脳内お花畑から帰還したダメ王子の不器用な愛し方

伊織愁

文字の大きさ
15 / 38

15話

しおりを挟む
 無事に武術大会も終わり、ヴァレリオの優勝で終わった。

 意気込んでいた割には、ファブリツィオは三位で終わってしまった。受賞式の時に見せた王の冷めた表情と、王妃の歪まれた瞳、眼差しは劣る王子だと、物語っていた。扇子で口元を隠していたが、きっと弧を描いていただろう。

 膝の上へ置いた拳を強く握り締める。

 ファブリツィオの中で、もう諦めた事だ。父親から愛される事はない。 

 脳裏で思い出された父親は、優勝したヴァレリオに笑いかけていた。準優勝のサヴェリオにも笑顔を向けていた。

 ファブリツィオは二人の隣で、感情を無くし、ただ、虚しさだけが胸に広がっていた。

 自重気味な笑みが口元に貼り付けられる。まるでファブリツィオの全てを否定されている様だった。

 何を今更、幼い頃からだろう。もう、慣れているはずだ。大丈夫だ、俺は俺だ。兄上たちの様には出来ないのは、昔から分かっていただろう。俺は、俺の出来ることするだけた。

 『お前は、お前の出る事をしなさい』
 『貴方の出来る事があるのならだけど……』

 「……っ」

 昔に言われた事を思い出し、ファブリツィオの胸に不安が広がる。

 くそっ、何時もは上手く気持ちを切り替えられるのに!

 胸に闇が落ち掛けた時、不意に後頭部へ温かい体温と、柔らかい物がぶつかり、首に細い腕が巻きついてきた。 

 知っている香りがファブリツィオを包み込んだ。

 ◇

 受賞式の後、反省会をする物だと思っていたヴァレリアたちは、ファブリツィオが足早に武道場を離れ、執務室がある学園寮へ向かう背中を無言で見送った。

 ピエトロも無言でファブリツィオを追いかけて行く。

 ファブリツィオの行動を察したのは、首を傾げて困惑の表情をしている一同の中で、ヴァレリアとヴァレリオだけだろう。

 二人だけが、ファブリツィオと王との確執を知っている。視線を合わせた二人は頷いた後、互いの意思を理解した。

 何が出来るか分からないけど、今、ファブリツィオ様を一人にしてはいけないわ。

 急いでヴァレリアもファブリツィオの後を追いかけた。

 学園寮の三階にある執務室の前へ辿り着くと、扉の前に居る近衛騎士に会釈する。 

 近衛騎士は扉を開けて執務室へ入れてくれた。侍従の控え室が前室にあり、執務室へ続く扉の前にピエトロが立っていた。

 「ピエトロ様……」
 「ストラーネオ侯爵令嬢」

 ピエトロは臣下の礼した後、笑みを浮かべて言った。

 「私の事は、ピエトロと呼び捨てて下さい。私は貴方様の婚約者であるファブリツィオ殿下の侍従です。殿下がストラーネオ家に降下された際、私はストラーネオ家へ一緒について参りますので、貴方様の侍従にもなります」
 「分かりました。では、ピエトロと呼ばせて頂きます」
 「はい、よろしくお願いします」
 「ファブリツィオ様は?」
 「中におられます。私は邪魔になるかと、こちらで待機しています」
 「分かりました」

 どうしよう、入っても大丈夫かしら? 私も邪魔だと思われない?

 「ストラーネオ侯爵令嬢、中を覗いてみて、入れる雰囲気ならば、入っても構わないと思います」

 ヴァレリアは無言で頷き、はしたないと分かっていても、中の様子を覗いて見た。

 「どうです?入って行けそうですか?」

 ファブリツィオは執務室の中央のソファーに腰掛けて背中を向けている。 

 ファブリツィオの表情が見えない為、彼が何を考えているのか分からないが、周囲の空気が他者を拒んでいる。

 あまり入って行けそうにない雰囲気だわ。

 息をついたヴァレリアはピエトロの方へ視線を向けた。ピエトロは眉尻を下げて、困惑の表情を浮かべている。

 「無理ですか」
 「はい、すっかり落ち込んでるみたいです」
 「そうですか」
 
 再び、中を確認したヴァレリアの口が小さく開く。小声で、ファブリツィオの名前が溢れると、ヴァレリアの身体が無意識に動いた。執務室の中へ入り、背中を向けて座るファブリツィオを後ろから抱きしめていた。

 ヴァレリアの胸にファブリツィオの柔らかい髪の感触を感じる。凄く驚いたのか、ファブリツィオの肩が大きく跳ねた。

 ◇

 知っている香りに、直ぐに誰か分かった。ヴァレリアと触れ合ったのは、いつ振りだろう。

 幼い頃は何も考えず、ただただ愛しくて抱きしめた記憶がある。10歳頃の話だ。 

 しかし、今は子供の頃とは違う。

 こ、後頭部に驚異的な柔らかさを感じる……えっ、こんなに柔らかい物だったのか?!

