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第六十四話 『帝国を脱出』
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東西南北に散った優斗たちは、手早くミノタウロスを倒して行った。
「華、ポテポテたちを使って騎士団の方、足止め出来ない?」
「分かったわ。 やってみる」
学生鞄に入れていた隠れ家の魔法陣を取り出して地面に置き、序でに鞄の中で待機していたポテポテが3体程が出て来た。
彼らポテポテは『あいっ!』、と丸い手を上げて挨拶をして来た。 ちょっとだけ、うちの子たちは可愛いと、親バカな感情が湧き上がる。
「皆、他の子を呼んで来て。 そうね、20人くらいいたら大丈夫かな」
『承知、致しました、マスター。 ギギッ!』
ポテポテが頷いた瞬間、隠れ家の魔法陣から、大量のポテポテが現れた。
序でに優斗の脳内の立体地図にも、『ポテポテ』と吹き出しを指したポテポテが、大量に現れた。
立体地図は大量の表示で大渋滞である。
ポテポテは華の魔力で作られている為、立体地図に表示されている。
ポテポテは華だと認識されている様だ。
「この数だと、圧巻だなっ……」
大量の歪な三つの穴が空いている顔を向けられ、少しだけ怯んでしまう。
先程は3体だったので、可愛いと思ってしまったが、20体以上いると、少しだけ不磨気味だ。
華は製作者なので、可愛いとしか思わない様だ。 大きめの丸い薄茶色の目がまなじりを下げている。
「じゃ、皆は帝国騎士団を足止めして、森へ近づけない様にしてほしいの」
『了解しました、マスター、ギギッ!』
「お、少しだけ話し方が滑らかになった?」
「うん、体調が戻った後、メンテをしたの。 でも、充分ではないよね」
「そうたな、まだちょっとだけ片言だしな」
「……長い年月が経ったからかな?」
華の指示に、ポテポテたちは三々五々になり森の中へ散って行く様子を眺めた。
『あの子達は中々優秀だから大丈夫だと思うよ。 他の皆は、もう討伐を始めたよ』
緑の匂いが烟る中、大量の鳥たちが空高く飛び上がっていく。 四方から魔法の騒音と土煙、ミノタウロスの咆哮が森の中で響いた。
トプンと耳元で水音が鳴ると、四方で魔力がぶつかり合う感覚を感じる。
脳内にモニター画面が三つ現れ、瑠衣と仁奈、カークスとアイギ、エウロスとキュベレーが各々、ミノタウロスの討伐している様子が映し出された。
立体地図ではミノタウロスが足止めされ、数を減らして行く。
監視スキルの範囲内で起こっている事は、華を中心とした範囲だが、全て映し出す事が出来る。
監視スキルの言う通り、帝国騎士団を迎え撃ったポテポテたちは、騎士団員を翻弄させていた。
皆を映しているモニター画面を端に置き、優斗もミノタウロスの討伐に参戦する。
「よし、華、行くよ。 結界を展開して」
「うんっ」
「大丈夫だよ、ハナ。 僕も居るからね」
片目を瞑ったフィルは、軽い弾けた様な音をさせて、羽根の生えた銀色のスライムへ姿を変えた。
弾力のある物が頭の上に乗った事を確認し、優斗は走り出しだ。
『ハナにより、虫除け結界が発動されました。 虫除け結界の強化を最大値まで上げます』
華の前を走る優斗も結界の中に自動的に入る。 結界が、ミノタウロスとの戦闘に巻き込まれまいと、逃げて来た小物の魔物を弾き飛ばしていく。
いつ見ても凄いな、と感心してしまう。
ミノタウロスも移動しているので、程なくして優斗と華のノルマであるミノタウロスの群れとかち合った。
薄茶色の瞳に魔力が宿り、取り出した木製短刀二本に魔力を流して強化する。
