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1章妖精の愛し子

26.

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「リリーフィア、ちゃんと前を向かないと壁にぶつかるよ?」
「あっ、危ない!」
サクラがリリーフィアに気を向けていれば、シャルロッテが置物にぶつかりかけ、シャルロッテを気にすればリリーフィアが躓いて転びかける。

「リリーフィア、シャルロッテ、よそ見をせずにちゃんと歩きなさい」
グラウィルがふたりを注意するが、それだけで子供の好奇心を止めることはできる訳がない。
なので結局、目的地に着くまで、妖精達はずっと冷や汗をかき続けたのだった。


「こちらが謁見の間でございます。 陛下、シャロン公爵様方がご到着です」
扉の前で執事長がそう言うと、待機していた護衛のふたりが扉を開けてくれた。

謁見の間に一歩足を踏み入れると、グラウィルの纏っていた空気がガラリと変わる。
その雰囲気に促されるようにリリーフィアとシャルロッテの背筋もピンと伸びる。

「お招きいただきありがとうございます、国王陛下。 本日は娘のスキルの御報告にあがらせていただきました」
国王の前でひざまずき挨拶をするグラウィル。
それにならって見よう見まねで頭を下げるリリーフィア達。
だが、グラウィルがとっているのは男性がする家臣の礼であり、女性のとる家臣の礼ではない。

「はははっ、よい、楽にするが良い。 幼子おさなごに家臣の礼はまだ難しかったようだな」
国王は、間違いに気が付いていないリリーフィア達に我が子のことを見るかのような眼差しを向ける。

国王の言葉でふたりの間違いを察したグラウィルは、リリーフィアとシャルロッテに目線を合わせる。
「ふたりとも、ちゃんと礼の仕方は教えただろ? どうして私の真似をしたんだ?」
「だって、れいのちかたをわすれちゃったなの」
「シャルも… だからおとうしゃまのまねをちたのよ!」
口を揃えて訳を話すリリーフィアとシャルロッテに、グラウィルは今度練習しようなと返すと、クシャっとふたりの頭を撫でた。

「「は~い!」」
ふたりのいい返事を聞いたところで、改めて国王に向き直ったグラウィル。
「お見苦しい姿をお見せして申し訳ありませんでした。 では本題なのですが、私の娘、リリーフィアのスキルに妖精の愛し子が出ました」
「ほぉ、妖精の愛し子と?」
国王は目を光らせると、グラウィルに促されて一歩前に出たリリーフィアのことをまじまじと見つめた。

「り、リリーフィア・シャロンでしゅ。 えっと、その~、よろちくおねがいしましゅ?」
とにかく自己紹介をしたリリーフィアを横目に見ながら国王は話を続ける。
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