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私、帝国領で暴れます!

私、初めての修行をつけます!

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 バチバチベチベチと頬を叩いていると、やっと弟子が起きました。

「ん、んぅ……。ここ、は……?」
「おはようございます。弟子。今から魔物の討伐に行くので、とっとと目を醒ましてください」

 特に意味はないが、敢えて言っておこう。どこかの誰かは、護衛を務めているはずの商隊が大量の魔物に襲われている中、全く目を醒まさず、それどころかその後数時間に渡って寝続けた、と。特に意味はないが、言っておこう。そして、誰とも言わないが。

 ちなみにであるが、セレスティアさんは、弟子とした少年のことを10歳程度と認識している。にも関わらず、超高速ジェットコースターを生身で体験させ、気絶したところを叩いて起こし、かと思えば、即座に目を醒ませと命令するのである。鬼畜である。

 この少年は、実際の年齢は15歳であるのだが、それはまあ置いておいて。

 眠たい目を擦りながら、頑張って起きようとしている少年を見ながら、セレスティアさんは言う。

「弟子。早く起きなさい。戦場では一秒が命取りになるんですよ」

 ……どの口が、とは言わないお約束である。

「ふぁい……ふぅわあぁぁぁ」

 まだ眠気の抜け切っていない少年を担ぎ上げ、セレスティアさんは死刑宣告をした。

「じゃあ、弟子。飛びますよ」
「…………!?!!? まっ、」

 私は身体中に魔力を満たし、一気に地面を蹴りつけて、空へと飛び上がりました。今度は弟子にも気を遣って、風魔法で体を覆ってあげています。なので、吹き付ける風は問題ないかと思います。

 そう思って弟子の様子を見ると、不思議そうに周りを見渡していました。

「……?」

 きっと、先程とは違うことに驚いているのでしょう。……まあさっきは、耳に直接ゴウゴウという風の唸り声が聞こえてきたのでしょうし……。これからも気を付けるとしましょう。

「今のあなたは、私が風魔法で覆っています。なので、さっきみたいに振り回されることは無いですよ」

 私がそう言うと、弟子は明らかに安堵していました。ただ、今向かっているのは魔物ブタさんたちがブヒブヒしている所です。なので、気を抜かれては困ります。

 それに、このままだと放り込んだ瞬間に食べられてしまいますからね。現場に着く三十秒の間で、少しだけ授業をしましょう。

 幸いな事に、この弟子の宿している魔力は、それなりのもの。当然かもしれませんが、先程の初級冒険者たちよりも魔力量は多く、才能を感じさせます。

「弟子。今から少しだけ無茶をします。ちゃんと、体で覚えなさい」
「えっ、あ、はい!」

 弟子がちゃんと返事をした事を確認して、私はコンマゼロ五パーセントの魔力を一気に流し込みました。

「んッ……ぁあ、ぐッッッ!!!」

 きっと今の弟子は、かなりの激痛に見舞われていることでしょう。私も初めてやられた時は、全身が焼けるように、弾けるように痛くって、悶絶を繰り返していましたね。血もドバドバ吐いてました。

 弟子の場合は、私が最適化を繰り返し、弟子用に改良しただけあって、血を吐いたりはしていないみたいですけど、それでも痛いことに変わりは無いでしょう。

 ただ、それをしなければ、魔力出力はほとんど上がらないのです。強くなりたければ、苦痛を代価にするしかない。それが短期間でのことならば、なおさら。

 しかし逆に言うと、これさえ超えてしまえば、第一次覚醒とも言える状態になるはずです。そうすれば、魔力を使うのが格段に上手くなりますからね。

 後十秒くらいで到着しますが……。抑えたとは言え、さすがに無理そうですね。

 仕方ないので、待機しているとしましょうか。

「弟子。頑張ってください。ここを超えれば、強くなれますよ!」
「ぐぁ……ッ!!!!!」

 ちなみに、現在のセレスティアさんは、上空三百mメールの位置にいる。彼女ならば、魔法を使っての浮遊も出来るが、魔力を固定してその上に乗る、という方法を採っている。その方が燃費がいいのである。

 ついでに述べておくが、魔力を他人の身体へ入れる行為は、針穴に一発で糸を通すくらいの難度を誇る。しかし一歩間違えれば、体が内側から爆ぜ散り、肉塊へと変わってしまうような危険行為だ。

 奇跡的に生還してはいるが、セレスティアさんが血を吐いていたのは、本当にギリギリだったと言う証である。王国の人間は総じて無能なのだ。

 ただ、セレスティアさんの例からも分かる通り……、通り? 強くはなれるのである。

 他人の魔力に一度順応することで、魔力への感受性が高まり、より深く、そしてより高いレベルで魔力を扱うことが出来るようになるのである。
 これがあるかないかで、魔力効率も段違いに変わる、という修行方法だ。

 お手軽ではあるが、死の危険もある。ハイリスク・ハイリターンだが、セレスティアさんにかかれば、相手を死なせることは無い。

 ぶっちゃっけ、これだけで十分食っていけるはずである。本人は全く気が付いていないが。

「んぅ……!」

 腕に抱かれた少年の小さな体から、金色の魔力が噴き出した。
 その色は、まるで太陽のような輝きを放っていた。

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