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塩らいち
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「レースのね、いい感じのがなかなかなくてさぁ……編んじゃおうかな」
らいちは雑誌をめくりながら、独り言のように呟く。
「まじか。レースって編めるのか?」
一応レスポンスをするが、聞こえていないのか聞いていないのか、返事は返ってこない。
「今からレース編みを始めて、思ったようなものが作れるくらい上手くなるのはいつなのよ?」
呆れたような声で突っ込むドラゴンさん。俺たちは仕事を終えて寝る前の時間を、グダグダと過ごしていた。
最近のらいちは、店で開くことになった橘平とクコちゃんの結婚式に向けて、花嫁衣装や食事メニュー、店内の装飾、などなどを準備している。本を読んだり、何かを作ったり、飾ったり、しまったりと忙しい。夜も遅くまで調べ事や作業をしていて、俺に話しかけたと思えば、料理の試作と言って、あれこれ作らせてくる。不用意に話しかけたら、また何かを作らされそうで、こっちも少し遠巻きに見ている。
今もリビングに布やらビーズやら、よくわからないものが広がっていて、ごちゃごちゃしている。それもここのところ毎日なので、俺もドラゴンさんも慣れてしまっていた。
「だよねー間に合わないよねぇ……でもさぁ、やっぱドレス可愛いぃ……レースたっぷりのドレスなんて花嫁くらいしか着れないんだよねぇ……」
結婚式を挙げる人向けの雑誌を眺めながら、らいちはうっとりと呟く。
式を挙げる2人は当初、書類を提出して少しだけ特別な食事をして……とだけ考えていたようだったが、新婦のクコちゃんがつわりで食べられるものが非常に少ないのと、ちょっとお高い店が苦手なのとで、融通の効きそうな俺のいる店に白羽の矢が立った。
その2人の特別な日を演出するということで、らいちはものすごく張り切っていて、必要以上に綿密に計画を立てた末に、事は雪だるま式に大ごとになっていった。
俺はそんな彼女を微笑ましいと思う反面、熱中しすぎる姿に少し困惑している。
「さぁて、私は寝ようかしらぁ」
ドラゴンさんが顔に貼り付けたシートパックを剥がして、あくびをした。
「らいちちゃんも、ちゃんと夜は寝ないとダメよーなんて、水商売のわたしが言っちゃったりなんかしてー」
「はーい……」
生返事のらいちを残して、ドラゴンさんはリビングを後にする。俺も続いて部屋に戻ることにした。
「らいち。おやすみ」
「うん……」
塩対応の彼女を置いてリビングを離れる。
「もしもしー? クコちゃん起きてたー? 夜中にごめんねー」
その直後、背後から電話をする楽しげな声が聞こえてきた。
俺以外の人と楽しくしている様子が、余計寂しく感じさせた。
らいちは雑誌をめくりながら、独り言のように呟く。
「まじか。レースって編めるのか?」
一応レスポンスをするが、聞こえていないのか聞いていないのか、返事は返ってこない。
「今からレース編みを始めて、思ったようなものが作れるくらい上手くなるのはいつなのよ?」
呆れたような声で突っ込むドラゴンさん。俺たちは仕事を終えて寝る前の時間を、グダグダと過ごしていた。
最近のらいちは、店で開くことになった橘平とクコちゃんの結婚式に向けて、花嫁衣装や食事メニュー、店内の装飾、などなどを準備している。本を読んだり、何かを作ったり、飾ったり、しまったりと忙しい。夜も遅くまで調べ事や作業をしていて、俺に話しかけたと思えば、料理の試作と言って、あれこれ作らせてくる。不用意に話しかけたら、また何かを作らされそうで、こっちも少し遠巻きに見ている。
今もリビングに布やらビーズやら、よくわからないものが広がっていて、ごちゃごちゃしている。それもここのところ毎日なので、俺もドラゴンさんも慣れてしまっていた。
「だよねー間に合わないよねぇ……でもさぁ、やっぱドレス可愛いぃ……レースたっぷりのドレスなんて花嫁くらいしか着れないんだよねぇ……」
結婚式を挙げる人向けの雑誌を眺めながら、らいちはうっとりと呟く。
式を挙げる2人は当初、書類を提出して少しだけ特別な食事をして……とだけ考えていたようだったが、新婦のクコちゃんがつわりで食べられるものが非常に少ないのと、ちょっとお高い店が苦手なのとで、融通の効きそうな俺のいる店に白羽の矢が立った。
その2人の特別な日を演出するということで、らいちはものすごく張り切っていて、必要以上に綿密に計画を立てた末に、事は雪だるま式に大ごとになっていった。
俺はそんな彼女を微笑ましいと思う反面、熱中しすぎる姿に少し困惑している。
「さぁて、私は寝ようかしらぁ」
ドラゴンさんが顔に貼り付けたシートパックを剥がして、あくびをした。
「らいちちゃんも、ちゃんと夜は寝ないとダメよーなんて、水商売のわたしが言っちゃったりなんかしてー」
「はーい……」
生返事のらいちを残して、ドラゴンさんはリビングを後にする。俺も続いて部屋に戻ることにした。
「らいち。おやすみ」
「うん……」
塩対応の彼女を置いてリビングを離れる。
「もしもしー? クコちゃん起きてたー? 夜中にごめんねー」
その直後、背後から電話をする楽しげな声が聞こえてきた。
俺以外の人と楽しくしている様子が、余計寂しく感じさせた。
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