 当たり前だが、幼い頃には無かった物を後頭部で感じ取り、先程まで悩んでいたことなど、頭から吹っ飛んでいった。

 あ、頭を動かせないんだか!こんな時、どうすればいいんだ!

 狼狽えているファブリツィオの頭上からヴァレリアの切ない声が降りてきた。

 「私には、ファブリツィオ様は見えてます。ずっと見てましたから!誰が言ったか知りませんが、劣る王子だなんて、一度も思った事なんてありませんからね!」

 首に巻きついているヴァレリアの細い腕と手が震えている事に気づいた。

 心配して来てくれたのか。

 小さく息をついたファブリツィオは、ヴァレリアから体温だけではない暖かいものが流れてくるのを感じた。 

 そっとヴァレリアの手に自身の手を重ねた。

 「ヴァレリア、ありがとう。もう大丈夫だ。大丈夫だよ」
 「本当ですか?」
 「ああ、本当だ。だから、その」

 言い淀むファブリツィオの耳は真っ赤になっていた。顔も赤くなっているだろうから、見られたくないので、振り向かない。

 「そろそろ離してくれるか?本当にもう大丈夫だから……」

 ファブリツィオの切羽詰まった様な声に、ヴァレリアは不思議そうに首を傾げていたが、言う通りに腕を離した。

 離れていくヴァレリアの温もりと柔らかさに寂しさを覚え、ソファから立ち上がったファブリツィオは、ヴァレリアの腕を引いて抱きしめた。

 「ファブリツィオ様!」

 慌てて離れようとするヴァレリアを強く抱きしめる。次はヴァレリアが、ファブリツィオの胸の中で、耳まで真っ赤になった。

 「何だ、さっきはヴァレリアから抱きしめて来たのに、今は俺に抱きしめられて恥ずかしいのか?」
 「は、恥ずかしいです。ですから、離して下さいませ」
 「嫌だ、幼い頃はよくこうやって、抱きしめあったじゃないか」
 「あ、あの時は本当に子供で、今は違いますから」
 「先程はヴァレリアから抱きついてきたではないか」
 「あれは、つい幼い頃みたいに慰める為に、よくしたじゃないですか!辛い事があった時に」
 「ほう? 幼い頃ね」

 ヴァレリアから子供扱いされて抱きしめられたんだと理解し、ファブリツィオから冷たい声が吐き出された。

 ヴァレリアの小さい肩が揺れる。

 「あ、あの、ファブリツィオ様?」

 恐る恐る見上げてくるヴァレリアにニコッと微笑むと、ヴァレリアの細い身体が棒の様に固まった。

 「大丈夫だ、頃合いでピエトロが止めに来るから」
 「えっ?!ファ、殿下?!」

 自身で言った事だったが、本当にいい所でピエトロの邪魔が入った。ファブリツィオが冷たい眼差しで訴えても、ピエトロは悪びれる事はなかった。

 「殿下、いい加減にストラーネオ侯爵令嬢を離してあげて下さい」
 「……ちっ」
 「舌打ちは下品ですよ。少し、お話があります」
 
 真剣な眼差しで有無を言わせないピエトロの雰囲気に、ファブリツィオは溜め息をついて、ヴァレリアを離した。

 ヴァレリアは爆発するのでないかと思う程、真っ赤になっていた。

 うん、可愛らしいな。今後、少しくらいのスキンシップは許されるかな。

 ソファに座ったファブリツィオの横に、ヴァレリアも座る様にと、ピエトロが言う。ファブリツィオの脳裏にマウリツィオの顔が思い浮かび、眉間に皺が寄った。

 「まさか、また兄上のミッションか?」

 隣でヴァレリアも頬を引き攣らせながらピエトロを見る。

 「いいえ、違います。しかし、マウリツィオ殿下から言われる前に殿下が動いた方がいいと思いますので」

 ピエトロの言っている意味が分からず、ファブリツィオと、ヴァレリアは顔を傾げた。

 二人の前に立ち、ピエトロは不敵な笑み向けて来た。

 ピエトロがこんな顔してる時は、悪い事考えてる時なんだよな。

 「今日の武術大会の勝利で、三番勝負の勝敗が着きました」
 「あ、そうか。次の学期末テストで勝負しなくてもいいのか」
 「はい、で、提案です。ガリツィア様たちと仲直りしませんか?」
 「どう言う事だ?」
 「クローチェ伯爵令嬢の不貞を彼女に内緒でガリツィア様たちに教えるのです」
 「俺に教えた時みたいにか……っ」
 「はい」
 「アドルフォには有効かもな。サヴェリオはどうか分からないな」

 「不貞とはクローチェ伯爵令嬢が色んな男性たちと交流を持っている事ですか?」

 ヴァレリアの声が隣で聞こえ、ファブリツィオの心臓が跳ねた。一瞬だけヴァレリアの存在を忘れていた。

 「あ、ヴァレリア、それは……知ってたのか?」
 「すみません、彼女の事は調べた事があったので知っていました」
 「……そうか、知ってのか」
 「はい」

 ……っ、カッコ悪い過去を知られてた?!一番、知られたくなかったのに!

