脳内お花畑から帰還したダメ王子の不器用な愛し方

伊織愁

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20話

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 当選発表が終わり、終業式は無事に終わった。夕方からダンスパーティーが行われる。新生徒会の最初の仕事は、ダンスパーティーの準備だった。

 選挙で当選出来なかった生徒たちに、新しく編成する実行委員に誘うと、快く引き受けてくれた。彼らは真面目に学園運営をしたい生徒たちなので、サヴェリオみたいにサボったりはしないだろう。

 新生徒会と新実行委員の全員で、学園のカフェテリアを飾り付け、ダンス曲を演奏してくれる楽団の世話をした。

 着飾ったヴァレリアはとても綺麗だった。大人しめのドレスだったが、ヴァレリアの内面を映したような純白のドレスはとても似合っていた。選挙の勝利を見越してのドレスだろう。

 「お針子から聞いてはいたが、とても綺麗だ、リア」
 「ありがとうございます……ファーベル様っ」

 小さくファブリツィオの愛称を呟いた声は、ダンスの相手をするファブリツィオにしか聞こえなかっただろう。

 ヴァレリアとのファーストダンスを終えたファブリツィオは、たちまち令嬢たちに囲まれた。勿論、カーティアもいて、ファブリツィオの目の前まで来ていた。

 「ファブリツィオ殿下、私とも踊って下さい」
 「クローチェ伯爵令嬢か。そうだな、今夜は新生徒会と新実行委員の令嬢と踊ろう。しかし、ラストダンスは我が婚約者と踊るので遠慮してくれ」

 ファブリツィオは存外にカーティアの他の令嬢とも踊ると宣言した。一瞬だけ、口元を歪ませたカーティアは、直ぐ淑女の仮面を被った。

 「殿下、私、絶対に貴方を副会長として支えて見せますわ」

 少しだけ眉を上げたファブリツィオだが、カーティアの宣言に特段何の感情も湧いてこ来なかった。彼女の真意が分からず、ファブリツィオは器用に片眉を上げる。

 いや、俺の排斥を狙っているのだろう? まぁ、どんな罠を仕掛けて来るのか楽しみだな。

 「無理しない程度で頼むよ。副会長は二人いるんだから」

 カーティアの後はアリーチェと踊ったが、無表情で何を考えているのか分からず、始終、無言で終えた。後は新実行委員の令嬢たちと踊り、旧実行委員の令嬢とも、今までお疲れ様という意味も込めて踊った。

 後はラストダンスをヴァレリアと踊るだけだ。カフェテリアにヴァレリアの姿はなく、ファブリツィオは中庭に出た。

 ヴァレリアは奥の中庭にいた。ベンチで所在なげに座っていた。12月の下旬なので、二人から白い息が吐き出される。

 「リア」
 「ファ……」

 周囲を見回したヴァレリアは、眉尻を下げて微笑んだ。

 「ファーベル様」
 「リア、迎えに来た。ラストダンスを踊ろう」
 「はい」

 少しだけ寂しげな笑みを浮かべたヴァレリアに気づき、ファブリツィオの眉尻も下がった。思わず、ヴァレリアを抱きしめていた。

 いつから中庭にいたのだろうか、ヴァレリアの身体は冷え切っていた。温めるつもりで、ヴァレリアの背中を摩る。

 「……な、ファーベル様」
 「彼女たちと踊ったのは友好の証だから、他意はない」

 背中に手を回してきたヴァレリアが呟く。

 「はい、分かっています。少し心配してしまっただけです」

 彼女と踊って、俺の気持ちがぶり返すのではないかと、心配したのか。

 細い腰を抱きしめていた腕に力を入れる。

 「大丈夫だ、クローチェ伯爵令嬢の事は、もう何とも思っていないから」

 顔を上げたヴァレリアの眼差しには、真意を問う様な色が混ざっていた。 

 自然とファブリツィオの視線がヴァレリアの唇に移動し、息を呑む。

 ヴァレリアと視線が合うと、顔に血が上り、恥ずかしさを隠す為、視線を逸らす。

 「本当だ。その証拠に、クローチェ伯爵令嬢から同じ様に見上げられても、口付けしたいとか思わないからな」

 自分で言っておいて、ファブリツィオは更に顔を真っ赤に染め、耳まで真っ赤になる。

 つられてヴァレリアの顔も真っ赤に染まる。

 いや、今は口付けをするタイミングじゃない。口付けで誤魔化したみたいになるじゃないか!

