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1章妖精の愛し子

21.

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「その心遣い、感謝する。 では、今日はこれで… また会おう」
グラウィルは、ティオールにそう告げると教会の外へと足を向けた。

「お待ちください、公爵様。 どうか公爵様とシャルロッテ様もこれをお持ちください。 必ずや近いうちに、役に立つときが来るでしょう」
そう言って珊瑚を二つ差し出すティオール。
「貴方がそう言うのならば、有り難く受け取ろう」

グラウィルは受け取ったブレスレットをシャルロッテに渡した。
グラウィルの珊瑚は、男ということも考慮してくれたのか、おおやけの場でも身に付けやすいブローチにだ。
しかもこのブローチ、シャロン公爵家の家紋でもある妖精の形で作られていた。

「早く帰ろうよ~!」
「早くティファニーを見張らないと!」
グラウィルとシャルロッテが珊瑚に見とれていると、妖精達が早く帰ろうと騒ぎ始めた。
「そうだな、そろそろ帰るか」
グラウィルは妖精を宥める代わりにそう言うと、外に待たせてある馬車に乗り込んだ。

その後を追うようにリリーフィアとシャルロッテも乗り込む。
皆が乗り込んだことを確認し、ゆっくりと馬車が動き出す。
教会が見えなくなる頃には、なんだかんだで疲れていたのか、リリーフィアとシャルロッテが昔のように仲良く肩を寄せて眠っていた。

「二人の様子を見ていると、昔に戻ったように感じるな… あの頃はまだミルフィーもいて、四人で仲良く暮らしていたのにな。 いつから選択肢を間違えてしまったのだろうか… まだこんな小さな子供に不自由を強いるなど、あってはならないのに…」

とても小さな声でひとり反省するグラウィルの、眠る二人を見つめる視線はとても優しく、穏やかなものだった。
このひとときばかりは妖精達も自由に過ごし、昔の、まだ多くの力を貸していた頃のように三人の幸せを心から願った。

馬車が家に着いてもまだ起きない二人をなんとか優しく抱き上げると、妖精達の助けを借りながら家の中へと入る。
部屋の近いシャルロッテをベットに寝かせると、次にリリーフィアの部屋へと向かうグラウィル。

「部屋の扉を開けて貰えるか?」
「うん、いいよ」
妖精達は、なんとも穏やかな声音で返事をするとリリーフィアの部屋の扉を開いた。

グラウィルはそのまま中へ入り、ふかふかのベットにリリーフィアを寝かせると、ベットの脇に腰をかけた。
そして壊れ物でも触るかのような優しさで、リリーフィアの頭を撫でる。
グラウィルは、こんな風にリリーフィアの頭を撫でるのはいつぶりだろうかと考えながら、リリーフィアには久しぶりに言う言葉を口にした。

「おやすみ、リリーフィア」
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