58 / 68
【第七話 みずほ先輩と美術部の不思議な絵】
【7-4】
しおりを挟む
★
翌日の一限目が終わった休み時間。みずほ先輩はふいに俺のクラスを訪れた。
まわりがざわめいていたから何事かと思ったけど、みずほ先輩の登場にクラス中が色めき立ったようだ。
「あの生徒会長がご降臨なされたぞ!」
みずほ先輩に免疫のない一年生は、まるで女神を目撃したかのように驚嘆する。
俺のクラスに何の用かと思ったけど、みずほ先輩は俺を見つけるやいなや、あわてた様子で話しかけてきた。
「ねえ、かつき君。あの絵、見た?」
「先日、一緒に見たじゃないっすか」
「そうじゃないのよ、一緒に来て!」
腕を強引に引っ張られ、教室から連れ出された。
「いったいなんなんすか、みずほ先輩!」
「見てみればわかるから!」
俺はこのひとの下僕だっていうことは、生徒会内の秘密にしておくつもりなのに。バレたらクラスメイトから茶化されそうだ。
けれど美術部の壁の前に立った瞬間、そんなことは思考から吹っ飛んだ。
「まさか、そんなことって……」
例の絵が、さらに描き換えられていたのだ。
村本先輩の姿がすっかりもとに戻されていた。しかも顔が空ではなく右を向いていた。結奈のほうだ。
そして今度は、鮎川先輩の姿が消滅していたのだ。背筋が凍りついたように冷たくなる。
「これ、やっぱり幽霊の仕業っすね」
「そんなわけないでしょ!」
「ところで、消えた本人たち、村本先輩と鮎川先輩はこの現象に心当たりあるんですかね」
「三年生の先輩方のことだから、わたしだって気安く訊けないわよ」
接点のない先輩方に事情を尋ねるのは無理だろう。そこで俺は思いつく。
「そうだ、宇和野先輩に聞いてみたらどうっすか」
「そうね、それが近道かも」
すぐさま宇和野先輩にスマホでメッセージを送る。
『あの絵がまた描き換えられてました』
ふたりで画面を見ていると、すぐに返事がきた。
『おせーよ。それ皆知ってる』
奇妙な現象の噂は瞬く間に校内を駆け巡ったようだ。
『すいません。ところで消えた絵の張本人、村本先輩と鮎川先輩って知ってます?』
『ああ、鮎川のほうはクラスメイトだけど』
しめた、何らかの情報が手に入るかも。
『あのふたりって仲良かったみたいですけど、その後どうなったかわかります?』
『どこまで行ったかってことか?』
『そうじゃないっす! どこに行くかです、進路のことです!』
宇和野先輩は人格者だがネジが微妙にずれている。それなのに受験は全勝だったらしい。世の中何が正義なのか俺にはさっぱりだ。
『ああ、鮎川は東京の国立大に受かったけど、村本のほうは知らないな。そっちのクラスの奴に聞いてみる』
『ありがとうございます』
『でもたぶん落ちてると思う』
画面に表示されたその一文に、俺とみずほ先輩は顔を見合わせた。
『鮎川、やけに元気なかったからさ』
そのメッセージを目にした俺は、それ以上何も返せないでいた。
解散し家に帰る途中、俺は結奈に電話をかけた。連絡先は交換済みだった。
数回コール音が鳴ったけど留守電になった。しかたなくメッセージを送る。
『あの絵がまた描き換えられていた件で、心当たりあるかな』
しばらく待ったが返事はなかった。今日は美術部の活動がないはずだから、すぐに返事が来ると思ったのに。
腑に落ちないでいると、かわりに宇和野先輩から折り返しの連絡があった。
『村本の受験の結果だけどな。実はな――』
宇和野先輩が聞き込みをした結果は予想通りで、村本先輩は国立大学には不合格で、地元の私立大学に通うことになった、とのことだった。
翌日の一限目が終わった休み時間。みずほ先輩はふいに俺のクラスを訪れた。
まわりがざわめいていたから何事かと思ったけど、みずほ先輩の登場にクラス中が色めき立ったようだ。
「あの生徒会長がご降臨なされたぞ!」
みずほ先輩に免疫のない一年生は、まるで女神を目撃したかのように驚嘆する。
俺のクラスに何の用かと思ったけど、みずほ先輩は俺を見つけるやいなや、あわてた様子で話しかけてきた。
「ねえ、かつき君。あの絵、見た?」
「先日、一緒に見たじゃないっすか」
「そうじゃないのよ、一緒に来て!」
腕を強引に引っ張られ、教室から連れ出された。
「いったいなんなんすか、みずほ先輩!」
「見てみればわかるから!」
俺はこのひとの下僕だっていうことは、生徒会内の秘密にしておくつもりなのに。バレたらクラスメイトから茶化されそうだ。
けれど美術部の壁の前に立った瞬間、そんなことは思考から吹っ飛んだ。
「まさか、そんなことって……」
例の絵が、さらに描き換えられていたのだ。
村本先輩の姿がすっかりもとに戻されていた。しかも顔が空ではなく右を向いていた。結奈のほうだ。
そして今度は、鮎川先輩の姿が消滅していたのだ。背筋が凍りついたように冷たくなる。
「これ、やっぱり幽霊の仕業っすね」
「そんなわけないでしょ!」
「ところで、消えた本人たち、村本先輩と鮎川先輩はこの現象に心当たりあるんですかね」
「三年生の先輩方のことだから、わたしだって気安く訊けないわよ」
接点のない先輩方に事情を尋ねるのは無理だろう。そこで俺は思いつく。
「そうだ、宇和野先輩に聞いてみたらどうっすか」
「そうね、それが近道かも」
すぐさま宇和野先輩にスマホでメッセージを送る。
『あの絵がまた描き換えられてました』
ふたりで画面を見ていると、すぐに返事がきた。
『おせーよ。それ皆知ってる』
奇妙な現象の噂は瞬く間に校内を駆け巡ったようだ。
『すいません。ところで消えた絵の張本人、村本先輩と鮎川先輩って知ってます?』
『ああ、鮎川のほうはクラスメイトだけど』
しめた、何らかの情報が手に入るかも。
『あのふたりって仲良かったみたいですけど、その後どうなったかわかります?』
『どこまで行ったかってことか?』
『そうじゃないっす! どこに行くかです、進路のことです!』
宇和野先輩は人格者だがネジが微妙にずれている。それなのに受験は全勝だったらしい。世の中何が正義なのか俺にはさっぱりだ。
『ああ、鮎川は東京の国立大に受かったけど、村本のほうは知らないな。そっちのクラスの奴に聞いてみる』
『ありがとうございます』
『でもたぶん落ちてると思う』
画面に表示されたその一文に、俺とみずほ先輩は顔を見合わせた。
『鮎川、やけに元気なかったからさ』
そのメッセージを目にした俺は、それ以上何も返せないでいた。
解散し家に帰る途中、俺は結奈に電話をかけた。連絡先は交換済みだった。
数回コール音が鳴ったけど留守電になった。しかたなくメッセージを送る。
『あの絵がまた描き換えられていた件で、心当たりあるかな』
しばらく待ったが返事はなかった。今日は美術部の活動がないはずだから、すぐに返事が来ると思ったのに。
腑に落ちないでいると、かわりに宇和野先輩から折り返しの連絡があった。
『村本の受験の結果だけどな。実はな――』
宇和野先輩が聞き込みをした結果は予想通りで、村本先輩は国立大学には不合格で、地元の私立大学に通うことになった、とのことだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる