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16話
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六つの棟を繋げて建てられた王城、左上に位置する棟は国王や王妃、王太子の私室がある。自身の私室の居間で、マウリツィオは寛いでいた。
「以上がピエトロからの報告です」
「そう、ファブリツィオが自分で処理するっているんだね?まぁ、ヴァレリオが優勝したから、消化試合しても面白くないものね」
「はい」
「分かったよ。あまり出しゃばっても嫌われるしね。健闘を祈るって伝えておいて」
「承知致しました。それで、殿下の婚約者候補との交流ですが、」
侍従が言い切らぬ内に、マウリツィオはソファから立ち上がった。
「殿下?」
「オラツィオに今日の試合の報告をして来るよ」
「はっ?!今からですか?!お待ち下さい、殿下!!」
今回もマウリツィオに婚約者候補の令嬢たちと顔合わせさせる事が叶わず、侍従の嘆きがマウリツィオが居なくなった居間で響いた。
◇
ファブリツィオはピエトロに言われ、自身が甘い事が分かった。補佐候補から外せば、もう彼らと関わる事もないだろうと思っていたのだ。
生徒会に流れる空気が緊張で張り詰めていた。目の前で立っているアドルフォとサヴェリオはファブリツィオが王族にも関わらず、睨みつけてくる。
ファブリツィオは二人の悋気を受け流した。
「三番勝負だが、俺たちが二勝した。次の勝負をしても無駄だ。俺たちの勝利は変わらない」
何も反論も出来ないからか、二人から悔しそうな息が漏れただけだった。
「で、お前たちは、もう俺の補佐になる気もないだろう?」
不穏な空気に二人は眉を顰めた。
「もしかして、俺がお前たちを補佐から外さないと思っていたか?反旗翻す前からお前たちは補佐から外すつもりだった」
「何故です!今ならば補佐を外ずされる事は理解しました。しかし、その前からとはどういう事ですか?!」
サヴェリオは理由が分かっているのか、顔を青ざめさせているだけだった。
アドルフォも青ざめているが、二人はファブリツィオの事よりも、自身の父親に叱責される事を恐れている。
「本当に分からないのか?」
ファブリツィオが厳しい眼差しで二人を見つめる。今日は、カーティアは呼んではいない。二人にはある物を見せようと思っていたからだ。
アドルフォは思い当たる事がないのか、必死に頭の中で考えている様だ。だが、カーティアとの関係は、絶対に知られる事はないと思っているので、思いつかないのだろう。
サヴェリオは言いたくないのか、カーティアの事は口にせず、憮然とした表情を浮かべている。
「ピエトロ、俺に見せた物をこの二人にも見せてくれ」
「承知致しました」
ピエトロが映写機を準備している間、二人は不思議そうに眉を寄せていたが、サヴェリオは何を見せられるのか、気づいたらしい。サヴェリオはカーティアとの逢瀬を見られただけだと思っていた様だ。
徐々に状況を理解したのか、顔が青白くなっていく。
どうやら、サヴェリオは気づいたみたいだな。アドルフォはまだ、困惑している状態か。まだ気づかないとは、バレることはないと、余程、自信があるんだな。
証拠を押さえていない状況で、追い詰める様なことは誰もしないだろう。三番勝負で負けた今、こいつらは、もう彼女に捨てられるだろうしな。
「殿下、準備が整いました」
「分かった。では、始めてくれ」
「あ、ついでなので、ダメ押しに殿下にも見せていない物も混ぜておきました」
「そ、そうか」
物凄い笑みを浮かべるピエトロが怖い!
映写機で白い壁に映し出された映像を、食い入る様に見ていたアドルフォとサヴェリオ、そして、まだ見たことがなかった映像に、ファブリツィオはあんぐりと開いた口が塞がらず、呆れた声も出なかった。
アドルフォは全身を震わせ、拳を固く握り締めている。サヴェリオが小さく呟く。
「まるで娼婦だ」
『本当にそう思う』と、ファブリツィオは見たことがなかった映像を見て、改めて自身の愚かさを再認識した。
全ての映像を観終わったのか、映写機が小さい音を鳴らして止まった。
視線だけを動かしてアドルフォとサヴェリオの二人を見やる。
こいつらはどう出てくる?言い訳でもしようものなら、本気で切り捨てる!
