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【第四話 かつき君の不思議な夏の体験記】
【4-1】
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一学期の終業式終了後。争いが勃発した。
こともあろうに場所は生徒会室。火花を散らしたふたりは才色兼備の副生徒会長、清川瑞穂――通称みずほ先輩と、この俺、黒澤克樹である。
きっかけを作ったのはみずほ先輩のほうだ。いや、俺なのかもしれない。
一学期のカリキュラムを終えた生徒会のメンバーは皆、生徒会室に集合した。
和気あいあいと今学期の総括をしながら荷物を片付ける。
宇和野先輩は晴れ晴れとした顔であいさつをする。
「皆、今季もよく頑張ってくれた、お疲れな。ちなみに皆の働きについてはよく承知している」
コホンと咳払いし、あらたまって続ける。
「円城に対する『学生お悩み相談』は今学期、なんと二十五件もあった。相変わらずの人気だな」
たびたび耳にしてはいたが、円城嘉門先輩を相談役として指名する生徒は多いとのこと。一見ぶっきらぼうに見える先輩なのに、どこに人気の秘密が?
「はい、まあ適当に答えてますけどね」
「円城先輩、適当なんっすか⁉ いったいどんな回答を……」
「いやな、先日なんか、告白して振られたっていう一年の女子が泣きながらきたもんで、いちおうアドバイスしておいたよ。『とりあえず寝ろ。起きたら友達と街に出ろ。それから甘いものを食いつつ、その男の好きだったところを百個、日記に書いておけ。一年後にそれを読め。そのときに同じ気持ちだったらもう一度告白しろ』――ってな」
「なんか、怒涛の説得っすね」
「だろ? すげえ納得したみたいで、『はい、ずっと想い続けて、もういちど勇気を出したいと思います!』って前を向いて帰っていったぞ。――まあ、一年後に日記を読み直して赤面するのは目に見えているがな」
円城先輩はうつむいてくっくと笑っている。このひと、脳の一部は悪魔の遺伝子からできているに違いない。
「だが人気がある反面、アンチも多いからな。その点は清川と違うだろ?」
「そうっすよね。円城先輩よく炎上してますもんね」
円城先輩に対しては非難的な匿名の投書が多いし、「とんでもないこと言う人だった」という陰口を聞いたこともある。けれどそんなふうに敵が多いことが円城先輩にとっての誇りらしい。そのタフネスメンタル、右に出る者はいない。
宇和野先輩はさらに続ける。
「それから『瑞穂のタウンアドベンチャー!』はいつもながら反響が大きいな」
『瑞穂のタウンアドベンチャー!』とは生徒会が発行する広報誌のコラムのひとつ。みずほ先輩が書いていて、学生への好感度はきわめて高い。そこで紹介した店舗やイベントは週末に「城西高校渋滞」という現象に見舞われるほどだ。
「いえいえそんな、みなさんの協力のおかげですよ~。かつき君の取材協力もすごく助かりましたし」
「みずほ先輩の直筆がポイント高い理由なんじゃないっすか?」
南鷹先輩が栗色の髪をかき上げながら俺に同意する。
「私もそう思うなぁ~。隠れファン多いっていうじゃない?」
褒められたみずほ先輩はちらと俺を見て困り顔。
「そんな、からかわないでくださいよぉ南鷹先輩。ファンなんていませんからー」
事実なんだから否定しなくたっていいのに。それになぜ俺の顔色を気にしたんだ?
それから南鷹先輩は面白そうにこんな提案をした。
「そうだ、夏休みの間に取材溜めしてきたらどう? 黒澤君と遠出してさ」
「ちょっ、南鷹先輩、やめてください!」
派手に両手を振って顔を赤らめるみずほ先輩。
「いやー、今年の夏は楽しくなりそうね~、黒澤君!」
「俺はいいっすよー。どこまででもお供しますってば」
一度決めたらやり抜くのが男ってもんだ。たとえそれが下僕という身分であっても。
「かつき君、みんなの前でそんなこと堂々と言わない!」
えっ、なぜ俺は拒絶された⁉ 下僕は連れられてこそ、下僕だっていうのに。存在意義を否定されたようで悔しい。
こうなったら、生徒会の最高権力者に同意を求めるしかない。
「だって公認の関係っすよ、いいじゃないっすか。ですよね、宇和野先輩?」
振り向き宇和野先輩に視線を送る。
ところが宇和野先輩の様子がおかしい。ひどく青ざめていて、わなわなと震えている。
「宇和野先輩、どうしたんすか⁉」
「黒澤……お前、夏休みはゆっくり休め。無理に取材をしちゃだめだ。あとで反動が来るぞ」
「えっ⁉ せっかく時間があるっていうのに」
「お前は気付いていないようだが、取材ってのは想像以上に精神を蝕むんだ。俺はお前が取材しすぎで廃人にならないか心配しているんだ」
「まじっすか! ううっ、宇和野先輩、優しい言葉をありがとうございます!」
宇和野先輩は何につけて俺のことを気にかけてくれる。青くなってまで心配してくれる兄貴分の先輩に胸が熱くなる。
そんな感動の余韻を残し、一学期の生徒会活動はお開きとなった。
こともあろうに場所は生徒会室。火花を散らしたふたりは才色兼備の副生徒会長、清川瑞穂――通称みずほ先輩と、この俺、黒澤克樹である。
きっかけを作ったのはみずほ先輩のほうだ。いや、俺なのかもしれない。
一学期のカリキュラムを終えた生徒会のメンバーは皆、生徒会室に集合した。
和気あいあいと今学期の総括をしながら荷物を片付ける。
宇和野先輩は晴れ晴れとした顔であいさつをする。
「皆、今季もよく頑張ってくれた、お疲れな。ちなみに皆の働きについてはよく承知している」
コホンと咳払いし、あらたまって続ける。
「円城に対する『学生お悩み相談』は今学期、なんと二十五件もあった。相変わらずの人気だな」
たびたび耳にしてはいたが、円城嘉門先輩を相談役として指名する生徒は多いとのこと。一見ぶっきらぼうに見える先輩なのに、どこに人気の秘密が?
