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第二十八話
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「・・・っ、うっ・・・。」
すみれとなおの部屋。
乱れたシーツの上で、すみれは裸でうつ伏せになってずっと泣いている。
「すみれ泣かないで。元はといえば貴女が悪いの。」
「・・・・・・。」
なおは、すみれにそっとキスをした。そして彼女を無理やり仰向けにさせると、なおは彼女の両手首を抑える。
「その制服、返しておきなさいよ。そしてすぐに帰るの。今度こそ、あの人とはもう二度と会わないで。」
「わかったわ・・・。」
すみれは涙を拭くとふらふらと立ち上がる。
れいこの綺麗な制服を眺めながら、自分の汚れた手を見つめながら。
数日後。
すみれは、れいこの部屋の扉をノックする。
「誰?」
「徳島です。徳島すみれです。」
れいこはその声を聞いて少し片方の口角を上げると、扉を開いた。
「どうしたの?すみれちゃん。」
すみれは紙袋に入った制服をれいこに差し出す。
顔はそっぽを向いたままで。
「制服、ありがとうございました。」
「ああ、制服ね。いいのにそんなこと。」
「いいえ、駄目です。なおに怒られてしまいます。」
れいこはまたすみれの言葉に疑問を持って顔をしかめる。
すみれはというと今にも泣きそうだ。とりあえず、部屋に入れて事情を聞くか。そう思い彼女の肩をそっと撫でた。
「すみれちゃん、よくは分からないけれど、少し中でお話ししない?」
「いえ、でも・・・私は。」
れいこはそんな彼女に微笑みかける。
「荒牧さんが何を言ったか知らないけれど、私のこと嫌いになったの?何度も言うけれど、貴女は荒牧さんじゃなくて私に許されているからいいのよ。」
「れいこさんっ!!私!!私・・・っ!!」
感情を抑えることができなくなったすみれは思わずれいこに抱き付いた。
「すみ・・・れ・・・ちゃん・・・?」
しかし、感情をもっと抑えられないのはれいこの方だ。
抱きしめ返すのをこらえて、冷静さを装いすみれを部屋へと招き入れる。
「一緒にお茶を飲みましょう。」
れいこはすみれを椅子に座らせると、お気に入りの薔薇のティーカップに紅茶をそそいだ。
「綺麗な・・・ティーカップ。」
すっかり落ち着いたすみれをみて、れいこはいつもの笑顔で応える。
「綺麗でしょ?私のお気に入りなの。」
「そんな大切なのも使っていいのですか?」
「いいの。すみれちゃんだから、いいの。」
すみれはそう言われて嬉しそうにそのカップで紅茶を飲む。
すみれの機嫌がよくなったようでれいこは、安堵した。
だが、だがしかしだ。
なぜ、荒牧なおはそこまででしゃばる。
まさか、もしかして・・・。
「ねぇ、すみれちゃん。貴女と荒牧さんはどういう関係なの?」
「え・・・?そ、それはただの・・・ルームメイトで・・・お友達で。」
「本当に?」
れいこはすみれに近づく。
そして彼女の首筋からする香りに気が付いた。
「すみれちゃん、いい香り。すみれの花の香かしら?」
「あ・・・ええ。香水を少し。」
「ねぇ、それ誰に付けてもらったの?誰が買った香水なの?」
すみれは黙り込む。それに対して、れいこは彼女にさらに近づく。吐息が聞こえるほどに。
「・・・ねぇ、教えてよ。」
すると、すみれは肩をびくりと振るわせてボソリと呟くように口を開いた。
「な、なおです・・・。なおが買ってくれて、つけてくれました。」
「そう、荒牧さんが・・・成程ね。」
自分としたことが。
勘違いしていた。
さしずめ、香水をつける行為は自分の所有物ということが言いたいのだろう。
その気持ちはわからなくはない。
そして・・・。
彼女の目がたまらなくそそるのは、彼女が純粋だったからじゃない。
全てを知っている目だったからだ。
「すみれちゃんと荒牧さんはそういう関係なのね?」
「そういう・・・?」
「付き合っているということ。何でもしちゃう関係ってこと。」
それを聞いてすみれは顔を逸らす。
「やっぱり。」
「・・・ごめんなさい。隠していたわけではないのです。ただ、言い辛くて。」
れいこはすみれの顎を引き寄せて微笑んだ。
「いいの、謝ることじゃないの。ただ、スッキリしただけ。」
「・・・れい・・こ・・・さん?」
「私、充分待ったと思うの。自分でも不思議なくらい。きっとそれくらい貴女に価値があったのね。でも、おしまいにしましょう?そろそろ次の段階に入ろうと思うのよ。」
れいこはすみれが飲んでいたティーカップを取り上げると、彼女が口づけた部分を舌でなぞる。そして何の躊躇いもなく、床に投げつけて割ってしまった。
「れいこさん…!?どうしたのですか!?」
いつもと様子が違う。
怖い。
れいこが怖い。
なおの言っていたことが正しいのか?
