嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

文字の大きさ
17 / 45
聖女さん、帝国へ行く

私、名監督になります!

しおりを挟む
「「「ギィャァァァァァァ!!?!?」」」

 馬車の上からこんにちは。ドラゴンなセレスティアさん、略してドラティアさんです。がおー!

 私が今何をやっているのかと言うと、悲鳴からも分かります通り、トカゲの死体金貨百枚を掴んでガオガオやってました。

 街に入るに当たって、ちょっと遊んでやろう!(ニッチャリ) と思ったので、弟子を寝かせた後に馬車の上に登って、トカゲを動かしていたんです。魔法を使って。

 私はこれでいて結構凝り性な性格ですから、トカゲに生えた一対二枚の翼をバサバサと動かし、尻尾もブンブンさせながら、まるで本当に飛んでいるかのように演出家しました。

 その結果どうなったか。

 言うまでもないですが、街中がてんやわんやの大騒ぎです。カンカンカンカンと金まで鳴らし始めて、二分後くらいには赤い旗がデカデカと掲げられました。

 あのー、皆さん。よく見てください? そのトカゲ、腹に穴が空いてますよ。内臓もぴょこっと飛び出してますよ? 明らかに死んでるじゃないですか……。そんなに慌てなくても……。

「……うーん。ビビりな方が多いんですね。もうそろそろ遊ぶのも止めましょうか」

 私は込めていた魔力を霧散させ、死体を操っていた魔法を解きました。一応このトカゲは商品になっているので、地面にドカーン! と墜落させることは無いですが。ビューンと落として、バサッ! という感じに着陸です。

「……おい嬢ちゃん。これ、どうすんだ……? こんな状態じゃあ街に入れねぇぞ?」
「??? さあ?」

 私に聞かれても困ります。ワイワイやってるのは街の住人さんたちだし、こんなトカゲ一匹にビビり散らすのが悪いです。だから私は悪くないのです。

「さあって……」

 商人さんが呆れていますが、最悪の場合はアレです。最強の交渉術を使えば大丈夫です。応用編ってやつですね!

 それに、どうせこの国は近い内に滅びるのですから、私がちょっと街を半壊させるくらいなら、全然問題ないと思うんですよね。こんな国いらないですし。

「……ここまで来といて野宿とか、マジで勘弁だぞ……。最近は魔物の出現率も異常だし、安心して休めやしねぇ」

 まあ、魔物たちしてみれば、今までは私の結界でヨワヨワにされていた訳ですからね。それが無くなった瞬間に鬱憤を晴らし始めるのは、ある意味普通のことですよね。

 王国がんば(笑)

 商人さんが本格的に頭を抱え始めたので、安心させる為に優しい私が、一つだけいい情報をあげます。

「門を開けてくれなかったら、最悪私がこじ開けますよ? だから、入れないということはないです。襲いかかってくる人は私が殲滅しますし。問題ナシ! です」
「問題大ありじゃ! 嬢ちゃんは過激というか、物騒過ぎるんだよ! もっと穏やかな解決法を考えてくれ!」

 むー。別にいいと思うんですけど……。でも、商人さんがそう言うなら仕方ないですよね。何がいいかなぁ……。

「あっ! そうですそうです! あのトカゲを、今ここで討伐したことにしちゃいましょう!」

 ポカンとする皆さんを置いて、私はもう一度トカゲを空へと飛ばします。バサッバサッと翼まで動かしてね!

「あ、じゃあ皆さん、討伐よろしくお願いしますね! ちゃんと私がサポートするので、安心して任せてください!」
「「「「「???」」」」」

 ここまで来るのに、魔物を倒したり魔物を倒したり魔物を倒したりと色々なことがありましたが、私は気付いたのです。結界のリソース、デカすぎ。と。

 それが無くなった今、普通の単発魔法なら、最大で一万くらいは一度で撃てそうなのです。こうやって誰か、何かを操る感じの魔法でも、十くらいなら余裕ですね。

 まあつまり、トカゲの死体と初級冒険者|(本当はAランク)を操って、炎とか氷とか雷とかでドンパチやって激戦を演出するわけです。

 気分は監督! 私が全てを動かすのだ!

「はい、では行ってらっしゃい!」
「「「「「……へぁッーー」」」」」

 ビューン

 初級冒険者|(Aランクです)とは言え、身体は丈夫そうでしたし、強化の魔法もかけておいたので、多少雑に扱っても問題ないでしょう。うんうん。
 ……細かく動かすのって、メンドくさいんですよね。

「おっといけない。指示を出さねば。とりあえず、派手さを演出するなら炎一択ですよね! てことでファイヤー!」

 ゴォォオォォォォ

 トカゲの口元から、炎が吹き出され(たように見せ)ました。風魔法で音もおっきくしているので、迫力満点です。あっ、地面も焦がしておきましょうか。ボォォっと。

 攻撃が来たら、次は反撃です!

「とりあえず雷と炎ですよね! えいやー! っと。氷も付けておきましょう。ほいさ!」

 雷を纏って突撃していくさせられている冒険者Aと、前に掲げ(させ)た両手から炎を放射している(ように見える)冒険者B。そして、氷のつぶてを幾つも空中に生成していく冒険者C。最後の人は、大きな大剣を振り上げながら、空中を滑るように移動させます。

 冒険者Aは、自らも黒焦げになりながら、トカゲを弱らせていきます。その隙に、炎がトカゲの頭(回復魔法で生やした)を焼き、氷柱が刺さっていきます。そして最後は、大剣で斬! っと。

 多分こんなヘボ魔法じゃ死なないと思いますけど、もういいかな。十分演出はしましたし。

「……うんうん。なんかもう飽きましたし、これで殺しときましょう」

 邪魔だからと殺され、飽きたからと殺される。非常に哀れなドラゴンさんなのであった。まる。

『グルォォォォ……ォォォ……』

 バタ

 シーン

 あれ、さすがに適当すぎたでしょうか……? よし、ここはサクラで大歓声を演出です!
 まずは街の方から、

「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!! トカーードラゴンが討伐されたぞぉぉぉぉお!!!!!」」」」」

 合計八箇所くらいにうおー! な音を発生させましたけど、今考えればおかしいですよね。壁で見えないのに喜び始めるんですし、何より、人が居ないところから歓声が聞こえてくるんですから。

 これじゃあまるで、オバケさんが喜んでるみたいです。
 まあでも、サクラ要員なので関係ないです。こういうのは、一度声が上がったらそのまま流されていくものですからね。その証拠に、

「「「「「うぉぉおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」

 割れんばかりの大歓声が、街の方から鳴り響いて来ました。
 これで私たちは英雄ですね。

「商人さん、街には入れると思います。しかもしかも、きっと大歓迎してくれますよ!」
「……酷いマッチポンプだ」

 ふっ……。

════════════════
※次話は、このお話と同じものです。細部が少し違っていて、ネタに振ってます。

読み飛ばし、もちろんOKです。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

処理中です...