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私、帝国領で暴れます!
僕の師匠
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脅威の消失を見届けて、遠くで空気を震わせるほどの大歓声が巻き起こっている。
そんな中で、二人は静かに座っていた。
「師匠。大丈夫ですか……?」
「んぐぅ……。だいじょばないぃ……」
昔に比べればたった数本の服用ですけど、不味いもんは不味いんですよね。それに、急回復と急下落を繰り返すのはキツいものです。
暫くは温泉に浸かって、のほほんと慰安に務めましょう。うんうん。弟子との時間も、もっとちゃんと確保しないとですからね。
それにしても、久しぶりに頑張ったからか、すっごく眠いです。早く宿屋さんに帰って、ぐぅっと眠りたい。
道の真ん中でぐぅ~でぇ~っとしている私の前にしゃがんで、私の顔を覗き込む弟子の綺麗な細い眉が、少しだけ歪んでいる。にゅいっ、という感じに。
「えっと……、歩けますか?」
「歩けないでぅ」
……そんなに情けないものを見る様な目で、私のことを見ないで……。師匠傷付きます。
んむぅ。眠いのは仕方ないじゃないですかぁ……。いっぱい頑張りましたし。
むむむ……。眠気には抗えない……。
「……弟子。私、寝ます。……おやすみなーーzzz」
「…………ぇ? し、師匠……? え? ……あ、ああ、はい。えと、おやすみなさい」
道のど真ん中で、弟子への挨拶もそこそこに寝落ちするセレスティアさんを前にして、弟子ーーウィス・グリムリーチは困惑を隠せない。
誰が、こんな場所で寝ると思うのか。思うわけがない。それも現在、地面に大の字になって寝ているのは自分の師匠だ。普通なら、羞恥の念を感じても普通では無い。
しかしこの少年、普通ではなかった。
「……師匠。ゆっくり休んでくださいね」
セレスティアさんを見る目は優しく細められていて、深い慈愛や親愛といった感情を抱いている。
少しばかりの間だけ、この場で眠らせてあげようと決めて、ウィスくんはそのまま腰を下ろした。
すーすーと静かな寝息を立てて眠っている顔を眺めていると、心の奥深くから無性に湧き上がってくるものがある。それが何かは分からないけれど、弟子として、師匠の身は守らなければならない。
自身では気付いていないようだけれど、師匠の魅力は破壊力が強すぎる。例えばどこぞの皇子様など、一発で落ちていた。
まだ体は痩せ細ったままだし、魔力だって足りていない。魔法の力量だって、圧倒的に不足している。足りないものだらけだ。
だけど僕は、必ず師匠に並び立てるように、守ってあげられるように、強くならなければいけない。
僕を拾ってくれた。母さんを守ってもらった。
これはもう、一生分の恩義だ。
神々しいまでの白金糸の髪も、長いまつ毛に縁取られた綺麗な蒼穹の瞳も、透き通るように白い柔肌も、薄く柔らかそうなピンク色の唇も。
国宝どころか、神の造形美とすら言えるこの美貌は、誰にだって触らせてなどやらないぞ。
「……チッ。……何か用ですか? 皇子さま」
「……本音が漏れているぞ? 骨ガキ」
聞いた話によると、コイツはこの国の皇族で、しかも時期皇帝になるのがほぼ確定という、第一皇子らしい。
だけど、そんな事など、正直どうでもいいんだ。大切なのは、この馬の骨が師匠に惚れている、ということ。
絶対に近付かせる訳にはいかない。
「……それで? 何か用なんですか?」
「……私は、セレスティア様を"保護"しに来ただけだ」
口では保護などと言っておいて、婚儀を結ぶために既成事実を、などと考えていてもおかしくはない。
師匠の魅力は、顔や体だけに留まらない。その魔力量や他を圧倒する魔法技術、その才能だって、王族や皇族からすれば涎が垂れるほどのものだろう。
「……保護しに来たのなら、お帰りいただいて結構ですよ。僕が、弟子として守るので。
と言うか、師匠は"寝込みを"襲われる様なヤワな人では無いですけどね」
「…………そうか。何かあれば、すぐに呼ぶといい」
「いえ。必要ありません。早く帰れよ」
トボトボと背を見せて帰っていく馬の骨を見て、やはり思う。
王侯貴族などクソだ。信用などしてはいけない。
父さんを殺したのも、母さんを奴隷に落としたのも、僕を奴隷にしようとしたのも、全ては醜いクソブタ共だ。家族の仲を引き裂いたクズ共は、許さない。
だけど今は……、
「師匠。ほんとうに、僕たちを救ってくれてありがとうございます。ずっと、傍にいます」
出会いこそ、勘違いして蛮勇を奮うという最悪なものだったけど。色々と、不器用な師匠だけど。まだまだ、出会ってからの日も浅いけど。
鮮烈に焼き付けられたカッコ良さも、美しさも。絶対に消えないし、一部だって色褪せない。
『ねえ、弟子。あなたはどうしたい?』
包み込むような瞳で、聖母のような表情で。思わず泣きたくなる程の、優しい声で。
『任せなさい』
力強く、覇気に満ち満ちた表情で。その声に、震えた。
噴き出した白金色の魔力はどこまでも冷徹なのに、なぜだかとても暖かくて。
絶対なまでの圧倒の。魅せられた煌々とした輝きの。
「師匠。僕はあなたに……、貴女を越えてみせます。必ず、越えますからね」
════════════════
かなり空きまして、すみません!