「……もしかしたら、生徒会のメンバーとは、何かしら関係があるかと思っていましたが、関係があっても口付けまでかと、」
「俺ももしかして、と思ったことがあったが、カーティアに純粋な目で見つめられたら、聞けなくて……」
意外にも純粋なのは、サヴェリオだ。 彼女のことを、純粋だと思ってたのか。まぁ、俺もショックを受けた一人だけどな。
アドルフォが言葉を詰まらせ、同じ被害者のような視線を向けてきた。
「アドルフォ、何も言うな。お前の気持ちは分かった」
「殿下!」
「しかし、俺とお前は違う。俺も愚かだったが、お前は彼女を手に入れたことで、俺に優越感を抱いていただろう」
僅かに眉と瞳を見開いたアドルフォを見て、ファブリツィオの気持ちも固まった。
「もう、君たちのご両親には報告してあるよ。王族を馬鹿にするような者は補佐に出来ないと、こちらの映像も君たちの分だけ提出している。今回の反旗を翻した理由もご存知だ」
「「……っ」」
「君たちの父親から学園の卒業だけはさせて欲しいと言われているから、卒業までは猶予をやる。しかし、卒業後は王宮の士官も許されない。王都にも踏み入れるな。 卒業後の進路は自分で考えるんだな。優秀な君たちならやって行けるだろ」
二人共、身体を震わせて何も言えず俯いたので、何を考えているのか分からない。
「カーティアはどうなるんだ?」
卒業まで学園に居るんだから、知られるだろう。
ファブリツィオはサヴェリオの質問に答える事にした。
「彼女は生徒会へ戻す」
「はぁ?!どうしてです?!私たちは追放とも言える処分なのに!」
「生徒会へ戻すには事情があるが、きみたに教える義理はない」
二人は眉間に皺を寄せ、ファブリツィオに納得がいかないと、詰め寄ってきた。
俺を排斥したいが為に、こいつらを利用したのだろうけどな。裏で誰かが関わっている事も、全てをこいつらに言うことはない。
「お前たちに言わないのは、お前らが信用できないからだ」
「「……っ」」
自覚があるのか、アドルフォもサヴェリオも押し黙った。
「卒業までいるお前たちは、その内分かるから言うが、彼女をただ戻すことはしない」
二人は驚きを素直に顔に表し、ピエトロは『おや?』という表情をした。
「今までの生徒会は解体する。生徒会の全員が居なくなるんだ。後日改めて、生徒会選挙を行う。生徒たちの投票で生徒会のメンバーを決めるんだ」
「殿下、そうなるとストラーネオ侯爵令嬢が不利ですよ。クローチェ伯爵令嬢は人気がありますし」
「だからだ。詳しい話は後だ」
「はい、承知致しました」
訝しむ二人を無視して話を続ける。
「ピエトロの言う通り、彼女は生徒の間で人気があるからな、選挙に出れば当選するだろう。あ、お前たちは投票権はあるが、選挙には出られないからな」
憮然とした表情でアドルフォは『分かっていますよ』と、呟いた。
「勿論、俺も出る。で、ヴァレリアの話が出て思い出したが、アドルフォ」
「はい」
「お前の婚約者だが、破棄を望んでいる様だ。俺も人のことを言えないが、蔑ろにしていたから当然だな」
小さく笑ったアドルフォは呟く。
「……そうですね。でも、殿下は破棄していないではないですか」
「まぁ、幼い頃に空回りしながらも頑張ったお陰でな。後、ヴァレリアには誠心誠意、謝ったからな。アドルフォ、お前はどちらにしても謝った方がいい」
ピエトロが後ろで、ファブリツィオが謝っていたことを思い出したのか、うんうん頷く気配を感じる。
何でお前が知っている、ピエトロ!まさか、見てたのか。俺の情けない場面を!!