トプンと耳元で水音が落ちる。
周囲に自身の魔力を流し、空中に含まれる水分を捕まえる。 魔力を含んだ水分が、ミノタウロスを足止めする。
ミノタウロスの足元から、澄んだ音を鳴らして凍りつく。 数体のミノタウロスが動きを止め、一体が優斗に気づき、大斧を振り上げた。
一瞬で銀色の足跡がミノタウロスまで伸びていき、足跡を踏んで駆け上がった。
振り下ろされた大斧は、優斗と華を避け、草が生い茂る草地に深く突き刺さった。
足跡を駆け上がった優斗は、ミノタウロスの頭頂部へ降り立ち、氷を纏わせた木製短刀を突き刺す。
『全てを凍り尽くせっ!!』
優斗から冷気が吐き出され、数体のミノタウロスと周囲の草地や木々が音を立てて凍りつく。
優斗から白い息が吐き出される。
ミノタウロスの瞳から生命の光が消え、凍結は華の周囲で張られた結界まで広がった。
空中で輝く銀色の足跡を踏んで駆け下り、結界の中へ飛び降りる。
「ここにはもう居ないな。 次に行こう」
「うん」
脳内の立体地図でミノタウロスの位置を確認して討伐しながら移動する。
優斗と華、フィルの三人は、森の奥へ入って行った。
◇
森に異常な魔力の発動があったと知らせを聞き、帝国の騎士団長は調査員を森に向かわせた。
今朝は街で大勢の破落戸が暴れていると連絡が騎士団に入り、街の憲兵では対応できず、騎士団が出張った。
騎士団を大勢引き連れて出張ったが、破落戸と揉めていた冒険者を逃してしまった。 上への報告に何と書こうかと思っていたら、次は森で何かが起きていると言う。
騎士団長から、深い溜め息が吐き出された。
街から戻って来た騎士団長は、執務室の自身の机で、丈夫に作られた椅子の背もたれに体重を預けた。
脳裏に、先程会った若い冒険者たちを思い浮かべる。 まだ10代だろうと思われる少年少女たちと、20代を超えているであろう男女。 皆が美男美女だった。
(あの美貌なら変態貴族が喜ぶだろうな。 破落戸どもは捕まえて奴隷にして、変態貴族にでも売り付けるつもりだったのか……)
真ん中でお辞儀をした少年を思い出す。
年上の男女は、二人の少年少女の守りを固めていた。 普通、何人かは不細工がいるはずだ。 不細工ではなくとも平均点な顔がいるはずだ。 皆が美男美女とは、反対に奇妙だ。
騎士団長の脳裏にある種族が思い出された。 想像した直後、顔を振って自身の考えを否定した。
(まさか、な。 エルフやダークエルフは里から出て来ないだろう。 出てくれば、変態と欲深い人間の格好の餌食だ)
執務室の扉がノックされ、森へ行っていた調査員が戻り、報告を持って来た。
団員は、敬礼をした後、両足を揃えて直立不動の姿勢を取る。
「報告します。 森での魔力発動は、ミノタウロスが召喚された事が原因です。 森でミノタウロスの群れが暴れています」
「はぁ?! ミノタウロスの群れが森で暴れているのか……」
「はい」
団員の報告に、騎士団長は瞳を見開いた。
疲れているであろう騎士団長に紅茶を淹れていた秘書官も、あまりの事に口を開けて手を止めた。
報告をして来た下っ端の騎士団員が青ざめ、ごくりと喉を鳴らす。
「直ぐに討伐隊を編成するっ! 休暇中の騎士団員も収集しろっ!」
「「「「はいっ!」」」」
森で大量のミノタウロスが暴れていると報告が上がり、帝国騎士団長は直ぐ様、討伐隊を編成して森へ向かった。
緊張と悲壮感が漂う騎士を連れ、森へ向かった騎士団長は、華の放ったポテポテたちに翻弄されて森に近づけなかった。
有耶無耶の内にミノタウロスが討伐された事を知り、帝国騎士団が唖然としたのは言うまでもない。
森の中で、討伐されたミノタウロスと、大量の凍りついたミノタウロス、地面には大量の魔法石と砕け散った氷漬けの欠片が転がっている。