お勉強の為に本を読んでいたら、描くのを忘れておりました(言い訳)
『Listen』とか、『ウケる技術』とか、色々読みました。
まだ吸収は出来ていないので、読み直したり思考を回したりしますけども……。
出来るだけ遅くならないように、頑張りますー🔥
そんな中で、二人は静かに座っていた。
「師匠。大丈夫ですか……?」
「んぐぅ……。だいじょばないぃ……」
昔に比べればたった数本の服用ですけど、不味いもんは不味いんですよね。それに、急回復と急下落を繰り返すのはキツいものです。
暫くは温泉に浸かって、のほほんと慰安に務めましょう。うんうん。弟子との時間も、もっとちゃんと確保しないとですからね。
それにしても、久しぶりに頑張ったからか、すっごく眠いです。早く宿屋さんに帰って、ぐぅっと眠りたい。
道の真ん中でぐぅ~でぇ~っとしている私の前にしゃがんで、私の顔を覗き込む弟子の綺麗な細い眉が、少しだけ歪んでいる。にゅいっ、という感じに。
「えっと……、歩けますか?」
「歩けないでぅ」
……そんなに情けないものを見る様な目で、私のことを見ないで……。師匠傷付きます。
んむぅ。眠いのは仕方ないじゃないですかぁ……。いっぱい頑張りましたし。
むむむ……。眠気には抗えない……。
「……弟子。私、寝ます。……おやすみなーーzzz」
「…………ぇ? し、師匠……? え? ……あ、ああ、はい。えと、おやすみなさい」
道のど真ん中で、弟子への挨拶もそこそこに寝落ちするセレスティアさんを前にして、弟子ーーウィス・グリムリーチは困惑を隠せない。
誰が、こんな場所で寝ると思うのか。思うわけがない。それも現在、地面に大の字になって寝ているのは自分の師匠だ。普通なら、羞恥の念を感じても普通では無い。
しかしこの少年、普通ではなかった。
「……師匠。ゆっくり休んでくださいね」
セレスティアさんを見る目は優しく細められていて、深い慈愛や親愛といった感情を抱いている。
少しばかりの間だけ、この場で眠らせてあげようと決めて、ウィスくんはそのまま腰を下ろした。
すーすーと静かな寝息を立てて眠っている顔を眺めていると、心の奥深くから無性に湧き上がってくるものがある。それが何かは分からないけれど、弟子として、師匠の身は守らなければならない。
自身では気付いていないようだけれど、師匠の魅力は破壊力が強すぎる。例えばどこぞの皇子様など、一発で落ちていた。
まだ体は痩せ細ったままだし、魔力だって足りていない。魔法の力量だって、圧倒的に不足している。足りないものだらけだ。
だけど僕は、必ず師匠に並び立てるように、守ってあげられるように、強くならなければいけない。
僕を拾ってくれた。母さんを守ってもらった。
これはもう、一生分の恩義だ。
神々しいまでの白金糸の髪も、長いまつ毛に縁取られた綺麗な蒼穹の瞳も、透き通るように白い柔肌も、薄く柔らかそうなピンク色の唇も。
国宝どころか、神の造形美とすら言えるこの美貌は、誰にだって触らせてなどやらないぞ。
「……チッ。……何か用ですか? 皇子さま」
「……本音が漏れているぞ? 骨ガキ」
聞いた話によると、コイツはこの国の皇族で、しかも時期皇帝になるのがほぼ確定という、第一皇子らしい。
だけど、そんな事など、正直どうでもいいんだ。大切なのは、この馬の骨が師匠に惚れている、ということ。
絶対に近付かせる訳にはいかない。
「……それで? 何か用なんですか?」
「……私は、セレスティア様を"保護"しに来ただけだ」
口では保護などと言っておいて、婚儀を結ぶために既成事実を、などと考えていてもおかしくはない。
