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1章妖精の愛し子

29.

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フィーディアンの言葉に目を見開くグラウィル達。

「ということは、前世もシャロン公爵だったということか?」
国王が確認をするかのように繰り返すと、フィーディアンはゆっくりと頷いた。

フィーディアンの横からぴょこっと顔を出したシャラーティルは、魔法の光でその時の様子を再現して見せながら続きを話す。

「クレイセルは、愛し子としての使命をまっとうすると同時に、没落しかけていた公爵家を立て直したんだ。 で、それを手伝ったのが僕達ってわけ」


話し終えると共に、シャラーティルの手のひらの上で踊るように動いていたクレイセルと妖精達を形作る光は消える。

「ちょっ、ちょっと待て。
 妖精の愛し子とは女性しかなれないものではないのか?」

国王の言葉に突然、フィーディアン達の視線が鋭くなる。

「誰がそんなことを決めた。 愛し子は性別で決まるものではない、心の綺麗さだ」
「そうそう、いくら愛し子のことだとしてもそこを間違えられちゃ困るよ。 確かに愛し子は女性が多いかも知れないけど男性も少しはいたんだからさぁ~?」

妖精にとって愛し子のことを間違えられるということは許すことができないほどの一大事だ。
だからこそふたりは内心ものすごく怒っている。
もちろん他の妖精もふたりほどではないが怒っていた。

「やっぱりこんな奴らのところに当代の愛し子をおいていくわけにはいかないね」
「ああ、愛し子を正しく理解しない奴らのところにおいていく訳にはいかないな。 愛し子…いや、リリーフィア、俺達と一緒に妖精の国に来い」

シャラーティルはもう耐えられないという感じでリリーフィアを抱き上げた。
そしてそれに驚くリリーフィアを説得するのはフィーディアンだ。

「でも、おとうしゃまたちとおわかれになっちゃうの? バイバイはもういやなの」
リリーフィアは何かを思い出すかの様に遠い目をしながらそう呟く。

「それは大丈夫だ。 父親のグラウィルも、妹のシャルロッテもちゃんと妖精の国へ行くためのカギを持っているからいつでも会える。 それともリリーフィアは継母と共に暮らしたいのか?」

「うぅん、おかあしゃまとはいっしょじゃなくていいなの」
「なら大丈夫だね。 それじゃあ行こうか、妖精の国へ」

「まっ、待ってくれ! 我々も妖精の国へ連れていって貰うことは出来ないか?」
「無理だな」
「僕も無理だと思うな」

国王が慌ててフィーディアンとシャラーティルを引き留めて聞くが、考える間もなく答えは返ってきた。
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