森が破壊され、討伐後の光景は、帝国騎士団に畏怖の念を抱かせたという。
◇
最後の一体が凍りつき草地に沈む。
「この量、最早、ただの嫌がらせだなっ」
『本当にそうだねっ』
草が生い茂る地面に倒れ、ミノタウロスが砕け散る音が森の中で響き、凍りついたミノタウロスの肉塊が草地で転がる。
コトリと音を鳴らして魔法石が落ちる。
「ユウト、まほうせきがでたよっ!」
フィルの弾んだ声が落ちて来る。
スライム型のフィルが舌を伸ばして、魔法石を拾おうとしている所で止める。
「駄目だよ、フィル。 魔法石はそのままにしておいて」
「どうして?」
優斗に止められてフィルは舌を引っ込めたが、不思議そうな声が落ちて来る。
「帝国騎士団が調べに来るし、後片付けは騎士団に押し付けるつもりだから、魔法石は置いていく」
「わかった」
少しだけ、不満そうだったが、フィルは優斗の指示に従ってくれた。
『お人好しだね、ユウト。 別に貰ったらいいと思うけど』
(だろけど、前に大量のミノタウロスを片付けた時、本当に大変だったからね。 騎士団に片付けを押し付けるんだから、気の毒だろう)
「そうね、それがいいと思う」
華も同意して頷く。 魔法石はエルフの里を出た時に充分な数を持たせてくれている。 無くなれば、狩で確保する事にしている。 後片付けする時間があるのなら持って行くが、後片付けする時間はない。
背後で人の声が聞こえて来た。
『ポテポテを突破した者がいたみたいだね』
(ああ、やっぱり帝国の騎士団だっ)
脳内の立体地図には複数の騎士団員の表示がされ、モニターには近づいて来る騎士団たちが映し出されていた。
「華、俺に掴まって」
「うん」
華を抱き上げると、音を鳴らさずに優斗は木の枝に飛び上がった。 木の裏側へ周り、フィルに念話を送る。
(フィル、皆に連絡してくれ。 討伐が終わったなら、森の入り口、隣国の方へ向かってくれって。 それとミノタウロスの素材は何も回収しないように。 後、風神には皆に幻影の魔法で姿を隠してくれって伝えてくれ)
(うん、わかった)
フィルとの念話が終わると、風神の魔力を感じる。 優斗と華、フィルの姿が消えて、幻影魔法をかけられた者同士は、薄らと姿が見える。
「凄いな風神っ! 瑠衣たちとは結構な距離があるのにっ」
「まぁね。 フウジンは、ちょっとしたかみにちかづいてるからね」
「「えっ、神っ!」」
優斗と華の声が揃い、口を開けたまま固まっている。
『へぇ~、主さまの使いなのに。 で、何でフィルが自慢気なのっ』
(まあまあ、仲間が神に近づいている事が嬉しいんだろっ)
「うん、なまえがえいきょうしてるとおもう。 フウジンって、かみさまのなまえなんでしょ?」
「そうだな、神の字が入っているな」
風神雷神と言えば、日本でも有名な神様だ。
「ライジンのじゅみょうは、ふつうのまもののものだったから、かみにはちかづけなかったんだよね」
「なるほど、すると瑠衣は神さまの主かっ……」
「……逆に雷神が神になっても……仁奈が神さまの主かっ」
優斗と華の表情から、『想像出来ないっ』と、失礼な事を考えている事が伺える。
「……まぁ、雷神が聞いたら喜ぶかもな。 雷神のお墓は隠れ家にあるし、報告しよう」
「うん、きっと喜ぶわ」
二人の友人を思い、優斗と華は顔を見合わせて苦笑する。
話し込んでいたら、背後から生い茂る草を掻き分け、騎士団員がミノタウロスの残骸が転がる場所へやって来た。
「団長っ! ここにミノタウロスの残骸がありますっ!」
騎士団が後方へ報告を上げると、街で破落戸と揉めている時に駆けつけてくれた騎士団長の姿が見えた。