 咳払いをしたファブリツィオは、残念な思いを抱えながら、ゆっくりとヴァレリアを離した。吐き出された白い息が名残惜しそうに周囲で漂い霧散する。

 「行こう、ラストダンスが終わってしまう。それに踊れば身体も温まる」
 「はい」

 消え入る様に返事を返して来たヴァレリアの手を取り、楽団のダンス曲が流れるカフェテリアへと戻って行った。

 周囲で人払いをしながら、一部始終を見てしまったピエトロや、近衛たちは内心で呟く。

 『惜しいです、殿下!』と。近衛たちの中で、『そこいってもいいでしょう!』という意見はピエトロに却下された。

 ◇

 終業式が終わり、短い冬休みを過ごしていた。本日はファブリツィオとヴァレリアのコンサートデートである。今日を一日空ける為、ファブリツィオは仕事を詰めに詰めて片付けまくり、馬車馬のように働いた。

 「大丈夫ですか?殿下」
 「大丈夫だ、大方仕事は終えた。明日から学園が始まる。今日しかヴァレリアと一日、一緒にいられない」

 化粧で目の下の隈を隠し、フラフラと身体が揺れ、青ざめている。

 死相が出ているファブリツィオを見て、ピエトロは三十分でも眠る事を提案した。

 「分かった、少しだけ眠る。時間になったら起こしてくれ」
 「はい、ごゆっくりお休み下さい」

 居間の奥にある寝室に主人を押し込み、普段は綺麗に片付けられているファブリツィオの居間を振り返った。

 「本来、居間は寛ぐ空間なんですがね……これ、私が片付けるんですか?」

 ピエトロが振り返った視線の先には、見事に書類が散らばり、資料が山積みになり、崩れそうになっている第二の執務室と化した居間の惨状があった。

 しかし、部外者には見られてはいけない書類が散乱している為、ピエトロは泣く泣く散らかった居間を片付けるのだった。

 ◇

 早朝に起き出したヴァレリアは、屋敷のメイドから午後の公演に合わせ、支度を整えていた。

 「オルガ、少しだけ大人っぽくない?」
 「そんな事ないですよ。お嬢様の容姿に、お色とデザインも似合っております」

 両肩を出したドレスを着る事が無かったヴァレリアは、姿見に映る少しだけ背伸びしたドレス姿に、頬を染めてはにかんだ。

 ブルーのドレスには、配置を考えた刺繍が施され、胸元には差し色に、琥珀色の生地で作られた薔薇が縫い付けられていた。

 琥珀色はファブリツィオの髪の色と、ヴァレリアの瞳の色を表している。

 いい笑顔を浮かべるオルガを、ヴァレリアは信じる事にした。簡単なサンドイッチを摘み、支度を終えた時は、ファブリツィオが迎えに来る時間になっていた。

 ◇

 一方、ギリギリに起き出したファブリツィオは、とても焦っていた。

 「仕事を切り詰めたのが、見事に裏目に出ましたね」
 「……っ皆まで言うな、分かっている。直ぐに用意するから、リアの屋敷に着く時間を連絡して置いてくれ」
 「承知致しました」
 「あ、後、居間を片付けてくれたんだな、助かった。ありがとう」
 「いえ、私の仕事ですからね、お気になさらず。では、私は先触れを出して参ります」
 「ああ、頼む」

 入浴を手早く済ませ、軽食を喉に流し込み、足早に馬車へと乗り込んだ。 

 徐々に近づくヴァレリアの屋敷。 

 馬車の窓から見慣れた道のりの景色に、ファブリツィオの胸が高鳴っていく。

 もう直ぐ、リアに会える。 終業式のダンスパーティーから忙しくてリアには会えていないからな。ダンスパーティーの時のリアも綺麗だったけど、今日も絶対に綺麗だ。

 ニヤニヤと思い出しては笑うファブリツィオを、向かい座るピエトロが半眼で自身を見ている事に気づいていない。 

 寧ろ、ピエトロの存在を忘れていそうだ。

 「殿下、気持ち悪いですから、ニヤニヤするのはおやめ下さい」
 「ん? ピエトロ、いたのか」
 「それはいますよ、私は貴方の従者なんですから」
 「そうか」

 デートだと言っても二人っきりのデートは難しい。王族なので沢山の護衛が着く。 ただ、気を遣って離れた位置から着いてくる。一部始終を見られるのは恥ずかしいが、彼らも仕事なので仕方がない。

 「いつか、本当の意味での二人っきりでデートがしたい」
 「無理でしょうね」

 ピエトロが速攻でファブリツィオの夢を砕く。むっとした表情を浮かべた所で、ヴァレリアの屋敷へ着いた。

 「何とか、間に合ったな」
 「ええ、次からは無理しない程度で、休みを取って下さい」
 「分かった」

 屋敷の玄関ホールに足を踏み入れると、ヴァレリアの父であるストラーネオ侯爵が出迎えてくれた。

 「侯爵、出迎えありがとう」
 
 『元気か?』と聞こうとしたが、侯爵のあまりのやつれた様子に、ファブリツィオはかける言葉を無くして黙り込んだ。

 侯爵がやつれている理由は一つしかない。未だに兄であるマウリツィオが姿を現さないからだ。そして、ファブリツィオは何とか言葉を紡ぎ出した。

 「兄上が迷惑を掛けてすまないっ」
 「いえ、ファブリツィオ殿下の所為ではありませんよ。寧ろ、今日の為に頑張って頂きましたからね」
 「うむ、しかし、浮かれてコンサートデートなどしている場合ではなかったな」
 「殿下、娘は今日の日をとても楽しみしていましたから、連れて行って上げて下さい。あの子も真面目なので、補佐が出来ないと沈んでいましたがね」
 「ああ、それはリアが必要無いのではなく、人が足りているからでだなっ」

