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王家の絆編
PART45 ノヴァ・ギャラクシー
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彼等は銀河からその光景を観測した
その誰もがまるで現実味のない
その光景に息を呑む
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天体級大円盤ムー
直径40万km 全高3~6万km
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この宇宙史上稀に見る巨大人工物が
其れこそ一瞬にして、まるで陽炎の如く消滅した
何か大きな爆発や巨大な天体ショーに
発展する事もなく、いとも容易く簡単に
其処に端から何も無かった様に
全てが消滅してしまったのだ
そしてその天文学級の破壊現象を引き起こした
神の秒針と言う実に長さが5光年
幅が0,005光年の実体を伴うエネルギーの
塊も又・・観測者達の前から瞬く間に消滅し
忽然と消え失せる
銀河連邦とガルスグレーサー帝国による
宇宙史上稀に見る大激突は
最も衝撃的な結末を迎えるに至った
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━━★付箋文★
アトランテスノヴァの中では物議が起こった
春吉進一郎(トト)博士が誠矢に対し
「天体級大円盤内部を調べたんだが
生命反応が一切検出されなかったんだ・・
もしかしたら中は無人だった可能性が
あるかも知れない」
其れを聞いたアトランテスノヴァの
ウオーリアメンバーは静まり返っていた
空気が一変し安堵の溜息が漏れる
「そうか・・それじゃあ殆どの住民は
人間サイズ化して難民船団に紛れ込んで
逃げ延びてやがったのかーっ」
そして悔しそうにして見せる主要メンバー
「此はリンクスにしてやられたぜ・・」
「そうか~上手く逃げられたかやられたな」
春吉が理論的に考えて
「リンクス宰相が彼処まで道化を演じていたのも
巨人族の行く末を案じての一芝居だったんだろうね」
と言う結論を出すと誠矢も
「そうか・・生命反応が無かったか・・」
誠矢は心の中の同様を見せず
「まあ本当の事はリンクスだけが知っていて
それを詮索するのは俺達の仕事じゃない
だから此処は黙って引き上げるとしよう」
「賛成」「了解ですキャプテン」
キャプテンアストラの鶴の一声で
アトランテスノヴァは尽きない物議を止めて
一路地球に向け帰還する進路を取るのだった
━━━━━━━━━━━━
━━━━━━
地球ー日本エリア犬吠岬
{クリスタルアーマーステーション}
ハヤテメインメンバー専用テラス
(メンテ中のハヤテを観れる特別室)
誠矢が響にリンクスとの
秘められた遣り取りを打ち明けた直ぐ後の事
「実はお前に真耶の兄として
頼みたい事があるんだ」
響は誠矢が改めて真耶の事を持ち出したので
何事かと身構えた
『まさか早く婚約しろとか?
そりゃ喜んで応じるけどさ・・』響は本気だ
「模し・・此を聞いて応じられないと思うなら
悪いが・・真耶の事は諦めてくれ」
響が思ってもいない返事を誠矢が返してきた
「いきなり何を言い出すんだ誠矢!冗談でも
言って良い事と悪い事があるぞ」
響の剣幕に誠矢は其れでも静かな口調で
「真耶は長く生きられない・・」
其れは響にとって余りに唐突で絶望的な告白
「・・ま・・待ってくれ・・
いきなりそんな・・」
「いきなりじゃない・・
前から前兆はあった
強力な超能力を使う度に何度も倒れ
冥王星では自滅し掛けた程だった
今生きているのが不思議な位だ」
解っていた、響にも其れは解っていた事だった
だが其れを認めず見て見ない振りをしていた
「・・けど・・俺は・・
例えそうだとしても・・・
最期まで真耶の側に居たいんだ」
誠矢は響の肩に手を置き
「お前の気持ちは解っているつもりだ
・・だがな・・新な事実があるんだ」
「何だよ其れ」
恐らく此処までが誠矢の想定内の流れで
此処から先は響の反応次第なのだ
「どうやら俺と真耶は
巨人族の先祖帰りみたいなんだ」
「巨人・・って」
「アトランテス人も元は巨人だった・・だから
その子孫の俺と真耶の遺伝子には巨人の力が
眠っていた、それが覚醒遺伝してしまったのが
俺と真耶の異常な力の正体だ」
「そんなバカな二人とも普通じゃないか!」
誠矢は首を振り
「俺には巨人スケールの魔導力が多すぎて
其の出口が人間スケールで余りにも小さく
今まで魔導力が出せなかったんだ」
誠矢がアトランテスノヴァと言う大きな
受け皿と出会う事で、今は力と技を自由に
使えているのは周知の事実である
「真耶も又、巨人スケールの超能力を持つが故に
人間の体では耐え切れず命を縮めていたんだ・・」
響は真耶のような破壊型超能力者と呼ばれる
エスパーが何故そんな異常な力を持つのか
その答えが解った気がした
「そう言うことか・・・」
「其れで真耶も俺と同じで
アトランテスノヴァに乗れば強すぎる
超能力の負担を軽くし延命出来る事が解った」
此処まで聞けば誠矢が何を言いたいか
大体察しが付く、
響は心の中でその答えと誠矢の言葉が
一門一句違わずに重なる
「真耶はアトランテスノヴァから離れて
普通に暮らす事が出来ない」
「やっぱりそうか・・」
響の落ち着いた様子に誠矢は更に先を切り出す
「そしてもう一つ・・お前に
アトランテスノヴァに乗り続けるリスクを
話さなければならない」
「・・まだ何かあるのか?」
響は既に答えが出ているのに
その上まだ何か言おうとする誠矢に
思わずそう言ってしまった
誠矢はまあ良いから聞いてくれと
言うと、常識では考えられない事を切り出した
「実は・・アトランテスノヴァで
あの厄介な星雲時計を管理する事になった」
アトランテスノヴァが星雲時計の
管理係りと言う話は響も初耳だ
「まあアトランテスノヴァが面倒を見るのが
確かに妥当だとは思うな」
響でも他に任せられる奴は居ないのは解る
「で、何時までやるんだ?」
普通に考えて二~三十年位か?
「二千年だ」
誠矢の話が怪しくなったのは此処からだ
「は?」
星雲時計の半減期が来るのが二千年で
その間アトランテスノヴァが其の
管理を続けると言う事だ
「引継はどうするんだ?」
誠矢の回答は更に可笑しくなる
「引継はない」
「いや引継なしでどうやって二千年も
管理を続けるんだ?言ってる事が無茶苦茶だぞ」
「アレの責任を最期まで取る為に
アトランテスノヴァに乗り続け
2千年間生き続けるのが俺と真耶の運命だ」
響の聞き間違いではない
確かに2千年生き続けると聞いた
「何を・・言って・・」
「神の秒針の副産物だ・・アトランテスノヴァ
内部の時間の流れが今、10万分の1になった」
誠矢が嘘を言っていない事は直ぐに解った
そしてその言葉の意味さえも、其れはつまり
時の流れが止まった船が真耶の終の住処に
なるのだと言う事を
此の話が冗談ではない事が
誠矢の様子を見れば解る
「本当なんだな」
「ああ・・」
「つまり真耶を選ぶと言う事は・・
当たり前の人としての人生を捨て
最低二千年もの間アトランテスノヴァに乗り
修羅の戦いを続けるって話だ」
誠矢は続ける
「天涯孤独な奴でさえ誘いにくい条件だ
こんな条件を出す方も引き受ける方も
とてもまともとは言えない」
確かに・・誠矢がそう言うのも解る
それでも怒りが沸いてきた
「二千年も戦い続ける運命にこの俺が
真耶だけを行かせると本気で思ったのか誠矢」
誠矢は苦笑いで両手を揚げ
「悪かったよ・・試すような事を言って
だけど真耶の方がお前を止めると思うぜ
自分なんかの為に人生を犠牲にするなってな」
響は頭を掻きながら
「其れは言われそうだな、まあ悪いけど
真耶の為だけに乗る訳じゃない
アトランテスノヴァのパイロットを
他の奴に任せられないのも本音だ」
誠矢はムッとした顔で
「良く言うぜ嘘吐きめ」
フフンと言う顔で二人は睨めっこに成り
途中で笑いがこみ上げて思わず中断した
「まあお前は特別だろうが・・・他の
奴等はこうはいかないよな」
誠矢が此から他のメンバーに同じ
換喩をする気だと響は知り
「どうだかな・・お前だと
そのカリスマだけでオッケーする馬鹿が増えるから
後は他に任せた方が良いと俺は思うぞ」
正直、大城誠矢に誘われれば、勢いで
人生を投げうつ者は後を絶たないだろう
「そうだ・・な・俺は止めといた方が無難か」
誠矢も流石に其処は自覚していた
「勢いじゃなく確実に考えてから選択して貰いたい」
と言う結論は正しい判断だった
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★付箋文★
ガルスグレーサー滅亡の日━━━━━━━━━━━━
地球アルプス山脈内部
ムーの末裔・統合寺院施設
その日ムーの末裔は自分達が長きに渡り信仰した
巨人の帝国が神の秒針により砂上の城の如く
敢え無く一瞬で消し去られたのを観測した
余りにも呆気ない最後だった
二万年も信仰し崇め続けてきた存在が
神の秒針によって文字道おり虚空に消滅したのだ
絶望の中で狂信者達に突然{天啓}が降りる
「神だと思っていた巨人は実は神の道具であり
真の神は神の秒針を創られた創造主で有られる
旧支配者様達だったのだ」と言い出した
「そうだ・・旧支配者様方々こそが
我等が信じるべき真成る神」
おお!「旧支配者様万歳」
結果として自分達の崇める信仰対象が
オールド・ルーラーだと言う結論に至り
ムーの末裔は{崇める神}を変えただけで
その危険性と暴力性はその侭に活動は
継続してしまうのだから人の業とは
度し難いものだ。
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━━★付箋文★
勝流水がアトランテスノヴァに
残る選択肢は最初から無い
彼は悪までハヤテの艦長であり
大城誠矢が覚醒するまで見守り育て
その役目を終えた今
ハヤテの艦長を引退し後発に任せるのが
引き際を弁える行動だった
だが其れを小田総司令が止めた、
{ハヤテF}の艦長を任せられるのが
全ての事情を知る勝流水のみと言う
理由からだ
日本エリア東京湾
太陽系防衛軍総司令本部基地・司令室
「確かにFの秘密はアトランテスノヴァに
直結するから仕方ない事とは言え・・」
勝艦長は小田総司令の苦しい胸の内を察し
「まあ暫くFが影武者を務めるしかない
・・アトランテスノヴァに関する事情を知る者は
少ないに越したことは無いでしょうからな」
「その通りだ・・済まない勝・・君に
損な役回りばかりさせて」
勝はシルバーソーサーがハヤテに化ける事で
名声を上げたと言う設定により随分と評価を
下げていた、今では所詮は虎の威を借る狐だ
等と陰口を叩かれる始末である。
「Fの評価が低いほどアトランテスノヴァの活動は
しやすくなる、全くやり甲斐のある仕事です」
本来なら希代の名艦長として宇宙艦隊に
足跡を残し誉め称えられるべき彼が