『あの人、さっきの』
騎士団長は、大量のミノタウロスの残骸を確認し、いくつか草地に魔法石が転がったまま手付かずな事を確認している。
騎士団長は眉間に皺を寄せ、何か考え込んでいる。
『まぁ、普通に不審がるよね』
監視スキルの声が脳内で面白そうな音を滲ませる。
音を鳴らさず、枝を蹴って騎士団から離れる。 声が聞こえない距離まで離れると、華に声を掛けた。
「華、ポテポテたちを引き上げてくれ」
「うん、分かった」
脳内の立体地図からポテポテの表示が消え、モニター画面からもポテポテが消えた。 まだポテポテに翻弄されていた騎士団員が何が起こったのか分からず、不思議そうに周囲を見回していた。
瑠衣と仁奈、風神たちもミノタウロスの討伐を終えて森の入り口へ向かっている。
カークスたち四人とフィンも合流した様で、優斗の指示通り、枝を伝って移動を始めた。
視線を感じて華の方へ目線を向ける。
「ん? 何?」
眉尻を下げて溜め息を吐く華に、優斗は首を傾げた。 薄茶色の瞳を細めた華が口を開く。
「私も自分の足で走るっ!」
「いや、華は足音をさせずに走れないだろう? それに枝を飛び移れるか? エルフの里の樹木よりも細くて柔いし……危ないよ」
抱き抱えられた華が視線だけで下を見た。 思っているよりも高いのと、移動の速さに気づいたのか、顔を青ざめさせる。
「無理しない方がいいよ。 華、絶叫マシーンも無理だっただろ」
「うんうん、ハナはうんどうしんけいないでしょ?」
フィルの言葉でショックを受けたのか、華は更に顔を青ざめさせる。
「フィル、もうちょっと言葉を選んでくれ」
しかし諦められないのか、憮然とした表情をしていた。
「いつまでも守られている立場は嫌なの」
「華……木の上に立てる?」
物凄い速さで移動する優斗を改めて見て、華は言葉を無くした。
「先ずは隠れ家の森で練習してみよう。 その結果で考えよう」
「……うん、そうする」
「ハナはあくまをじょうかしたり、ぼうぐつくりとか、やくそうつくりでやくだってるよ」
「ありがとう、フィル」
フィルの慰めに華が笑顔になる。
森の入り口に辿り着き、優斗と華は瑠衣たちと合流した。
草地を蹄の音をさせずに駆けている風神が視界に入った。 薄らと瑠衣と仁奈の姿が見えている。
「瑠衣っ!」
「優斗っ!」
草地に降りた優斗は、足を止めた風神に近づく。
「そっちも無事に終わったみたいだな」
「ああ、もうミノタウロスはいいってくらい倒したっ」
軽い笑い声を上げた瑠衣は、『俺もだ』と優斗に同意した。
「華は大丈夫? 高い所は苦手でしょ」
「うん、大丈夫よ、ありがとう。 仁奈こそ大丈夫だった?」
「私も大丈夫よ。 久しぶりにこの武器で暴れられたからねっ!」
仁奈は胸を張って前世の時の武器である槍を突き出した。
「次期里長っ!」
「カークスっ! 皆、無事に辿り着いたな」
「はい、お待たせして申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ、俺たちも今、合流した所だからっ」
「ハナっ!」
「フィン、無事で良かった」
フィンはエウロスに抱えられていた。
エウロスから飛び跳ねて降りたフィンが銀色の美少女に姿へ変える。
華をそっと地面に降ろすと、次の指示を出す。
「さて、ミノタウロスの片付けは帝国騎士団に任せて、急いで帝国を出よう」
「ああ、行こうぜ」
「次期里長、暫く街道を歩く様なので、馬車を出しましょう」
「分かった。 風神の出番だな」
優斗の視線を受けた華が新たな魔法陣を鞄から取り出す。 魔法陣から馬車が現れた。 風神に繋げて出発準備をする。
御者はカークスが務め、隣にフィルが座る。 皆、各々好きな所へ腰掛ける。
