ゾンビワールド

お花

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3話

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 ガチャリ。

 ドアノブを捻ると、ホラーゲームのように不快な音声が俺を襲った。
 一呼吸置き、俺はそのまま力を入れて押す。

 キィィィ。

 ドアが開いた。俺は包丁を持った手に力を込め、慎重に足を踏み出す。
 生温い向かい風が顔に当たり、ビクついてしまった。
 今すぐ引き返したい気持ちを抑え、俺はドアに施錠をした。万が一、ゾンビに家を占拠されたら困る。

 
(まずは食糧だ。さっきから腹が減って仕方ない。)


 ゆくゆくはこの町を出ることになるが、まずは腹ごしらえ。
 今回のミッションは食糧を確保し、すぐこの家に帰還するといったものだ。
 幸い、近くにコンビニがある。とはいえ、3日前に襲われたあのコンビニだ。かなりのトラウマになっている。


(弱気になるな。やるしかないんだ。)


 気を引き締め直し、俺は歩を進めた。このアパートは二階建てだから、そこの角を左に曲がれば階段がある。
 
 コツコツコツ。

 足音が不気味に鳴り、緊張感が増していく。夏の昼間ということもあって、目に汗がかかり痛い。

 俺は汗を拭い、階段まで歩いた。下を見下ろすと、予想していたようにゾンビが横行していた。数は6匹といったところか。

 奴らに人の気配は感じられない。すでに生気は失われており、独特の歩法は奴らの怪物性を際立たせている。


(無理だろ。どうやって、あいつらを倒せば良いんだ。)


 俺にはゾンビ達に勝てるイメージが全く湧かなかった。そもそも、戦おうなんておこがましいのかもしれない。

 映画やゲームでは、ゾンビをバッタバッタ殺戮していく主人公が見受けられるが、現実では不可能に思える。

 俺は一旦、退却しようと体の向きを変えようとした。早く逃げたかったのだ。
 しかし、奴らのうち1匹が俺に気づいてしまった。

 俺を見つけるや否や、ソイツは全速力で走って来た。

 
「ウソ、だろ。」


 考えるより早く、俺の足は引き返す。ソイツとの距離はそこそこあるため、追いつかれることはないだろう。
 
 俺は急いで我が家の前まで走り、ドアノブを捻った。しかし、ガチャンと金属音が響き、開かない。


(しまった。鍵が……。)


 焦って鍵を出し、鍵穴にはめる。ガチャガチャと数秒格闘した末、開いた音がした。
 それと同時だっただろうか。ゾンビが階段を駆け上がり、もうすぐそこまで迫って来ていたのだ。

 それを見た時の俺の目は、たぶん死んでいたと思う。頭が真っ白になって、時が止まったかのようにも思えた。

 勿論、瞬時に我に帰り、なりふり構わずドアを引いた。そして中に入り、思い切りドアを閉める。

 ガツンと、嫌な音がした。言うまでもなく、ゾンビの方腕が挟まっている。追って来たゾンビが俺を逃すまいと、その汚い手を伸ばしてきたのだ。


(マズイ、マズイ、マズイ、マズイ。)


 俺は死にものぐるいでドアを引いた。ここを突破されたら、確実にヤられる。

 ゾンビはというと、おおよそ人とは思えない咆哮を上げ、侵入しようとしてくる。


「なんなんだよ、お前ら。死ねよ。」


 大声で叫び、俺は持っていた包丁で奴の腕を刺した。
 しかし、効果はないらしい。それどころか、より力が強まったようであった。

 もう、ダメだ。そう思った時だった。奴の腕は負荷に耐えきれず千切れ、ドアが勢いよく閉まった。俺は半ば狂い気味に鍵を掛ける。


「ハッ、ハッ、ハァ。」


 息が切れ、俺はその場に崩れ落ちた。ゾンビがドアをガンガン叩く音が鳴り響いてはいるものの、破られそうではない。
 
 安堵の反面、俺は最悪の現状に嘆いた。それは、ゾンビと対峙して分かった事だ。

 つまり、奴らには勝てないということ。

 つまり、正面から戦えば死ぬということ。


「勘弁してくれよ。」


 切り落とされた腕を見つめ、外のクソみたいなうめき声を聞きながら、俺は頭を抱えた。
 これから、どうやって生き残れば良いのか分からなくなってしまった。


 




 


 
 


 


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