銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ

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王家の絆編

PART32 ヘルターナの復讐(前編)

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銀河系の渦巻腕にヘルターナの艦隊があった
その数も今や400隻にのぼる
艦隊を編制する中心にあるのが

バダイ全自動式(宇宙戦艦工場)
移動要塞工場と呼ばれている

全長6000メートル
全高6000メートル
全幅6000メートル

形状は完全立方体であり自身で移動可能
最大リープ速度4を出す

今も宇宙戦艦を建造しながら移動している
バダイを護る多数の艦隊に
建造されたばかりの戦艦が加わる

この艦隊の旗艦はキングターナ2世で
ヘルターナ達は軍人色を捨て去り完全に
{非合法組織化}していた。

ヘルターナーはこの組織のボスであり
創設者である、副官グラダーはアンダーボス
又は相談役コンシリエーレ

カポレジーム1はシューカー(元)大佐
カポレジーム2はシルカース(元)大佐
カポレジーム3はグローカー(元)大佐
   構成員はソルジャー
  準構成員はアソシエーテ

「いつまでも根無し草と言う訳にも行くまい
そろそろ、目星い星を見つけ根城にしなければな」

「ですがターナー様・・他惑星を侵略すれば
其れこそ彼奴を呼び寄せる危険がありませぬか?」

ターナーは鼻で笑い「誰が侵略すると言った?」
「阿保らしい・・」と言い
「脅しはするが武力行使などせずとも
此だけの戦力が有れば平和的に異星人の星を
根城にする事は出来る」

「俺達は力なき者達を保護し、少しばかりの
融通を効かして貰えるよう賢く立ち回るだけで
良いのだ」

「成る程・・持ちつ持たれつを
演出すると言うわけですな」

「俺に言わせれば{無理矢理征服}する奴は
只の阿呆だ」

「確かに仰る通りですな」
ターナーはこのやり方で
まずは複数の異星人の星と取引するらしい

戦力不足で他国に責められている星に
まずは武力を貸し与え平和な世界に依存させ
徐々に勢力圏を肥大させる、まあ焦らずとも
銀河系全体に組織が浸透して行けば
良いだけの話だ。

「頭の良い侵略方法というのは
平和的に力でする物だと
アストラ大使も言っているしな」

無論、大城誠矢はそんなつもりは
微塵もないのだが・・
やっている事はそういう事だと
ヘルターナーは理解していた

「それにそろそろ、近隣の異星人の星に
潜入させたスパイからの報告が纏まって来る」

「兎に角最初が肝心だぞ、何としてでも
成功させるぞグラダー」

「御意で御座いますヘルターナー様」
_____________________

リベンジハートのボス・ヘルターナは
星の海原を眺めながら

『早いものだ、あれから一体何年が
経ったんだろうか』
やがて闇銀河の帝王と呼ばれる
男の伝説の始まりは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★

若き日のヘルターナーが市道を走って来る
彼はは何処にでも居る青年の様に希望に瞳を
輝かせていた、やがて彼の前方に噴水が見え始め

「ゼアトレス」

ゼアトレスと呼ばれた女性はターナーに
名を呼ばれ手を振って応えた。

ターナーが生まれた星は(官僚社会主義国家)
ジアフローレスと言う名の美しい惑星だった

「ゼアトレスやったよ法学試験に
パスした!これで一級法学官になれるんだ」
恋人の手を取りそう報告すると
ゼアトレスも心から喜びターナーに
祝福の言葉を贈った

「本当におめでとうターナー」

「一番に君に知らせたくて」

ゼアトレスが美しく輝く緑色の髪を靡かせ
その憂いを込めた紫の瞳がターナーを映す

「有り難う、一番に私の所に来てくれて
お父様も喜んでくれるわ」
ターナーと手を取り合い喜びを分かち合う
ゼアトレスが「さあ早速報告に参りましょう」

ターナーは地球で言う{判事の試験}に
合格したのだった
_______________________
★付箋文★

ゼアトレスの父であるホフマン氏は報告を聞き
「そうか合格したか
ターナー君は本当に優秀だね御目出度う」

「有り難う御座いますホフマンさん」

二人は何かを話しながら議論を交わしていた
そこにゼアトレスがハシュ果酒を運んできた
(青い透明な清酒で味は日本酒に近い)
「お父様そろそろターナーを
私に返して下さらない?」