殿を務めるのはエウロスだ。
一番後ろで帝国騎士団が追ってこないか、見張ってくれているのだ。 優斗たちを乗せた馬車は街道を進み、帝国を出て隣国へ向かった。
「華、ポテポテたちを使って騎士団の方、足止め出来ない?」
「分かったわ。 やってみる」
学生鞄に入れていた隠れ家の魔法陣を取り出して地面に置き、序でに鞄の中で待機していたポテポテが3体程が出て来た。
彼らポテポテは『あいっ!』、と丸い手を上げて挨拶をして来た。 ちょっとだけ、うちの子たちは可愛いと、親バカな感情が湧き上がる。
「皆、他の子を呼んで来て。 そうね、20人くらいいたら大丈夫かな」
『承知、致しました、マスター。 ギギッ!』
ポテポテが頷いた瞬間、隠れ家の魔法陣から、大量のポテポテが現れた。
序でに優斗の脳内の立体地図にも、『ポテポテ』と吹き出しを指したポテポテが、大量に現れた。
立体地図は大量の表示で大渋滞である。
ポテポテは華の魔力で作られている為、立体地図に表示されている。
ポテポテは華だと認識されている様だ。
「この数だと、圧巻だなっ……」
大量の歪な三つの穴が空いている顔を向けられ、少しだけ怯んでしまう。
先程は3体だったので、可愛いと思ってしまったが、20体以上いると、少しだけ不磨気味だ。
華は製作者なので、可愛いとしか思わない様だ。 大きめの丸い薄茶色の目がまなじりを下げている。
「じゃ、皆は帝国騎士団を足止めして、森へ近づけない様にしてほしいの」
『了解しました、マスター、ギギッ!』
「お、少しだけ話し方が滑らかになった?」
「うん、体調が戻った後、メンテをしたの。 でも、充分ではないよね」
「そうたな、まだちょっとだけ片言だしな」
「……長い年月が経ったからかな?」
華の指示に、ポテポテたちは三々五々になり森の中へ散って行く様子を眺めた。
『あの子達は中々優秀だから大丈夫だと思うよ。 他の皆は、もう討伐を始めたよ』
緑の匂いが烟る中、大量の鳥たちが空高く飛び上がっていく。 四方から魔法の騒音と土煙、ミノタウロスの咆哮が森の中で響いた。
トプンと耳元で水音が鳴ると、四方で魔力がぶつかり合う感覚を感じる。
脳内にモニター画面が三つ現れ、瑠衣と仁奈、カークスとアイギ、エウロスとキュベレーが各々、ミノタウロスの討伐している様子が映し出された。
立体地図ではミノタウロスが足止めされ、数を減らして行く。
監視スキルの範囲内で起こっている事は、華を中心とした範囲だが、全て映し出す事が出来る。
監視スキルの言う通り、帝国騎士団を迎え撃ったポテポテたちは、騎士団員を翻弄させていた。
皆を映しているモニター画面を端に置き、優斗もミノタウロスの討伐に参戦する。
「よし、華、行くよ。 結界を展開して」
「うんっ」
「大丈夫だよ、ハナ。 僕も居るからね」
片目を瞑ったフィルは、軽い弾けた様な音をさせて、羽根の生えた銀色のスライムへ姿を変えた。
弾力のある物が頭の上に乗った事を確認し、優斗は走り出しだ。
『ハナにより、虫除け結界が発動されました。 虫除け結界の強化を最大値まで上げます』
華の前を走る優斗も結界の中に自動的に入る。 結界が、ミノタウロスとの戦闘に巻き込まれまいと、逃げて来た小物の魔物を弾き飛ばしていく。
いつ見ても凄いな、と感心してしまう。
ミノタウロスも移動しているので、程なくして優斗と華のノルマであるミノタウロスの群れとかち合った。
薄茶色の瞳に魔力が宿り、取り出した木製短刀二本に魔力を流して強化する。
トプンと耳元で水音が落ちる。
周囲に自身の魔力を流し、空中に含まれる水分を捕まえる。 魔力を含んだ水分が、ミノタウロスを足止めする。
