世界一の家出

弟ふみと

世界一使いやすい神

ピンポーン
　誰だろう。宅配なんて頼んでないんだけど……
　「はい。」
　「あぁ、貴女が。」
　えっ、男の子？ほんとに誰だろう……
　「俺ですよ。神待ちアプリのふ・み・とですよ。貴女が神になってくれると言ったので、来てしまいました。勝手に申し訳ないです。」
　あっ…あのアプリのfumitoくんか……あれやってるのって、お遊びかと思ってたわ……やばいな…どうしよ……ここはやっぱり年上として、びしっと謝らないと……
　「えっと…申し訳ないんだけど……私は君が本気じゃないと思いっていたの。だから、君の神には、なれないんだ。ごめんね。」
　よしっ、我ながらびしっと決まったっ。彼には悪いが帰ってもらおぅ……
　「え……ああ。そうですか、やっぱりそうですよね……家出とか嘘くさいし、見ず知らずの男を養うのとか……すいません。俺が間違ってました……」
　インターホン越しにふみとくんの目が潤んでいるのが見えた。カメラは高性能で、インターホン越しと言えど、私が泣かせた男の子の涙まで……
　「どうせ…俺なんて……そこらの道で、腹減って野垂れ死ぬのがお似合いなんだ……」
　私が泣かせた男の子…私が泣かせた……
　「すみません。お見苦しいとこをお見せしてしまって……ありがとうございました。さよなら……」
　無理をしたような笑顔が、息苦しい……あざとい様な、涙と頬の火照りが哀愁感を引き立たせて……
　「ちょっと、まって……！」
　喉の栓が緩んで、出た言葉だった。
　「何で家出したのかは分からないけど…、その…少しなら預かってあげても、いいかなぁなんて……」
　彼の顔が晴れ晴れとした。切り替えはやい……
　「わぁ、ほんとですか！ありがとうございます！神さま！」
　やっぱり、あざとい奴だったか……やっちまった……
　「おじゃましまーす！」
　こうして、ふみとくんとの平穏(?)な生活が始まってしまったのであった……