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14.第六界
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「借金返せそうだから」
それか。
「返しきってさらにお釣りまで来るんでしょ?
その金どうすんの?」
目が泳いでるぞコウダ。あ、れ…。
「…指輪、買ぅ…」
もにょった。
ごちそうさま。聞いといてなんだけど、それ俺に食わせるもんじゃねぇから。
でも、最後にこれだけは言っとこう。
「こっちこそありがとう」
意外だったようだ。
「『俺にもっと感謝しろよ』じゃないのか?」
「それもあるけど、助けてもらったのは確かだから」
それを聞いて、思いっきりニヤニヤしながらポケットから小銭を取り出し、券売機に向かった。
切符買ってる。
なんで??
戻って来た。
「その金どうしたの?」
「…拾った」
今の間、絶対、
「嘘だろ」
「さあな」
無表情のまま。
『素性が分んない誰かのポケットから無断でこそっと無期限で借りた』ってやつか?
まだまだ現金社会の日本だから成せる技だけど、だとしたら。
それ100%ダメなやつ!
咎めるような俺の目線に気付いたんだろうか。
はぐらかすように帽子を外して、俺の頭にそれを被せた。
「やる」
「え?」
「運がよければ消えずに残るだろ。
1個なんかイケるらしいし」
「『中』のものならでしょ。
『あっち』のだよこれ。
話はぐらかす道具にして消えちゃうだけじゃん」
「俺のもんどうしようが俺の勝手だ。
それにもうだいぶ使ってる。
久々にこの前洗ってだいぶ型崩れしちまったし、もういい」
後半余計だ。ちょっと嬉しいと思った俺が馬鹿みたいじゃないか。
「なんか他、聞きたいことあるか?
これで最後だから」
更なるはぐらかし策だと分かってるけど、もう追求してもしょうがないのも分かった。
気を取りなおして、質問…あるか?
あ、一個ある。
「俺、なんであんときじゃんけん勝ったんだろ」
「知るかよ。運だろ。次」
真面目に答える気ねぇなコウダ。
いいや。それでも聞けるうちが花だ。
あとは…まだあるか?
色々あったここ2ヵ月をほじるものの、あるような、ないような。
ああ、あった。
すげえ聞きたかったやつが。
「コウダの本名は?」
瞬間、コウダが盛大に吹き出した。
「あはははははははははハハハハハハハハハ!!!」
上を仰ぎ見て大口を開けている。
「そんな笑うような質問じゃねぇだろ!?」
「んー…いや。
なんつーか………お前、馬鹿だなぁ」
あの日『中』で言ってたのよりはソフトに、同じ言葉を言いながら嫌に優しい眼差し。
涙目にまではなってないけど、相当面白かった模様。
何が!?
俺超真剣に質問したんだけどっ!!
「いや、しかしいろいろ『中』見て思ったけど、今の子は大変だな。
俺が中学のときと違って情報ありまくりで。
かなり早い段階でお前みたく馬鹿な奴でも、『生きてくって辛い』って、気付いちまうもんな」
それこそ何のことだ。また性懲りもなく大人ぶりやがって。
「全然質問の答えになってねぇ。はぐらかして逃げる気かよ。
もう会うことないんだし名前ぐらいどうってことねぇだろ」
「おもし…折角だから、やめとく。
じゃあ、元気でな」
「あ、ちょ、待てよ!」
ささっと人込みに紛れ、ホーム改札にコウダが切符を通し、吸い込まれていく。
「待てってば! コウダぁ!!」
周りはバラバラと俺のほうを見るものの、結局は無関心。徹頭徹尾他人様。
コウダ、確信犯だな。逃がさねぇぞ。
つかつかと改札の向こうに歩き去るジャケットの背中。
絶対聞きたかったことなんだ。
どうする…?
そうだ確か入場券って奴があったはず。でも…面倒だし時間ないし。いいや。
券売機で一番安い切符を手持ちの小銭で購入。
速攻走って改札をくぐる。
コウダがいない。
どこだ? どこいった?
あ! いた! 山手線!
ホームを下る階段に見えたその上半身を追いかける。
人ゴミをジグザグにすり抜け、階段を駆け下りると、コウダは列の最後尾に並んでいた。
「コウダ!!」
叫ぶと周りの人と同時にコウダがこちらを向いた。
だいぶ吃驚したようだ。コウダの目がデカい。
「すんません! すんません通りまーす!!」
コウダの横まで無理矢理近付く。
『…行きが、到着します。黄色い線の後ろまでお下がりください』
電車来た?
ちょっと待って。もうちょっとでいいから。
ホームドア越しの風圧とともに、シルバーにグリーンのラインの電車が到着する。
なんとかコウダの隣に来れた。
「で、本名は!?」
コウダはまだ面白そうに笑ってる。
なにがだから面白いんだよ。
「最後だから!」
到着した電車とホームドアが開き、人が入っていく。
コウダはその最後尾にくっついて電車内へ。
これ聞いたら質問終わりだから。
乗客が一通り乗り切った。
コウダはドアギリギリに立ってる。
「名前!!」
コウダが口を開いた。
ピーンポーン
電子音が響く。ドアが閉まり始めた。
唇が動く。
見逃すまい。
声。
聞き逃すまい。
そして俺はその答えを知った。
「 」
それか。
「返しきってさらにお釣りまで来るんでしょ?