自分の評価を度外視してでも
アトランテスノヴァの秘密を守りたい
其れが勝流水の矜持なのだ。
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ー地球ー クリスタルアーマーステーション
二千年の修羅の道・・・
此を受け入れられる人間はそうは居ない
「途中で止めたくなっても
500年後とか・・中途半端な時間じゃ
誰も自分を知る者もなく天涯孤独な
人生を送るだけ・・」※正に浦島太郎である
「結局アトランテスノヴァの仲間の所に
戻る羽目になるか・・そのまま自分の
誤った選択にもがき苦しみながら
孤独死するしかなくなる」
「大体人間って2千年も戦い続けて
正気で生きられる物なのか?」
ハヤテのブリッジで小原(戦闘班副隊長)と
岩川(航行班副隊長)が話し合っていた
「残る者と去る者、そのどちらに入るか
悩み何処だよな」
「俺は最初からFのパイロットだ、あの
駆逐艦は響さんには悪いけどもう俺のもんだ」
「其れを言うなら駆逐艦の戦闘班隊長の座も
魅力的だぜ、大城総隊長はアトランテスノヴァの
キャプテンになるしFの方は俺が面倒みなきゃ」
この二人はどうやらFの方を選ぶ流れだ
「でもさ鋼ちゃんはどっちを選ぶのかな?」
「そんなの決まってるだろ俺の乗るFだよ」
小原の戯れ言に岩川は一歩も引かず
「{俺の}の聞き違いだよな?」と言うと
「あんだと?」「何だよ?」
二人の睨み合いは暫く続いた
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宇宙巡洋艦雷光の陣代艦長は
鋼欄にとって親代わりであり
勝艦長の要請でハヤテに送り出した
張本人でもある
※欄の両親はガルスグレーサーとの戦争で
彼女の幼少期に死亡している
その彼に鋼欄は一つの決意を伝えに
雷電へ輸送機で訪れ
「そうか・・ハヤテに残る事を選ぶか」
少し寂しそうではあるが有る程度
予想していた事に陣代艦長は
娘のような欄を花嫁として
送り出すような妙な寂しさに襲われていた
「済みません艦長、此から先ハヤテには
この私が必要だと解ってしまったものですから」
昔から何故かそう言うことは勘の良い娘だった
欄がそう言うのなら間違いないのだろう
だが寂しい彼は嫁に行く娘に掛ける父と同じ
台詞が口をついて出てしまう
「頑張れよ欄・・・だが模しも辛くなったら
何時でも雷光に帰ってこい」
「・・はいお父さん」
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ジョン・スミスは悩んでいた
スミス財閥の御曹司の立場を捨て
アトランテスノヴァに乗り続けたいのは
山々だが、問題は山積である
妹のイザベルもアトランテスノヴァに
残ると言うのに自分は火星に居る
アリーヌ・ロイ・シュライザ王女との
ロマンスも諦めきれずにいる
彼女は恐らく火星に置ける第一代目の
女性大統領になるだろう
自分としてはそんな彼女を財政面と経済面の
両方で支える仕事に就きたいと考えている
つまり火星の財務大臣という地位を目指す
其れには地球から火星在住の大使館勤務に
就くのが何よりの早道となる
大学院卒業まで
(イギリス名門のスタンフォード大学)
後3年の猶予期間がある・・・
ギリギリまで誠矢を助ける為に
アトランテスノヴァに乗り続けながら
受験の準備を続け3年後に
国家試験を受けるのが最も理想的な形だ
火星にはガルスグレーサーの難民100万人と
3将軍、そしてアリーヌが居る
遠からず地球は火星の自治権を認め
火星も又銀河の盾の一員となるに違いない
そうなったら自分がアトランテスノヴァを
財政の面で支える柱になる名目で将来的に
{ノヴァ財団}を立ち上げ
2000年位は誠矢達が活動費で困らないように
支援出来る組織を用意したい
「慈善活動をするにも先立つもの
と言うか・・巨額の資金が必要だ
特定の国から融資を受け入られない以上
アトランテスノヴァ専用の財団でも
創設するしかないだろうなぁ」
宇宙戦艦1隻があらゆる柵から逃れ自由に
活動するには其れだけの努力と尽力が
必要なのだとジョン・スミスは熱弁を振るうが
此を誠矢に伝えたら誠矢は
「それは本当に助かる
感謝するぞジョン・スミス」
そして改めて訪ねる
「それでどうやって肝心の資金を集めるんだ?」
誠矢の質問にジョンは虚空をみつめ
「エ~まずは募金を募るのと同時に
アトランテスノヴァのファンクラブを
立ち上げるだろ・・其れから」
此を側で聞いていたイザベルは
兄の構想の行き当たりばったりさに呆れた
「仕方ないわね、私が兄さんを
サポートしてあげる」
そう・・ジョンの無茶な計画を実現するには
天才である彼女の存在が欠かせないのだ
やる気だけではどうしても乗り越えられない
限界という壁がある、其れを突破するのが
優秀なブレインの存在だ。
こうしてジョンとイザベルも{3年後}には
アトランテスノヴァを降りる事が決定的となった
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去る者が有れば来る者も居る
クリスタルアーマーステーションに
一機の戦闘機が接近した
その機体には白い虎が乗っている
アキレス・F・ハルトマン
ドイツの白虎(ホワイト・タイガー)
戦闘機の操縦技術が神業で
彼に言わせると戦闘空域内にいる
敵味方が一瞬止まって見えるらしい
動体視力がどうかしている怪物。
地球で唯一、坂巻進吾に匹敵する腕を持つ
超天才パイロットである
基地滑走路に着くと彼は足早に
クリスタルアーマーステーションに居る
大城誠矢の元に向かう
誠矢は正式に神風型宇宙駆逐艦ハヤテの
艦長代行となったのだ
※(当然アトランテスノヴァでは艦長である)
クリスタルアーマーステーション内部にある
専用の作戦室でハルトマンを迎えると
「この俺をドイツから引き抜き
アトランテスノヴァにスカウト
するとはお前も偉くなったもんだな」
誠矢はハルトマンに席を勧め飲み物を渡す
「ドイツ防衛空軍には悪いが・・
ノヴァには坂巻に代わる魔導戦闘機隊の
総隊長が必要だからな」
誠矢は鋭い目でハルトマンを見た
「其れを任せられるのはお前だけだ
アキレスFハルトマン戦闘機隊・総隊長」
恐らくと言う予感はしていた坂巻亡き今、
怪物だらけの戦闘機部隊を纏めるには
それに匹敵する怪物が必要だろうと
「だが俺は魔導戦闘機とか言う化け物を
扱った事がないぞ」
カラメティドラゴンの噂は聞いている
凡そ人知を超えた性能らしいが
「心配ない・・坂巻以外まだ誰も
乗ったことのない未知の機体だ」
「心配ないか・・・どの口が言ってる?」
怒った訳ではない、誠矢が自分に
多大に期待している事は解る
「魔導戦闘機計画はアトランテスノヴァの肝だ
必ず必要になる戦力だと言い切れる」
「解ったよ任せてくれ」
人機一体の戦闘機の魔導エンジンは
コアの魔導石が燃え尽きるまで飛び続ける
オマケに光線魔導武器に転用し
槍や刀、果ては戦闘機の防御にも使える
何とも恐るべき性能だが
「それで悪いんだが魔導力を扱うのに
坂巻流真魔導拳を学ぶ必要があるんだ」
ハルトマンが目を剥いた
「お前・・計ったな誠矢!」
後出しにも程がある、この歳から
まさか日本武道を学ぶ羽目に成るとは
「実はアトランテスノヴァは魔導戦艦なんで
乗組員は例外なく坂巻流の門下に入る
決まりになったんだ」
つまり坂巻流は門下生の数を
一気に1540人に増やした事になる
アキレスfハルトマンは余りの事に
開いた口が塞がらなかった。
『まあ併し・・誠矢が坂巻にしてやれることを
少しでも見つけられたなら良しとするか・・』
アキレスは坂巻に代わり
戦闘機隊の総隊長に成る事で
そして誠矢は師範として坂巻流の普及に貢献する
その程度の事しか親友にしてやれることは
最早ないのだ
「俺達達の前から奴が居なくなるなんて
考えた事もなかった魂だけでも良いから
帰ってこい・・進吾」アキレスは心の底から
そう願わずにいられなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
北本太郎は地球の医師として医学界に
革命をもたらした偉大なる人物である
ほぼ治療不可能と診断された患者
特にガルスグレーサー戦役で負傷した
多くの兵士達を人知を超えた再生医学で
社会復帰させた事に関しては
ノーベル平和賞を受賞するほどの功績を
称えられている
何れは医学会の頂点に立ち医療関係者全てを
導いていく事を期待されていた
だがそんな彼が今一番気がかりなのは
アトランテスノヴァに乗る若者達の
健康面についてである
全銀河の平和を守る仕事は過酷で
どんなに戦いが強くても自分達の健康を
守るの事は難しい
特に大城真耶の健康状態は
片時も目が離せない状態が続いた、彼女を
2000年も戦わせるなど一人の医者として
絶対に看過出来ない
「アトランテスノヴァに医者が必要なら
私が手を貸そう」
北本医師がそう言い出したとき
医学界が騒然となる事は承知の上で
彼の覚悟を大城誠矢は心の底から感謝した
「先生、有り難う御座います
この御恩は一生忘れません」
「医者として当然の義務だ・・
只し私がアトランテスノヴァの専属医として
乗るからには、君達の健康を徹底管理するから
覚悟したまえ」
そう言って笑う北本医師の笑顔が誠矢には
鬼に見えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
大城真耶が巨人族の先祖帰りのせいで
破壊型超能力に目覚めた事実を知ったのは
かえって良かった、悪魔に
{呪われ}ている訳でなく科学的に
説明の付く原因だと解ったのだから
『私の中に{悪魔}が居て冥王星の時みたいに
自分じゃない何かになる心配はもう無いんだ』
「巨人の力を制御出来ずに苦し紛れに
暴発したのなら・・アトランテスノヴァで
全てが解決した今なら私が竜一さんと
結ばれる未来があっても彼が不幸に成る心配はない」
そう考えるだけで真耶の気持ちは明るくなる
「ただ・・破壊型超能力者は等しく
短命らしく私もその例に漏れないと
誠矢兄さんに言われた」
「アトランテスノヴァに乗り続ければ
寿命だけは延ばせるそうだけど・・』
だが何よりも響竜一はアトランテスノヴァに
{操縦士としての使命感}で残ると決めたと聞き
真耶は自分だけが理由でないと知って安堵した
自分の為じゃなくても良い・・只一緒に
響と居られるだけで真耶は幸せなのである。
※(此処の所、響も誠矢からU星人製の
サイコウオールを借りてテレパシーを
遮断できる様になった) 従って
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大城誠矢と話した事を響竜一は真耶に
秘密にする事にした
「真耶には内緒だが、実は
ギルザート18世の例の真相は皆に話さないで
このままにしておこうかと思うんだ」
響は歴史を作るのは勝者の特権と誠矢に言われ
その不誠実な態度は誠矢らしくないと責めたが
