神男(ゴットマン)

渋谷かな

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神の優越

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「ワッハッハー!」
 地球神アースは笑っていた。
「地球が誕生してから、なぜ人類が生き残ってきたか理由が分かる気がする。時代の流れに変化してきたから。」
 神様は人間を褒めたたえていた。
「そして私を楽しませてきたからだ。」
 人間は神の前では動物園のパンダと変わらない存在であった。
「現代社会に戦士とドラゴンが現れて、人間がどのような変化を見せるか楽しみだ。とくと見せてもらおうか。」
 神様は知っていた。過去の人間の行動を。人間が一つの出来事から成長する者、便乗する者、中には滅びる者が出ることを。
「自分一人だけの力では大きく動き出した世界の流れは変えることはできないぞ。さあ! どうする! 神を超える者よ!」
 天界の神様はこれから起こる出来事にワクワクしていた。
 
 20〇〇年。地球に異世界ファンタジーがやってきた。ある日、科学力は無意味になり、一部の人間は剣だの魔法だのが使えるようになった。

「プリマス。やっと短い年の名前だ。」
 碧は引き続きイギリスを調べていた。
「イングランドの南西部にある港湾都市か。ほうほう。」
 碧は調べものに集中していた。
「人口は26万人。どこも同じような人口なんだな。」
 これが碧の日々の変化もない日常だった。
「碧。」
 そこに幼馴染の恋がやってきた。
「ブー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 碧は驚いた。
「なんじゃ!? その服装は!?」
 珍しく碧は恋にくぎ付けになる。
「どう? 似合うでしょ。」
 勇者のコスプレをした恋がいた。
「どうしたんだ!? まだハロウィンパーティーの季節じゃないぞ!?」
 碧は恋が頭がおかしくなったと思った。
「流行よ! 流行!」
「流行?」
「今、異世界ファンタジーが世界のトレンドなのよ!」
「異世界ファンタジー!?」
 そう。これが神様の狙いだった。
「ドラゴンが現れて、それを見ていた人たちがネット「カッコイイ!」「勇者になりたい!」「冒険の旅に出かけようぜ!」て、あっという間に広がったのよ。みんな勇者や魔王とか、スライムの格好をしてSNSに投稿するのよ! 流行ってるから直ぐにバズるのよ! 再生回数が増えてお金儲けができるんだから一石二鳥よね!」
 人間は敏感で、人間は直ぐに流されやすい。異世界ファンタジーブームは全世界に拡散した。
「クソッ!? これが邪神の狙いだったのか!?」
 やっと神様の真の狙いに気づいた碧。世間を騒がせる神様のことは邪神呼ばわりする。
「まあ、ちょっとだけ犯罪も増えたけどね。」
「犯罪?」
 異世界ファンタジーブームで犯罪が増えたらしい。
「スライムの着ぐるみを着ていた人が勇者コスプレをしていた人たちに集団リンチされるとか。あと魔王のコスプレした人たちが勇者を片っ端から倒しているとか。」
「なんじゃ!? そりゃ!? 犯罪じゃないか!?」
 神様のもたらす変革は、新型のロナウイルスで病気で人が死んでいくのと同様に、異世界ファンタジーが現代でブームになれば、制御できない頭の弱い子たちが登場してくる。
「クソッ!? それを見て喜んでいるのは神様だけかよ!?」
 人間の混沌を退屈な神様は喜んでほくそ笑んでいる。
「神を超える者として、俺が解決してみせる!」
 碧は神様の悪戯に挑む。

「甘いな。」
 神様は勝ち誇っていた。
「甘い。人間は。」
 そして神として人間を見下していた。
「どうして自分が思っていることが全てだと思える? 相手が自分の想像以上だと想定しない。相手が自分以上の存在だと考えない?」
 人間の愚かさを神様は嘆いていた。
「相手に追いつこうという気持ちが鳴ければ努力しないのも人間だ。危機や挫折がなければ人間は成長できない。いや、革新できない生き物なのだ。」
 神様は良く人間という生き物を知っている。
「人間を下等生物とは言わないが、さすが私のペットだ。私を飽きさせない。」
 人間とは神様に取って暇つぶしの道具でしかない。
「そうだな。私の行為は人間社会のいじめに似ている。だが許せ。なぜなら私が神だからだ。」
 人間の世界は、全て神が創ったのだから。人間同士では許されない、いじめ行為も神様なら許される。
「見せてやろう。神の力を。味合うがいい絶望を。」
 神様は異常気象のボタンをポチッと押すのであった。