「ああ済まない、ターナー君とは
つい話が弾んでしまう」

ホフマン氏は上機嫌で娘から酒を受け取り
杯をターナーに渡すと瓶からハッシュを注ぎ入れた
「さあ一杯いこう」と酒を勧められターナーも
感謝を伸べて酒に口を付ける

酒の魚にはゾルティー豆を
皮ごと揚げた物を摘む
(味としては怒り豆に近い)

「ターナー貴方もそうよ、いつも私を
放ったらかしにしてお父様とお話ばかり」

ターナーは笑いながら
「今度はこっちに飛び火しましたよ」と
ホフマン氏に言うとホフマン氏が
「いつもこんなに焼き餅ばかり焼いて
君も大変じゃないかね?」そう言って笑う。

ターナーは酒で少し頬を赤く染めながら恋人を見て
「疲れるだなんてとんでもないゼアトレスは
私には勿体ない天使ですよ」と似合わない台詞を吐く

「もうターナーったら酔っぱらって言われても
嬉しくなんかないんですからね!」

ホフマン氏が「何をニヤケながら言っとるんだ?」
と言うとバフと音がして娘が真っ赤になって
彼女が父親の背中だか肩を叩いた音がした

暫く時間が経ってからホフマン氏がターナーに
「そう言えば家に連絡を入れたか」を聞いた
だが実はターナーは浮かれすぎいて
この事をすっかり忘れていたのである

「スイマセンすっかり忘れていました」

「それはいけない家の人が心配されて
いるといけない直ぐに知らせて来なさい」

ターナーはゼアトレスに、
いつもの場所に後で行くから待っていてくれと言い残し自宅に戻った

その姿を見送るゼアトレスにホフマン氏は
「なあ」と娘に話しかけ娘も「何ですか?」
と問い直す

「彼は不正が好きな男ではない、だからこそ良い
一級法学官になれる筈だ」

娘は父の期待とも願いとも取れる言葉に
「彼ならこの星で一番の法学官になれます」と
応えたのだが、併しこの幸せも長くは続かなかった。

数ヶ月後ジアフローレスは突然
{異星人の侵略}を受け
敗北した、侵略したのは言うまでもなく
ガルスグレーサー帝国軍である

ガルスグレーサーの強大な軍事力の前に
此と言った軍備の無いジアフローレスが
陥落するのに大した時間は掛からなかった

{侵略国に傀儡政府}を立ち上げられ支配されると
ターナーを含む多くのジアフローレスの若者達は
国から兵士の教育を強制的に受けさせられた

そしてターナーの住む地区に{監視官}
が置かれる、監視官の名前はジゴルダ、
ターナーはその男の部下となり
半年も過ぎると軍人として才覚を現し始めた。

ジゴルダはターナーの才能に
気が付きながらも、それを上に報告しなかった
何故ならターナーの揚げた手柄を全て横取りし
自分の物にする為である。

ジゴルダは戦前から賄賂を使い出世し
地位を利用し民衆に重税を課し
其れを自分の贅沢に湯水の如く使う様な
下劣な男だった。

運命の日、ターナーは面会人が来たと教えられ
役所(戦時下で兵舎として利用)の表に行くと
其処にいたのは、愛しい恋人のゼアトレスだった

「ゼアトレス会いに来てくれたのか?」

「ターナーどうしても会いたくて」

二人は手を取り合い見つめ合った
其れを見ていた同僚の兵士は
ターナーに「邪魔者は消えるから
恋人と宜しくやってくれ」と言い席を外した
「済まない恩に着る」

その兵士がその場を離れたとき1台の車が
ターナー達の横を通り過ぎる、
それがジゴルダの車だったのは本当に不幸な出来事だった、
ジゴルダはゼアトレスの美貌に一目見て魅入られ、
そして自分の副官に
「あの女の素性を調べて報告しろ」と命じた

副官は腹の中で『また悪い虫が出たな』
そう思いつつも上官の命令には逆らえない
「ハッ直ちに調べ報告を上げます」

副官が車を降りるとジゴルダの車は
役所に入っていった、其れを見送り副官は
『やれやれジゴルダの好色にはホトホト
呆れ果てた物だ、此が終わったら転属願いを
出すか?』だが執念深いジゴルダに睨まれるのは
その副官にとっても願い下げだった。
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★付箋文★