ミノタウロスの足元から、澄んだ音を鳴らして凍りつく。 数体のミノタウロスが動きを止め、一体が優斗に気づき、大斧を振り上げた。
一瞬で銀色の足跡がミノタウロスまで伸びていき、足跡を踏んで駆け上がった。
振り下ろされた大斧は、優斗と華を避け、草が生い茂る草地に深く突き刺さった。
足跡を駆け上がった優斗は、ミノタウロスの頭頂部へ降り立ち、氷を纏わせた木製短刀を突き刺す。
『全てを凍り尽くせっ!!』
優斗から冷気が吐き出され、数体のミノタウロスと周囲の草地や木々が音を立てて凍りつく。
優斗から白い息が吐き出される。
ミノタウロスの瞳から生命の光が消え、凍結は華の周囲で張られた結界まで広がった。
空中で輝く銀色の足跡を踏んで駆け下り、結界の中へ飛び降りる。
「ここにはもう居ないな。 次に行こう」
「うん」
脳内の立体地図でミノタウロスの位置を確認して討伐しながら移動する。
優斗と華、フィルの三人は、森の奥へ入って行った。
◇
森に異常な魔力の発動があったと知らせを聞き、帝国の騎士団長は調査員を森に向かわせた。
今朝は街で大勢の破落戸が暴れていると連絡が騎士団に入り、街の憲兵では対応できず、騎士団が出張った。
騎士団を大勢引き連れて出張ったが、破落戸と揉めていた冒険者を逃してしまった。 上への報告に何と書こうかと思っていたら、次は森で何かが起きていると言う。
騎士団長から、深い溜め息が吐き出された。
街から戻って来た騎士団長は、執務室の自身の机で、丈夫に作られた椅子の背もたれに体重を預けた。
脳裏に、先程会った若い冒険者たちを思い浮かべる。 まだ10代だろうと思われる少年少女たちと、20代を超えているであろう男女。 皆が美男美女だった。
(あの美貌なら変態貴族が喜ぶだろうな。 破落戸どもは捕まえて奴隷にして、変態貴族にでも売り付けるつもりだったのか……)
真ん中でお辞儀をした少年を思い出す。
年上の男女は、二人の少年少女の守りを固めていた。 普通、何人かは不細工がいるはずだ。 不細工ではなくとも平均点な顔がいるはずだ。 皆が美男美女とは、反対に奇妙だ。
騎士団長の脳裏にある種族が思い出された。 想像した直後、顔を振って自身の考えを否定した。
(まさか、な。 エルフやダークエルフは里から出て来ないだろう。 出てくれば、変態と欲深い人間の格好の餌食だ)
執務室の扉がノックされ、森へ行っていた調査員が戻り、報告を持って来た。
団員は、敬礼をした後、両足を揃えて直立不動の姿勢を取る。
「報告します。 森での魔力発動は、ミノタウロスが召喚された事が原因です。 森でミノタウロスの群れが暴れています」
「はぁ?! ミノタウロスの群れが森で暴れているのか……」
「はい」
団員の報告に、騎士団長は瞳を見開いた。
疲れているであろう騎士団長に紅茶を淹れていた秘書官も、あまりの事に口を開けて手を止めた。
報告をして来た下っ端の騎士団員が青ざめ、ごくりと喉を鳴らす。
「直ぐに討伐隊を編成するっ! 休暇中の騎士団員も収集しろっ!」
「「「「はいっ!」」」」
森で大量のミノタウロスが暴れていると報告が上がり、帝国騎士団長は直ぐ様、討伐隊を編成して森へ向かった。
緊張と悲壮感が漂う騎士を連れ、森へ向かった騎士団長は、華の放ったポテポテたちに翻弄されて森に近づけなかった。
有耶無耶の内にミノタウロスが討伐された事を知り、帝国騎士団が唖然としたのは言うまでもない。
森の中で、討伐されたミノタウロスと、大量の凍りついたミノタウロス、地面には大量の魔法石と砕け散った氷漬けの欠片が転がっている。
森が破壊され、討伐後の光景は、帝国騎士団に畏怖の念を抱かせたという。
◇
