ただ溺愛したいだけ。〜好きな人の弟が邪魔してくるのでまとめて面倒見ることにした

Raychell

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【紬】思ったより多難かも

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 なんでこうなった?

 深いため息を吐く。隣で同じベッドに腰掛けている男も、俺を習ってなのか、同じようにため息をついた。

「よし。覚悟できました。どうぞ」

 そして、こっちを向いて両手を広げた。
 仕方ない。やるしかない。だから、できることまでやってみよう。よく見たら彼は、パッとみただけでもわかるレベルで顔が良い。体つきなんか、完璧と言えるほど均整が取れていて、羨ましいくらいだ。

「じゃあ、よろしくお願いしますー」

 適当な挨拶をして、両腕の下から背中に手を回し、首元に顔を埋め、ベッドに押し倒す。

 さて、こいつはどんなのが好きなんだろうか。



 専門学校時代の思い出にと、ちょっと頑張ってみたけどセフレ未満で関係が止まっていた後輩の由季也と、どうにか進展しようと頑張った結果、セックスする約束までは取り付けた。その条件として焼き肉を奢ることになり、店へ行ったらこいつ、由季也の弟がいた。

「先輩。紹介します。弟です」

 弟君は、由季也よりでかい。でかいと言っても、背が高く、何かスポーツをしているのだろうか、しっかりと筋肉がついている。そんな体つきで真面目そうなメガネをかけているのでギャップがあった。

「弟の亜生アオイです。いつも兄がお世話になっています」

 亜生くんはニコリともせずに挨拶をした。
 可愛くない。
 それが彼の第一印象だった。

「ええと、橘花タチバナです。いつもお兄さんにはお世話になってます」

 主に下のお世話ですが。と思うとどう表情を作っていいのかわからなくて、変ににやけてしまった。それに釣られたのか由季也が斜向かいでえへへと笑った。可愛いけれども、このタイミングじゃねぇな。と思う。
 亜生君は、その様子をチラッとみた後、こちらに視線を戻す。

「下のお名前は?」

橘花紬タチバナツムギです」

「ツムギさんですか……」

 沈黙。
 
 この弾まない空気をどうにかしてほしいと、由季也に視線で助けを求める。彼は俺の視線に気がつくと何を勘違いしたのか、微笑んで小さく手を振った。可愛いけど、それじゃないんだわ。この可愛くない弟をどうにかしてほしいんだわ。

「ええっと、じゃあ、注文しようか。食べ放題コースでよろしく」

 誰もアテにならないので、自分でどうにかするしかないと悟る。それにしても由季也はなぜ、セックスの代償として焼き肉を奢られる場に弟なんかを連れてきて、なんかちょっと嬉しそうにしているんだろうか。理解できない。

「すみませーん、店員さーん。キムチと上ロースとネギタン塩。あとレモンサワー、濃いめでー」

 理解できなすぎるから、酔っ払うことにした。

「えーと、カルビ3人分、それとライス」
 
 由季也は肉といえばライス派か。可愛いかよ。

「僕はナムル盛り合わせと、チョレギサラダ、サンチュで」

 亜生君はなんなんだ? ウサギかな。本当に何しに来たんだよ。

 しかし、焼き肉は偉大だった。亜生君は自分の野菜を黙々と、よく噛みながら行儀良く食べているので、もはや空気だったし、由季也が肉とごはんをもりもり食べる姿をみながらのレモンサワーは美味かった。

 つまみにして酒が飲めるとか、思ったより自分が由季也のことを好きで驚く。気分良く、いい感じに酔いも回ってきたところで、ようやく話題を亜生君に向けた。

「それで、なんで今日は弟君がここにいるわけぇ?」

「兄さんの恋人にふさわしいか、僕が見定めるためですね」

「は? え? ユキヤ君? どゆこと?」

「だから紬さんを見定めるためですって」

 亜生君が補足する。

「アオイ君じゃないんだわ。ユキヤ君に聞いてるんだわ」

 水を向けられた由季也は、とりあえず口の中のものをもぐもぐして飲み込み、ちょっと照れた様子で言った。

「おれね、先輩のこと、好きになっちゃったかもしれないから、弟に紹介しようと思って」

「うん。そのことは聞いてたけど、好きになったのと弟に紹介が繋がらないんだけど」

「だから、兄に好きな人ができたら、まず僕が試します。それで合格したら、やっと兄と付き合うことができるシステムなんです」

 やたらと通る声で亜生君が割って入る。

「何だよそのシステム?! 試すって何をだよ」

「男女交際を。ですよ」

 亜生君は、はたと口元を押さえて言い直した。

「ええっと、恋人同士の交際です。金使い、思いやり、やさしさ、勤勉さ、体の相性などをしっかりチェックします」

 まじかよ。
 言葉にならなくて、またしても視線で由季也に助けを求める。彼は少し申し訳なさそうに微笑んで、軽く頭を下げた。だから、由季也は綺麗な顔立ちをしているのにこれまで童貞だったんだろうか。合格者は果たして出たことがあるんだろうか。そもそも、由季也がどんなのが好きとか、亜生君は知っているのか? どうでもいいことばかりが頭の中をぐるぐる回る。そのくらい理解が追いつかない。

「男は僕も初めてです。よろしくお願いします」

 亜生君は立ち上がり、深くお辞儀をして、握手を求めてきた。

「お? おう?」

 この時、俺は冷静に物事を考えるには酔っぱらいすぎていた。条件反射で亜生君の手を握り返す。

「じゃあ、ホテル行こうか、ツムギ」

 顔を上げたアオイ君は今日イチの笑顔を見せる。距離感もよくわからないうちに急に縮められた。そして俺はいい感じに酔っ払っている。

「オッケー! アオイちゃん。優しくしてあげる」

 仕方がない。合格してやろうじゃないか。俺と由季也の思い出のために。



 そんなこんなで、こうなったのだった。
 こうなったからにはベストを尽くそうと思う。
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