回想から目覚め

ターナーは思い出のハッシュ果実酒と
ゾルティー豆を味わいながら宇宙の星を
旗艦キングターナー2世の観測室から観ていた

『思えばあれから俺の人生は変わった、後に
ゲリラキラーと呼ばれヘルターナーの異名を
得た今の自分を作ったのが、あのジゴルダと
ゼアトリスの2人だからだ』
ターナーは再び回想の世界に入った
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ゼアトレスが帰って数時間後・真夜中
ホフマン氏が息を切らして役所にやってきた
見張りの兵士が真夜中にターナーに
引き継いでくれたのはターナーの人徳である

手続きに多少手間取ったがホフマン氏は
ターナーに会うなり縋り付く様に
「ゼアトレスが連れて行かれた!!」と訴えた

其れを聞くなりターナーは「誰に連れて行かれたんですか!?」
とホフマン氏の肩を掴んで問いつめる
その剣幕にホフマン氏は逆に落ち着き、ジゴルダと
言う監視官だと告白した
「あの娘に敵のスパイの疑いが有ると言って・・」

その様子を見ていた兵士が「おいゼアトリスって
昼間お前に会いに来た美人さんじゃないのか?」

ターナーが「その通りだ」と応えると兵士は
「ジゴルダは女好きで有名だ、危ないぞ!!」
と言った

「本当か其れは!?」
ターナーは怒りで声が震えている

「隊長には俺から言っといてやる早く助けに行け!」
仲間の兵士に礼を言いターナーはホフマン氏と共に
駆けだした。

そしてホフマン氏の乗ってきた車に乗ると
ジゴルダの屋敷に向かって車を飛ばし、その車中で
「ホフマンさんは車に残って下さい」

「一人で大丈夫なのかね?」

「私一人の方が身軽に動けます
二人で逃げてきたら車で迎えに来て下さい」

「わ・・解った、言われた通りにしよう」

「其れと君を巻き込んでしまって申し訳ない
何とお詫びを言って良いか解らないが・・
君以外に頼れる者が居なかった申し訳ない!」と
涙ながらに詫びるホフマン氏にターナーは
「いいえ私を頼って頂いて光栄です
彼女だけは他の何にも変えられないですから」

数分後ジゴルダの屋敷に到着したターナーは
車を降りると直ぐに素晴らしい身のこなしで
屋敷内に潜入した『ゼアトレス無事でいてくれ』

だが彼女を心配するあまり心に隙が出来て
普段は冷静沈着なターナーの注意力は散漫になり
簡単なミスで警報器に引っかかってしまう
けたたましく鳴り響く警報で屋敷に設置した
盗難防止用のサーチライトが
ターナーの姿を捉え追いかけ乍照らし出す

ターナーは庭から屋敷のガラスを突き破り
中に飛び込んだ、一回転して体制を整えると
廊下を走り出すが、丁度角から出てきた兵士の
後ろに素早く回り込み兵士の短剣を奪い取る
それを兵士の首にあてて尋問した
「浚ってきた娘の居場所を言え!命が惜しければ
正直に答えるんだ!!」

「待ってくれ言う!言うから殺さないでくれ!」
ターナーの気迫に恐怖した兵士はあっさり答えた

「娘は・・じ・・ジゴルダ様のし・・寝室にいる」
震える声で兵士は答えた、此を聞いたターナに
殺されると思い言葉が辿々しい
だがターナーの目が氷のように冷たくなり
其れを見た兵士は逆に死より恐ろしい恐怖を感じた

「場所を言え・・奴の寝室は何処だ?」

「3階・・中央・・階段の右から5番目の・・
部屋です、お願いします助けて下さい」

「暫く眠ってろ」短剣のつかの部分で後頭部を叩き
兵士を気絶させ、ジゴルダの寝室に続く中央階段を
上がると何人もの兵が行く手を遮ったが
ターナーは出会った兵士を次々に打ち倒した