「お前たちへの報告は以上だ。今後、俺の周囲に現れることを禁ずる」
「「承知致しました、殿下」」
二人は肩を落として生徒会室から出て行った。直ぐにピエトロが先程の選挙のことを聞いて来 きた。
「選挙を行っても宜しいので?」
「ああ、そうした方が俺もクローチェ伯爵令嬢も生徒会へ入りやすいだろう?選挙で決まったことだし、皆がそう言うのならばってな」
「そうですね。生徒たちも堂々と投票できますしね。しかし、あの二人は大丈夫ですかね」
「大丈夫だろう。息子を助けることは許している。しかし、常識の範囲でだ」
「常識の範囲ですか……あの二人はもう、表舞台には出てこれませんね」
ピエトロがニヤリと意地悪な笑みを浮かべると嫌なことを思い出させた。
「殿下、私の言う通りに映像を見て良かったですね」
実はカーティアの映像を見る前、ファブリツィオはかなりの抵抗をした。無意識に今まで放置していたことに向き合わなければならないと、感じ取っていたのだろう。
「そうだな、映像の件については、兄上とピエトロに感謝しているよ」
「感謝のお言葉、ありがとうございます」
次は問題のカーティアに説明する番である。
◇
「殿下がお話があると聞き、参りましたが、生徒会のお話だったのですね」
それ以外何があると言うんだ?上目遣いで見つめてくるのは変わらないな。
「で、どうする?君たちは選挙に出るか?」
「殿下は出られるのでしょうか?」
「ああ、勿論だ。今回を機に、毎年、選挙をしてもいいのではないかと思っている」
「えっ、毎年ですか?」
「ああ、そうだ」
翌日の放課後、カーティアを呼び出し、話をした。アドルフォとサヴェリオが居ると思っていたのか、新生徒会のメンバーがいて、少なからず驚いていた。
特にヴァレリアがファブリツィオの側にいる事は驚いたようだ。
「ここに居る皆にも、ここに居ないアドルフォとサヴェリオにも伝えてある」
「……そうですか」
ヴァレリアの方に、カーティアの少し厳しい視線が向いた。まるでファブリツィオの隣は私だと言わんばかりである。
う~ん、俺を排斥したいなら、あんな表情はしないだろうけど、騙されない様にしよう。
カーティアに話をする時にヴァレリアも一緒にと望んだのは、自身がカーティアに騙されそうになることを防ぐ為だ。
ヴァレリアが側にいて良かった。映像を見た後からちょっとだけ彼女が苦手になったんだよな。
「で、君は出るか?ここに居る全員は選挙に出る。アドルフォとサヴェリオは出ないというか、三番勝負に負けたし、選挙に出る権利を失った。それを踏まえて君はどうする?」
「勿論、出ます!アドルフォとサヴェリオの為にも」
「……そうか、頑張ってくれ」
「はい!」
普通は断るんだがな、アドルフォとサヴェリオの選挙権を失っているのなら、自分もそうだと思わないのか。
カーティア以外の面々、ファブリツィオは勿論の事、ヴァレリア、ヴァレリオ、フラヴィオたちは呆れた表情をカーティアに向けた。
「分かった。では、詳細を書いた書類をヴァレリオから受け取ってくれ」
「はい、殿下」
にっこり微笑んだまま、立ち去ろうとしないカーティアを皆が不思議そうに見つめる。ヴァレリオが差し出した選挙の書類は受け取られず、どうしたものかとヴァレリオは困惑気味だ。
「どうした?ヴァレリオから書類を受け取って帰っていいぞ」
「あ、あの私も選挙のお手伝いを」
「いや、ここに居る者だけで大丈夫だ。 君は帰っていい」
「えっ」
帰ってもいいと言われ、カーティアは頬を引き攣らせた。一向に書類を受け取らないカーティアに郷をにやしたヴァレリオは、強引に書類を手渡した。
カーティアは複雑そうな表情を浮かべ、生徒会室を出て行った。カーティアが出て行った生徒会室に、複数の溜め息が吐き出された。