更に天体級大円盤で起きた巨人狂戦士化の
真相まで聞いて、最早沈黙せざるを得なくなる
「驚いたな・・まさか・・あの国で
そんな事が起こっていたなんて」
「此の事実を真耶が知れば
俺を止められなかった事を
彼奴は一生後悔するだろう」
まさか真耶の為に口を閉ざせと迄
誠矢が言い出すとは流石に思わなかった響は
「解った此の事実は墓場まで持って行く」
と言うしかなかったのである
「誠矢・・併しお前、変わったよな」
「結局ギルザート18世は俺達の間では
坂巻を卑怯な手段で殺した外道だし、
リンクスに至っては最後まで虚栄心を張り通し
部下を巻き添えに死んだ無能な指導者って事になる」
「酷い話だな」響にそう言われ、誠矢は寂しげに
遠くの空を眺めるしか出来なかった
「俺だって悪いとは思っているんだ」
誠矢は真耶を理由に真実を隠す
こうして真相は永遠に藪の中と成る
━━━━━━━━━━━━━━━━
━━★付箋文★
ジャック・ゴルドーと下田明が
戦車ハンガーで話し合っている・・
「俺は坂巻の分まで最期までキャプテンを
守る為にアトランテスノヴァに残る事にした」
ジャックゴルドーは噛む様に笑い
「キャプテンのタメ残ル気持チハ同ジダ
防衛軍ヲ引退シタラ、テキサスに農場ヲ買イ
牧場ヲ経営スル予定ダッタガ、ソレハ
2000年後ニ実現サセル」
「2000年後か・・気の長い話だ」
下田は自分より背の高い相手との会話は滅多になく
頭を上に向けて話す事態が珍しい
「でも俺と違いアンタにはファミリーが
アメリカに居るが、ソッチはどうするんだ?」
「ワイフハ子供達ト一緒ニ火星ニ入植スル
ミーハ地球ニ残ルカラ別居スルガ
離婚スル訳ジャナイ、家族ソレゾレガ
自分ノ望ム、ロードを歩むノダ」
「ジャックらしいと言えばジャックらしいな」
戦車隊の独身の殆どはジャックと同じく
{銀河英雄}の人生を歩む道を目指す
幸いというか不運と言うか・・
妻帯者が少ない事が原因でほぼ全ての戦車乗りは
アトランテスノヴァに残る運びとなった
━━━━━━━━━━━━━━
━━━━★付箋文★
ハヤテ副艦長室にて
滝川鏡子はサイバドック隊の為に残ると
キャプテンアストラ(誠矢)に告げた
「別にキャプテンの為に残るんじゃ
無いんですから気にしないで下さい」
とか苦しい言い訳をして出て行く
7号は鏡子が退出した後、扉の影からスッと
姿を現し『流石忍犬』と大城誠矢を驚かせる
「個人的にチーフがキャプテンを好きで
アトランテスノヴァに残ると言い出したとは~
口が裂けても告げ口はしませんけど・・」
誠矢はキャプテンアストラとして
冷静に返事を返す「何が言いたい」
だが心中は穏やかではなかった
『やはりそうなのか?鏡子は俺の為に』
「別に責任何がしとは言いたくありませんが
キャプテンもそろそろ年貢の納め時が来たかと・・」
「果実は一番美味しい時に食べるのが
礼儀なんです芳醇な果汁を存分に味わって
良く咀嚼してからお召し上がり下さい」
何というか・・言い方が叡智で
思わず生唾が出てくる誠矢だったが
その時ドドドドと大きな足音が聞こえてきて
突然艦長代行室のドアが開き
鬼の形相の鏡子が入ってきて7号の
頭を拳骨でシバくとそのまま尻尾を掴み
「失礼しました!」とだけ言い残し、
足早にドアから出て行ってしまった
ソレハ電光石火の早業で誠矢でさえも
「ああ・・」としか返事が返せなかった程だ
━━━━━━━━━━━━
━━━━━━★付箋文★
大城誠矢の女問題と言えばもう一人
どうしても忘れて成らないのが
小田総司令の一人娘、小田令子嬢である
当初は亡き兄への想いと誠矢を重ね
恋心を抱いていたに過ぎなかった彼女が
時を経て次第にその恋心が本物の愛情に
変わり、次第に二人の関係は
友人以上恋人未満と言う形に育っていた
小田令子は果たして自分に大城誠矢への
愛を貫き通し成就できるのか
その覚悟を自問自答していた
『彼に着いていくのなら全てを捨てる覚悟と
共に戦う二つの覚悟がいる、果たして私に其れが
出来るの?』
戦うなら戦闘訓練も必要だし
彼の足手まといにだけは成りたくない
せめて側にいて健康面だけでも支えられたら
彼女の大学での専攻は法学部だが
もう一つ目指してみたいと想いながらも
政治家の娘として諦めた道がある
此が神の啓示というものか
『お父様に・・直談判しよう』
信じられない事に誠矢の為だと思うと
その勇気が溢れ出てきた
小田吉宗は愛娘が家の事寄りも
自分の愛を優先し全てを掛ける
決意に驚きが隠せない
「法学部ではなく医学部を目指すだと・・」
決意の満ちた顔、『令子は本気だ』
小田総司令は腕組みをし天井を見上げると
目線を愛娘に戻す
「令子が決めた事ならそうしたらいい
お前の人生だ、但し後悔しない様に
全力を尽くすんだよ」
「其れで出来れば彼に似た孫の顔を
見せてくれれば申し分なしだ」
令子は此以上ないくらい満面の笑みで
「はいお父様お約束致します」と
満面の笑みで答えた後
「それで・・実はお父様に折り入って
紹介して頂きたい人物がハヤテに
乗っておいでなんです」
小田司令は話の流れでその人物の顔が浮かんだ
「それは北本先生の事だね」
どうやら令子は北本医師に師事を受けるため
ハヤテに常駐しながら医療を現場で学ぶ気らしい
『随分思い切った事を考えたものだ・・』
小田司令はこの事を北村医師に伝えると
アトランテスノヴァについての説明を
同時に令子に伝えた
「そうだったんですか・・でも私の気持ちは
変わりません、必ず誠矢さんの心を掴み
アトランテスノヴァのお医者様に成って見せます」
「我が娘ながら、欲張りな奴だな」
「申し訳有りません、でも令子は
必ず夢を叶えて見せます」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
其れからの日程は多忙だった
だがやっと、終戦記念式典と
坂巻進吾の{国葬}が終了し
大城誠矢達に日常が戻ってきた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クリスタルアーマーステーション
次の週明けに誠矢が真耶と二人で
北本医師の所に身体検査を受けに
医療ブロックに来ると
多くの隊員達が順番に並んでいた
「身体検査だなんて学生じゃ有るまいし
木っ端恥ずかしいよな」
隣の今里隊員にそうチャラける清水隊員が
「はい次の方どうぞ」
若い女性の声で呼ばれ中に入っていった
そして再び出てきた時彼の顔は
幸せそうな笑顔に満ちていた
「おい今度医療班に入った娘がさ
物凄い美人さんだぞ」
「此なら毎日通いたくなるぜ」
そんな評判が耳に入り誠矢が気にしているのを
見た真耶は兄の脇を肘でコンとつつく
「何気にしてるの誠矢兄さん?ヤラシい」
誠矢はタジタジしながら
「いや新しい仲間が増えたと言うなら
気になるだろ?」
「それだけ~」 「そりゃそうだよ」
「本当に~?」
「次の順番の方どうぞ」
その呼び声に誠矢は真耶の目を気にしながらも
身なりを整えそそくさと
診察室に『何だか聞き覚えのある声だな』と
思いながら入っていく
すると其処にいたのは
白衣を着た小田令子だったのだ
「令子さん?」誠矢は思わず
素っ頓狂な声を上げる
「お早う御座います大城誠矢さん
診察を始めますので上着を脱いで下さい」
戸惑いながら指示に従う誠矢
令子は誠矢の眩しい裸体を目を細め見つめて
頬を桃色に染めながら聴診器を胸に当てる
胸に大きな十文字の傷があるのが何とも
勇ましく艶めいて叡智な感じだ
惚れた男の裸に遠慮なしに触れ
『何だか役得ね』
そんな事を思いながら令子は
高ぶる気持ちを抑え黙々と検査を進めた
『綺麗な乳首ね・・消毒っだって言って
舐めたらどうなるかしら』ドキドキ
「貴女が此処にいる事を全く知らなかった
どうしたんです令子さん」
誠矢の戸惑う声が
令子には少し小気味よく感じる
初めて{驚かされるだけでなくやり返せた}
そう思えて何だか照れながらも
「知りませんでしたか私って思った事を
後先考えず取り敢えずやってみてから後悔する
タイプなんですよ」
「そんな思いつきで人生が掛かった大事な事を
決めてしまうなんて貴女らしくもない・・・」
誠矢がそう言うと令子は
「背中を向けて下さい肺の音を聴診します」
と言いながら有無を言わせず
誠矢に背中を向けさせる
「令子さん!」
背中に冷たい聴診器をあてながら
令子は頬を誠矢の背中にあて
「私の何を知ってるんですか?」
頬をピンクに染めながら少し拗ねたように囁いた
「いや・・俺は君が大人しいお嬢様だとしか」
「其れは・・表面上だけの私で本当は
もっと冒険好きのお転婆だったんです
こんな私じゃ嫌ですか?」と拗ねる様に
囁きかける
誠矢は慌てて「い・・嫌所かタイプだけど」
其れを聞いた令子は満足げな笑みを浮かべ
誠矢の背中から離れると、背中をペチリと
一つ叩き 「はい!お疲れさまです」
恥ずかしそうに
そそくさと服を着る誠矢に
「今日は此くらいで解放して上げます、
でも貴方は定期的に検診を受けて下さい
この船のキャプテンなんですから
人一倍健康には気を配る義務があります
宜しいですわね?」と強い口調で言われた
誠矢はハイと返事だけ返して次の隊員に
順番を代わる、そして「北本先生ーっ」と
小走りでその名を呼びながら、その所在を
コンピューターに訪ねた
<ドクター北本の所には
キャプテンアストラの現在位置から
直行で行けます>
「何っ!」
其れを聞いた誠矢はその場に立ち止まり
辺りを見回した
すると足元に丸い円光が現れ
その上に乗るようにナビから指示が出る
<サークル内に乗って下さい
緊急搬送室に御案内いたします>
「ああ緊急搬送システムが完成したのか」
アトランテスノヴァでは怪我をした
隊員を転移ゲートを使わず運ぶ手段として
重力カタパルト方式の物資輸送装置を改造する
計画が春吉率いる技術班が密かに遂行していた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「敵が{転移阻害}をしてきた時の予防策が
必要だと感じて用意したんだよ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「とか春好さん言ってたよな」
コンピューターの指示に従いサークルに
足を乗せると、誠矢は一気に床に吸い込まれた
「うわぁ!」
そして意外なほど快適な重力カタパルト移動で
ドクター北本のいる緊急搬送室に到着した
「どうだった重力カタパルトの使い心地は
中々快適だっただろ?」
誠矢は自分の体を触りながら
異常がないのを確認し終えると
「確かに使えますねコレは、白兵戦に成ったとき
効力を発揮しそうです」
その感想にドクター北本は溜息をつき
「君って奴は~本当に根っから交戦的なんだね
もう少し平和な発想は浮かばんのか?」
重力カタパルトが元の場所に戻るのを眺め
「こいつは患者の搬送に便利とかね」
そんな事を言われても今日はそんな話を
する目的で北本先生に会いに来た訳じゃ・・と
思っていたら令子の件を思い出した
「そうだ・・令子さんですよ、
