屋をしながら、領地経営もしています。卒業後は私が爵位を継いで、母と二人で頑張ります。私たちは幸せですから、悲しい顔しないで下さい」
えっ、俺、顔に出てたか?!笑わないでくれ。
ヴァレリオは苦笑を零す。
「相変わらず分かりやすいですね、殿下」
「……っ」
「まだ、悔いておられるんですか?姉上を祖父から守れなかったこと」
ストラーネオ前侯爵か……ヴァレリアの祖父は恐ろしい人だったからな。
「……情けない顔をしているか?」
「はい、きっと姉上も殿下の気持ちは分かっていると思いますよ。だから、殿下の噂を知っていても何も言わないのでしょう?」
「お前は、相変わらず見てきた様に言うな」
やっぱり知っていたか。ヴァレリオのこういう所が苦手だ。何かも見透かしたような所。もの凄く優秀で、兄上たちから気に入られていた所……子供の頃の俺は、本当に空回っていたな。
「格好悪いよな、クローチェ伯爵令嬢との事は、全くの逃げだった」
「……かの令嬢の事をファミリーネームで呼ぶという事は、もう姉上から逃げないという事でしょうか?」
「全く会っていなかったのに、この一瞬でよく分かるな……」
もの凄く良い笑顔をするな……。
ヴァレリオの笑みは『姉上をよろしくお願いします』と言っていた。ヴァレリオの言わんとしている事に気づき、ファブリツィオは口を引き結んだ。
紅茶を飲み終えた後、居間に置かれている柱時計が18時を知らせる鐘を鳴らし、居間で響き渡った。
「夕食の時間か、学園の案内パンフレットにも書いてあったと思うが、寮母が少しうるさい人でな。時間通りに夕食を摂らないと、夕食抜きになってしまうんだ。一緒に行こう、カフェテリアへ案内する」
「ありがとうございます、喜んでご一緒させて頂きます」
ピエトロは学生寮のカフェテリアまではついて来ない。ピエトロの見送りを受け、ファブリツィオはヴァレリオと部屋を出て行った。
◇
学園寮のカフェテリアは、女子寮と男子寮の間にある。奥のコの字型の建物が女子寮で、手前の同じ様な建物が男子寮だ。
一階のカフェテリアは男女共用で、二階はサロン、主に貴族子女が友人たちとお茶会や食事の後、談笑する目的で使われている。三階は王族専用執務室だ。
王族は学業とは別に公務があり、王宮と連絡を取り合いながら執務を行い、授業を受けられるよう特別に学園から用意されている。
カフェテリアの玄関ホールに入ると、まだ、一週間の休みがあるというのに、まぁまぁな人数の生徒たちが学園に戻って来ていた。王族と公爵家の生徒は、一般生徒とは別の場所に食堂が用意されている。
各国の王族や要人の子女が通う事もある学園は、毒殺を防ぐ為、厨房も別に作られ、万全な体制が取られている。
真っ直ぐにカフェテリアへ進むヴァレリオに声を掛けた。
「ヴァレリオ、一緒に夕食をどうだ?場所が違うだけで、メニューは同じだけどな」
「王族専用の食堂で……ですか?私の様な下位貴族がご一緒しても宜しいんでしょうか?」
ああ、そうか。ヴァレリオは知らないか。不安げな顔がヴァレリアに似ているな。
王族か公爵家の招待があれば、王族専用の食堂へ入れる事を知り、ヴァレリオは納得した様な表情を浮かべた。暫し悩んでいたが、ヴァレリオは頭を下げた。
「畏れ多いですが、入寮早々に目立ちたくはありませんから、ご遠慮させていただきます。次にお誘い頂けるのでしたら、姉上も一緒にお願い致します」
やっぱり、そう来るよな……俺がヴァレリオだとしても、同じ返事をする。
「……そうか、分かった。次はヴァレリアも一緒に誘うとしよう。後、きっと生徒会から勧誘があると思うから、今の内に考えておいてくれ」
「はい、楽しみにしております。生徒会の件、入学式までに考えさせて頂きます」
「ああ、頼む……」
ヴァレリオと別れたファブリツィオは、カフェテリアの隣にある王族専用の食堂へ向かった。食堂の両扉を開けると、中から明るい話し声が聞こえ、既に公爵子息であるアドルフォが、カーティアと他の生徒会メンバーを招待して夕食の席についていた。彼らはファブリツィオに気づくと、口々に声を掛けて来た。
行き成り、難関が。どうして、もうコイツらが来ているんだ?いつもは二・三日前にならないと、学園寮に戻って来ないだろう……入学式まで顔を合わせないで済むと思ってたのに。
「ファブリツィオ殿下。やはり、もう学園寮へ戻っておられたんですね。お父様から、殿下はもう王宮を出たとお聞きしまして。もしかして生徒会の急ぎの仕事があったかと思い、皆を誘って私たちも早めに戻って参りました」