「カーティアにはびっくりだね。あそこまて考えなしでなかったはず」
フラヴィオが呆れた様な声を出し、カーティアが出て行った扉を見つめた。
「普通はクローチェ伯爵令嬢も選挙に出る権利がないとか、考えないのですかね」
「リオの言う通りだよね」
「そうですね、ラヴィ先輩」
いつの間にか二人は、『リオ』『ラヴィ先輩』と愛称で呼び合う仲になっている。
「おい、俺の未来の叔父に変なことを教えていないだろうな」
「変なことって何さ。ストラーネオ侯爵令嬢と名前が似ているから、年下の叔父のことをリオって呼ぶことにしたんだよ」
「……年下の叔父はやめて下さい。何故だか分かりませんが、居た堪れなくなりますから」
小さく笑うフラヴィオがファブリツィオに爆弾を投げ込む。
「殿下もストラーネオ侯爵令嬢のことを愛称で呼べばいいんじゃない?愛称を呼び合えば、仲も深まるよ」
「ばっ、何言ってる!そんなの、は」
ヴァレリアの方へ視線を移せば、下を向いて、哀愁を漂わせる婚約者がいた。
「あ、いや、呼びたくないとかじゃなくて」
「は、はい!分かってます、は、恥ずかしいですよね。大丈夫です」
あ、もしかしてヴァレリアは愛称で呼んで欲しいのか!全然、気付かなかった。だって、そんな素ぶり見せなかっただろう?!
息を吐きながら、フラヴィオが肩に手を置いた。
「殿下、令嬢に恥を欠かせては駄目ですよ」
フラヴィオの声には面白がっている音を滲ませている。
一つ咳払いをして覚悟を決めた。
「リア」
「はい、ファーベル様」
ヴァレリアも愛称で返して来た!躊躇いがなかったって事は、予め決めてたのか! もの凄く、可愛い!!
一枚上手のヴァレリアにノックアウトされたファブリツィオは、午後は仕事ならなかった。
側でピエトロが呆れ顔で書類捌きを手伝っていた。
「以上がピエトロからの報告です」
「そう、ファブリツィオが自分で処理するっているんだね?まぁ、ヴァレリオが優勝したから、消化試合しても面白くないものね」
「はい」
「分かったよ。あまり出しゃばっても嫌われるしね。健闘を祈るって伝えておいて」
「承知致しました。それで、殿下の婚約者候補との交流ですが、」
侍従が言い切らぬ内に、マウリツィオはソファから立ち上がった。
「殿下?」
「オラツィオに今日の試合の報告をして来るよ」
「はっ?!今からですか?!お待ち下さい、殿下!!」
今回もマウリツィオに婚約者候補の令嬢たちと顔合わせさせる事が叶わず、侍従の嘆きがマウリツィオが居なくなった居間で響いた。
◇
ファブリツィオはピエトロに言われ、自身が甘い事が分かった。補佐候補から外せば、もう彼らと関わる事もないだろうと思っていたのだ。
生徒会に流れる空気が緊張で張り詰めていた。目の前で立っているアドルフォとサヴェリオはファブリツィオが王族にも関わらず、睨みつけてくる。
ファブリツィオは二人の悋気を受け流した。
「三番勝負だが、俺たちが二勝した。次の勝負をしても無駄だ。俺たちの勝利は変わらない」
何も反論も出来ないからか、二人から悔しそうな息が漏れただけだった。
「で、お前たちは、もう俺の補佐になる気もないだろう?」
不穏な空気に二人は眉を顰めた。
「もしかして、俺がお前たちを補佐から外さないと思っていたか?反旗翻す前からお前たちは補佐から外すつもりだった」
「何故です!今ならば補佐を外ずされる事は理解しました。しかし、その前からとはどういう事ですか?!」
サヴェリオは理由が分かっているのか、顔を青ざめさせているだけだった。
アドルフォも青ざめているが、二人はファブリツィオの事よりも、自身の父親に叱責される事を恐れている。
「本当に分からないのか?」
ファブリツィオが厳しい眼差しで二人を見つめる。今日は、カーティアは呼んではいない。二人にはある物を見せようと思っていたからだ。