彼女どうしてハヤテに乗ってんですか?」
ドクター北本はニヤリと笑うと
「其れは彼女がこの私の後継者に成る為に
助手として弟子入りしたからだよ
まあ彼女の才能なら私に匹敵する医者に
必ずなれるだろう」
誠矢は驚いた
「え?令子さんは俺のために
来たんじゃないんですか?」
其れを聞いた北本先生はムスっとした表情で
「自惚れるんじゃないよ誠矢君・・
令子君は大変な才女でね医学界は実に
素晴らしい{至宝}を手に入れたのだよ」
「ハア・・」誠矢は見るからに残念そうである
「彼女の家が有名な政治一家であるため
一時は医者になる事を諦めたそうだが
アトランテスノヴァで医療に貢献できるならと
思い切って一歩を踏み出してくれたんだ」
「アトランテスノヴァの事も承知で・・
それじゃあ2000年問題も」
ドクター北本は度や顔で
「君と違い人の命を2000年も
{救い続けられる}事に喜び勇んで
参加するそうだ」
誠矢も頷きながら
「成る程、確かに理由が其れなら・・・」
誠矢は同じ戦いでも人の命を救う戦いが出来る
令子に羨ましさを感じた、
だがドクター北本はもっと別の方面で
将来のドクター令子に期待を寄せている
━━━━━━━━━━━━━━
━━━━
「先生の再生医療の先に
ベルテリオンによる肉体再生と
病気根絶の可能性があるのでは
ないかと思いこの論文を書きました」
彼女の論文を読みながら思わず彼は唸った
ドクター北本の医学常識からしてみれば
そんな非常識な発想がまず浮かばない
『万能粒子で肉体再生を具体的に
示唆しているし・・可能性は
無いとは言えないが此は私には
無理な研究テーマだ』
それが令子君に
アトランテスノヴァに乗船し私の
弟子に成る事を許諾した主な動機だ
━━━━━━━━━━━━━━━━
━━
ドクター北本が誠矢に直に伝えたのは
令子の動機だった
「アトランテスノヴァに乗れば確かに
肉体年齢を極端に抑えられるだろうが・・
其れでも別に不老不死になる訳ではない」
「怪我もすれば病気もする・・
君達のように無茶な戦いばかりしていれば
肉体と精神に多大な負担が掛かるのは
戦士として避けようのないリスクだ」
返す言葉もない、其れを2千年も続けよう
と言うのは元々正気の沙汰じゃない事は
十分承知しているつもりだ
だがドクター北本は「だからこそ
ドクターという存在は必要不可欠なのだ」と言う
何故なら同じ2千年の過ごし方でも、
人を救う仕事を生業とする医者は
常に精神的に安定し均衡を保てるのだ、
誠矢達の様な戦闘職の人間を補佐する
役職としては最適なのだ、其れは確かに
実に的を得た意見だった。
「解ったら早い内に令子君に
感謝を伝えた方が良いぞ、彼女が一番支えたい
想い人が、そもそも彼女が女医を目指す
切っ掛けだったらしいからな」
其れを聞いた誠矢は令子に時間が出来たら
一度食事に誘う決意をした
その時に感謝の言葉と共に此から先の二人の
関係について真剣に語り合う必要性を感じたから。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハヤテのエンジン中枢部には
魔導コアと呼ばれるアトランテス文字の
書かれたモノリスが存在する
此が時折ハヤテに摩訶不思議な力を与える
原動力だった。
「元は普通の熱核反応エンジンを
反物質エンジンに魔改造した上に
魔導力で瞬間的に爆発的なパワーを
発揮何ぞさせるからこいつの
耐久力の維持をするのも大変だよ」
そう愚痴をコボしつつハヤテのエンジンを
大切そうに撫でるのはハヤテ総機関班長の岩表久だ
「戦闘艦の機械寿命は決して長くはない
頻繁にメンテナンスしなければ成らないし
凄く手が掛かるんだ、まあ世話を焼いていれば
可愛くも成ってくるもんだが」
岩表機関班長の言葉を聞きながら春吉は
「今やこのハヤテのエンジンは銀河随一の
超高性能動力となったからね
ベルテリオンエンジンなんて前人未踏の
代物を任せられるのは君ぐらいのモンさ」
岩表は自分の手で最後までこの怪物の世話を
焼き続ける決意を固めていた
「こいつの世話を他の奴に押し付けるなんて
とても出来ないさ・・最後まで面倒を見るのが
俺の責任だよ」
後期スペック
機関グランディディエライト号艦本式缶4基(改)
艦本式グランディディエライト2基2軸(改)
(第1世代型・反物質プラズマスパークエンジン)
春吉進一郎はこの解析不能のシステムを
ハヤテの原動力として利用している。
{魔導に関しては人の根元たる力と碑文には有る}
速力 光速の50~80%
(リープ1~4ハイパーリープ5~10)
航続距離 ∞
燃料 水素:∞ (魔導力)
此がアトランテスノヴァにチェンジすると
エンジンの構成物質その物がオリハルコンへと
物質変化してベルテリオンを動力とする
{ベルテリオンエンジン}に変わる
「ベルテリオンって奴は・・
人の意志であらゆる事象に千変万化し
{全ての行程をいきなり飛び越えて}
推進力が生まれるんだぞ!!アリャ
まともに考えたら頭が可笑しくなる」
岩表・機関班長の言うとおり此のシステムは
科学的に絶対あり得ない仕組みだ
「端から物体を10分の1に小さくする石碑を
核に使う時点で人知が及ばない世界だ」
だが行程が解らなくても其れを利用するだけで
アトランテスノヴァは常識の枠を飛び越え
その推進力は最大8億トン以上にもなるのだ。
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━★付箋文★
クリスタルアーマーステーション
ーハヤテ作戦会議室ー
其処に主だった隊長クラスの面々や
岩表・機関班長と春吉・科学班長
ドクター北本とインターンの小田令子
そしてキャプテンアストラ
{大城誠矢}率いるブリッジ
主要メンバーが結集した。
「今日は此からアトランテスノヴァとして
長期任務に就く前に説明がある」
多くの隊員の目が一人の青年に注がれる
其れはマイクを握る大城誠矢だ
<まず通常の任務は地球防衛軍所属の
駆逐艦ハヤテとして太陽系防衛を遂行する、
だが銀河系内で大きなトラブルが発生した場合>
<ハヤテの正体を隠しアトランテスノヴァ
として現場に駆けつけるのが特別任務となる>
今里が挙手をし質問する
「正体を隠すとは
銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ
として活動するからでしょうか?」
マイクで誠矢が明確に答える
<そうだ、俺達は地球とは関係なく
あらゆる利害関係を超越した存在として
銀河に起きる諸問題を解決するんだ!>
「それは独立愚連隊ではないんですか?」
今里の返しに何人かは賛同した
だが大城誠矢の答えは違う
<銀河の盾の目的は銀河系の平和維持活動が
基本で真の活動目的は星雲時計の管理にある>
今里がもう一度挙手し
「星雲時計って・・何故アトランテスノヴァが
アレを管理するんですか?」
誠矢が回答する
<確かにアレはガルスグレーサーが
造った物だが、(神の秒針)を
アトランテスノヴァが所持する限り
他の如何なる組織も関与出来ないからだ>
「そりゃアトランテスノヴァを敵に回したら
最悪だからですか?」
今里も自分達が銀河連邦にとって
脅威だとは自覚している
其処で清水が「イヤ怖いのは神の秒針だろ?」
誠矢が説明を始める
<見てくれ艦内では実感が無いだろうが
全長5光年という途轍もない
大きさの時計の針を想像して見て欲しい>
作戦室の巨大モニターに銀河連邦から提供された
神の秒針のスチール写真が映し出される
近くにある恒星と比較して
初めて其れを目にした者は、その有り得ない
巨大さに驚嘆の溜め息をついた
「信じられない、此をアトランテスノヴァが
武器として使ったのか?」
その場の全員が息を呑んだ
<見ての通りだ、神の秒針を持つ限り
アトランテスノヴァは無敵と言える>
<話の本筋は此処からだ>
誠矢は映像を星雲時計に戻し
<星雲時計を悪用しようと企んだり
何とか破壊しようと考えるバカもいる・・
星雲時計が力ずくで破壊されると
銀河そのものが崩壊するのにな>
<もし万が一にも破壊されたら
銀河文明の破滅にも繋がる>
「流石に規模が大き過ぎてそんな事が出来る
輩が現れるとは思えませんが、どうなんです
春吉{科学班長}」
西沢の質問に誠矢からマイクを受け取り
<名前を出されたので次は私が質問に答えよう>
そう言うと今度はパネルの写真が星雲時計となる
<正に惚れ惚れする程の光景だが・・
こんな星雲が目立たない訳が無く
{他の銀河}の注目を浴びるのは必死だ>
コンピューター・シュミレーションで
10億光年先からの観測でも
現在の天の川銀河は{時計}に見えた
<この時計を狙う外敵宇宙勢力が
銀河に襲来してもガルスグレーサー侵略戦争を
経験した我々にとって、さして驚きはないだろう>
「其れは・・」あり得ると言わずとも
西沢も此処は着席するしかない
<この時計の半減期が2000年だと仮に
推定するとする、その根拠が
ガルスグレーサー星帝の言葉だけで
正直心許ないが・・U星人に寄れば虚偽では
ないと言うので信じる他はない>
そして春吉はマイクを再び隣の誠矢に戻し
マイクを受け取った誠矢が更に発言を進める
<銀河の盾が必要な理由はまだまだある
ガルスグレーサー人が銀河系全体に大量に
入植した今・・銀河が激動の時代に
突入するのは、まず間違いないからだ>
其れはそうだろう、銀河系が如何に
広大なスペースがあるとは言え
いきなりガルスグレーサー人口
1300億人以上の人口増加は
それだけで十分な火種になる
<紛争の火種を消すのも勿論だが
国家間の争いを調停する必要まである
銀河の盾の仕事は多岐に渡るだろう>
<いよいよとなった時、最後の切り札として
絶大な威力を発揮するのがアトランテスノヴァ
と言う存在だ>
<正体不明の正義の無敵戦艦が何処からともなく
突然現れ問答妙で悪事を未然に潰す>
<そりゃ無用な争いを起こそうとする輩にとって
此以上ない抑止力となるのは間違いないな>
「悪事をする奴等の恨みや憎しみは全て
正体不明のアトランテスノヴァが
全て引き受けると言った寸法{作戦}か」
西沢の横で下田が筋肉隆々の二の腕を見せつけ
「確かに其れは・・神出鬼没で何処からとも無く
現れる方が悪党共にもより一層の恐怖を
与えられるって訳だ、思ったより断然面白い
任務じゃないか」
「まさしく俺達向きの仕事{英雄}だな・・」
長崎がそう言うと血気盛んな戦車隊の男達は
其れこそ全員乗り気で、其処に口を出したのが
「そうなると何処にも援軍を頼めないけど
同時に何カ所も問題が起きたらどうする気です?」
そう指摘したのは紅一点の鋼欄だった
「誰だアレ?」「凄い迫力だな」「滅茶美人だぞ」
「あれが今噂の坂巻景子隊員の後継だ」
鋼欄隊員の質問に大城副艦長は
<鋼隊員の言うとおりだ、残念ながら
アトランテスノヴァは1隻だけだ、だがな
銀河の盾の加盟国が協力してくれるし
有り難い事にあの3将軍まで動いてくれる>
其れは本当に嬉しい朗報だった