師匠の魅力は、顔や体だけに留まらない。その魔力量や他を圧倒する魔法技術、その才能だって、王族や皇族からすれば涎が垂れるほどのものだろう。
「……保護しに来たのなら、お帰りいただいて結構ですよ。僕が、弟子として守るので。
と言うか、師匠は"寝込みを"襲われる様なヤワな人では無いですけどね」
「…………そうか。何かあれば、すぐに呼ぶといい」
「いえ。必要ありません。早く帰れよ」
トボトボと背を見せて帰っていく馬の骨を見て、やはり思う。
王侯貴族などクソだ。信用などしてはいけない。
父さんを殺したのも、母さんを奴隷に落としたのも、僕を奴隷にしようとしたのも、全ては醜いクソブタ共だ。家族の仲を引き裂いたクズ共は、許さない。
だけど今は……、
「師匠。ほんとうに、僕たちを救ってくれてありがとうございます。ずっと、傍にいます」
出会いこそ、勘違いして蛮勇を奮うという最悪なものだったけど。色々と、不器用な師匠だけど。まだまだ、出会ってからの日も浅いけど。
鮮烈に焼き付けられたカッコ良さも、美しさも。絶対に消えないし、一部だって色褪せない。
『ねえ、弟子。あなたはどうしたい?』
包み込むような瞳で、聖母のような表情で。思わず泣きたくなる程の、優しい声で。
『任せなさい』
力強く、覇気に満ち満ちた表情で。その声に、震えた。
噴き出した白金色の魔力はどこまでも冷徹なのに、なぜだかとても暖かくて。
絶対なまでの圧倒の。魅せられた煌々とした輝きの。
「師匠。僕はあなたに……、貴女を越えてみせます。必ず、越えますからね」
════════════════
かなり空きまして、すみません!
お勉強の為に本を読んでいたら、描くのを忘れておりました(言い訳)
『Listen』とか、『ウケる技術』とか、色々読みました。
まだ吸収は出来ていないので、読み直したり思考を回したりしますけども……。
出来るだけ遅くならないように、頑張りますー🔥
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みんなの感想(25件)
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ふと気になったのですがゲロマズポーションってマズイだけじゃくてメチャクチャ臭いんですか?
最初シリアスかなーって思ってたんですがだんだんコメディ感が増してきて読み易くて最高です!続き待ってます!
ご感想ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
魔力ポーションに関してですけれども、とにかく『死ぬほど不味い』ものです。
確か名言はしてなかったよね……? と、私自身でも曖昧なので、臭いがキツいかどうかは読者様の解釈次第! と言った所でしょうか。
ただ、後付けをするならば、「ふわぁ〜フローラルな香り〜♡」になります。
……無理ですよね! (笑)
ご期待に添える様、更新、頑張ります! ∑d(゚∀゚d)ファイヤアアアアア!!🔥
誤字報告
弟子の才能……
魔力ポーションすら付きて→尽きて
誤字報告、ありがとうございます!
修正完了しました( ˙꒳˙ )ゝ
誤字報告
魔力ポーション
非難→避難
気持ちが立て直せるまでゆっくり休んでくださいませ。
立て直せたら、完結お願いします!←一読者の勝手な願望です
誤字報告ありがとうございます!
お待ちいただいているのも、作者として、とても嬉しいです!
昨日、やっと応募作品が描き上がったので、もうそろそろ更新していきます(`・ω・)ゞ
頑張ります🔥