{ゲリラ部隊を独りで制圧した
地獄のターナーの異名}は伊達ではない。
たった1本の短剣でもターナーが使えば
恐るべき殺傷力を持つ武器になる

屋敷を護る兵士達を薙倒しあっと言う間に
3階に着いたが、目標の部屋の前に2人の兵士が
見張って居た、柱の影に隠れたターナーは
兵士達に向かって「侵入者が来たぞ!」と
叫んで二人に近寄った

同じ軍服だし巧く誤魔化せたぞと思うが
そんなに長く持たない事は解っていた、
ターナーはジゴルダの寝室の取っ手を掴んだ

その時、兵士達が階段を駆け上がってきた
其れと同時にターナーも寝室に飛び込む
『無地で居てくれゼアトリス!!』
併し、祈り虚しく其処でターナーは絶望を知る

『此は悪い夢なのか・・それとも』
ターナーが見た光景は、ソファーに悠々と座った
ジゴルダと、ベットの上で全裸で咽び泣いている
ゼアトリスの哀れな姿だった。

『ゼアトリス・・』遅かった・・全てが遅かった

その気配にゼアトリスは気が付きゆっくりと
悲壮な表情をして自分を見ているターナーを
見て嗚咽を漏らす「そんな・・見ないで・・
お願いだから・・私を・・見ないでぇええ」

ターナーは短剣を力なく落とし
その場に立ち尽くしたが
部屋の中に突入してきた兵士達に
両腕を押さえられ床に押し倒される
そうして身動き一つ出来なくなった

「俺のゼアトリスをよくも!畜生離せ!
離してくれ!!」

ジゴルダはニヤつきながら
侵入者の顔も見ずに「この女の恋人か」と
部下に聞く「その様です」と答える兵士

ターナーは思わず名乗りそうになるが
其れを思い止める
まさか自分が出世に利用している
ターナーだと知らないジゴルダは
その名も知らぬ侵入者の顔を見るのも
面倒に思い(取るに足らぬ虫一匹と)
確かめるのを怠った。

「武器らしい物は何も持たず飛び込んできた
みたいです」

ターナーは「畜生必ず殺してやる」
と言う在り来たりな台詞を吐いた

其れを聞いてジゴルダは勝ち誇った様に
ターナーに向かって「若造お前はまだ
解っていないようだな此が権力の違いだ
強き者に許された権利だ」

『権利と来たか・・』
ターナーは畜生と呟きながら下を向き
自分の顔が見えないように工夫する

{落ち込んで下を向いている}
そう思ったジゴルダは勝誇りターナーに向かって、
「この女ゼアトリスと言ったな実に良い女だ
気に入った今日から私の所有物にする」と
言い捨てた。

そして副官に向かいそいつを表に摘み出せと
命令した、そして最後に「命だけは助けてやる
貴様が今抱いているその憎しみは時として人間を強くするだろう、
その好機を与えてやったんだ、この私に
感謝するが良い」そして高笑いしながら
「連れて行け」と命じる

そしてターナーは連れて行かれる
最中に「権力の違い」を聞かされた
「もう一度可愛がってやるぞゼアトレス」
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ターナーは表に放り出される前に
仲間を可愛がってくれたお礼だと
散々殴られ蹴られたりしてボロボロに
されてから屋敷の外に放り出された。

兵士達が地面に倒れたターナーに向かって
「こいつも気の毒にな
恋人が美人だっただけでこんな目に遭うとは」
「俺達も高望みせず普通の顔の女で我慢しようぜ
こいつみたいに寝取られるのは勘弁だ」
そう言って笑いながら扉を閉めた