「アイドルが魔法使いの衣装で新曲を歌ってる!? ホテルが異世界ファンタジーの宿屋風!? 町のラーメン屋の横に武器屋!? 富士山ダンジョンご来光旅行!? ハチ公象の横に英雄の像!?」
 碧は街中の変化を確認していて驚いた。
「なんて人間は流行に流されやすい生き物なんだ!?」
 思わず呆れてしまう碧。
「臨時ニュースです。先日発生した台風が海面温度の高温化に伴い、史上最大級クラスの台風に発達しました!」
「なんだと!?」
 テレビのニュースで気象情報がやっていた。
「100年に一度の台風です。不要不急の外出は控えてください。学校などの頑丈な避難施設に避難してください。確実に甚大な被害が出ます。」
 気象庁の緊急記者会見も生中継された。
「このままでは日本列島が台風で真っ二つになってしまう!?」
 台風の予想進路は名古屋を日本海に抜けるものであった。
「クソッ!? これも神様の悪戯か!?」
 碧には天界で笑っている神様の姿が思い浮かぶ。
「俺が何とかしてみせる!」 
 世界の異世界ファンタジー化は忘れて、史上最大の台風と戦うことにした碧であった。

「なんて大きな台風なんだ!? まるで宇宙人の新型要塞だな!?」
 太平洋の海の上に魔法で飛んでいる碧は、台風ではなく宇宙人の襲来を受けた気分だった。
「進ませるか! 俺の全魔法力で台風を倒して見せる!」
 敵はモンスターでも、魔王でも、人間でもない。自然現象の一つ台風である。
「神の力を超える者が命じる! 台風よ消えろ! イレース!」
 碧は地球神アースを超える者として台風を消すために魔法を行使する。
「ダメか!?」
 しかし強大な台風を消し去ることはできなかった。
「なら台風を異世界に飛ばしてやる!」
 次に碧は台風をこの世界から別の世界に飛ばしてしまおうと考えた。
「神の力を超える者が命じる! 台風よ異世界に飛んでいけ! フライ!」
 碧は台風に魔法をかけた。
「これもダメか!?」
 しかし台風はビクともしなかった。

「さあ、どうする人間よ? 考えて考えて、私を楽しませてくれ。ワッハッハー!」
 あがく人間を見て楽しんでいる神様がいた。

「ダメだ!? もう時間がない!? このままでは日本列島に台風が直撃してしまう!?」
 台風の上陸は時間の問題だと思われた。
「消したり、別次元に飛ばせないのなら・・・・・・台風を逸らすしかない!」
 碧は消したり、別次元に飛ばすよりは簡単であろう台風を逸らすという選択を選んだ。
「神の力を超える者が命じる! 台風よ逸れろ! ディフレクト!」
 魔法は英語みたいなもので碧には自然に浮かんでくる。イメージを実現させることが魔法なのかもしれない。
「クソッ!? ダメなのか!?」
 しかし台風は曲がらなかった。強い勢力を保ちながら碧に近づいてくる。
「いや! できるはずだ! 諦めなければ何でもできるはずだ! それが人間だ! だから俺は絶対に諦めない! 神様なんかに運命を遊ばれてたまるか! 俺は俺の未来を切り開く! うおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 碧は人間の可能性を信じた。そして限界を超える力を発動させる。
「う、動いた!?」
 遂にビクともしなかった史上最大の台風が動いた。
「よし! このままどこか遠くに吹き飛んでしまえ! でやああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 改心の一撃で台風を南西の方向に吹き飛ばしていく碧。

「臨時ニュースです! 台風が日本列島から離れていきます! 日本は救われました!」
「これはどういったことでしょうか? 気象予報士さん?」
「きっと北風小僧のかんたろうが強い北風が吹かせて台風を吹き飛ばしたんでしょうね。いや~、良かった。」
 呑気なテレビニュース。
「やったー! 台風が来ない!」
「非常食を食べるぞ!」
「明日の遠足に行ける!」
 そして危機が去った後の人間は自分勝手なもので、ガラリと台風のことは忘れ、すっかり他人事である。
「碧! 台風が来ないってさ! あれ? 碧がいない?」
 恋は碧の部屋に遊びに来たが碧はいなかった。
「変ね? 異世界ファンタジー馬鹿で、友達地もいないし、行く所もないはずだけど?」
 碧に不審な動き有り。恋の女の第六感が何かを感じる。 

「やった・・・・・・俺は世界を救ったんだ。」
 碧は力を使い果たし今のも倒れそうであった。
「甘いな。」
 そこに神様が現れる。
「おまえは!? 神様!?」
 天界の神様の登場に驚く碧。
「いかにも。私が神である。私を崇めよ。私は偉いのだ。ワッハッハー!」
 神様の高笑いが地上にも響き渡る。
「どうだ? 神様。偉い神様の台風は俺が弾き飛ばしてやったぜ。おまえの好きなようにはさせないぞ!」
 碧は神様に宣戦布告する。
「それはどうかな?」
「なに!?」
「おまえは台風を逸らしただけで、おまえが飛ばした台風が、その後にどのコースを通るのか確認はしたのか?」
「なんだと!?」
 碧は台風のその後など考えたことはなかった。