アドルフォは思い当たる事がないのか、必死に頭の中で考えている様だ。だが、カーティアとの関係は、絶対に知られる事はないと思っているので、思いつかないのだろう。
サヴェリオは言いたくないのか、カーティアの事は口にせず、憮然とした表情を浮かべている。
「ピエトロ、俺に見せた物をこの二人にも見せてくれ」
「承知致しました」
ピエトロが映写機を準備している間、二人は不思議そうに眉を寄せていたが、サヴェリオは何を見せられるのか、気づいたらしい。サヴェリオはカーティアとの逢瀬を見られただけだと思っていた様だ。
徐々に状況を理解したのか、顔が青白くなっていく。
どうやら、サヴェリオは気づいたみたいだな。アドルフォはまだ、困惑している状態か。まだ気づかないとは、バレることはないと、余程、自信があるんだな。
証拠を押さえていない状況で、追い詰める様なことは誰もしないだろう。三番勝負で負けた今、こいつらは、もう彼女に捨てられるだろうしな。
「殿下、準備が整いました」
「分かった。では、始めてくれ」
「あ、ついでなので、ダメ押しに殿下にも見せていない物も混ぜておきました」
「そ、そうか」
物凄い笑みを浮かべるピエトロが怖い!
映写機で白い壁に映し出された映像を、食い入る様に見ていたアドルフォとサヴェリオ、そして、まだ見たことがなかった映像に、ファブリツィオはあんぐりと開いた口が塞がらず、呆れた声も出なかった。
アドルフォは全身を震わせ、拳を固く握り締めている。サヴェリオが小さく呟く。
「まるで娼婦だ」
『本当にそう思う』と、ファブリツィオは見たことがなかった映像を見て、改めて自身の愚かさを再認識した。
全ての映像を観終わったのか、映写機が小さい音を鳴らして止まった。
視線だけを動かしてアドルフォとサヴェリオの二人を見やる。
こいつらはどう出てくる?言い訳でもしようものなら、本気で切り捨てる!
「……もしかしたら、生徒会のメンバーとは、何かしら関係があるかと思っていましたが、関係があっても口付けまでかと、」
「俺ももしかして、と思ったことがあったが、カーティアに純粋な目で見つめられたら、聞けなくて……」
意外にも純粋なのは、サヴェリオだ。 彼女のことを、純粋だと思ってたのか。まぁ、俺もショックを受けた一人だけどな。
アドルフォが言葉を詰まらせ、同じ被害者のような視線を向けてきた。
「アドルフォ、何も言うな。お前の気持ちは分かった」
「殿下!」
「しかし、俺とお前は違う。俺も愚かだったが、お前は彼女を手に入れたことで、俺に優越感を抱いていただろう」
僅かに眉と瞳を見開いたアドルフォを見て、ファブリツィオの気持ちも固まった。
「もう、君たちのご両親には報告してあるよ。王族を馬鹿にするような者は補佐に出来ないと、こちらの映像も君たちの分だけ提出している。今回の反旗を翻した理由もご存知だ」
「「……っ」」
「君たちの父親から学園の卒業だけはさせて欲しいと言われているから、卒業までは猶予をやる。しかし、卒業後は王宮の士官も許されない。王都にも踏み入れるな。 卒業後の進路は自分で考えるんだな。優秀な君たちならやって行けるだろ」
二人共、身体を震わせて何も言えず俯いたので、何を考えているのか分からない。
「カーティアはどうなるんだ?」
卒業まで学園に居るんだから、知られるだろう。
ファブリツィオはサヴェリオの質問に答える事にした。
「彼女は生徒会へ戻す」
「はぁ?!どうしてです?!私たちは追放とも言える処分なのに!」
「生徒会へ戻すには事情があるが、きみたに教える義理はない」
二人は眉間に皺を寄せ、ファブリツィオに納得がいかないと、詰め寄ってきた。
