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奴隷生活と悪名一家

10 (14歳)

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いつもより少し遅れて使用人用の食堂へ行くと、もう既にガイザダルはいた。こっちだと手招きされ、その隣に腰を下ろした。

「なんでお前そんなにキッチリボタンとめてるんだ?………まぁ、そういう日もあるよな…」

自己完結してくれたようだ。こちらとしては物凄くありがたい。だが、黙っている空夜になにか思ったのか、本題に入ってくれた。

「この紙だ。後で読んでいてくれ…じゃあ俺は先に…」

どうやら既に飯を食べた終えたようだ。紙をこっそり空夜の分と思われる飯の下に入れると、席を立ち食堂を出ていった。

(……あっぶねぇ…にしてもいつ読むか…ってそう言えば専属外されてたんだわ…裏の方やれって言われてんだから昼間にしてた事無くなったからな。丁度良い…か?)

舌のない状態での飯は味気がほぼしなかったが食い終わると、屋根裏に割り当てられている自室へ向かった。

いつもの様に大きな窓がある場所に腰掛けると、ガイザダルから貰った紙を見た。

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作戦の決行は夜12時
屋敷の裏口から侵入する。証拠となる書物を見つけたら直ちにデブラフィ一家を捕え、王都に向かう。そしてその書物を王に提出し、裁判にかける。958番には書物の在り処や、アイツらの囲っている猛者たちを何とかしてもらいたい。

ガイザダル
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これを見た空夜は1つ大きなため息を吐くと、デブラフィが初めて空夜に裏の仕事をさせた時に案内した部屋に向かった。

因みにではあるが、空夜には【奴隷】の証である黒く太い首輪と足枷が付けられている。手枷は作業の邪魔なので外されているのだ。

そんな事を説明している内に部屋についた。その部屋には大量の武器や防具。そして薬が置いてあった。その中から迷うこと無く1つの瓶をとると、そのまま食堂へ向かった。

そして食堂でクッキーを作り出したのだ。生地を練る際に瓶の蓋を開け、中の粉を混ぜこんだ。そして型抜きをした後に更に上からふりかけた。見た目は白色をしていて砂糖にみえるその粉は、【眠り粉】と呼ばれるものだ。【スリープ草】と呼ばれる草が咲かせる花の花粉が睡眠薬と同じ効果を持つのだ。それも1gでその日は何があっても目を覚まさない程…

それを惜しげも無くふんだんに使ったクッキーは、食べたものを眠りに誘う。主人に逆らうなと【命令】されているため、魔法を使うことは出来ない。その為差し入れと称して睡眠薬の作用を持つクッキーを渡せば眠りにつくこと間違いなしなのだ。

しかもこの【スリープ草】の花粉は即効性があるものでは無い。この粉が効き始めるのは太陽が出ていない時なのだ。つまり、昼間に飲ませても全く意味を持たない。夜に効く薬なのだ。

(まぁ、昼間に摂取させればその日の夜は全く起きないからな…こんなけ入れれば十分だろ)

焼きあがったクッキー(超強力な睡眠剤入り)はとても美味しそうなきつね色をしていた。そしてふわりと香る甘そうな匂い。誰もが疑いもせず食べるだろう。

そしていくつかの箱に詰めるとその箱を侍女室の窓に、執事室の机の上に、デブラフィの執務室に、アルティナの部屋に、裏仕事に割り当てられた人達の建物に置いた。

もちろんガイザダルには食べるなと伝えてある。そしてアイシャのお茶の時間に出る予定のお菓子達にも紛れ込ませた。

(さて…あとは書類だが……大体こういう時は執務室の隣の部屋にある書庫にお決まりがあるんだよな)

そう思うが早いか書庫に向かった。途中で侍女や執事。そして裏仕事人に会ったが、皆笑顔でありがとうございます。とお礼を言ってきたので、思惑通り食べたらしい。鑑定を使って状態を調べると【睡眠薬投与】と出ている。

幸いな事にこの屋敷で鑑定を使えるのはガイザダルと空夜の2人だけだ、鑑定で確かめ回ったので間違いない。その為彼はこの作戦を思いついたのだ。

書庫に入るとデブラフィやアルティナ。もしくはアイシャが本を読みやすい様にと設けられた机の下を覗いて見た。するとカーペットの下から魔法陣が少し見えた。退かしてみると通常よりも小型描かれているのだった。

取り敢えず、と思いそこに魔力を流すと机の下に階段が現れたのだった。薄暗いが僅かに光が差し込んでいるため、見ることが出来た。かなり地下深くまで続いているようだ。

(取り敢えず【隠蔽】)

スキルの1つである【隠蔽】。効果は名前の通り、物を隠したりするものだ。あまり使い所が無いかと思われていたスキルだが、案外使う用途はあるようだ。

1件見ただけだといつも通りの机に椅子だが、机の下に手を入れると下に続く階段に出る。と言うわけだ。とすると、見た目だけでも隠すことが出来るのなら自分の首にある大きな傷も隠すこともできるのではないか、そう考えた空夜は試しとばかりにやってみた。

(あ~…【隠蔽】って、出来るのかよ)

ならもっと早くやっておけば良かったと思いつつも、首の傷も階段も見た目上隠せたため、空夜は階段を降りていった。もっとも【隠蔽】以外に【偽装】と言うスキルを持っていたと知るのはまだ後の話…

















この度モご観覧アリがとうございマス!
次回モよろシクお願いシマす!!
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