 ファブリツィオが慌てた様に言い訳をすると、侯爵はおかしそうに笑った。

 「笑って申し訳ありません。挨拶が遅れました。ファブリツィオ殿下にご挨拶申し上げます。殿下に置かれましては、ご機嫌麗しく、ご健勝には……見えませんな」

 侯爵も、化粧で隠したファブリツィオの目の下の隈に気づいた様で、互いに苦笑を零した。

 玄関ホールにある中央階段を降りて来るヴァレリアの足音で、二人は振り返った。

 「リア、綺麗だ。今日のコンセンプトは、少しだけ大人の装いかな?」
 「揶揄わないで下さい、ファーベル様」
 
 ヴァレリアから愛称を呼ばれ、ファブリツィオの表情が愛しさを滲ませる。

 「今日は愛称を呼んでくれるんだな」
 「はい、今日はプライベートですからっ、でも、公共の場ではファブリツィオ様と呼びます」
 「そうか」

 嬉しいそうに笑うファブリツィオに、ヴァレリアもつられて笑みを見せる。

 イチャイチャモードに入りそうな二人の雰囲気に耐えかねた侯爵が咳払いをして、甘いムードを霧散させた。

 「殿下、ヴァレリア。もう出ないと公演に間に合わないよ」
 「そうだな。行こう、リア。では、侯爵、ご息女を暫し預かる」
 「はい、ご随意に。ヴァレリア、粗相のない様に」
 「はい、お父様。行って参ります」

 馬車へ乗り込んだ二人は、横並びに座り、事前にピエトロが手に入れていたパンフレットを眺めた。

 「楽しみです。隣国では有名な楽団だそうで」
 「うん、そうらしいな。我が国では初めての公演だからな。父上が気に入れば、次の舞踏会に呼ばれるかもな」
 「ですね。陛下はもう聴きに行かれたのですか?」
 「いや、まだだと思う。行くなら王妃と行くだろうし、今は王妃がピリピリしているだろから、誘い難いだろうな」
 「そうですか」
 「そう言えば、君の母上はいなかったが」
 「母は、今日は朝からお茶会へ出かけているんです」
 「そうか、相変わらず忙しいんだな」
 「ええ、私も家を継げば、行かなくては、」

 膝の上へ置かれたヴァレリアの細い手にそっと自身の手を重ねる。

 「大丈夫だ。無理しなくていい。君が強くなりたい事は分かっているが、トラウマが酷くなるのは心配だ」

 小さく笑うヴァレリアは顔を横に振った。

 「来年は最終学年になります。卒業論文などで忙しくなりますし、今の内に出来る事はしたいです」
 「そうか」
 「はい」

 相変わらず真面目だな、リアは。でも、そうか、卒業か。まだ、二年に進級したばっかりだからな。ちゃんと考えてなかった。卒業後は、やっぱりリアとの婚姻だよな。その前に、俺の排斥を狙っている奴を捕まえる。リアへのプロポーズは全て解決した後だな。

 色々とぐるぐる考え事をしていたら、王都にある芸術劇場の門を潜り、馬車止めに辿り着いていた。

 「殿下、着きましたよ」

 何故か、冷めた様な眼差しでピエトロから見つめられた。暫し気まずい沈黙が流れたが、御者が扉の向こうから声を掛けてくれたので、助かった。

 「ああ、開けてくれ。行こう、リア」
 「はい、ファーベル様」
 
 馬車を降りたファブリツィオとヴァレリア、ピエトロの三人は人だかりの中へ入って行った。

 「流石に人気の楽団だ。人が多いな」
 「殿下、私が前へ歩きますので離れず着いて来て下さい」
 「分かった」
 
 ファブリツィオはヴァレリアを振り返り、腕を差し出す。

 「逸れたら大変だろう」
 「はい、ありがとうございます」

 三人の前には、変装した近衛騎士がおり、安全な道を先導してくれる。背後にも変装した近衛が着いてきており、不審者を気づかれない様に排除している。

 王族が出掛けるのも一苦労である。

 護衛騎士に見守られ、ファブリツィオたちは難なく劇場の入り口に辿り着いた。

 「ファブリツィオ殿下、本日はお越し下さり、ありがとうございます。直ぐにお席へご案内致します」
 「ああ、頼む」

 次は劇場の支配人に先導され、二人はロイヤル席へと案内された。王族のファブリツィオは目立ち、直ぐに人だかりが出来ていた。

 人だかりの中で誰かが叫んでいた様だが、ファブリツィオとヴァレリアは気づきかずに、階段の上へ見えなくなった。

 「へぇ~、仲良くコンサートデートとかするんだな。仲違いしているなら、入る隙があると思ったんだけど」
 「ちょっと、何をぶつぶつ言っているのよ!早く席へ行くわよ。アドルフォったら、行かないとか言って!公爵家の席に入れなかったら、ロイヤル席を窺えないじゃない!貴方がいい席を取れるって言ったから着いて来たのよ!しっかりと案内しなさい」

 やれやれと溜め息を吐いた少年は、カーティアをエスコートし、自身が取った席へ向かった。
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