「悪」と「罰」

夏目綾

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第二十九話

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「れいこさんっ!!やめてください。お願いです。」
「あら、貴女、私の事好きでしょ?ならいいじゃない。」
すみれは泣きながら何度も首を振る。
「そういうのではないのです!れいこさんとはこういう関係になりたくないんです!!」
「こういう関係って・・・どういう関係?」
「そ、それは・・・。」
すみれが言葉を詰まらせると、れいこはまた彼女の顎を引き寄せて口づける。
「分からない?じゃ、教えてあげる。今から。」

「やめて・・・。」
れいこはすみれの制服の下に手を入れる。
「制服が邪魔ね。脱がさないとね。」
すみれはただひたすら首を振る。しかし彼女はやはり無力でれいこにされるがままになってしまう。
「んー。下着が邪魔ね。これも脱いじゃいましょ?」
れいこは微笑んだまま彼女の下着のホックを外す。
嫌がって隠そうとする彼女の手を払いのけた。
れいこは鼻歌交じり。
どこまでも彼女は最低な人間だ。いや、悪魔。

「あら、やだ。やっぱり可愛い!野苺みたい!!ふふっ、駄目、私我慢できない。ねぇ、食べて良い?」
胸の先端。れいこの言う野苺を彼女は舐める。
「あっ・・・。」
れいこは両手で口を覆って震えながら笑う。
「可愛い!可愛い!!可愛い!!!どうしよう!どうしよう!!あはは!!どうしよう!?」

こんなのれいこさんではない。
私の大好きなれいこさんではない。
れいこさんはいつも私に優しくしてくれた。
優しく微笑んでくれた。

すみれは、もはや泣く力もない。
「ねぇ、すみれちゃん!踊って!!私と踊って!!一緒に踊りましょうよ!!」
れいこの行為はエスカレートするばかり。
「ねぇ、ねぇ!下はどうなってるの?教えてよ!!」
今度は手を合わせながら子供のようにれいこははしゃぐ。
彼女は子供だ。歪んだ子供。

「・・・ま、・・・くま・・・。」
「何?聞こえない。」
「悪魔!!貴女は悪魔よ!!」
すみれは恐ろしさで声を発することさえできなくなっていたが、懸命に声を絞り出してれいこに言った。れいこはというと、一瞬きょとんとしたが、すぐに悪魔の微笑みで言う。

「あら、貴女知らなかったの?私がただの人間なわけがないじゃない。ましてや天使なんかでもないわ。悪魔なの。私、悪魔なの。」
「れいこさん・・・お願い。私の天使のれいこさんに戻ってください。」
「無理。無理よ。そんなことより、もっと踊らない?すみれちゃん。」

意識が遠のく。
それからのことは、すみれはあまり覚えていない。
いや、覚えておきたくなかった。
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