 「殿下、その事は後でストラーネオ侯爵令嬢と話して下さい。こちらの本題が先です」
 「……っ分かった。で、ピエトロは何が言いたいんだ?」
 「彼らは殿下に反旗を翻したんです。三番勝負で勝った後、殿下は彼らをどうするつもりでした?」
 「……そうだな、まぁ、二人を補佐候補から外す。クローチェ伯爵令嬢とは付き合っていた訳でもないから……放置だな」

 それで何も言ってこないだろう。

 「クローチェ伯爵令嬢の目的は殿下の排斥です」
 「「えっ、排斥?!」」
 
 ヴァレリアも知らなかった様で、驚き声を上げる。

 「それは確かなのか?」
 「はい、クローチェ伯爵令嬢がオルモ子爵令嬢にそう言って詰め寄っていた現場を見ましたから」
 「……っ、そうか、後、オルモ子爵令嬢とは誰だ?」
 「あぁ、アリーチエ・ディ・オルモ子爵令嬢ですよ。クローチェ伯爵令嬢のメイドです」
 「あぁ、実行委員に入った一年生か。彼女はクローチェ伯爵令嬢のメイドだったのか。そう言えば、彼女の推薦だったか」
 「はい、ですので、クローチェ伯爵令嬢は放置していても、絶対に関わって来ます」
 「……俺を排斥するまで諦めないって事か?」
 「はい、そうです。殿下に婚約破棄させて排斥を狙っていた様です。しかし、思惑通りに行ったとしても、彼女も同じ様に貴族社会から追い出されるはずです」
 「その事を全く気にしてないって事か?」
 「はい、馬鹿なのか、それとも」
 「背後で俺を排斥したい誰かと繋がっているという事か。その誰かに庇ってもらえるって事か」
 「はい、三番勝負が終わってもクローチェ伯爵令嬢に付き纏われるのは面倒でしょう?かと言って、証拠もありませんし、彼女が言っているたけだと、逃げられる可能性があります」
 「証拠が揃うまで泳がすか」
 「ええ、もう、彼女のコマの中に私のコマを入れています。必ず、連絡を取るはずですから」
 「そうだと、思ったよ」
 
 既に色々と話を進めていて、ファブリツィオは頭を抱えた。

 俺を排斥したいくらい、恨んでいる人物って言えば、一人しか思いつかないんだが……。まさか、国外追放とか、いや、嫉妬に狂った女は怖いからな!

 ファブリツィオの考えを読んだのか、ピエトロから的確な答えが返ってきた。

 「殿下、まだその方だと分かった訳ではありませんので、口に出すのは控えて下さいね」
 「……分かった。じゃ、クローチェ伯爵令嬢は手元に置いて、動向を見ないとだな」
 「はい」
 「クローチェ伯爵令嬢は、生徒会に戻す。アドルフォとサヴェリオは……俺と同じ物を観てどうするか、確認してくれ」

 カーティアを生徒会へ戻すと言った時、ヴァレリアは隣で反応を示した。 

 小さい肩を揺らし、膝の上へ置いた拳を強く握り締めていた。そっと、ヴァレリアの拳に手を置くと、ファブリツィオは微笑み掛ける。

 「大丈夫だ。俺はもう、クローチェ伯爵令嬢の事は何とも思っていない。彼女には惑わされないから。信じて欲しい」
 「はい、信じます」

 ヴァレリアも微笑み返して来る。

 大丈夫だ、絶対に、もうヴァレリアを傷つけない。

 ファブリツィオの頬に自然と優しさが滲み、緩んでいく。

 「ガリツィオ様とロンコーニ様には、補佐候補から外す旨、お知らせ致しますが宜しいですか?」
 「ああ、頼む……クローチェ伯爵令嬢には、俺から戻って来る様に伝える」

 ヴァレリアの拳を握り締め、安心させる様に見つめた。

 「ヴァレリア、今後は生徒会の仕事は生徒会室でする。ヴァレリアには負担になるかもしれないが、一緒に生徒会を手伝ってくれないか?」
 「えっと……クローチェ伯爵令嬢が
戻るなら、私は要らないのではないですか?」
 「いや、アドルフォは抜けるし、実行委員も再編成しないと駄目だ。それに、側で一緒に居たほうが安心だろう?」

 安に側でファブリツィオとカーティアが浮気しないか見張れるだろうと、ファブリツィオの眼差しが言っている。

 虚をつかれたヴァレリアは、直ぐに暫し考え込んだ。決意を決めた彼女は、何故か黒い笑みを貼り付けていた。

 「大丈夫です。私、ファブリツィオ様を陥れようとしたあの方を許せそうにありませんので、厳しく当たるかと思いますけど、宜しいでしょうか?」
 「……ほどほどで頼む」

 『はい、任せてください』と微笑むヴァレリアは怖かったと、後に、ファブリツィオとピエトロの二人が語っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

処理中です...