BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

文字の大きさ
122 / 151
<シーディス>ルート

11

しおりを挟む
「あの野郎……」
「お仕事中ですよね? 俺は一人で帰れるので……」
 今にも舌打ちしそうな表情をしているところを、勇気を総動員して声をかける。別に普通に声をかけるだけだ。怖がる必要はない。分かってはいるが、眉間にシワを寄せたシーディスさんには迫力がある。

「あーその……レイザード」
「なんでしょうか」
 先生が去って行った方を眉間を寄せて見ていたシーディスさんが、眉を下げて歯切れ悪く俺の名を呼ぶ。
 何か言い辛いことが、あるのだろうか。俺が何かしてしまったのかと考えて、盛大にやらかしたばかりなことを思い出す。
 ―― もしかして
 あの貴重な鉱石に、傷がついたのだろうか。なんてことだ。弁償ものじゃないか。
 払えるだろうか。貴重な鉱石で、高額な値段で取引されている。それだけで実際の値段は知らない。けれど俺が簡単に払える額じゃないのは、考えずとも分かる。

 ―― 言い出しにくいのだろうか
 普通なら貴重なものを壊された。弁償しろって言えば、済むことだ。けどシーディスさんは、優しい人だから言えないのかも知れない。
 ―― 俺から言うか……
 徹夜で商品を増産することに決めて、意を決して口を開く。

「申し訳ありません。必ず弁償します」
「すまなかった」
 頭を下げて謝罪を口にすると、何故かシーディスさんが謝ってくる。意味が分からない。
「えっ?」
「弁償? なんのことだ」
 多分同時に、頭を上げたらしい。困惑顔のシーディスさんと、視線が合う。俺もだいぶ意味が分からなくて、疑問符が浮んでいるんだが伝わっているだろうか。

「この前、貸していただいた鉱石に、傷がついたんじゃ……」
「傷? いや、ついてないが。そもそもついたとしても、弁償なんて言うわけないだろう」
 心底ほっとした。思わず溜息がもれそうになって、なんとか堪える。
 けれどならば、なんで謝ってきたのだろうか。余計に意味が、分からない。

「俺が余計なものを渡したせいで、嫌な思いをさせただろう。本当に済まなかった」
「えっ……」
 また謝られてバグのせいで、おかしいことになったのを思い出す。ただアレはシーディスさんに、非のあることじゃない。全てバグと、影響された俺が悪い。

「あの謝罪は、必要ないです。シーディスさんは、悪く無いので……あれは」
 なにか良い言い訳を考えようとしたが、何も思い浮かばない。表情筋どころか、脳みそまで仕事をしなくなったらしい。

「レイザード……いや、そうだな。すまなかった」
「いえ」
 また謝らせてしまった。俺がもっとこう口が上手ければ、せめてジルベールの1割でもコミュ力が高ければ、こんな顔させずに済んだろうに。一瞬だが辛そうな顔をした、シーディスさんに胸が痛む。

「……帰るか」
「はい、あのお仕事中ですよね」
 気をつかってくれたのか。表情を和らげて、先生が去った方に視線を向けた。そのまま続きそうになって、最初に気になったことを再度問う。
「いや、もう話は済んだ。だからせめて安全なところまで、送らせてくれ」
「ありがとうございます。お願いします」
 本当はまだ仕事中だったんじゃないかとか、邪魔したんじゃないかと色々と考えが浮ぶ。ただ確かにこのまま放置されても、迷うのは目に見えている。申し訳なく思いながらも、頭を下げた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...