その金どうすんの?」
目が泳いでるぞコウダ。あ、れ…。
「…指輪、買ぅ…」
もにょった。
ごちそうさま。聞いといてなんだけど、それ俺に食わせるもんじゃねぇから。
でも、最後にこれだけは言っとこう。
「こっちこそありがとう」
意外だったようだ。
「『俺にもっと感謝しろよ』じゃないのか?」
「それもあるけど、助けてもらったのは確かだから」
それを聞いて、思いっきりニヤニヤしながらポケットから小銭を取り出し、券売機に向かった。
切符買ってる。
なんで??
戻って来た。
「その金どうしたの?」
「…拾った」
今の間、絶対、
「嘘だろ」
「さあな」
無表情のまま。
『素性が分んない誰かのポケットから無断でこそっと無期限で借りた』ってやつか?
まだまだ現金社会の日本だから成せる技だけど、だとしたら。
それ100%ダメなやつ!
咎めるような俺の目線に気付いたんだろうか。
はぐらかすように帽子を外して、俺の頭にそれを被せた。
「やる」
「え?」
「運がよければ消えずに残るだろ。
1個なんかイケるらしいし」
「『中』のものならでしょ。
『あっち』のだよこれ。
話はぐらかす道具にして消えちゃうだけじゃん」
「俺のもんどうしようが俺の勝手だ。
それにもうだいぶ使ってる。
久々にこの前洗ってだいぶ型崩れしちまったし、もういい」
後半余計だ。ちょっと嬉しいと思った俺が馬鹿みたいじゃないか。
「なんか他、聞きたいことあるか?
これで最後だから」
更なるはぐらかし策だと分かってるけど、もう追求してもしょうがないのも分かった。
気を取りなおして、質問…あるか?
あ、一個ある。
「俺、なんであんときじゃんけん勝ったんだろ」
「知るかよ。運だろ。次」
真面目に答える気ねぇなコウダ。
いいや。それでも聞けるうちが花だ。
あとは…まだあるか?
色々あったここ2ヵ月をほじるものの、あるような、ないような。
ああ、あった。
すげえ聞きたかったやつが。
「コウダの本名は?」
瞬間、コウダが盛大に吹き出した。
「あはははははははははハハハハハハハハハ!!!」
上を仰ぎ見て大口を開けている。
「そんな笑うような質問じゃねぇだろ!?」
「んー…いや。
なんつーか………お前、馬鹿だなぁ」
あの日『中』で言ってたのよりはソフトに、同じ言葉を言いながら嫌に優しい眼差し。
涙目にまではなってないけど、相当面白かった模様。
何が!?
俺超真剣に質問したんだけどっ!!
「いや、しかしいろいろ『中』見て思ったけど、今の子は大変だな。
俺が中学のときと違って情報ありまくりで。
かなり早い段階でお前みたく馬鹿な奴でも、『生きてくって辛い』って、気付いちまうもんな」
それこそ何のことだ。また性懲りもなく大人ぶりやがって。
「全然質問の答えになってねぇ。はぐらかして逃げる気かよ。
もう会うことないんだし名前ぐらいどうってことねぇだろ」
「おもし…折角だから、やめとく。
じゃあ、元気でな」
「あ、ちょ、待てよ!」
ささっと人込みに紛れ、ホーム改札にコウダが切符を通し、吸い込まれていく。
「待てってば! コウダぁ!!」
周りはバラバラと俺のほうを見るものの、結局は無関心。徹頭徹尾他人様。
コウダ、確信犯だな。逃がさねぇぞ。
つかつかと改札の向こうに歩き去るジャケットの背中。
絶対聞きたかったことなんだ。
どうする…?
そうだ確か入場券って奴があったはず。でも…面倒だし時間ないし。いいや。
券売機で一番安い切符を手持ちの小銭で購入。
速攻走って改札をくぐる。
コウダがいない。
どこだ? どこいった?
あ! いた! 山手線!
ホームを下る階段に見えたその上半身を追いかける。
人ゴミをジグザグにすり抜け、階段を駆け下りると、コウダは列の最後尾に並んでいた。
「コウダ!!」
叫ぶと周りの人と同時にコウダがこちらを向いた。
だいぶ吃驚したようだ。コウダの目がデカい。
「すんません! すんません通りまーす!!」
コウダの横まで無理矢理近付く。
『…行きが、到着します。黄色い線の後ろまでお下がりください』
電車来た?
ちょっと待って。もうちょっとでいいから。
ホームドア越しの風圧とともに、シルバーにグリーンのラインの電車が到着する。
なんとかコウダの隣に来れた。
「で、本名は!?」
コウダはまだ面白そうに笑ってる。
なにがだから面白いんだよ。
「最後だから!」
到着した電車とホームドアが開き、人が入っていく。
コウダはその最後尾にくっついて電車内へ。
これ聞いたら質問終わりだから。
乗客が一通り乗り切った。
コウダはドアギリギリに立ってる。
「名前!!」
コウダが口を開いた。
ピーンポーン
電子音が響く。ドアが閉まり始めた。
唇が動く。
見逃すまい。
声。
聞き逃すまい。
そして俺はその答えを知った。
「 」
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