リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【間奏 南鷹先輩の「お・た・の・し・み」】

【間奏②ー2】

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「「よし、できました!」」

 ふたりは同時に振り向き声を揃えて言いました。

 ほかの生徒会員もわらわらと中央の机に集まってきます。黒澤君が午後三時近辺に良い働きをするので、生徒会員たちはもはやパブロフのワンちゃん状態です。

 彼の生徒会入会は、いろんな意味で私に新たな楽しみをもたらしてくれました。

「どうもありがとう~!」

 うわのそらとなった隣人を置き去りにして私もデザートを拝見しに行きます。

 グラスがむっつ、置かれていました。全員分、用意してくれたようです。

 目を凝らしてグラスの中をのぞき込みます。

 淡いクリーム色のバナナ、鮮やかな黄色のパイナップル、白と緑のコントラストが映えるキウイ。てっぺんにちょこんと載せられた佐藤錦は上品なオレンジ色。いずれも色鮮やかで目が奪われます。

 そんなアイドルたちを包み込むのは、透き通ったゼリーのようです。プルプルとふるえています。

 グラスの中ではキラキラと光が瞬き、まるで清らかな川の流れのよう。

 私は惜しげもなく喜びを表現し、グラスを受け取ると、たまらず銀の匙でひとすくいします。

 ゼリーとフルーツは歓喜の声をあげるように匙の上で踊りました。もはや自分自身を止めることができません。

 皆も机に並んで腰を据えました。

「「「「「では、いただきまーす」」」」」

 ぱくっ!

 爽やかな果物の香りとほどよい酸味が一気に口の中に広がりました。

 原産地はきっと異なるだろうに、長い旅の果てに果実たちは私の口内でめぐりあいました。まるでそれが運命だったかのように、フルーツたちは息の合ったハーモニーを奏でているのです。

 シロップの甘さが先をゆくフルーツたちを、そして私の味蕾《みらい》を追いかけてきました。流れ雲のようなふりをしてフルーツの酸味に調和し、初秋の午後の風景を鮮やかに彩ります。

 そのときです。

 何かが口の中で弾け、穏やかな味の世界に波しぶきが立ったのです。舞い上がる泡沫の刺激は私の舌に降り注ぎ、味の感覚を支配していきます。

 なんなのでしょうか、この爽快な刺激は。

 ――そうか、これが彼特製のフルーツポンチに隠された秘密だったのね。

 フルーツの上に乗った透明なゼリーは、爽やかな刺激を内に秘めた、サイダーでできたゼリーだったのです。

 のどかなひとときの味わいのはずだというのに、まるで季節の移り変わりのように味覚の世界が色を変えてゆきます。たった一口で、味の記憶が脳裏に焼きついて離れません。

 黒澤君がこんな斬新なデザートを、午後のひとときのために準備していたとは驚きです。

 残暑が支配する世界において、この爽快な刺激は罪です。大罪です。胃袋大泥棒です。

「フルーツと缶詰とサイダーゼリーだけで、こんなに美味しいフルーツポンチになるなんて驚きね」

 絶賛すると、黒澤君は照れた様子でそっぽを向きました。

「みずほ先輩が果物カットうまかったからっすよ」
「いえいえそんな。コツは缶詰のシロップを入れることみたいです。――って、かつき君が教えてくれました」
「お互い讃え合うなんて、最高の相棒じゃないの」

 私だって大絶賛です。褒めておけば、また次もデザートが出てきますからね。

「ほんと、かつき君は演出が素敵なんですよ」
「まさか、俺なんてこの中で例えればさしずめさくらんぼの種っす。食えないゴミ野郎っすよ」

 そう言う黒澤君を、瑞穂ちゃんは不満そうな顔で見ていました。

「謙虚なのは悪いことじゃないんだけどさ。かつき君はもうちょっと自分のことを認めてあげてもいいと思うんだよね」
「いやいや、生きてるだけで十分丸儲けっすよ。それより俺はみずほ先輩のほうが不思議でならないっすよ」
「ん、どんなところが?」

 おおっ、彼が瑞穂ちゃんをどんなふうに思っているのか、それは興味深いところです。

 瑞穂ちゃんのスプーンを持つ手の動きが止まりました。

「だって、普段は凛としていて気高い感じの人なのに、俺と取材に行くときはほんとバタバタしてるんですもん。落ち着きがないっていうか、浮かれてるっていうか――」

 ふたりは顔を見合わせました。黒澤君は真顔ですが、瑞穂ちゃんははずかしそうな顔をしています。

 ――それ、原因は黒澤君にあるんじゃない?

 思いっきり口に出したくなりました。けれど自制心が必死に食い止めます。

 けっして彼自身の認識を修正してはいけません。今のバランスを崩したら、はなくなってしまうのですから。

 ちらと宇和野君を見やると、まだまだ絶賛放心状態のようです。

 彼がこの後どんな行動に出るのか、待ち遠しくて目が離せません。

 そう思っていると、いつのまにか私が握るスプーンはグラスの隅から隅までを支配し尽くしました。目の前にあったはずの味の秘境は、すべて消えてなくなったのです。

 ああ……。

 満たされた、けれどもっと食べたい。


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