ハヤテと互角以上に戦えた3将軍なら
必ず大きな力になってくれる
「確かに銀河の盾の所有する宇宙戦艦は
このアトランテスノヴァだけだが・・
決して孤独ではない、多くの戦友が力を
貸してくれるからだ」
誠矢のその言葉は隊員達に勇気と希望を与えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
<此処で医療班から話があるそうだ>
ドクター北本がマイクを手に取ると
会場がざわつく
<静粛に>
<今から話すのは
君達の2000年健康問題に付いてだ>
「俺達の身体の事か」 「2000歳って」
「人はそんなに生きられるのか?」
<アトランテスノヴァでは
10万分の1しか年を取らないらしいが・・>
北本は白いボードに時間表と
健康的な生活の理想グラフを見せた
<防衛軍任務中のハヤテでは年を普通に取るし
船のメンテや特殊任務など諸々を考えると>
「おい、あのグラフ」「夜9時消灯って」「起床が」
「6時で、朝のラジオ体操」「勘弁してくれよ」
<計算では100年に1年のペースで
年齢を重ねる計算となる>
「100年に一歳って・・」
「それじゃ、任務が終わる2000年頃には
俺達20歳も歳食ってんのか?」
「いや2千年経ってて見た目が38歳って
任務が終わった後の俺の人生長すぎるぜ」
「太く短くの人生とは真逆だな」
<この前検査した君達の審査結果が
そうした事も考慮して今現在の
ベストコンディションだ>
<君達には、今の健康状態を2000年間
出来るだけ維持する方向で我々医療班も
{全力を尽くす}から安心してくれたまえ>
その言葉は戦士達の胸に深く響いた
「俺達の仕事は身体が資本だから」
「北本先生お世話になります」
素直に有り難がる健康優良児はさておき
心で感謝しながらも普段から不摂生している
隊員達は複雑そうな面持ちをしていた
『禁酒か?禁酒なんか?』
『禁煙か?禁煙なんか?』
『此から甘いものを控えろと?』
『急いで嗜好品を隠さねば』
<さて此処で諸君等の生活習慣を取り締まる
医療班特別隠密捜査部隊長を紹介する>
「ゲエッ!彼奴は!!」
「そんな嘘だろ!!」
見間違えようのない尻尾の生えたシルエット
二足歩行で立ち上がり、厳つい黒のサングラスと
肩にトゲの付いた世紀末な黒の警察官衣装に
身を包んだ取り締まり犬、サイバドック7号だ
その後方にコンガラクがいて照明で
華麗なる登場シーンを演出している
真耶がコンガラクを見て{心の中}で
『家の子に何やらせてるのよ!』と
プンプンお怒りの様子だ
最悪の取り締まり官の登場に
絶望の悲鳴が一部の隊員から漏れ出した
<只今ドクター北本に紹介されたボクが
皆さんの健康をお助けする
健康管理犬7号であります、どうぞ宜しく!>
そう言って敬礼をし犬歯をキラリと光らせる
<ドクターの言いつけを守らない悪い子には
此からビシビシ取り締まるから覚悟しといてよね>
「フザケるなーっ!」とか「酒かえせーっ!」
とか「泥棒に警官やらせるなんて非常識だー」
等の罵声雑言が聞こえるが7号は一切気にせず
何処吹く風と、その場からドロンと消えた
毒を盛って毒を制す
7号の存在は医者の言うことを
聞かない者達には大変な脅威である。
誠矢が心配そうに
「北本先生アイツに任せて良かったんですか
今からでも考え直した方が・・」と言うと
「まあアイツも言うなれば抑止力じゃよ
神出鬼没で問答無用な所がな」
『あ・・アレとアトランテスノヴァを
同一視されちゃ適わないな~』
戦々恐々とする作戦会議場
<以上で緊急会議を終了する
皆ご苦労だった任務に戻ってくれ>
そう言って大城誠矢が会議室を出ると
以前から7号に酒類を盗み飲みされてた
連中が一斉に文句を言ってきた
「いや7号の件を決めたのは北本先生なんだから
先生に文句を言えば良いじゃないか」
「先生には言いにくいんですよ」とか
「逆に叱られるのが落ちです」とか
「この前診断書で大目に見て貰ったから言い難い」
と泣き言を言われる始末
仕方なく誠矢は「7号の性格から考えて
暫くは先生の指示に従い取り締まるネタを
無くして」
「奴のやる気を削いでしまえば、
彼奴の事だからその内詰まらなくなって
取り締まり犬を自ら辞退する筈だから」と
助言した
「成る程流石はキャプテン」と納得する者
「我慢かー俺に出来るかな」と自信ない者
「最悪彼奴を酒で買収する事は・・
かえって図に乗るだろうなバカだし」
そんな反応が返ってきた
『仕方ないな・・暫く様子を見て
北本先生と話をしてみるか』
誠矢だってイキナリ生活の規律を
厳しくしたら逆効果だとは思っているのだ
「まあ先生にしてみれば
不摂生が原因で病気になれば
{任務の性質上}普通より
ズット長く病気に苦しむ事になる
俺達の事を思っての配慮だし}
「そもそも不老不死の不死身の戦士など
この世に存在しない訳で、只の長生きの病人には
成りたくあるまい」と言う事らしいのだ
(本当は、有り難い話だよな)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
こうして紆余曲折あり乍も何とか・・
アトランテスノヴァが活躍する準備は整った、
もう何時何時出動要請が来ても問題がない位には・・・
2998年12月24日 クリスマス早朝、
坂巻の武家屋敷にその日
大城誠矢が車に乗り一人で現れた
其れを迎えた坂巻景子は
誠矢が此から一人で親友坂巻の墓参りを
するので途中で寄ったのだと聞く
「あの人に戦争が終わった事を
報告に行くのですね?」
そう景子に言われ誠矢は
「景子さんはもう防衛軍から除隊し
一般人に成られたのだから
本来なら明かす訳にいかないんですが
実は・・お腹の子の将来にも関わる
大切な話があるんです」
「其れは・・・」
誠矢の緊張が伝わってくる
相当な話だろうと景子は息を呑んだ
「何処でお聞きすれば?」
「道場でお願いします」
「では夫の胴着をお貸しします」
坂巻家の道場は静寂に包まれていた
胴着に着替えた二人が対峙すると
景子がまず話しかけた
「そう言えば坂巻流の門下生が
一度に1500人以上に増やして下されたと
お義父様から御聞きしました」
「道場の者として坂巻流を盛り立てて頂き
大変感謝しております」
そう言い頭を下げる景子を制止して
誠矢はその理由を話し始める
まず坂巻進吾が星雲時計で
シン・ファノサイスの
時計との合体を身を挺し阻止したこと
その行動がなければ銀河が破滅した
事実を明かす
「本当なのですか・・そんな事は・・誰も」
景子は夫のした偉業の余りの大きさに
感動と誇らしさで身が震えた
「此を知るのはノヴァ・ブリッジの俺達と
Uゼロツーと言うU星人だけです」
「なぜ秘密に?」
景子の言葉に誠矢は当然の質問だと思う
「ガルスグレーサーが敗北したのは
坂巻進吾という一人の英雄の功績だと
公表すれば・・」
景子は其処で気が付いた
「確かに恐ろしい事になります」
ガルスグレーサーと巨人信仰を掲げる
ムーの末裔の憎しみと恨みの行き先が
坂巻の関係者に全て降りかかるだろう
「来週行われる終戦式典は
坂巻の国葬と同時に2日に渡り開催される」
「其の式典に辞退せず参列して欲しい・・
お腹の子の安全の為にも」
「其れはどうして・・」
「将来その子が{英雄}坂巻進吾の
子供として注目を浴びた時に
一人でも多くの有力な味方を得るために」
「何故そんな事を!?」
誠矢は其処で最高軍事機密級の情報を伝えた
「信じられないかも知れないが・・
神の秒針を俺以外で扱える可能性が今の時点で
一番あるのがその子なんだ・・」
「こ・・この子がどうして?」
其れが本当ならこの子の将来は大変な事になる
「俺の責任だと思う・・
神の秒針の所有者として選ばれた時、
其の子を第二の所有者に望んでしまった」
「進吾の顔がどうしても頭から離れず・・
神の秒針の奴が勝手に一番近い君達の子を
選んでしまったんだ」
「神の秒針に!」
「申し訳ない」
そう言って頭を下げる誠矢
「言い訳にも成らない話だが・・
生まれる前から呪われた運命を
この子に背負わせてしまった」
「本当に巻き込んですまない」
だが景子は微笑みながら
「いいえ良くぞこの子を選んでくれました
・・坂巻進吾の子供です・・並の人生など
端から有り得ないと解っていました」
「獅子の子は獅子なのですね・・」と
景子は小さく呟き
「解りました、この子を坂巻流の達人に育て上げ
アトランテスノヴァの新たな力にして見せましょう」
「景子さん・・」
坂巻屋敷を出て坂巻家所有の裏山に登り
坂巻家代々の御霊が眠る墓地に誠矢は向かう
其処に坂巻進吾の墓石がある、
大城誠矢の手には
一本のウイスキーが握られていた
誠矢は墓の前に座り
「俺は取り返しの付かないことを
景子さんに強いてしまった
だが・・どうしても
必要なんだ・・許してくれ坂巻」
そう言ってウイスキーの栓を抜き
「どうか一緒に呑んでくれ」
ウイスキーの中味を墓に掛けると
残りを誠矢はラッパ飲みしだした
「御前ももう一杯飲め」
そう言って酒を墓に掛ける誠矢はまるで
其処に坂巻が居るように酒を飲み交わしやがて
酔いが回ると・・
「此処だけの話だが・・実は恐ろしい
想像をしている」
その想像は怖ろし過ぎて誰にも話せない内容だ
「本当の戦いは今から始まる予感がするんだ」
喉を焼くウイスキーが誠矢の臓腑を暖める
「もしギルザート18世が・・星雲時計を
銀河に造ったのが旧支配者と言う奴等の策略で」
※「旧支配者」とは巨人族の創造主である
オールド・ルーラーと呼ばれる存在だ
ウイスキーが掛かった坂巻の墓に
空から降ってきた雪の結晶が降り積もる
「実は旧支配者の真の目的は星雲時計を使い
この銀河系に大きな災いを送り込む為の入り口
{ゲート}だとしたら・・何てさ」
「何の根拠もない只の妄想・・笑えない冗談
こんな戯言をまともに言えるのはお前だけだ」
此ばかりは誰にも相談できない最悪の推測だった。
「お前が生きててくれれば・・
こんなバカな妄想で苦しむ必要もない・・
・・解ってる・・俺は無意識に
・・・お前に縋っているんだ」
「その挙げ句・・お前の子供まで巻き込んで
こんな事態に・・最悪だな」
「俺みたいな奴は死んでも死にきれず
アトランテスノヴァに魂まで呑込まれ
未来永劫地獄の業火で焼かれたながら
戦い続けるんだろうな・・きっと」
そして雪の降る道を誠矢は静かに
足跡を残し乍、立ち去っていった。
時に2998年の12月24日の
午後3時、天候は雪、摂氏0°
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
エピローグ
地球の衛生軌道上に銀河連邦の
U星人専用の{万能}観測船が
飛来していた、遮蔽能力もさる事ながら
{雪雲}など物ともせず対象者を監視し
その精神を観察出来る
脳粒子波測定技術は驚愕の限りであり
旧支配者(神)レベルに達している
彼等{U星人}も又・・{旧支配者}
オールド・ルーラーの落とし子として
その力で銀河を統率しているのだ
<以上が現在{銀河の盾代表アストラ}
