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第三十一話
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ゆりの部屋。
夜半にドアをノックする音が聞こえたので、ゆりは1人文句を言いながらドアを開けた。
「れいこ!?」
するとそこには憔悴し切ったれいこの姿があった。
唇も切れて。手も少し怪我しているようだ。
「どうしたの!?怪我してるの?」
「飼い犬に手を噛まれた。私、犬飼って苗字なのに笑っちゃう。」
そういうとれいこは、ゆりにもたれかかった。
「寝たい。一緒に寝ていい?」
「え?今からするの?」
「違う、本当に寝たいだけ。疲れちゃった。でも1人で寝るのは嫌。癪なの。」
珍しくれいこの足元がおぼつかないものだから、ゆりは慌てて彼女を抱えるように部屋に招き入れた。
れいこはゆりのベッドに行くとどさりと倒れる。
「ねぇ、本当どうしちゃったの?」
「苛立ちすぎて疲れた。こんなに苛立ったの久しぶりよ。こういう感情ってあまりしないからわからなかったけど、すごく体力使うのね。」
ゆりはため息をつくとれいこの頭を持ち上げると膝の上に乗せた。
そして、頭を撫でる。
「子供扱いはやめて。」
「子供よ。すぐ怒るし我儘だし。かと思ったらすぐテンション上がるし。あと、すぐ泣く。」
「最後は間違いね。私泣いたことないわ。」
「どうだか?」
飼い犬。
あのれいこが苛立つ。
きっとあの子ね。
「あの子、やっぱりやめておきなさいよ。貴女の手に負える相手じゃないわ。嫌な予感がするの。」
「私の手に負えない人間なんていない。」
「じゃあ、私の部屋に来ないでよ。私、あの子で悩む貴女を慰めるなんてしたくないし。私、あの子嫌いだし。」
れいこはゆりをひと睨みしたが、それ以上噛み付くことはしなかった。
そして、眠りにつく。
「どうして、こうなっちゃったのかしらね。」
ゆりがれいこを撫でながら言うと、暫く静まり返った後、れいこが呟いた。
どうやらまだ眠っていなかったらしい。
「そんなの私が一番聞きいたわよ。私だって本当はこんなこと・・・。」
「こんなこと?」
れいこの寝息が聞こえ出す。
今度は本当に寝てしまったらしい。
「私、どうしたら貴女を助けられるのかしらね。」
ゆりが窓の外を見ると月が光り輝いていた。
「どうして、こうなっちゃったのかしらね・・・。」
同刻。
すみれとなおの部屋。
「なお、ごめんね。なお、ごめんね。」
すみれとなおはシャワー室に一緒に入ってずっと身体を清め続けた。
すみれは涙をお湯に溶かしながら流す。なおは、彼女を抱きしめながらずっとシャワーを浴びている。
「すみれ、あんたは謝らなくていい。あんな悪魔に酷い目にあって・・・あんたは何も悪くない。悪くない。今回ばかりは責めるべきなのは私の方だわ。すみれを一人で行かせなければよかった。」
「なお、ごめんね。私、やっぱり馬鹿だよね。」
なおはシャワーを浴び続けて濡れている彼女の頬にキスをした。
「そうね・・・。すみれは本当に馬鹿。」
すみれはなおの胸に顔をうずめる。
なおは許してくれるだろうか。馬鹿な自分を。
そういえば、れいこさんは私が何をしても許してくれたっけ。
私は許されていたのに。なのに。
すみれがそんなことを考えていると、なおは彼女の唇に噛みついた。
「ん・・・。」
「すみれ、もう私の前でしか脱がないでよ。話さないでよ。あの人の言いなりにならないでよ。」
「しない、しないわ。もう、なおの前でしか私の身体見せない。なおの前でしか話さないわ。なおの前でしか踊らないわ。」
顔をぐしゃぐしゃにして泣くすみれの言葉になおは満足しない。
「私の前でしか・・・?だめよ、そんなことしたら駄目。貴女は誰の前でも話さないで、踊らないで。私の前でもやめて。貴女は何もできない馬鹿なのだから、ただ脱いで黙って私の言うことをただ聞けばいいの。何もしては駄目。」
「でも、なお・・・私ね、私ね・・・!話さなくてもいい、でも踊るのはやめたくないわ。」
なおはすみれの頬を思い切り叩く。
「すみれ、誰が助けたと思っているの?貴女、誰のおかげで今もいると思っているの?」
「ごめんね、なお。ごめんね。」
「絶対、何もしないで。私は、あんたが意志を持つなんて許さない。何をしていいかは私が全部決める。」
そう言うとなおはもう一度すみれにキスをした。
れいこさんは、なんて言っていたっけ。
自分で考えろって。
許されているって。
一緒に踊りましょうって。
そう言っていた気がする。
あんなに嫌なことされたのに。裏切られたのに。酷いことされたのに。
どうして今、私、れいこさんのこと考えているのだろう。