そう思い始めた時。れいこは見下すような目線ですみれを見た。
「私、綺麗なものが好き。綺麗なもの、大切にしたいの。全部私のものにしたいの。わかる?私が何をしたいかわかる?」
すみれはいよいよ恐ろしくなって席を立ち慌てて帰ろうとする。
「れいこさん、わ、私!今日はそろそろ帰ります。」
帰ろうとするすみれをれいこはすかさず壁に押しやって阻止する。
「駄目。帰さない。」
「れいこさん・・・?」
れいこは震えるすみれの顎を人差し指でなぞる。
そして、すみれに考えさせる余地なく噛み付くように口付けた。
「・・・っ!?」
反射的に押しのけようとするすみれの手首を捕まえてれいこは何度も彼女の唇に喰らいつく。
「やめてくださいっっ!!」
すみれは口元から唾液を流しながら、そして瞳から涙を流しながら無力な抵抗をする。
れいこは自分の唇に付着したすみれの唾液を手で拭きながら、微笑む。
「すみれちゃん、私と一緒に踊りましょう?いいえ・・・踊りなさい。」
すみれとなおの部屋。
乱れたシーツの上で、すみれは裸でうつ伏せになってずっと泣いている。
「すみれ泣かないで。元はといえば貴女が悪いの。」
「・・・・・・。」
なおは、すみれにそっとキスをした。そして彼女を無理やり仰向けにさせると、なおは彼女の両手首を抑える。
「その制服、返しておきなさいよ。そしてすぐに帰るの。今度こそ、あの人とはもう二度と会わないで。」
「わかったわ・・・。」
すみれは涙を拭くとふらふらと立ち上がる。
れいこの綺麗な制服を眺めながら、自分の汚れた手を見つめながら。
数日後。
すみれは、れいこの部屋の扉をノックする。
「誰?」
「徳島です。徳島すみれです。」
れいこはその声を聞いて少し片方の口角を上げると、扉を開いた。
「どうしたの?すみれちゃん。」
すみれは紙袋に入った制服をれいこに差し出す。
顔はそっぽを向いたままで。
「制服、ありがとうございました。」
「ああ、制服ね。いいのにそんなこと。」
「いいえ、駄目です。なおに怒られてしまいます。」
れいこはまたすみれの言葉に疑問を持って顔をしかめる。
すみれはというと今にも泣きそうだ。とりあえず、部屋に入れて事情を聞くか。そう思い彼女の肩をそっと撫でた。
「すみれちゃん、よくは分からないけれど、少し中でお話ししない?」
「いえ、でも・・・私は。」
れいこはそんな彼女に微笑みかける。
「荒牧さんが何を言ったか知らないけれど、私のこと嫌いになったの?何度も言うけれど、貴女は荒牧さんじゃなくて私に許されているからいいのよ。」
「れいこさんっ!!私!!私・・・っ!!」
感情を抑えることができなくなったすみれは思わずれいこに抱き付いた。
「すみ・・・れ・・・ちゃん・・・?」
しかし、感情をもっと抑えられないのはれいこの方だ。
抱きしめ返すのをこらえて、冷静さを装いすみれを部屋へと招き入れる。
「一緒にお茶を飲みましょう。」
れいこはすみれを椅子に座らせると、お気に入りの薔薇のティーカップに紅茶をそそいだ。
「綺麗な・・・ティーカップ。」
すっかり落ち着いたすみれをみて、れいこはいつもの笑顔で応える。
「綺麗でしょ?私のお気に入りなの。」
「そんな大切なのも使っていいのですか?」
「いいの。すみれちゃんだから、いいの。」
すみれはそう言われて嬉しそうにそのカップで紅茶を飲む。
