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10.第〇界
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そだね~…。
しょうもない真実だけど意外なほどずっしりくる。
俺はともかく親父、離婚したのに何で尻に敷かれてるわけさ。
しかも、そうそう。
あの後家に帰ってから晩飯のとき、親父のフツーな顔みたらイライラして。
二人に言ったんだっけ。
『いい加減、二人して俺を間に挟んでコミュニケーション取ろうとするのやめろよ』
二人共俺の顔見てきょとんとしてて。
『そんなつもり』
『あるだろ』
否定する母さんの言葉に割って入って、ごちそーさまして。
親父は何も言わなくて。
食い終わった箸と皿を流し台に置いて部屋戻って。
で、だ。
お菓子でも、と思って階段降りたら、二人して台所に立ちっぱなし。
なんか喋ってるっぽいから何かと思ったら。
『真宏、やっぱりおじいちゃんがいなくなって寂しいのかな』
『確かにいない影響はあるにはあると思う』
『やっぱりそうよね…』
一呼吸の沈黙を挟んで、
『でもな、あいつそんなタマじゃねえよ』
『そうかな…。
私…』
『そろそろ反抗期だしな。むしゃくしゃしたい年頃だろ』
『そっか…もうそんな年か…』
『あんまり気にするな』
『ん…』
その瞬間、電気ケトルより早く頭が沸いた。
ハアッ!!!??
あの二人なんなんだ!!
普段顔合わせたってまともに喋ったりなんて絶っ対ぇしねぇじゃねえか。
俺にお互いがお互いの愚痴話ぶつけたり、あっちに聞いといて~的な感じで俺に都合良く頼んできといてさ。
いざ俺が嫌がったら、二人仲良く話してる訳だろ!?
やれるんなら最初からそうしろよ!!
しかもなんだって?
ハンコウキ!!???
死ねやクソが!!!!
言葉に出さなかった代わりに、ずかずか割って入って、お菓子だけひったくってダダダダッと二階に上がって、水もなしにポテチを食いきったのは記憶に新しい。
「なるほどな。
挟まれっぱなしだったわけだ」
そうだよ!!
非道くね!?
思わず身がずずいっとコウダのほうに乗り出していく。
「死んだじいちゃんは『男と女ってそんなもん』って言ってたんだけど、そうなの?」
経験者に聞いたらわかるんじゃないだろうか。
借金王のくせに同棲なんてマネできてんだから、きっと。
期待を込めてコウダに詰め寄る。
一瞬、考えてると取れなくもないビミョ~な間が空いたあと、
「それは俺も知りたい」
えー…。
白ーい顔でもうちょっと違うの欲しいアピールをすると、コウダはすっと目を逸らして朝礼台のマイクを眺めた。
眩しそうにしていた目が更に眩しそうになる。
横を通りかかった如何にも校長OR教頭ぐらいの年齢のおっちゃんの頭に日光が反射したからだった。
眩しいものは他にもある。
グラウンドで競技に熱中するあの選手。
眩しい。眩しすぎる。
コウダの話の終わり方すっげえ煮え切らなくてすっきりしないけど、いいや、またそのうちで。
今はこっちこっち。
どうしても不可抗力で話題を続けるのに必要な集中力を奪われていく俺に対し、聞こえたコウダの声は冷めていた。
「何度も言うけど俺は別にお前のこと分かってるわけじゃない。
親の間に挟まれたりとかってのはよくある話で、加えてお前が単純で分かり易いからってだけだから」
まじで!!?? ちょっと、たんま。集中力、もとい!
目の前の選手のこんなにも魅力的な部分からコウダに向けて首が90度高速回転する衝撃。
そんなこと言われたことないぞ俺。
じゃあ、
「俺がさっきまでなに見てたか分かる?」
「おっぱい」
なぜ分かった!!!!!
パン食い競争のぶら下がったあんぱんらしきものにジャンプして食いつこうとする選手のぼよよよ~んを眺めてるってこと!!
完全に馬鹿にしてる空気感が隣から伝わってくる。
なにかすごーく言いたそうなのを押し込めたような、への字の口元がちょっと開いた。
「なんとなく、な」
理由を聞かされても全然納得出来無い。
けどなにせ、俺の考えは分かったってことか。
すげえな。
母さんの親父との結婚も『なんとなく』。コウダの読心術も『なんとなく』。
腹立たしいけど便利な言い方。
でも残念だ。
親や周りが言うのは全然ありだし、ばんばん言われてるのに。
自分は『なんとなく』って誰かに言った覚えがなく、言ってるところの想像も付かなかった。
俺の適正ジョブリストに『なんとなく使い』はねぇってことだな。
リアルというクソゲーのあらゆる試練を『なんとなく』で切り抜けるチートキャラをイメージして勝手に羨ましがってると、コウダはいつもの無表情に戻っていた。
「話変わるけど」
「え?」
「次、誰にする?」
「決めないといけないんだよね」
ずーっと運動会見てるわけにもいかないし。
「時間も経ってるし取り敢えず出るぞ」
親子競争の準備が始まったグラウンド。
和気藹々としたちびっこと大人達の姿。
楽しそうで、誰もが充実感に満ち満ちている。
でも。
その全部が、穏やかであったかくて、それでいてどこかもの寂しく見えた。
「みんなもういないんだよね」
「みんなって?」
「ここにいる人たち」
コウダはゲートの向こうから返事をした。
「『もういない』はちょっと違う。
『最初から誰もいない』だ」
どゆこと?