「殿下が一週間も前に学園へ戻るなんて、珍しいですね。まぁ、殿下は見た目と違って真面目な所がありますからね」
「で、何か急ぎの用があるのなら、俺たちも手伝うぞ。言ってくれ」
「……どうしたのさ、ボケっとしちゃって ファブリツィオ殿下?」
いつものメンバーで、いつもの様な楽しそうな雰囲気。しかし、彼らが口づけをしていた映像が脳裏で駆け巡り、胃が不快感で蠢いた。
様子がおかしいファブリツィオを心配して、カーティアがそっと腕に触れてくる。
彼女には触れられたくなくて、さり気無くカーティアの手を避けた。
「どうかなさいました?もしかしてご気分が優れないのでは?」
カーティアの背後に、ピエトロに見せられた映像が幻となって見える。心配気な表情を浮かべるカーティアを見て、ファブリツィオは僅かに瞳を見開いた。
そんな顔をして、俺に近づくのか?俺以外の奴とキスをしておいて……自分は穢れのない淑女ですって顔をして……。
「ファブリツィオ殿下?本当にどうした?顔色が悪いぞ」
「サヴェリオ……」
サヴェリオ、お前はカーティアと抱きしめ合ってキスをしていたな。
「ファブリツィオ殿下、気分が優れないのでしたら、私が部屋までお送り致します」
「アドルフォ……」
「はい」
アドルフォ、お前はカーティアをソファに押し倒してキスをしていたな。
「何か、いつもと様子が違うけど。なんかあったの?僕の事、分かる?」
「フラヴィオ……」
「うん、合ってるね」
フラヴィオ、お前はカーティアを膝の上に乗せてバードキスをしていたな。
全ての場所が生徒会室だった。
まさか、生徒会室で不埒な行為に及んでいるとは思わなかったよ。 皆、平然として俺のそばに居たのか!
顔が合わせられないと思っていた彼らは、友人面して平気で裏切り、平然としてファブリツィオへいつも通りに話しかけてくる。
俺には、お前たちの神経が分からない。よく平然として俺に話しかけられるな!
食欲を失くし、ふらつきながらファブリツィオは踵を返した。しかし、カーティアが追い縋って来る。
「ファブリツィオ殿下!お待ちください。お一人では危険です! 私が、」
カーティアの伸ばした手が、軽い音を鳴らして弾かれる。食堂内がしんと静まり返り、ファブリツィオの様子に皆が息を呑んだ。
弾かれた手を押さえ、カーティアは何が起こったのか理解が出来ない様で、大きな瞳で何度も瞬きを繰り返していた。
「すまないが、気分が悪い。俺抜きで夕食を続けてくれ」
こいつらと一緒に食事を摂る気にはなれない。部屋でピエトロに軽食を用意させよう。
「殿下?」
「殿下は、どうされたんだ?」
「……今まで、私にあんなに冷たい事なんてなかったのに、どうして?」
ファブリツィオが王族専用の食堂を出て行った後、目に涙を浮かべて悲しんでいるカーティアを、宰相の次男であるアドルフォが優しく抱きしめた。
騎士団総団長の次男サヴェリオは、カーティアの背後から両肩に手を置いた。
財務大臣の三男フラヴィオは、『大丈夫だよ、虫の居所が悪かっただけだよ』と優しくカーティアに微笑みかけた。
しかし、目の前で二人の男性にサンドイッチ状態で慰めてもらっているカーティアを、フラヴィオは冷めた目で眺めていた。
う~ん、殿下の様子を思うに、きっと僕たちの関係がバレたんだろうな。カーティアと僕たちのこと、もの凄い顔で睨みつけてたし、殿下って本当は純粋で潔癖な人だからね。僕たちのことを許せないんだろうな。今までは上手く騙せてたけど、どうするのかな?カーティア。
フラヴィオは三人にバレないように食堂を離れ、「もう離れ時だね」と呟いた。
◇
鼻歌を歌いながら、フライパンを振り、肉に火が通る匂いが広がる。
ピエトロのお腹が空腹を訴え、怪獣のように吠えまくる。
居間の簡易キッチンで、ピエトロは自身の夕食を作っていた。玄関の扉を開ける音が耳に届き、コンロの火を止める。
ファブリツィオがもう戻って来たのかと、ピエトロは慌てて玄関へ走った。
「殿下、どうされました?お食事は済ませられたんですか?」
「……いや」
青い顔をしたファブリツィオは、身体の力が抜けたのか、冷たいだろう床に頽れていく。
しゃがみ込んでしまったファブリツィオが心配になり、ピエトロは顔を覗き込む。
ファブリツィオが自嘲気味に笑いを零す。
「殿下?!」ピエトロは正直に狼狽えた。
とうとう壊れましたか?!