大城誠矢が抱える精神問題だ>
Uゼロツーの1万人の意志達は
それぞれ意見を出し合う
<余り良い状態とは言えないな>
<軽いパラノイヤを抱えているじゃないか
やはり拘束した方が安全ではないか?>
<確かに神の秒針の所有者としては
危険な感じだが・・>
<少し待ってくれ
此を只の妄想と切り捨てて良いかは話は別だぞ>
<我々の先史文明{解析の結果}でも
オールド・ルーラーの存在は明らかだし
星雲時計の目的も時間操作だけとは限らない>
<最悪の場合、大城誠矢の推測通り何らかの
ゲートだった場合は敵への対処が間に合わなくなる>
<確かに・・仮に星雲時計がゲートなら
1万光年もある広大な大穴から出てくる驚異を
問題なく阻止出来るのは神の秒針だけだ>
<其の{何か}が這い出て来たとしても
5000光年ある神の秒針が60秒で
一周すれば未曾有の脅威も殆ど問題なく
消し去ってくれるだろうしな>
<まあ・・大雑把に掃除をしても
規模が規模だけに・・どうしても
取りこぼしが出てしまうだろうが・・>
Uゼロツーには精神科医や信教に通じた
学者肌のメンバーが多い、その統合意志が
Uゼロツーの人格を形成していた
此を可能にするのも又、旧支配者の
未知なる科学力に他成らない
U星人も恐らくオールドルーラーの
落とし子と考えれば{辻褄}は合うのだ。
こうしてUゼロツーは大城誠矢には内緒で
秘密裏に行動していた
何か少しでも星雲時計に異常が有れば賺さず
アトランテスノヴァの出撃を要請する
その体制が時を経ず整ったのは
Uゼロツーも又、誠矢と同じく・・
嫌な予感が働いたせいでもあった
其れがなければ此処まで迅速に
話は進まなかっただろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付
箋文★
太陽系第4惑星、火星
地球政府はこの火星にある全コロニーに
ガルスグレーサー避難民の入植を認め
1000万人と言う植民を受け入れた
そしてこの政府決定を火星の元入植者達が
反発しない訳がなかった
案の定、火星の元入植者100万人が
抗議デモを起こしてマスコミの注目を集める
そしてこの抗議デモはやがて大きな
反ガルスグレーサー闘争に発展した
この騒動の裏には、{ムーの末裔}が暗躍し
反ガルスグレーサー団体に力を与える
100万の元火星入植者の支持を得て
{反ガル運動}は
全国で抗議活動のデモを活発化させ
地球政府に揺さぶりを加えるのだった
━━━━━━━━━━━━━━━
━━━★付箋文★
クリスタルアーマーステーション
ハヤテ第一艦橋司令室
「ガルスグレーサー大戦が集結し
やっと平和になったと思ったら此だ」
そう言って愚痴をこぼすのは小原隊員だ
「火星で問題が起きたから出撃らしいけど
一体何が起こったんですかね?」
小原隊員の横に座る大城誠矢は
駆逐艦モードのハヤテでは今まで通り
総戦闘隊長の席に座っている
当然艦長席に座るのは勝艦長で
イザという時までこの配置が通常だ。
「火星に向かってデモ目的に向かった
{反ガル運動}の船団が問題を起こしたそうだ・・
それが地球に飛び火しかねないので
火星に援軍を出す要請が来たそうだぞ」
「其れで俺達にも白羽の矢が立った訳か・・
やれやれですね」
誠矢は小原ほど楽観視してない
「どうも嫌な予感がする・・
気を抜かない方が良いな」
「嫌だな~総隊長がそう言うと
大概当たるんだから」
地球から火星に派遣する艦隊編成は
本来の編成に戻し宇宙戦艦を旗艦とする
12隻で艦隊を組んだ
そして火星とアステロイドベルトの
中間地点に問題の反ガル運動船団が陣取っている
火星の軌道上では既に3将軍の艦隊が
其れを見張る形で陣を張っていた
「何だありゃ?どういう状況だ」
小原の言うことも尤もなのだが・・
此は直接当事者に事情を聞いた方が早いだろう
勝艦長は3将軍の一人である狼将軍
ウルフシューターの乗るスペースヴォルフに
通信を送るようジョン通信班長に命じた
<こちら地球防衛艦隊所属
宇宙駆逐艦ハヤテ
スペースヴァルフ2世返信願います>
ジョンの通信に答えスペースヴォルフ2世から
映像通信が届いた
<久しぶりです勝艦長、ウルフシューターです
此度はわざわざ御足労いただき申し訳ない>
将軍の丁寧な挨拶に勝艦長も礼を返し
取り敢えずの事情を聞いた
何でも反ガル運動の船団がいきなり
ガルスグレーサー臨時政府に
{火星からの立ち退き}を一方的に
要求したかと思えば、そのまま
アステロイドベルトに向かい
ああして籠城を始めたらしい
<そして何より問題なのが、あの船団が
実はムーの末裔の工作船であり
反ガル運動の(元)火星入植者達が
人質にされた状態で手出しが出来ない事だ>
此には勝艦長も苦虫を噛み潰した顔になる
<其れは厄介ですな・・・今地球では
火星入植者達に同情的だ・・彼等の身に
何か有れば反ガルスグレーサー運動が
活発化するのは間違いない>
ウルフシューター将軍は本当に参った様子で
<(元)火星の入植者達を一人も傷付けず
救出出来るとすれば、其れが可能なのは・・>
言うまでもない、転移ゲートで白兵戦を行える
ハヤテだけだろう・・・
<問題は人質の人数と囚われた場所だな>
見ただけでは
誰が人質でどの船に囚われているのか
見当も付かないのだ <私が透視する>
そう言いだしたのは大城真耶だ
春吉科学班長が
「彼女がハヤテの機械と同化し
センサーを目の代わりにすれば可能だろう」
誠矢の不安としては
「その場合、真耶の負担は?」
春吉は大丈夫だと太鼓判を押した
「真耶隊員の身体への負担は
機械が全て負ってくれる」
そしてウルフシューターが更に情報を付け足す
<動くなら急いで欲しい、奴等は
此方が手を出せないことを良い事に
アステロイドベルトに爆発物を仕掛け
火星を狙ってのメテオシュートを狙っている>
<何て奴等だ・・> 其れを聞いた勝は
その作戦の危険度がどれほどの物か察した
隕石群を大量に降らせば間違いなく
火星にいるガルスグレーサー移民
1000万人は壊滅的な被害を受けるだろう
隕石など少しの重力衝撃で軌道を変え
惑星に雨霰と降らせる事が出来る
此こそまさに安価で天然の天災を引き起こす
貧者の武器、隕石爆弾なのだ
『腐れ外道のムーの末裔共・・
一人も生かして帰さんぞ』
大城誠矢は本能的にガルスグレーサーまで
標的にし始めたムーの末裔が、より凶悪に
成ったと感じた・・
信奉する神を乗り換えたか・・
恐らく巨人よりももっと凶悪な神に。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「やめてくれ!話が違うぞ只の脅しだから
心配ないと言ったのに、どうして火星に
隕石群をぶつけるんだ!?」
(元)火星入植者リーダーであるヨーゼフは
手に手錠を掛けられた状態で自分達の運動を
肯定し全面的に協力していたクラウド財団の
エージェントを名乗るその{支援者}に
涙ながらに訴えた
「何も間違ってはいない、君達の
火星を奪った寄生虫共を此で
一掃出来るのだからな」
「狂っている!こんな事・・・此では我等の
火星コロニーも丸ごと無くなってしまう」
「其れも又オールド・ルーラーの御意志
破壊から創世は始まるのです、全て無くなれば
又造れば良い其れだけです」
テロリストは目が完全に{イッ}ている
其れを見て彼は自分が狂信者に
騙された事に気づき、やっと後悔した
だが全てはもう手遅れなのだ
自分達が0から造り上げた大切なコロニーが
今テロリストに隕石で破壊されようとしている
その上に彼等はテロに手を貸した{戦犯}となるのだ
後悔と絶望感が苛み哀れな火星の(元)入植者を
情け容赦なく襲う
「止めてくれ・・頼むから・・壊さないでくれ」
テロリストは勝ち誇りながら
「もう止めることは不可能だ・・隕石に
仕掛けた重力爆弾は全て時限式・・
その数も1000を超えるのだから
解除など不可能だよ」
1000を超える隕石群を消滅させる事は
宇宙艦隊の火力では到底不可能だ
だが・・高笑いしていたテロリストの前に
空間から転移ゲートが現れ、その中から
巨大な戦士の拳が飛び出しそのテロリストの
頭蓋骨をグシャリト音をたて破裂させた事で
空気が一変した、転移ゲートの中から
姿を現したのはジャックゴルドーだった
彼はその場にいたテロリスト達が
反応するより遙かに早く動き
銃を構えようとしたテロリストを
前蹴りで太股からへし折りながら
もう一人のテロリストも顔面を掴み
船の床に叩きつけバウンドした
テロリストの眼球と脳髄が飛び散った
他に獲物はいないかと、ジャックは
周りを見回すがもう戦えるテロリストは
残っていない
此と同じ事が他の船団でも同時に起こり
人質は一人の犠牲者を出す事もなく
解放されたのだが・・
解放されたヨーゼフ氏が
「隕石に重力爆弾が!!」
そう叫びながらジャックゴルドーに
いきなり泣きついた
だが彼がそう叫んだ直後に
アステロイドベルトで眩しい閃光が
何カ所も光ながら次々に連鎖的に爆発していく
そして次々に隕石が軌道を外れ
猛スピードで火星軌道に乗り飛んで行った
「しまった此奴等やりやがった!!」
その壊滅的な光景を見ながら
狂った様に笑い声をあげる半死半生のテロリストは
さっき太股を粉砕骨折され足が変な方向に折れ曲がり
床に転がされ尚も悪態を付き醜悪さを披露する
「此で火星が一掃されれば
銀河とガルスグレーサーの同盟関係は
一瞬で崩壊し再び戦争が起こる
互いに殺し合いオールドルーラー神
{光臨招来}の贄と成るが良い!」
どうやらムーの末裔の新しい神の名は
オールドルーラーと言うらしい
奴等はその古い神をこの銀河に
{御招待}する目的でこんな馬鹿げた真似を
している事が解った
誠矢は転移ゲートで送り込んだ隊員達の
集音マイクで今の話を聞き
一番知りたかったムーの末裔教団の今の
信仰対象と目的を知ったのだ
その内容が自分が近頃悩まされていた
妄想と厭な感じで{重なる事}が気持ち悪い
人の口から改めて聞かされると
益々パラノイヤとしか思えなくなってきた
とは言え・・このバカな妄想を本気にして
テロを起こすのだからカルトは怖い
妄想盲信の結果、この大量虐殺
合計1000を超える隕石が
重力爆弾の影響により火星に向け飛翔していく
「まずいぞ此は、完全に
衝突コースを進んでいる!」
ウルフシューターがミサイル戦艦
スペースヴォルフの
対艦ミサイルを全弾発射するが
速度が乗り大質量を持つ巨大隕石は
ミサイルの威力で砕けながらも
その砕けた破片までもが散弾と化して
火星に向けて飛んでいく、此ではかえって
被害が増すばかりだ
「駄目だ戦艦の火力ぐらいではビクともしない」
「諦めるな!我等の後ろにはガルスグレーサー
1000万の命が掛かっているんだぞ!」
戦艦の火力では隕石は砕けるばかりで
一度火星軌道の衝突コースに乗った
隕石群を止める事は到底不可能だった
地球の防衛軍艦隊も3将軍の艦隊に加勢し
全力射撃を砲身が焼け付くまで行うも
その結果は芳しいものではなく
「駄目だ!ユニオンに緊急救難を養成しろ!