しょうもない真実だけど意外なほどずっしりくる。
俺はともかく親父、離婚したのに何で尻に敷かれてるわけさ。
しかも、そうそう。
あの後家に帰ってから晩飯のとき、親父のフツーな顔みたらイライラして。
二人に言ったんだっけ。
『いい加減、二人して俺を間に挟んでコミュニケーション取ろうとするのやめろよ』
二人共俺の顔見てきょとんとしてて。
『そんなつもり』
『あるだろ』
否定する母さんの言葉に割って入って、ごちそーさまして。
親父は何も言わなくて。
食い終わった箸と皿を流し台に置いて部屋戻って。
で、だ。
お菓子でも、と思って階段降りたら、二人して台所に立ちっぱなし。
なんか喋ってるっぽいから何かと思ったら。
『真宏、やっぱりおじいちゃんがいなくなって寂しいのかな』
『確かにいない影響はあるにはあると思う』
『やっぱりそうよね…』
一呼吸の沈黙を挟んで、
『でもな、あいつそんなタマじゃねえよ』
『そうかな…。
私…』
『そろそろ反抗期だしな。むしゃくしゃしたい年頃だろ』
『そっか…もうそんな年か…』
『あんまり気にするな』
『ん…』
その瞬間、電気ケトルより早く頭が沸いた。
ハアッ!!!??
あの二人なんなんだ!!
普段顔合わせたってまともに喋ったりなんて絶っ対ぇしねぇじゃねえか。
俺にお互いがお互いの愚痴話ぶつけたり、あっちに聞いといて~的な感じで俺に都合良く頼んできといてさ。
いざ俺が嫌がったら、二人仲良く話してる訳だろ!?
やれるんなら最初からそうしろよ!!
しかもなんだって?
ハンコウキ!!???
死ねやクソが!!!!
言葉に出さなかった代わりに、ずかずか割って入って、お菓子だけひったくってダダダダッと二階に上がって、水もなしにポテチを食いきったのは記憶に新しい。
「なるほどな。
挟まれっぱなしだったわけだ」
そうだよ!!
非道くね!?
思わず身がずずいっとコウダのほうに乗り出していく。
「死んだじいちゃんは『男と女ってそんなもん』って言ってたんだけど、そうなの?」
経験者に聞いたらわかるんじゃないだろうか。
借金王のくせに同棲なんてマネできてんだから、きっと。
期待を込めてコウダに詰め寄る。
一瞬、考えてると取れなくもないビミョ~な間が空いたあと、
「それは俺も知りたい」
えー…。
白ーい顔でもうちょっと違うの欲しいアピールをすると、コウダはすっと目を逸らして朝礼台のマイクを眺めた。
眩しそうにしていた目が更に眩しそうになる。
横を通りかかった如何にも校長OR教頭ぐらいの年齢のおっちゃんの頭に日光が反射したからだった。
眩しいものは他にもある。
グラウンドで競技に熱中するあの選手。
眩しい。眩しすぎる。
コウダの話の終わり方すっげえ煮え切らなくてすっきりしないけど、いいや、またそのうちで。
今はこっちこっち。
どうしても不可抗力で話題を続けるのに必要な集中力を奪われていく俺に対し、聞こえたコウダの声は冷めていた。
「何度も言うけど俺は別にお前のこと分かってるわけじゃない。
親の間に挟まれたりとかってのはよくある話で、加えてお前が単純で分かり易いからってだけだから」
まじで!!?? ちょっと、たんま。集中力、もとい!
目の前の選手のこんなにも魅力的な部分からコウダに向けて首が90度高速回転する衝撃。
そんなこと言われたことないぞ俺。
じゃあ、
「俺がさっきまでなに見てたか分かる?」
「おっぱい」
なぜ分かった!!!!!
パン食い競争のぶら下がったあんぱんらしきものにジャンプして食いつこうとする選手のぼよよよ~んを眺めてるってこと!!
完全に馬鹿にしてる空気感が隣から伝わってくる。
なにかすごーく言いたそうなのを押し込めたような、への字の口元がちょっと開いた。
「なんとなく、な」
理由を聞かされても全然納得出来無い。
けどなにせ、俺の考えは分かったってことか。
すげえな。
母さんの親父との結婚も『なんとなく』。コウダの読心術も『なんとなく』。
腹立たしいけど便利な言い方。
でも残念だ。
親や周りが言うのは全然ありだし、ばんばん言われてるのに。
自分は『なんとなく』って誰かに言った覚えがなく、言ってるところの想像も付かなかった。
俺の適正ジョブリストに『なんとなく使い』はねぇってことだな。
リアルというクソゲーのあらゆる試練を『なんとなく』で切り抜けるチートキャラをイメージして勝手に羨ましがってると、コウダはいつもの無表情に戻っていた。
「話変わるけど」
「え?」
「次、誰にする?」
「決めないといけないんだよね」
ずーっと運動会見てるわけにもいかないし。
「時間も経ってるし取り敢えず出るぞ」
親子競争の準備が始まったグラウンド。
和気藹々としたちびっこと大人達の姿。
楽しそうで、誰もが充実感に満ち満ちている。
でも。
その全部が、穏やかであったかくて、それでいてどこかもの寂しく見えた。
「みんなもういないんだよね」
「みんなって?」
「ここにいる人たち」
コウダはゲートの向こうから返事をした。
「『もういない』はちょっと違う。
『最初から誰もいない』だ」
どゆこと?
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