リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第四話 かつき君の不思議な夏の体験記】

【4-9】

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「つまり、まよちゃんはきみの後悔が創り上げた虚像なのよ。手を差し伸べたのも、きみの本心が大切なひとにそうしてあげたいと望んでいたから。――私はそう解釈するわ」

 やけに説得力のある南鷹先輩の説明にぐうの音も出ない。けれどほんとうに虚像なのか?

「あっ、そうだ!」

 カバンから財布を取り出し、残されたレシートをかき集める。横着して溜めてしまうきらいがあるから、そのときのレシートがまだ残っているはずだ。

 一枚ずつ確認してゆく。そして十数枚あったすべてに目を通した。

 ――ない。

 たらこスパゲッティとコーラを買ったときのレシートだけは見つかった。けれどほかの品――傷の処置や手毬の修理に使った糊、それにおにぎりのぶんはまったく見つからなかった。俺は呆然とした。

 つまり、俺はひとりでイートインに腰を据え、『イマジナリーフレンド』と会話をし、たらこスパゲッティとコーラとたいらげた。その最中におじいさんの倒れた現場を目撃したことになる。

「やっぱりそうだったでしょ、納得した?」
「ええ、まぁ、なんとなく……」
「じゃあ、きみが何をしなきゃいけないかわかったかな?」

 不敵な笑みを浮かべ俺を直視する南鷹先輩。

 まさか、みずほ先輩のことを言っているのか?

 どう答えるか迷っていると、南鷹先輩は露骨にため息をついてみせた。

 それから俺の目の前でスマホを取り出し電話をかける。

 相手はすぐに出た。

 俺の地獄耳は、かすかにこぼれる声を拾い上げた。懐かしいその声に、心臓がぎゅっとつかまれる感じがした。

 南鷹先輩はすぐさま要件を切り出す。

「瑞穂ちゃん、この前誘った花火大会なんだけどさ、今夜じゃん。来れるかな? ――ああ、よかった、絶対来てね! それでね、集合場所が変更になったんだけど。――うん、天倉神社の入り口じゃなくて、浅田橋の端。駅から見て向こう岸のほうね。――ほら、そっちのほうがきれいに見えるじゃない? じゃああとでね」

 切ってから俺に目を向け、にらみながら口角を上げた。

「花火大会、ブチ切れたきみには声かけてなかったんだけどさ、生徒会で行こうってことになってたんだ。どうするの? お姫様は私の虚言のせいで路頭に迷って泣いちゃうよ」
「えっ! 待ち合わせの変更って嘘なんすか⁉」
「あたりまえじゃない。私、訂正する気はないからね。下僕のきみがどうにかしなさいよ」

 南鷹先輩は間違いなく、俺に会いに行けとけしかけている。

「いや、でも……」
「でもじゃないわよ、私としてもきみに頑張ってもらわないと困るんだから!」
「はあ?」
「あっ、いや、それはこっちの事情ね。とにかく黒澤君は適切に対処して事なきを得なさい!」

 嬉々として期待の眼差しを俺に向ける。

 南鷹先輩って、やっぱりみずほ先輩の先輩なんだな。宇和野先輩とおなじく、俺たちにめっちゃ優しい。

 そんな気持ちを反故にしちゃ、生徒会員の名折れだ。俺は迷いを振り払った。

 いや、もとより迷いなんてなかったはずだ。

「じゃあ、とにかく様子を見てきます」
「様子見るだけじゃダメだってば。ちゃんとエスコートしなくちゃ」
「エスコートっすか。それって……」
「男らしく対応することに決まってるじゃない」
「わかりました、下僕一号、出動しまーす!」
「よし、じゃあ私もそろそろ引き上げるわ。準備も必要だし。――それじゃ、お互い楽しもうね」
「了解っす!」
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