最後の一体が凍りつき草地に沈む。
「この量、最早、ただの嫌がらせだなっ」
『本当にそうだねっ』
草が生い茂る地面に倒れ、ミノタウロスが砕け散る音が森の中で響き、凍りついたミノタウロスの肉塊が草地で転がる。
コトリと音を鳴らして魔法石が落ちる。
「ユウト、まほうせきがでたよっ!」
フィルの弾んだ声が落ちて来る。
スライム型のフィルが舌を伸ばして、魔法石を拾おうとしている所で止める。
「駄目だよ、フィル。 魔法石はそのままにしておいて」
「どうして?」
優斗に止められてフィルは舌を引っ込めたが、不思議そうな声が落ちて来る。
「帝国騎士団が調べに来るし、後片付けは騎士団に押し付けるつもりだから、魔法石は置いていく」
「わかった」
少しだけ、不満そうだったが、フィルは優斗の指示に従ってくれた。
『お人好しだね、ユウト。 別に貰ったらいいと思うけど』
(だろけど、前に大量のミノタウロスを片付けた時、本当に大変だったからね。 騎士団に片付けを押し付けるんだから、気の毒だろう)
「そうね、それがいいと思う」
華も同意して頷く。 魔法石はエルフの里を出た時に充分な数を持たせてくれている。 無くなれば、狩で確保する事にしている。 後片付けする時間があるのなら持って行くが、後片付けする時間はない。
背後で人の声が聞こえて来た。
『ポテポテを突破した者がいたみたいだね』
(ああ、やっぱり帝国の騎士団だっ)
脳内の立体地図には複数の騎士団員の表示がされ、モニターには近づいて来る騎士団たちが映し出されていた。
「華、俺に掴まって」
「うん」
華を抱き上げると、音を鳴らさずに優斗は木の枝に飛び上がった。 木の裏側へ周り、フィルに念話を送る。
(フィル、皆に連絡してくれ。 討伐が終わったなら、森の入り口、隣国の方へ向かってくれって。 それとミノタウロスの素材は何も回収しないように。 後、風神には皆に幻影の魔法で姿を隠してくれって伝えてくれ)
(うん、わかった)
フィルとの念話が終わると、風神の魔力を感じる。 優斗と華、フィルの姿が消えて、幻影魔法をかけられた者同士は、薄らと姿が見える。
「凄いな風神っ! 瑠衣たちとは結構な距離があるのにっ」
「まぁね。 フウジンは、ちょっとしたかみにちかづいてるからね」
「「えっ、神っ!」」
優斗と華の声が揃い、口を開けたまま固まっている。
『へぇ~、主さまの使いなのに。 で、何でフィルが自慢気なのっ』
(まあまあ、仲間が神に近づいている事が嬉しいんだろっ)
「うん、なまえがえいきょうしてるとおもう。 フウジンって、かみさまのなまえなんでしょ?」
「そうだな、神の字が入っているな」
風神雷神と言えば、日本でも有名な神様だ。
「ライジンのじゅみょうは、ふつうのまもののものだったから、かみにはちかづけなかったんだよね」
「なるほど、すると瑠衣は神さまの主かっ……」
「……逆に雷神が神になっても……仁奈が神さまの主かっ」
優斗と華の表情から、『想像出来ないっ』と、失礼な事を考えている事が伺える。
「……まぁ、雷神が聞いたら喜ぶかもな。 雷神のお墓は隠れ家にあるし、報告しよう」
「うん、きっと喜ぶわ」
二人の友人を思い、優斗と華は顔を見合わせて苦笑する。
話し込んでいたら、背後から生い茂る草を掻き分け、騎士団員がミノタウロスの残骸が転がる場所へやって来た。
「団長っ! ここにミノタウロスの残骸がありますっ!」
騎士団が後方へ報告を上げると、街で破落戸と揉めている時に駆けつけてくれた騎士団長の姿が見えた。
『あの人、さっきの』
騎士団長は、大量のミノタウロスの残骸を確認し、いくつか草地に魔法石が転がったまま手付かずな事を確認している。