俺を排斥したいが為に、こいつらを利用したのだろうけどな。裏で誰かが関わっている事も、全てをこいつらに言うことはない。
「お前たちに言わないのは、お前らが信用できないからだ」
「「……っ」」
自覚があるのか、アドルフォもサヴェリオも押し黙った。
「卒業までいるお前たちは、その内分かるから言うが、彼女をただ戻すことはしない」
二人は驚きを素直に顔に表し、ピエトロは『おや?』という表情をした。
「今までの生徒会は解体する。生徒会の全員が居なくなるんだ。後日改めて、生徒会選挙を行う。生徒たちの投票で生徒会のメンバーを決めるんだ」
「殿下、そうなるとストラーネオ侯爵令嬢が不利ですよ。クローチェ伯爵令嬢は人気がありますし」
「だからだ。詳しい話は後だ」
「はい、承知致しました」
訝しむ二人を無視して話を続ける。
「ピエトロの言う通り、彼女は生徒の間で人気があるからな、選挙に出れば当選するだろう。あ、お前たちは投票権はあるが、選挙には出られないからな」
憮然とした表情でアドルフォは『分かっていますよ』と、呟いた。
「勿論、俺も出る。で、ヴァレリアの話が出て思い出したが、アドルフォ」
「はい」
「お前の婚約者だが、破棄を望んでいる様だ。俺も人のことを言えないが、蔑ろにしていたから当然だな」
小さく笑ったアドルフォは呟く。
「……そうですね。でも、殿下は破棄していないではないですか」
「まぁ、幼い頃に空回りしながらも頑張ったお陰でな。後、ヴァレリアには誠心誠意、謝ったからな。アドルフォ、お前はどちらにしても謝った方がいい」
ピエトロが後ろで、ファブリツィオが謝っていたことを思い出したのか、うんうん頷く気配を感じる。
何でお前が知っている、ピエトロ!まさか、見てたのか。俺の情けない場面を!!
「お前たちへの報告は以上だ。今後、俺の周囲に現れることを禁ずる」
「「承知致しました、殿下」」
二人は肩を落として生徒会室から出て行った。直ぐにピエトロが先程の選挙のことを聞いて来 きた。
「選挙を行っても宜しいので?」
「ああ、そうした方が俺もクローチェ伯爵令嬢も生徒会へ入りやすいだろう?選挙で決まったことだし、皆がそう言うのならばってな」
「そうですね。生徒たちも堂々と投票できますしね。しかし、あの二人は大丈夫ですかね」
「大丈夫だろう。息子を助けることは許している。しかし、常識の範囲でだ」
「常識の範囲ですか……あの二人はもう、表舞台には出てこれませんね」
ピエトロがニヤリと意地悪な笑みを浮かべると嫌なことを思い出させた。
「殿下、私の言う通りに映像を見て良かったですね」
実はカーティアの映像を見る前、ファブリツィオはかなりの抵抗をした。無意識に今まで放置していたことに向き合わなければならないと、感じ取っていたのだろう。
「そうだな、映像の件については、兄上とピエトロに感謝しているよ」
「感謝のお言葉、ありがとうございます」
次は問題のカーティアに説明する番である。
◇
「殿下がお話があると聞き、参りましたが、生徒会のお話だったのですね」
それ以外何があると言うんだ?上目遣いで見つめてくるのは変わらないな。
「で、どうする?君たちは選挙に出るか?」
「殿下は出られるのでしょうか?」
「ああ、勿論だ。今回を機に、毎年、選挙をしてもいいのではないかと思っている」
「えっ、毎年ですか?」
「ああ、そうだ」
翌日の放課後、カーティアを呼び出し、話をした。アドルフォとサヴェリオが居ると思っていたのか、新生徒会のメンバーがいて、少なからず驚いていた。
特にヴァレリアがファブリツィオの側にいる事は驚いたようだ。
「ここに居る皆にも、ここに居ないアドルフォとサヴェリオにも伝えてある」
「……そうですか」
ヴァレリアの方に、カーティアの少し厳しい視線が向いた。まるでファブリツィオの隣は私だと言わんばかりである。