「……お前に見せられた映像を思い出したら、あいつらと呑気に食事なんてできなかった……人間不信になりそうだ」
「殿下……」
「補佐候補を改める必要がある。もうあいつらは信用が出来ない」
「分かりました、直ぐに選定しましょう」
「……いや、ヴァレリオと……」
呟くファブリツィオの目をじっと見つめる。何かを察した主人は、分かりやすく狼狽えた。
ジェンマ子爵子息にお願いするのでしたら、ストラーネオ侯爵令嬢にもお願いしたらどうでしょう?口に出さず表情で訴えてみる。あ、眉間に皺を寄せてもの凄い顔で固まりましたね。
「……分かった、あいつ、いや、ヴァレリアには公務を手伝ってもらっているからな。今以上の負担は掛けられないが、声だけ掛けてみる!これでいいか……」
「はい、頑張って下さいね。お二人の仲が改善されないと、ストラーネオ侯爵令嬢がいつまで殿下の婚約者で居られるか分かりませんよ」
「……どういう事だ!」
おや、婚約解消は考えてなかったという顔ですね。まさか、今更、焦っているのですか?
「ストラーネオ侯爵令嬢の祖父であられる前ストラーネオ侯爵が亡くなった後、マウリツィオ王太子殿下の婚約者候補に戻そうかという話になりまして。ややこしい方が亡くなって、外戚としても問題がなくなりましたからね」
「お、俺は知らないぞ、そんな話!」
「ええ、そうでしょうね。当時、殿下は前侯爵からストラーネオ侯爵令嬢を守れなくて、落ち込んでウジウジしていらっしゃって、誰ともお話をしなくなりましたでしょう」
「……っ」
「ですが、当のご本人であるストラーネオ侯爵令嬢が殿下の婚約者のままが良いと仰って、当人が言うならばと、今に至るのですよ」
「ヴァレリアが……」ファブリツィオの表情が少しだけ明るくなる。
あれま、嬉しそうな顔をして。やっぱり殿下の心の中には、ストラーネオ侯爵令嬢がおられるんですね。全く、殿下は世話が焼けますね。
「殿下、私からミッションを与えます」
「ミッション?」ファブリツィオの表情に、一瞬で警戒の色が走る。
「そんなに警戒しないで下さい。簡単ですよ。ストラーネオ侯爵令嬢を生徒会に勧誘する事。観劇デートに誘う事。クローチェ伯爵令嬢とは距離を取り、一生徒として扱う事」
「ちょっと待て!二つは分かるが、観劇デートってなんだ?!」突然の聞き慣れない言葉にファブリツィオは慌てた。
「観劇デートにお誘いして、ストラーネオ侯爵令嬢との仲を改善するんですよ。頑張って下さいね」
「……っ」
少し絶望的な顔をしてますけど、まぁ、不器用な殿下がストラーネオ侯爵令嬢に素直に謝れるかどうかにかかってますね。
殿下、頑張らないと、後ろから王太子殿下が彼女を狙ってますからね。
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