すみれはなおに強く抱きしめられながら、泣く。
何に対してかは自分でもわからなかった。
夜半にドアをノックする音が聞こえたので、ゆりは1人文句を言いながらドアを開けた。
「れいこ!?」
するとそこには憔悴し切ったれいこの姿があった。
唇も切れて。手も少し怪我しているようだ。
「どうしたの!?怪我してるの?」
「飼い犬に手を噛まれた。私、犬飼って苗字なのに笑っちゃう。」
そういうとれいこは、ゆりにもたれかかった。
「寝たい。一緒に寝ていい?」
「え?今からするの?」
「違う、本当に寝たいだけ。疲れちゃった。でも1人で寝るのは嫌。癪なの。」
珍しくれいこの足元がおぼつかないものだから、ゆりは慌てて彼女を抱えるように部屋に招き入れた。
れいこはゆりのベッドに行くとどさりと倒れる。
「ねぇ、本当どうしちゃったの?」
「苛立ちすぎて疲れた。こんなに苛立ったの久しぶりよ。こういう感情ってあまりしないからわからなかったけど、すごく体力使うのね。」
ゆりはため息をつくとれいこの頭を持ち上げると膝の上に乗せた。
そして、頭を撫でる。
「子供扱いはやめて。」
「子供よ。すぐ怒るし我儘だし。かと思ったらすぐテンション上がるし。あと、すぐ泣く。」
「最後は間違いね。私泣いたことないわ。」
「どうだか?」
飼い犬。
あのれいこが苛立つ。
きっとあの子ね。
「あの子、やっぱりやめておきなさいよ。貴女の手に負える相手じゃないわ。嫌な予感がするの。」
「私の手に負えない人間なんていない。」
「じゃあ、私の部屋に来ないでよ。私、あの子で悩む貴女を慰めるなんてしたくないし。私、あの子嫌いだし。」
れいこはゆりをひと睨みしたが、それ以上噛み付くことはしなかった。
そして、眠りにつく。
「どうして、こうなっちゃったのかしらね。」
ゆりがれいこを撫でながら言うと、暫く静まり返った後、れいこが呟いた。
どうやらまだ眠っていなかったらしい。
「そんなの私が一番聞きいたわよ。私だって本当はこんなこと・・・。」
「こんなこと?」
れいこの寝息が聞こえ出す。
今度は本当に寝てしまったらしい。
「私、どうしたら貴女を助けられるのかしらね。」
ゆりが窓の外を見ると月が光り輝いていた。
「どうして、こうなっちゃったのかしらね・・・。」
同刻。
すみれとなおの部屋。
「なお、ごめんね。なお、ごめんね。」
すみれとなおはシャワー室に一緒に入ってずっと身体を清め続けた。
すみれは涙をお湯に溶かしながら流す。なおは、彼女を抱きしめながらずっとシャワーを浴びている。
「すみれ、あんたは謝らなくていい。あんな悪魔に酷い目にあって・・・あんたは何も悪くない。悪くない。今回ばかりは責めるべきなのは私の方だわ。すみれを一人で行かせなければよかった。」
「なお、ごめんね。私、やっぱり馬鹿だよね。」
なおはシャワーを浴び続けて濡れている彼女の頬にキスをした。
「そうね・・・。すみれは本当に馬鹿。」
すみれはなおの胸に顔をうずめる。
なおは許してくれるだろうか。馬鹿な自分を。
そういえば、れいこさんは私が何をしても許してくれたっけ。
私は許されていたのに。なのに。
すみれがそんなことを考えていると、なおは彼女の唇に噛みついた。
「ん・・・。」
「すみれ、もう私の前でしか脱がないでよ。話さないでよ。あの人の言いなりにならないでよ。」
「しない、しないわ。もう、なおの前でしか私の身体見せない。なおの前でしか話さないわ。なおの前でしか踊らないわ。」
顔をぐしゃぐしゃにして泣くすみれの言葉になおは満足しない。
「私の前でしか・・・?だめよ、そんなことしたら駄目。貴女は誰の前でも話さないで、踊らないで。私の前でもやめて。貴女は何もできない馬鹿なのだから、ただ脱いで黙って私の言うことをただ聞けばいいの。何もしては駄目。」
「でも、なお・・・私ね、私ね・・・!話さなくてもいい、でも踊るのはやめたくないわ。」
なおはすみれの頬を思い切り叩く。
「すみれ、誰が助けたと思っているの?貴女、誰のおかげで今もいると思っているの?」
「ごめんね、なお。ごめんね。」
「絶対、何もしないで。私は、あんたが意志を持つなんて許さない。何をしていいかは私が全部決める。」
そう言うとなおはもう一度すみれにキスをした。
れいこさんは、なんて言っていたっけ。
自分で考えろって。
許されているって。
一緒に踊りましょうって。
そう言っていた気がする。
あんなに嫌なことされたのに。裏切られたのに。酷いことされたのに。
どうして今、私、れいこさんのこと考えているのだろう。
すみれはなおに強く抱きしめられながら、泣く。
何に対してかは自分でもわからなかった。
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