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<ジルベール>シリアス ルート
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しおりを挟む妙なバグのせいで頭が痛くなり、ジルベールに迷惑をかけてから数日経過した。
特に体調には問題が無い。
心配性のヴァルが泊まり込もうとしたのを説得して、家に戻したから今は一人でいつもどおり過ごしている。
「ふっふ」
―― 見たか!
誰もいない作業部屋で、思わず拳を握りしめる。
狭い室内を飛んでいる蝶―― 俺の術で作った氷で、出来ている。
前に氷の置物に動きを加えようとして、結局ジルベールの助力で成功した。けど販売するための商品を作るから、手を貸してくれとは言い出しづらくて製品化にいたらずにいた。
けど俺は努力するモブである。あれから一人で、試行錯誤を繰り返してようやく成功する。
「あっ」
嬉しすぎて踊り出す寸前まで来たとき、氷の蝶が力なく落下した。慌てて受け止めると、動いていない。
―― 失敗か……
上手く言ったと思って、喜んでいただけにショックが大きい。
「簡単そうに、見えたのにな……」
自分の口から出た言葉に、疑問が浮かんだ。
苦戦しまくた動作を加えること、そして氷の蝶が舞うことがなぜか当たり前に出来る様な気がしたんだ。
ひらりひらりと氷の蝶が、舞っている姿が脳裏に浮かぶ。
―― そんなわけない
これだけ苦戦しているのに、今だって失敗したのに簡単なわけがない。
なぜだがイライラしてくる。釈然としないものが、なんであるかわからない。
「茶を飲もう」
お茶を飲めば、イライラは収まる。立ち上がり台所に向かう。
『お茶に、しましょう』
後ろから柔らかい声が聞えた気がして、振りかえった。けれど誰もいない。
―― 気のせいか
きっと何時ものバグだろう。俺しかいない部屋で、女の人の声がしたら怖すぎる。軽くホラーだ。
―― ジルベールの所に行くか……
茶を入れて座ったのはいいが、妙な声が聞えてしまったせいで一人で茶をすする気分になれない。隣に住んでいるヴァルを誘えば解決するのが、心配性で勘の良いヴァルは俺のテンションが低いことに気づく可能性が高い。
―― 別に変じゃないしな
友達だったら、一緒に茶を飲むくらいする。
けれどいきなり尋ねて茶を飲ませろと、言うのもかなり非常識だ。なにか手土産を持って行こうとして、動かなくなった氷の蝶が目に止まる。
なんの変哲も無い。術で作った氷の蝶だ。けれどそれが動いていないのが、なぜか異様におかしく感じる。
―― 一体なんだ
湧き上がった妙な感情をごまかすために、氷の蝶を掴んでそのまま扉を開けた。
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