倒れたターナーの所にホフマン氏が駆け寄ってくる
「大丈夫かねターナー君!」

ターナーは腫れ上がった顔で血を流しながら
ホフマン氏に気が付いた「オヤジサン・・」
そして肩を借りて車に向かい歩きながら

「スイマセン」くぐもった小さな声で
「ゼアトレスを・・救えませんデシタ・・」
そして咳をして血痰を吐き出す

ホフマン氏は涙ながらに
「謝らないでくれ・・君は良くやってくれた
こんなになるまで・・」そして嗚咽になり
言葉が詰まる・・「君は精一杯頑張ってくれた」

この時ターナーの心の中に激しい怒りと共に
一つの野心が燃え上がった
『俺は武力ではなく権力に負けた・・
この屈辱を晴らすには・・答えは一つしかない』

車までの道すがら二人は無言で歩み続け
やがて数人の人影が現れる
それはターナーの所属する隊の隊長と
友人の兵士で彼等を待っていたのだ

ターナーはボロボロの姿で「隊長・・」と
その人物を呼んだ

隊長と呼ばれた人物はその様子を見ただけで
全てを察し「何も言うな・・帰るぞ」と言い
ホフマン氏からターナーを受け取り
肩を貸した友人も「迎えに来たんだ乗れよ」
と呼びかけ軍用車に乗せる。

隊長はホフマン氏に
「宜しければ家まで送りますが」と聞くが彼は
力なく首を振り

「いえ有り難いですが・・車がありますので」
そう言って断ると「彼を宜しくお願いします」
とだけ喋り頭を下げた。

3人を乗せた車は父親を一人残し
発車した、そしてホフマン氏の姿が
遠く小さく離され消えていく

車中で隊長は慰めにもならないがと断った上で
「なあターナー人間誰だって一度は挫折する事もある
お前の人生はまだ始まったばかりだ、だから
命を粗末にするような真似は絶対やるな」

併しターナーは心の内を吐露した
「権力さえ有れば俺はゼアトリスを奪われずに済んだ
権力のない者はいつも権力者にされるがまま
無念の涙を飲むしかない!!」

「正義がなんだ!!愛が何だ!!所詮権力の前では
只の負け惜しみに過ぎない!俺は権力が憎い・・
俺はいつの日か必ず権力を俺の前に
膝まずかしてみせる!!」
_____________________
回想を抜け

キングターナー2世でヘルターナーは
若き日の思い出を懐かしんでいた

『思えば俺はあの日、権力への復讐を誓った』

今は巨大な犯罪組織に育てようと目論む
{リベンジハート}のボスとなり
その手始めに戦力の脆弱な
ある惑星に向かっている所だ

『あの日・・それまでの自分と決別し
俺は権力に対する復讐者となった』
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17年前

ヘルターナーが
ジアフローレスとガルスグレーサーの
合同軍に参加して半年が過ぎ、激戦地の
{プラドーン星系}への転属願いが
受理されたのは其の5日後の事だった

{激戦地プラドーン当時(生還率)20~30%}
ターナーは手早く権力を握る早道に其の戦場を選んだ
プラドーンに赴任する際、ターナーを見送ったのは
友人の兵士達と隊長、そしてホフマン氏である

「お前をこんな形で手放すとは思わなかったな」

「隊長、有り難う御座いました貴方に受けた恩は
決して忘れません」

友人達はターナーの肩を叩き
握手を交わし合いながら
「死ぬなよターナー 又何処かの戦場で会おう」

「お前こそジアフローレスの星だ」とエールを送る

「有り難う皆達者でな!」
そう言って別れを惜しみながら
最後にホフマン氏と両手で握手した

「ターナー君、無事に戻ってくるんだよ君は
戦争等で死んではいけない優秀な男だ」

「解っています、俺は死ぬ気はありません
ゼアトリスを取り戻すためにも必ず戻ります」
すっかりやせ衰えてしまったホフマン氏
それも無理からぬ事だった・・・
(あれ以来ゼアトレスは家に帰ってこず
噂では毎日のようにジゴルダに慰み者にされている)

