BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

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<シーディス>ルート

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「気にしていたから、作っておいた。目を通してくれ」
 美味い茶と菓子を食べ終わると、シーディスさんが立ち上がり何かの用紙をもって戻ってくる。
 見せてくれた紙には、返済額が記載されている。シーディスさんのサインもあった。

「いくらずつ返すかは、自由だ。返済期間も、決まってない」
「あの額が、随分すくない気が……」
 渋い顔をしていたけれど、俺が俺のためにかかってしまった金額のことを気にしていたことを気にかけてくれていたらしい。
 こう明確に示してくれると、とてもありがたい。受け取って目を通すと、予想よりだいぶ少ないことに気づいた。

「治療費に関しては、含んでないからな」
「それだと、申し訳ないです。きちんと返します」
 多分ではなく絶対に、一番費用がかさんだのは先生の治療費だ。なのにそれが含まれていないと、意味がない。確かにないほうがありがたくはある。返し終わるのなんて何十年先になるかも、分からない。だからといって返さないのは、違うだろう。

「なあレイザード、俺はなお前に生きて欲しいと思った。だからお前の意見を聞かずに、勝手にギーニアスに治療させたんだ。お前が決めたわけじゃない。俺が勝手に決めた。どの程度金が掛るか、承知でだ。治療してくれと、俺に言ったわけじゃないだろう?」
「それは、ですが……」
 自分が決めた。だから払う必要はないって、言ってくれてる。気遣ってくれてるんだって、伝わってくる。けれどやっぱり、はいありがとうございますとは引き下がれない。
シーディスさんの財産は、たくさん苦労して得た対価だ。過去でつらい目にあって、それでも頑張ってきて今がある。努力の結果だろう。それをたくさんもっているからって、返さないわけにはいかない。俺が嫌なんだ。

「これからお前は、どんな道に進むんだろうな」
「えっ」
「やりたいことはあるか」
「それは、たくさんあります」
 いきなり話が変わる。けどなんの意味もなくシーディスさんが、そうしわけじゃないのは分かるから考えて答えた。
 不純な俺にとっては純粋だけど、萌えは追求したい。あとは術の研究も続けたい。他にも見たいことも、やりたいこともある。

「そうか、なら金は必要だな。何をやるにしたって、金はついて回る。あるから幸せなんて言うつもりはないが、必要な金がないと諦めないといけなくなることも沢山ある」
「……」
 俺が想像できること以上に、苦労してきただろうシーディスさんの言葉が重く感じる。何を言っても、綺麗ごとにしか聞こえない気がするんだ。

「金がねえって理由で、やりたいと望むことも願いも叶えられねえって辛いだろ。俺に借金してるせいで、お前が望む道を歩めず夢を叶えらねえ。なんてことになったら、どうしていいかわからないんだ。頼む。これで飲んでくれないか」
 ゆっくりとシーディスさんが、頭を下げてくる。
 ―― なんで
 なんでシーディスさんが、頭を下げてくるんだ。おかしいだろう。普通は逆だ。借りた側が減額して下さいって、頭を下げるのは分かるけど逆はどう考えてもおかしい。
 ―― 困らせてるのだろうか
 かかった金額を全部返したいって、こだわってるのは俺だ。当たり前のことだと思ってる。先生の治療費は、凄い額だろう。それに先生に、帰っていいと許可をもらうまでシーディスさんに全部お世話になっていた。合わせると、いや合わせなくても凄い額だって分かる。
 だから全部返すって決めた。けどシーディスさんは、最初から返さなくてもいいって言ってくれている。先生にも馬鹿かって、言われた。
 ―― 自分の我を通すために、シーディスさんを困らせてるのか?

「あの先生の治療費って、いくらか教えてもらえませんか。支払うってけじゃないんです。返す額はこれで、甘えさせてもらいます。ただ知っておきたくて」
 眉を下げられてしまった。
 困らせたいわけじゃない。できるなら幸せであってほしい。俺は攻略キャラには、幸せでいてほしい派なんだ。そうじゃなくても沢山苦労してきたシーディスさんには、もう辛い目にあってほしくない。
 ―― 貸したいっていうのは、俺のわがままだ
 だから一旦、意見も気持ちも飲み込むことにした。
 ここでごね続けても、シーディスさんを困らせるだけだ。だから申し出に、うなずくことにしたんだ。けど俺のせいでかかった費用は、正確に知っておきたい。将来出世とかしたり、お金に余裕が出来たときに額を知らなとい返せないだろう。

 ―― モブが出世なんて、出来るか分からないけど
 ここだけはちゃんと、聞いておかないとな。
 意を決して言葉を続けると、しばらく考え込んだシーディスさんの口が開く。そこから発せられた、想像もできない金額に一瞬気を失いそうになった。
 
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