火星が災害により壊滅状態になったら
地球の支援だけでは追いつかなくなる」
地球防衛軍艦隊・旗艦長門の艦長は
最悪の事態を予測しギャラクシーユニオンに
救助要請の通信を送り助けを求めた
だが今更、助けを求めた所で遅い
既に火星が滅亡するのは避けようがない事態だ
「こうなる前にテロリスト共を
一掃出来ていたら・・」
だが既にハヤテの転移ゲート作戦で
問題のテロリストは全員無力化
出来ていたのだが、地球防衛軍の
艦隊で其れを知る者は一部だけで
ガルスグレーサーでも3将軍以外に
ハヤテの真の実力を知らない。
其のハヤテに秘密通信が届く
<ギャラクシーユニオンより緊急連絡です
勇者戦艦に赤い星を流星群から守って欲しいと
要請が届きました>
この依頼は地球防衛軍艦隊からGユニオンに
緊急要請が入った為U星人が信号を送ったのだ
「隕石群が火星に到達する時間を割り出せ」
コンピューターで分析した結果
隕石の衝突予測時間は残り6時間半と判明した
勝艦長は大城艦長代行に命じた
「1時間以内に全ての肯定を済ませ
アトランテスノヴァを出撃させよ!」
「了解、直ちに発進準備に入ります」
アトランテスノヴァに乗る全ての隊員が
ウオーリアのスーツに着替え全艦が配置に付くと
ハヤテ内部からハヤテと瓜二つの駆逐艦が
空間転移ゲートを通って表に搬出される
此がコードハヤテFと呼ばれる影武者艦である
そしてこの影武者艦の艦長が勝艦長なのだから
情報隠蔽秘密工作が徹底している
オリハルコン・アーマーと呼ばれる
金のダブルアタッチメントと合体し
ハヤテはアトランテスノヴァに
チェンジする肯定を終え、いよいよ発進準備が
整った 「アトランテスノヴァ発進準備完了」
そしてキャプテンアストラとなった
大城誠矢が命じる
「アトランテスノヴァ発進」と
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
宇宙運送事業で大成功を納めたヘルターナーは
事業の成功で儲けた財を惜しげもなく使い
多くの事業に投資を行っていた
「まさか・・こんな形で投資が生きてくるとはな」
ヘルターナーの傍らには組織のナンバーツーである
グラダーが控えていた
「火星の件では驚かされましたな・・
隕石群の衝突を回避する方法として
あの様な手で解決するなどとは
流石に思いも寄りませんでした」
二人は火星に新たに出来た{月}を見ている
「隕石を一つに纏めて握り潰す様に
圧縮して小惑星を造るとはな・・流石に
思いつくわけがない・・此はもう
人知を超えた領域だ」
「ですがその御陰でガルスグレーサー1000万の
人命が救われたのですから、ターナー様の投資は
まさに大成功でした」
「まあな・・此からもアトランテスノヴァには
精々い活躍してもらい、俺がつぎ込んだ投資分を
倍にして返して貰うさ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
崎勢十郎はアストラ大使の影武者として
矛盾がないように振る舞う必要がある
「暫くはお役御免だな・・」
彼は次の出番が来るまで歴史の表舞台から消え
ある少年の成長を手助けする道に進む事にした
其れは英雄、坂巻進吾の一粒種
彼にとっては甥子を英雄として育成する
大仕事であった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
グリフォンを生かすためにハヤテに
特攻した宇宙の勇者達
{・・セキレイ少尉・・オウム少尉・・
スワロウ少尉・・ヒヨドリ少尉・・モズ中尉だ}
特にヒヨドリは愛らしい女性パイロットだった
この3人が大鷲将軍{グリフォン}を変え
ガルスグレーサーを裏切らせた切っ掛けである
彼は自分の宇宙空母を解体し造った
火星のコロニーに彼等の名を与え
スワロウコロニーにオウム・スワロウ・ヒヨドリ
モズとそれぞれのコロニー名とした
「そうか・・アトランテスノヴァに
火星は救われたか」グリフォン将軍は
英雄達の名を関するコロニーにその思いを馳せる
鷲の頭に人間の体、其れはガルスグレーサー
3将軍の有名の中でも一際明晰な頭脳で知られる
大鷲将軍グリフォンである
彼はユニオンとの取引で一つの使命を託されていた
即ち、{星雲時計の解析}と{旧支配者」の
関係性を探って其れをU星人のゼロツーに
随時報告するというものだった
精神攻撃を専門とするグリフォンが
ハヤテとの戦いを通してユニオンに
目を付けられるのは至極当然の事だった
何よりUゼロツーからしてみれば自分の中の
1万人メンバーの一人に是非迎えたい人材でもある
ガルスグレーサーから一人を選ぶとしたら
彼以外の適任者はいないだろう
そんなグリフォンに火星の速報を届けたのが
Uゼロツーである
<脳粒子波通信にも、かなり慣れた様だね
Mr.グリフォン>
<元々ガルスグレーサーのESP研究は
進んでいたからな・・テレパシー通信は
何度か実験で経験済みだ>
<其れにしても隕石群を真耶の超能力で
握り潰して一つに纏めあげ{星を造る}とは
此はアトランテスノヴァにより、真耶が
本来の力を使えるように成った明かしだな>
大城真耶の超能力レベルは神の領域
{超破壊型}スーパーデストロイヤー
クラスだと言うグリフォンの推察にUゼロツーも
<其れに関しては同意見だ・補足して言うと
{超能力の手}をベルテリオンが物質化して
隕石群の塊を重力圧縮で押し潰し一塊にしたって
所かな?>
グリフォンは頷きながら
<ヒントとしてはシン・ファノサイスの
能力の一つにNo.2ファノクロス
魔導兵器・液体重金属砲というものがある>
<掌状に形成し隕石群をひとまとめにして
液体金属で熱を加えて岩を溶かして固めれば・・
今回と同じ事も出来るだろう>
そうすると今回の偉業をやったのは真耶だとして
アイディアを出したのは液体金属兵器と何度も
やりあった大城誠矢に違いなかった
<成る程、彼が・・神の手の発想源か・・>
Uゼロツーの言い方に大鷲将軍は何かを感じ
<何かあるのか・・その新しく出来た
火星の衛星に・・>
<火星には此と言った資源が
此まで無かったそうだが・・もしかしたら
その心配はもう無いかも知れないよ>
<どう言うことだ?>
<ベルテリオンで握りつぶした影響だろうね
新しい衛星を開発したらとんでもない
資源が発掘される可能性がある>
グリフォンは息を呑む
<ま・・まさかとは思うが・・
ベルテリオン粒子が鉱石に含まれていると・・
言う事か?>
Uゼロツーは少し興奮気味に
<その可能性は大いにあると思うね>
<其れが事実なら・・火星は銀河随一の
エネルギー資源を予期せず・・
偶然得た幸運の星と言う事になるな>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
火星の2衛星の名は
フォボスとディモス、
其処に新たに増えた衛星の名はノヴァ
その名はガルスグレーサー1000万の命を
救った英雄戦艦の一部から名付けられた
この火星に10万人規模の居住可能コロニーが
地球からの移民達の手で10個建設され
100万人の地球人が入植したのが140年前
そして過酷な火星の環境に耐えられず
遂に地球に半数が帰還し、残った50万人も
ガルスグレーサー侵攻が切っ掛けとなり
20万もの市民が火星から逃げ出した
そして最後に残った30万の市民達は皆
火星を故郷と決め死ぬ覚悟までしていた
「火星の大地には先祖達の
血と骨が埋まっている」
「もう俺達は地球人じゃなく火星人だ」
「今更地球には馴染めやしない」
そんな彼等が火星から
外敵侵略者の軍事力で無理矢理、
故郷から追い立てられ
其れでも戦争さえ終われば故郷に帰れると
信じ我慢した、だがその挙げ句が
{火星コロニーにガルスグレーサー人を
一時受け入れ、入植を許可する}と言う
地球政府の信じられない裏切り行為を
受けたのである
穏和な彼等も怒り心頭に達し、
とうとう火星コロニーを奪還すべく
ガルスグレーサーに対して立ち退き運動を
始めたのは致し方ない話である
やっと訪れた平和な時代に対する無益な挑戦とか
嵐が治まった海に波風を立てる行為だと非難され
四面楚歌の状態ながら其れでも彼等は抵抗運動に
身を投じ、その必死の思いに付け入ったのが
新たな神、旧支配者を信仰する凶悪なカルト集団
ムーの末裔だった。
「その過去には確かに同情するが・・
火星に重大な危機を招いた者達を
無罪放免と言う訳にもいくまい」
同じ地球人であるからこそ勝艦長は
そう言うしかない
そして責められる反ガルスグレーサー運動の
リーダーであるヨーゼフ氏は反論出来なかった
「もう少しで{私}は取り返しの付かない過ちを
犯す所でした・・全ての罪はリーダーである
この私にあります・・何卒・・裁くなら
{私}だけを、どうか宜しくお願いします」
その潔良い姿にアリーヌ・ロイ・シュライザは
感銘を受ける
『私達とは言わず自分一人だけ裁かれようと
するなんて、この方を見て無情に裁くなんて
とんでもない事だわ!』
そう思ったアリーヌはウルフシューターと
小声で話し合い、「いや其れは」「幾ら何でも」と
ヒソヒソと勝艦長の耳にも遣り取りは届いたが
どうやらこの場で最高意志決定権を持つのは
ウルフシューター将軍のようだった
その狼将軍ウルフシューターが
「解りました代表の御意志に従いましょう」
と言うとアリーヌの手を取りエスコートする
アリーヌ代表は神妙に床に伏せる
ヨーゼフ氏に歩みよりその手を取ると
「どうか頭を上げて下さい、此度のことは
不幸な行き違いで起きた{事故}でした・・
あなた方に罪はありません」
「え・・・」 ヨーゼフ氏は思っても居なかった
展開に目を白黒させる
勝艦長は自分に向かって状況を伺う氏に
「この場を取り仕切る権利が有るのは
アリーヌ代表と将軍閣下だ私に資格はない」
詰まりは・・
この二人が無罪だと判断するなら
其れに従うと言うのが勝の意志だ
ヨーゼフ氏は涙ながらに
アリーヌ代表の温情に感謝した
それからヨーゼフ氏はアリーヌ達に案内され
火星コロニーの建設現場を視察した
其れは氏が夢にも思わなかった程の
規模と完成度で、氏は驚きすぎて
声も出せずにいた
「只今これと同規模のコロニーが200個
建設中で半年後には400個が完成します」
ヨーゼフ氏は震えながら
「そんな・・一体どうやって?