隊長とは昨晩も話し合った、ターナーが
権力を渇望する気持ちは分かるが
それだけが全てになっては本末転倒だと

だがターナーは今となっては、そんな事は
どうでも良く{権力への復讐}だけが
彼の生きる原動力なのである

隊長も最後には「復讐か・・其れも良いだろう
併しそれが間違いだと気が付いたときは
迷わず引き返せ、たった一度の人生を大切にな」

『有り難う御座います隊長』
ターナーは見送りの隊長達に敬礼し
{兵員輸送船}に乗り込んだ

_______________________
★付箋文★

激戦地ブラドーンで
ターナーは文字通り地獄を味わった、
ある時は泥のような川に潜り敵兵が通りかかると
水中から竹槍同然の武器で脇腹を突き刺し命を奪う。

又ある時は雨の中の泥濘となった荒野で仲間と共に
敵兵と切り結びながら返り血で全身真っ赤になりながら
多くの命を奪い勝利をもぎ取った。

充分な補給もなくある時は喉の渇きに苦しみ
其れを癒す為に敵の腕にカブリツき生き血を啜る
そして飢えを満たすために動物や虫を喰らい

敵を殺して食料を奪い、そうする内にいつしか
ターナー隊長と呼ばれる立場と{グラダーと言う
優秀な副官}を得るまでに至る。

凄まじい戦闘能力と指揮能力を発揮し
彼の事をブラドゾーンの敵ゲリラ達は
ゲリラキラーの{ヘルターナー}と呼び
恐れられる存在となる

やがて空母編隊の司令にまで出世し
その時グローカーとシューカーと言う
最良の部下達を従える迄になった

ジアフローレスの最高司令官となったのが
権力に復讐を決めて僅か6年目の事である。

『待たせたなゼアトレス、此で君を取り戻せる』

意気揚々と故郷に凱旋したヘルターナが
其処で見たものは悲惨な現実
6年の歳月で全てが変わっていた。

ゼアトレスはジゴルダの愛人となり
今ではすっかり{性格が捻曲がり}
主人に絶対の服従と忠誠を誓いあらゆる
非道の限りを尽くす毒婦と化していた

多くの犯罪に手を染めた揚げ句に麻薬さえも
己の欲を満たす目的で市中に蔓延させる
{男によって女は変わると言うが此は悪い例}だ

汚職に不正な裏取引により犠牲となった者
ジゴルダの罪を暴こうとした役人を
色香で誑かし罠に填め破滅させた事など
これらの証拠を集めるのに大した時間は必要なかった

只々・・・ゼアトリスの悪行だけがターナーの
心に堅い凝りを積み上げていく
「俺のゼアトリスは死んだ・・」
『ジゴルダという癌に冒され
既に殺されていたんだ』

全てのお膳立てを済ませヘルターナーは
故郷の星ジオフローレスに帰るなり、その足で
ジゴルダの住む屋敷に訪れた

そして止めようとする兵に向かって冷たく
「命が惜しい者は下がれ」

ジゴルダの兵達は
大勢の親衛隊を引き連れて来た
この恐ろしげな男と争う等とんでも無いと
一瞬で理解し、新しい支配者に
命じられたとおり敬礼して後ろに引き下がる

ターナーは合法的にジゴルダに会見した
だがまだ自分の地位は伏せてある。

突然の来訪者に応接間で応対する
ジゴルダはターナーの顔などすっかり忘れ
会っても『何だこの偉そうな若造は?』
としか思わない。

そこで後ろにいた副官が何かを耳元に囁き
漸く事態を理解した『ああ、あの時の青二才か・・』
「随分立派になった様だな若造」
そう見下した態度で言うジゴルダを見るターナーの
目には明らかな嘲りの光が宿っている