すみれの機嫌がよくなったようでれいこは、安堵した。
だが、だがしかしだ。
なぜ、荒牧なおはそこまででしゃばる。
まさか、もしかして・・・。
「ねぇ、すみれちゃん。貴女と荒牧さんはどういう関係なの?」
「え・・・?そ、それはただの・・・ルームメイトで・・・お友達で。」
「本当に?」
れいこはすみれに近づく。
そして彼女の首筋からする香りに気が付いた。
「すみれちゃん、いい香り。すみれの花の香かしら?」
「あ・・・ええ。香水を少し。」
「ねぇ、それ誰に付けてもらったの?誰が買った香水なの?」
すみれは黙り込む。それに対して、れいこは彼女にさらに近づく。吐息が聞こえるほどに。
「・・・ねぇ、教えてよ。」
すると、すみれは肩をびくりと振るわせてボソリと呟くように口を開いた。
「な、なおです・・・。なおが買ってくれて、つけてくれました。」
「そう、荒牧さんが・・・成程ね。」
自分としたことが。
勘違いしていた。
さしずめ、香水をつける行為は自分の所有物ということが言いたいのだろう。
その気持ちはわからなくはない。
そして・・・。
彼女の目がたまらなくそそるのは、彼女が純粋だったからじゃない。
全てを知っている目だったからだ。
「すみれちゃんと荒牧さんはそういう関係なのね?」
「そういう・・・?」
「付き合っているということ。何でもしちゃう関係ってこと。」
それを聞いてすみれは顔を逸らす。
「やっぱり。」
「・・・ごめんなさい。隠していたわけではないのです。ただ、言い辛くて。」
れいこはすみれの顎を引き寄せて微笑んだ。
「いいの、謝ることじゃないの。ただ、スッキリしただけ。」
「・・・れい・・こ・・・さん?」
「私、充分待ったと思うの。自分でも不思議なくらい。きっとそれくらい貴女に価値があったのね。でも、おしまいにしましょう?そろそろ次の段階に入ろうと思うのよ。」
れいこはすみれが飲んでいたティーカップを取り上げると、彼女が口づけた部分を舌でなぞる。そして何の躊躇いもなく、床に投げつけて割ってしまった。
「れいこさん…!?どうしたのですか!?」
いつもと様子が違う。
怖い。
れいこが怖い。
なおの言っていたことが正しいのか?
そう思い始めた時。れいこは見下すような目線ですみれを見た。
「私、綺麗なものが好き。綺麗なもの、大切にしたいの。全部私のものにしたいの。わかる?私が何をしたいかわかる?」
すみれはいよいよ恐ろしくなって席を立ち慌てて帰ろうとする。
「れいこさん、わ、私!今日はそろそろ帰ります。」
帰ろうとするすみれをれいこはすかさず壁に押しやって阻止する。
「駄目。帰さない。」
「れいこさん・・・?」
れいこは震えるすみれの顎を人差し指でなぞる。
そして、すみれに考えさせる余地なく噛み付くように口付けた。
「・・・っ!?」
反射的に押しのけようとするすみれの手首を捕まえてれいこは何度も彼女の唇に喰らいつく。
「やめてくださいっっ!!」
すみれは口元から唾液を流しながら、そして瞳から涙を流しながら無力な抵抗をする。
れいこは自分の唇に付着したすみれの唾液を手で拭きながら、微笑む。
「すみれちゃん、私と一緒に踊りましょう?いいえ・・・踊りなさい。」
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