「はい、まあ適当に答えてますけどね」
「円城先輩、適当なんっすか⁉ いったいどんな回答を……」
「いやな、先日なんか、告白して振られたっていう一年の女子が泣きながらきたもんで、いちおうアドバイスしておいたよ。『とりあえず寝ろ。起きたら友達と街に出ろ。それから甘いものを食いつつ、その男の好きだったところを百個、日記に書いておけ。一年後にそれを読め。そのときに同じ気持ちだったらもう一度告白しろ』――ってな」
「なんか、怒涛の説得っすね」
「だろ? すげえ納得したみたいで、『はい、ずっと想い続けて、もういちど勇気を出したいと思います!』って前を向いて帰っていったぞ。――まあ、一年後に日記を読み直して赤面するのは目に見えているがな」
円城先輩はうつむいてくっくと笑っている。このひと、脳の一部は悪魔の遺伝子からできているに違いない。
「だが人気がある反面、アンチも多いからな。その点は清川と違うだろ?」
「そうっすよね。円城先輩よく炎上してますもんね」
円城先輩に対しては非難的な匿名の投書が多いし、「とんでもないこと言う人だった」という陰口を聞いたこともある。けれどそんなふうに敵が多いことが円城先輩にとっての誇りらしい。そのタフネスメンタル、右に出る者はいない。
宇和野先輩はさらに続ける。
「それから『瑞穂のタウンアドベンチャー!』はいつもながら反響が大きいな」
『瑞穂のタウンアドベンチャー!』とは生徒会が発行する広報誌のコラムのひとつ。みずほ先輩が書いていて、学生への好感度はきわめて高い。そこで紹介した店舗やイベントは週末に「城西高校渋滞」という現象に見舞われるほどだ。
「いえいえそんな、みなさんの協力のおかげですよ~。かつき君の取材協力もすごく助かりましたし」
「みずほ先輩の直筆がポイント高い理由なんじゃないっすか?」
南鷹先輩が栗色の髪をかき上げながら俺に同意する。
「私もそう思うなぁ~。隠れファン多いっていうじゃない?」
褒められたみずほ先輩はちらと俺を見て困り顔。
「そんな、からかわないでくださいよぉ南鷹先輩。ファンなんていませんからー」
事実なんだから否定しなくたっていいのに。それになぜ俺の顔色を気にしたんだ?
それから南鷹先輩は面白そうにこんな提案をした。
「そうだ、夏休みの間に取材溜めしてきたらどう? 黒澤君と遠出してさ」
「ちょっ、南鷹先輩、やめてください!」
派手に両手を振って顔を赤らめるみずほ先輩。
「いやー、今年の夏は楽しくなりそうね~、黒澤君!」
「俺はいいっすよー。どこまででもお供しますってば」
一度決めたらやり抜くのが男ってもんだ。たとえそれが下僕という身分であっても。
「かつき君、みんなの前でそんなこと堂々と言わない!」
えっ、なぜ俺は拒絶された⁉ 下僕は連れられてこそ、下僕だっていうのに。存在意義を否定されたようで悔しい。
こうなったら、生徒会の最高権力者に同意を求めるしかない。
「だって公認の関係っすよ、いいじゃないっすか。ですよね、宇和野先輩?」
振り向き宇和野先輩に視線を送る。
ところが宇和野先輩の様子がおかしい。ひどく青ざめていて、わなわなと震えている。
「宇和野先輩、どうしたんすか⁉」
「黒澤……お前、夏休みはゆっくり休め。無理に取材をしちゃだめだ。あとで反動が来るぞ」
「えっ⁉ せっかく時間があるっていうのに」
「お前は気付いていないようだが、取材ってのは想像以上に精神を蝕むんだ。俺はお前が取材しすぎで廃人にならないか心配しているんだ」
「まじっすか! ううっ、宇和野先輩、優しい言葉をありがとうございます!」
宇和野先輩は何につけて俺のことを気にかけてくれる。青くなってまで心配してくれる兄貴分の先輩に胸が熱くなる。
そんな感動の余韻を残し、一学期の生徒会活動はお開きとなった。
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