騎士団長は眉間に皺を寄せ、何か考え込んでいる。
『まぁ、普通に不審がるよね』
監視スキルの声が脳内で面白そうな音を滲ませる。
音を鳴らさず、枝を蹴って騎士団から離れる。 声が聞こえない距離まで離れると、華に声を掛けた。
「華、ポテポテたちを引き上げてくれ」
「うん、分かった」
脳内の立体地図からポテポテの表示が消え、モニター画面からもポテポテが消えた。 まだポテポテに翻弄されていた騎士団員が何が起こったのか分からず、不思議そうに周囲を見回していた。
瑠衣と仁奈、風神たちもミノタウロスの討伐を終えて森の入り口へ向かっている。
カークスたち四人とフィンも合流した様で、優斗の指示通り、枝を伝って移動を始めた。
視線を感じて華の方へ目線を向ける。
「ん? 何?」
眉尻を下げて溜め息を吐く華に、優斗は首を傾げた。 薄茶色の瞳を細めた華が口を開く。
「私も自分の足で走るっ!」
「いや、華は足音をさせずに走れないだろう? それに枝を飛び移れるか? エルフの里の樹木よりも細くて柔いし……危ないよ」
抱き抱えられた華が視線だけで下を見た。 思っているよりも高いのと、移動の速さに気づいたのか、顔を青ざめさせる。
「無理しない方がいいよ。 華、絶叫マシーンも無理だっただろ」
「うんうん、ハナはうんどうしんけいないでしょ?」
フィルの言葉でショックを受けたのか、華は更に顔を青ざめさせる。
「フィル、もうちょっと言葉を選んでくれ」
しかし諦められないのか、憮然とした表情をしていた。
「いつまでも守られている立場は嫌なの」
「華……木の上に立てる?」
物凄い速さで移動する優斗を改めて見て、華は言葉を無くした。
「先ずは隠れ家の森で練習してみよう。 その結果で考えよう」
「……うん、そうする」
「ハナはあくまをじょうかしたり、ぼうぐつくりとか、やくそうつくりでやくだってるよ」
「ありがとう、フィル」
フィルの慰めに華が笑顔になる。
森の入り口に辿り着き、優斗と華は瑠衣たちと合流した。
草地を蹄の音をさせずに駆けている風神が視界に入った。 薄らと瑠衣と仁奈の姿が見えている。
「瑠衣っ!」
「優斗っ!」
草地に降りた優斗は、足を止めた風神に近づく。
「そっちも無事に終わったみたいだな」
「ああ、もうミノタウロスはいいってくらい倒したっ」
軽い笑い声を上げた瑠衣は、『俺もだ』と優斗に同意した。
「華は大丈夫? 高い所は苦手でしょ」
「うん、大丈夫よ、ありがとう。 仁奈こそ大丈夫だった?」
「私も大丈夫よ。 久しぶりにこの武器で暴れられたからねっ!」
仁奈は胸を張って前世の時の武器である槍を突き出した。
「次期里長っ!」
「カークスっ! 皆、無事に辿り着いたな」
「はい、お待たせして申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ、俺たちも今、合流した所だからっ」
「ハナっ!」
「フィン、無事で良かった」
フィンはエウロスに抱えられていた。
エウロスから飛び跳ねて降りたフィンが銀色の美少女に姿へ変える。
華をそっと地面に降ろすと、次の指示を出す。
「さて、ミノタウロスの片付けは帝国騎士団に任せて、急いで帝国を出よう」
「ああ、行こうぜ」
「次期里長、暫く街道を歩く様なので、馬車を出しましょう」
「分かった。 風神の出番だな」
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御者はカークスが務め、隣にフィルが座る。 皆、各々好きな所へ腰掛ける。
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