「臨時ニュースです!? 台風が日本列島に戻ってきます!? コースは名古屋から九州地方に逸れた模様です!? 直撃コースは免れた模様ですが九州西岸部は甚大な被害が発生すると思われます!?」
 臨時ニュースが流れる。

「これは全ておまえの浅はかさが招いたことだ。」
「そ、そんな!?」
 碧は結果に絶望している。
「自分が取った行動で、その後がどうなるかを考えていなかった。これも全ておまえの罪だ。」
「俺の罪!?」
 神様は新米の神を超える者を叱責する。
「なら、もう一度俺が台風を弾き飛ばせば、九州の人々も救えるはずだ!」
 碧は再び台風を吹き飛ばすことを考えた。
「できるかな? 魔法力の尽きたその体で。」
「なっ!?」
 碧の体が魔法力が尽きてしまい、後は自宅に瞬間移動する分ぐらいの魔法力しか碧が残していないことを神様は知っていた。
「たかがお前は人間。体力に限界があれば、睡眠もとらなければいけない。お腹が空いたらご飯も食べなければいけない。それのどこが神を超える者なのだ? おまえなんか神の劣化版でしかない。」
 全て自分の思い通りになる神様と、ベースは人間の碧との違いである。
「劣化版!? 俺が・・・・・・。」
 神様の言葉にショックを受ける碧
「もしもおまえが台風の二つ目が来ると考えていれば、全ての魔法力は使わなかっただろう。それに直ぐに体力や魔法力を回復できる道具や準備をして備えていたであろう。一つの台風のことだけを考え、他の可能性や他の出来事を忘れてしまったのがおまえの敗因だ。これから起こる悲劇をしっかりと見るがいい。これは全ておまえが招いたことだ。」
 
 台風は九州西岸の海を北に進んで行く。
「キャアアアアアアー!?」
 九州の人々は悲鳴を上げる。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴー!」
 強風は家や木を吹き飛ばす。
「ザパーン!」
 高波は町を飲み込む。
「ザザザザザザザザー!」
 大雨は町を沈める。
「ギャアアアアアアー!?」
 特に長崎県は一番西岸ということで被害が甚大だった。

「これが・・・・・・俺の性!?」
 台風が過ぎ去った後、長崎県の陸地は佐賀県と隣接している周辺だけになっていた。後は陸ではなく島国になっていた。長崎諸島といった方がイメージしやすいだろう。
「そうだ。これが台風を消し去ることができなかったおまえの性。台風を異世界に飛ばすことができなかったおまえの性。飛ばされた台風がその後にどういう経路を取るか考えないで吹き飛ばしたおまえの性だ。」
「そ、そんな・・・・・・俺はただ台風が日本列島に直撃するのをやめさせたかっただけなのに。」
 碧を絶望が襲う。
「これも全ておまえの「自分なら何とかできる」という強いエゴ招いた結果だ。ワッハッハー!」
 神様は碧と出会ってから一番愉快に笑っている。
「全て俺の性・・・・・・。」
 長崎の酷い現実を見せられてショックから抜け出せない碧。
「人間は自分の目の前のことしか考えない。だから人間の世界は平和にならないのだ。もっと世界の人々を慈し思いやりの心で接すれば、きっと世界から戦争などの争いごとは消え、優しい手を差し伸べれば難民なんかもいなくなるだろうな。」
 神様は弱っている人間に対して、久しぶりに神様らしいことをいう。それほど神様は碧のみじめな姿を見て喜んでいる。
「サービスだ。私がおまえを家まで移動させてやろう。ワープ。」
 神様は碧を一瞬で会場から消し去った。
「ワッハッハー! 神様って最高!」
 上機嫌で優越感に浸っている神様も天界に帰って行った。

「おかえり碧! ねえ! 聞いた?」
 恋が元気に明るく出迎える。
「何が?」
 対照的に碧は疲れきって暗い顔をしていた。
「長崎が島になったってよ!」
「ガーン・・・・・・。」
 恋の無邪気な一言は碧を地獄に貶めた。
「すごいわね! 台風って! この調子なら台風が世界中をスコップしていくんじゃない? キャッハッハー!」
 本当のことを知らない恋は好き勝手にしゃべる。
「・・・・・・。」
(本当は俺が台風を逸らしたからなんですけどね。あはは・・・・・・。)
 立ち直れそうにない碧であった。
 つづく。
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