う~ん、俺を排斥したいなら、あんな表情はしないだろうけど、騙されない様にしよう。
カーティアに話をする時にヴァレリアも一緒にと望んだのは、自身がカーティアに騙されそうになることを防ぐ為だ。
ヴァレリアが側にいて良かった。映像を見た後からちょっとだけ彼女が苦手になったんだよな。
「で、君は出るか?ここに居る全員は選挙に出る。アドルフォとサヴェリオは出ないというか、三番勝負に負けたし、選挙に出る権利を失った。それを踏まえて君はどうする?」
「勿論、出ます!アドルフォとサヴェリオの為にも」
「……そうか、頑張ってくれ」
「はい!」
普通は断るんだがな、アドルフォとサヴェリオの選挙権を失っているのなら、自分もそうだと思わないのか。
カーティア以外の面々、ファブリツィオは勿論の事、ヴァレリア、ヴァレリオ、フラヴィオたちは呆れた表情をカーティアに向けた。
「分かった。では、詳細を書いた書類をヴァレリオから受け取ってくれ」
「はい、殿下」
にっこり微笑んだまま、立ち去ろうとしないカーティアを皆が不思議そうに見つめる。ヴァレリオが差し出した選挙の書類は受け取られず、どうしたものかとヴァレリオは困惑気味だ。
「どうした?ヴァレリオから書類を受け取って帰っていいぞ」
「あ、あの私も選挙のお手伝いを」
「いや、ここに居る者だけで大丈夫だ。 君は帰っていい」
「えっ」
帰ってもいいと言われ、カーティアは頬を引き攣らせた。一向に書類を受け取らないカーティアに郷をにやしたヴァレリオは、強引に書類を手渡した。
カーティアは複雑そうな表情を浮かべ、生徒会室を出て行った。カーティアが出て行った生徒会室に、複数の溜め息が吐き出された。
「カーティアにはびっくりだね。あそこまて考えなしでなかったはず」
フラヴィオが呆れた様な声を出し、カーティアが出て行った扉を見つめた。
「普通はクローチェ伯爵令嬢も選挙に出る権利がないとか、考えないのですかね」
「リオの言う通りだよね」
「そうですね、ラヴィ先輩」
いつの間にか二人は、『リオ』『ラヴィ先輩』と愛称で呼び合う仲になっている。
「おい、俺の未来の叔父に変なことを教えていないだろうな」
「変なことって何さ。ストラーネオ侯爵令嬢と名前が似ているから、年下の叔父のことをリオって呼ぶことにしたんだよ」
「……年下の叔父はやめて下さい。何故だか分かりませんが、居た堪れなくなりますから」
小さく笑うフラヴィオがファブリツィオに爆弾を投げ込む。
「殿下もストラーネオ侯爵令嬢のことを愛称で呼べばいいんじゃない?愛称を呼び合えば、仲も深まるよ」
「ばっ、何言ってる!そんなの、は」
ヴァレリアの方へ視線を移せば、下を向いて、哀愁を漂わせる婚約者がいた。
「あ、いや、呼びたくないとかじゃなくて」
「は、はい!分かってます、は、恥ずかしいですよね。大丈夫です」
あ、もしかしてヴァレリアは愛称で呼んで欲しいのか!全然、気付かなかった。だって、そんな素ぶり見せなかっただろう?!
息を吐きながら、フラヴィオが肩に手を置いた。
「殿下、令嬢に恥を欠かせては駄目ですよ」
フラヴィオの声には面白がっている音を滲ませている。
一つ咳払いをして覚悟を決めた。
「リア」
「はい、ファーベル様」
ヴァレリアも愛称で返して来た!躊躇いがなかったって事は、予め決めてたのか! もの凄く、可愛い!!
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リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
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