そしてターナーは応接室の机の上に足を乗せる
「何をする!!無礼だぞ」

だがターナは鼻で笑いながら
「ジゴルダ・ドランたる者が此位の事で
カッカする事はないだろう」

其れを聞いたジゴルダは青筋を立てて
ターナーを睨んだ、そんな一触即発の状況に
応接室のドアが開きゼアトリスが入ってきた

そしてターナーの顔を見るなり軽蔑を込め
「あら珍しい人が居るわね6年前に尻尾を巻いて
逃げ出したターナーじゃない」と言った

『噂以上だな、こんな女の為に俺は
命を懸けてあの地獄を生き抜いて来たのか』

ターナーは立ち上がると
「一体今まで幾らの公金を横領した?」
まずは軽いジャブだ

ジゴルダは拳で机を叩き
「何を言うか若造!!口を慎め!衛兵直ぐに
こいつを摘み出せ!!」と怒鳴り声を上げる

だがターナーは平然としながら
「6年前の様にはいかんよ」と言うと衛兵に向かって
「貴様等に命じる此処から出て失せろ」と言い放った

衛兵は顔を強ばらせながらターナーの
指示に従う、其れを見てジゴルダは
「お・・おい御前達・・待て」と止めるが
其れを無視して衛兵は全員退室した。

そしてターナーがジゴルダに「おい田舎役人
貴様一人じゃ何も出来まい」と言い挑発した

ジゴルダは怒りに任せ剣を抜き
「言わしておけば此の若造め
図に乗りおって殺してやる!!」
そしてターナーに切りかかったが

ターナーは簡単にそれを避けてから立ち上がると
ジゴルダの足を引っかけその場に転倒させた
そして無様に転がるジゴルダの顔面を
グシャリと土足で踏みつける。

「この俺に刃向かう事は反逆と見なす」

ジゴルダは憎々しげに靴底の下から
「何だと、其れはどう言う意味だ!?」と聞いた

ターナーは「本日付けを持って俺はジアフローレスの
最高司令官になったからだ」と明かし
「貴様が今の地位に胡座をかいている間に俺は
この星の最高権力を手中にしたぞ、その差が此だ」

ターナーは同行したグラダー副官に対して
「帰るぞ用件は済んだ」と言って
重厚なコートの長い裾を翻し部屋を出る

後に残されたジゴルダはゼアトレスに
命令した「この侭では俺の地位も危ない
今夜あの男の元に行けゼアトレス」と命じる

毒婦と化したゼアトリスは主に頷いて
「解りました閣下・・其れではいつも通りに・・
で御座いますね?」
そう言い終えると毒婦は隠微な笑みを浮かべた。
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★付箋文★

屋敷から出て公用車に乗り数台の黒塗りの
護衛車に挟まれ(新)最高司令官を乗せた車列は
{迎賓館}に向け発車した。

「グラダー、今夜ゼアトレスが来る」

グラダー副官は全てをお見通しのターナーに
「ハッ、それでは例の部屋に通します」と返事をした

事実その夜にゼアトリスはヘルターナーの居る
迎賓館に訪れた、煌びやかに贅を尽くした衣装に
身を包み妖艶な色気を漂わせた彼女はまるで
夜の蝶だ。

彼女が通された部屋にヘルターナーが行くと
夜の蝶は椅子に持たれ掛かる様にして待っていた
「随分と出世した物ねと」言いながら近づいて
娼婦の様にターナーにすり寄る

「お前も変わった、昔は今のように淀んだ
目をしていなかった」そう冷たい目で言うターナーに
「時は人を変えるわ」と息が掛かる程、
顔を近づけ耳元に囁く

「確かに其れは認めよう」
ターナーの素っ気ない態度に
急にゼアトレスは服を脱ぎ始めた、併し
「今までそうやって何人の男と寝た?
10人か20人か」

ゼアトレスは一瞬言われた意味が解らなかった
「俺はお前の様な淫売に掛ける情けなど
持ち合わせてないさっさと失せろ!
この汚らわしい売女め!!」
そう言って突き放されたゼアトレスは

最初からそのつもりだった様に短剣を取り出し
「言わせて置けばよくも!!」と叫んでターナーに
切りかかるが、次の瞬間には顔面を平手で叩かれ
床に這い蹲らされた。

「失せろ!!」
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★付箋文★

ジゴルダの屋敷に帰ったゼアトレスは
泣き喚きながら「彼奴が憎い!私を淫乱売女と
まで言い貶したのよ!お願い彼奴を殺して!!」と
主人に懇願する。

「ワシもそのつもりだ、暗殺計画も出来ている」

併しその約5分後、彼等はターナー親衛隊に
呆気なく捕らえられた
グラダー副官は親衛隊に逮捕された
囚人二人にまず逮捕理由を説明する

「貴殿の応接室にて
ターナー最高司令官に切りかかる貴殿の
姿を映した映像をお見せ仕様」・・ジゴルダが
部屋に設置させていた監視装置の映像データー
此を提供したのは一人しかいない
ジゴルダは副官の裏切りを確信した

「此は・・違う・・違うんだ!」

そしてもう一人、これもまたターナーを
短剣で刺そうとするゼアトレスの映った
ビデオ映像である
「此だけでは我々を有罪には出来んぞ!」

『意外としぶといな・・』
グラダーは「果たしてそれはどうですかな?」と
言いながら「では今度は此を聞いて下さい」と
レコーダーのスイッチを入れた。
_______________________
★付箋文★

PART27 ターナーの復讐(後編)に続く
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