こんな数のコロニーを一度に」
『100年以上掛けても火星の過酷な環境下に
人類は適応出来なかったのに』
その疑問にアリーヌはあっさり種明かしをする
「宇宙戦艦を分解し材料としてコロニーに
使ったんです」
「ふあ?」
思わずアリーヌの顔を見るヨーゼフ氏
それ位信じられない一言だった
「宇宙戦艦には生命維持装置があって
バリアーを張るだけで惑星環境を防いで
コロニーを建設出来るんですよ」
ヨーゼフ氏がアリーヌから聞かされたのは
一人の老兵の昔語だった
「此の知識は今は無き私の恩師とも言うべき
ガロスダ教育官から少女時代に教わったものです」
アリーヌ姫は幼少の頃、母である王妃を亡くし
寂しさで塞ぎ込んでいた、そんな時
ガロスダが姫の教育係として着任し
其れからは影日向になり姫を支えていたのだ
「爺や今日もお話を聞かせて」
未だ幼く丸く円らな瞳でガロスダに
寝物語を縋る幼女姫にいたわりと献身の
想いを抱く老いた教育官は、まるで
孫娘に優しく語りかけるように
自らが経験した体験談を語り出した
どうやらアリーヌ姫は
普通の女の子が好きな童話や物語には
全く興味がないらしく、彼が兵士時代の
冒険談等を好んで聞きたがる傾向がある様だった
ガロスダは自分の詰まらない昔話を
目を輝かせ聞いてくれる姫を愛おしく想い
「其れでは今日は私が仲間達と共に
宇宙で遭難した時の話をお聞かせ致しましょう」
そうして天蓋ベットで寝ころび足をパタパタ
させながら聞き入る姫に語り出した
其の話と言うのは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ガロスダ教育
官がまだ宇宙戦艦乗りだった頃
乗っていた宇宙戦艦が事故で未開発の惑星に
遭難し其の惑星環境が劣悪だった為
サバイバルで生き延びる為に
考え抜いた末、彼等は宇宙戦艦のバリアーを
利用する事で局地的に食料を生産可能な
環境を疑似的に造り出す事に成功し
其のおかげで十数年もの遭難生活を生き延びた
という話だった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「私は爺から学んだ知恵を少しばかりアレンジして
此の方法を試したに過ぎません、ですから本当に
凄いのはガロスダ教育官なんです」
アリーヌは胸に手を置きながらしみじみと語った
その様子にヨーゼフ氏は
「宇宙戦艦の平和利用など思いも寄らなかった
素晴らしい発想をされる方ですね
その方は今はどちらに?是非お話を伺いたい」
だけどアリーヌは少し寂しげな表情となり
「残念ですが・・戦争で既に亡くなりました
・・ですが・・」
太陽系防衛軍から勝艦長の名で伝えられた
恩師の壮絶な死に泣き崩れた痛みを今も
忘れないアリーヌ・ロイシュライザ
「爺の教えてくれた教えは今も私の中に
生きづいているのです」
そんなアリーヌの言葉を聞きヨーゼフ氏も
「そうですが其れは本当に残念です、
ですがガロスダ教育官の名は、この
テラホーミング技術の公式な名前として
是非使わせて頂きたい」
アリーヌはそのヨーゼフ氏の申し出に
心から喜び、その後も
ガロスダ式惑星改造方の説明を続けた
「後は宇宙戦艦を分解しその資材を材料にして
バリアー内部でコロニーを組み立てて行けば
人が居住するコロニーの完成と成るのです」
「そんなやり方があったのか・・」
ヨーゼフ氏は
ガルスグレーサーの建築技術よりも
自分達とのサバイバル経験の差に慄然とした
太陽系の地球と言う温室で育ってきた
地球人類からは絶対に出て来ない発想だ
此は科学力の差ではなく宇宙を旅する
移動民族との発想力の差だった
「宜しければ此を見て下さい・・」
感動するヨーゼフ氏を連れてアリーヌは
完成してから半年経過したコロニーに
案内した、其処にはヨーゼフ氏が
夢にまで見た光景が広がっていたのだ
氏の目に黄金に輝く麦畑の穂が映る
「火星に・・黄金のコンドルが舞い降りた」
ヨーゼフ氏の両眼からは
知らず知らずのうちに
止めどない涙が溢れ出ている
「地球の方々が倉庫に保管しておられた種子を
少し分けて頂き遺伝子改良して撒いたら
こんなに元気な芽が出ました
ガルスグレーサーの遺伝子改良技術は
宇宙空間で農業を行うのが一般なのです」
アリーヌは泣いているヨーゼフ氏の肩に
そっと手を添える
「この麦は火星に芽生えた初めての実り・・
我々地球人だけでは到底実現することが
出来なかった奇跡です」
自分の目で此の光景を見ることが一生叶わないと
思っていた氏は心の底からアリーヌに感謝した
そしてアリーヌはヨーゼフ氏に一つ提案する
「火星全体をこの種子で覆い尽くし
惑星全体を地球型環境に改造すれば
全ての種族が共存共栄する理想郷を実現
出来るかも知れません」
そしてアリーヌは手を差し伸べ
「どうか一緒に其の夢を目指してみませんか?」
「全ての種族の・・共存共栄社会・・」
ヨーゼフ氏は夢見るように呟いた
「ガルスグレーサーは多くの種族が集められた
多種族混合社会形成を実現しています、ですから
地球の方々とも共存共栄出来る地盤があるのです」
アリーヌ代表の言葉を補強するように
代表の傍らに立つ狼将軍が目に映る
その二人を見るだけでも信用に足る言葉だった
「今回、火星に来られたヨーゼフ氏達だけでも
このまま火星に残って一緒に開発をしませんか?」
「え・・ですが我々はあなた方を
滅ぼそうとした連中に協力した前科者ですよ」
アリーヌはきっぱりと其処は否定した
「いいえ協力じゃなく利用されたのです
あなた方とテロリストを一緒くたにするような
愚か者はこの星にいるガルスグレーサー人には
一人もおりません」
アリーヌの力強い言葉にヨーゼフ氏は
心から感銘を受けその申し出に
有り難く縋る事にした
「いずれ、コロニーの供給が整ったら
地球人の元入植者の方々を全て呼び戻しましょう」
おお!「そうなれば夢のようです、此から
宜しくお願いしますアリーヌ代表」
そうして二人の代表は立場と権限を越えて
未来の火星繁栄を目指し友好の握手を交わした
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━★付箋文★
今現在━━━━━━━━━━
━━━━━━━━銀河中心部には
星雲時計と呼ばれる虚無の宇宙域が存在する
其の穴は底無し穴であり漆黒の
{ディープホール}と呼ばれ始めた
ガルスグレーサーの星帝
ギルザート18世がシン・ファノサイスの
超常の能力を用い創造した、
所謂・・大戦の置き土産だった。
銀河中枢部・星雲時計近郊
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シン・ファノサイスの第四脳幹シリンダー
ファノアマトの能力で銀河中心部にある
ブラックホールに特殊な魔導力を用いて
5000光年程の宇宙域を
時計状に再構成し固定化してしまう
その際5000光年内は完全な虚無(ボイド)空間
と化す、その影響は2千年に及ぶとされる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(ボイドスペース)
虚無の領域と呼ばれる1万光年の宇宙域は
銀河系に置ける新たな交易航路をもたらした
※(ディープホールに落ちないよう
表面部分だけを航路上に設定して)
此まで銀河中心部は巨大なブラックホールと
致死性のある有害な光線が満ちた
巨大恒星の溜まり場だったが
今はエネルギーも重力も存在しない
絶好の航路と成ったからだ
此ばかりはガルスグレーサー大戦に置ける
唯一の功績とも天の恵みだと歓喜する
各星系の声も多数あったのだが
困った事に招かれざる客も現れた
其れは宇宙の海を我が物顔で荒らす
{宇宙海賊}の台頭である
そして今、数隻の貿易宇宙船を追撃する
武装船団、それは間違いなく今問題の
宇宙海賊が海賊行為を行っているその真っ最中だ
<メーデーメーデー此は緊急通信です
我々の貿易船が凶悪な宇宙海賊に
襲われています付近にもし
戦艦があれば救援願います我が船団は現在
海賊船に襲われています>
この救難信号を受け取った1隻の船があった
其れは漆黒の装甲を持つ
デストロイ・カタストロフγと呼ばれる
元ガルスグレーサー最強の宇宙戦艦である
この艦はハヤテとの模擬戦で唯一
生き残った艦であり、今は
猛将ワイルダーの愛艦となっている
このデストロイ・カタストロフγは
天才的な戦艦設計者である
ウルフシューター将軍が心血を注ぎ
製造された超戦艦であり
その能力はファノシリーズを参考にし
其の性能をコピーした言わば
ファノの小型版の能力を有していた
γの能力は
魔導ガス星雲レプリカ兵器
出力規模はファノシリーズの
30パーセント程度で全力稼働すれば
魔導エンジンが暴走する危険があった
※(其れが原因でαとβは自滅した)
だがその性能はウルフシューター折り紙付き
化け物級戦艦であることは間違いない
1隻で数万隻の戦闘力に匹敵するのだから
正しくファノシリーズ艦の落とし子である
其れが来たのだから宇宙海賊に勝ち目など
微塵もなく
<畜生化け物過ぎるぞ!この戦艦>
<こっちの攻撃がまるで通用しない!>
<こいつが近頃噂になっている
海賊殺しの黒い悪魔だ!!>
デストロイ・カタストロフγは宇宙海賊の
艦隊を軽く一掃し貿易船団を守った
見た目の怖さから貿易船団の船長は恐る恐る
感謝を述べながら黒い怪物の様子を伺った
<助かりました何かお礼をさせて下さい>
デストロイ・カタストロフγからは
<何か美味い酒があれば所望したい
あとそちらの特産品を摘みに戴ければ
なお有り難い>と言う返信がある
貿易船団の船長はその頼みに快く応じ
特産の酒と食料を大量にプレゼントした
貿易船団と分かれた後
デストロイ・カタストロフγ船内では
貰った酒を開け早速宴会が始まる
「お頭~お頭~良い事はするもんですよね~」
艦長席に座る長身長髪の男
その傍らには絶世の美女がドレス姿で立っている
その手は男の肩に乗せられて只仲でないことを
匂わせる。
「ワイルダー様宜しいのですか
任務中にお酒をあんなに呑んで」
その言葉にワイルダーは
「別に構わないさ、この船では
いつが仕事時間と決まっちゃ居ない
呑みたい時に呑み寝たい時寝て
戦う時だけ死ぬ気で戦う、其れだけだ」
元王女は其れを聞いて笑いながら
「呆れました、まるで無法者の集まりね
此がガルスグレーサーの鎖から解き放たれた
貴方達本来の姿なのですね大好き」
そう言って彼女自身ワイングラスに
貿易船から貰った酒を注いで呑んで
ワイルダーの首筋に腕を回した
もうかなり酔いが回ったのか
{ヒック}とシャックリをし
頬をピンクに染めていた
「もう酔ったのかエリーナ」
彼女の名はエリーナ・ロイ・シュライザ
ガルスグレーサーの{元}第二王女
国を捨て名を捨ててワイルダーと共に
自由な宇宙に飛び出し、今はもう
ワイルダーの{女}として生きる道を
手にした有る意味{一番幸せな女性}である
そしてそんなエリーナの為にワイルダーは
自分の艦隊を友ウルフシューターに預け、
今はギルザート18世が残した遺産
星雲時計を見張っている、海賊退治は
悪までその序でであった。
「ご免なさいワイルダー、私のお父様が
残した遺産が銀河の皆さんを害する事が
無い様にしたいと言う、私の我が儘を
聞いて貰って」
ワイルダーは何も言わず星雲時計を覗き乍
漆黒のディープホールの奥底を見つめる
「其れについては気にする事はない
何かあって手遅れと言うのが
俺は一番気に食わないからな」
デストロイ・カタストロフγの火力なれば
星雲時計で何が起きても力づくで解決出来る
ワイルダーはこの自由の海で好きに生きる
生き方を大いに気に入っているのである
「そうですよエリーヌの姐さん
俺達だって思いは船長と同じです」
「此処はもう俺達の縄張りだ
門番に断り無く暴れる奴等は許せねえ」
「大人しく出来ねえ奴は力ずくで
解らせるってのがワイルダー流ですんで」
『姐さん・・って』
船長婦人と言う呼び方がどうにもシックリ来ず
船員達はエリーヌを姐さんと呼び始めた
ワイルダーもエリーヌが{悪い気が}
しないらしいので許している
この船で様付けで呼ぶのは最高の侮辱だと
エリーヌ自身が言い出した事なので
有る意味正解と言えるだろう。
こうしてデストロイ・カタストロフγは
海賊退治しながら星雲時計で門番の役目を
果たしつつ自由な航海を回遊し楽しんでいた
━━━━━━━━━━━━
━━━━━━★付箋文★
新しいGユニオンの依頼でハヤテは
アトランテスノヴァにチェンジし
事件現場にリープで向かう
アトランテスノヴァ・キャプテンルーム
瞑想━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大城誠矢は自分がもし死ねば
アトランテスノヴァと魂を融合し
最後の最後まで仲間達と共に戦いたい
そうベルテリオンの力に願った
そして、もしかしたら自分は坂巻進吾と
脳粒子波交信で話し合えるかもと期待し
幾度も試したのだが・・結果は・・
『馬鹿みたいだよな・・そんなこと
あるわけ無いのに』
人間が機械と一体に成る感覚は
人に寄っては経験した事があるだろう
バイクで風を切るマシンとの一体感
ゲームのコントローラーを握り
のめり込み過ぎて気が付けば
夜が明けていた没入感
坂巻進吾がカラメティドラゴンと
人機一体となり自分の身体の延長とまで
感じたと言う奇跡の融合も
全てはこの俺がアトランテスノヴァと
人機一体と成り魂が定着すれば
決して気のせいではない証明となる
そう思ったが・・甘かった
<そんな・・諦めないで誠矢兄さん>
<・・この声は真耶か?>
真耶が誠矢の瞑想に紛れ込んだ
<違うわよ・・兄さんが魂を
アトランテスノヴァに融合するから
幽体離脱して石碑に取り込まれたのよ>
どうやら原因は自分のせいだと解り
誠矢は真耶に謝る
<良いわよ、誠矢兄さんが坂巻さんの死を
全く受け入れてい無いのは知ってたから>
誠矢は本当の事を指摘されグウの根も出ない
<そんな事はない>と言いたい所だが
真耶が奇妙なことを言う
<其れにしても坂巻さんの
気配が全くしないのね>
誠矢は寂しそうに
<そうなんだ・・もしかしたらと思ったんだが>
精神を集中すると誠矢の知る幾人もの
残留思念の様なエネルギーの流れを
真耶でさえも僅かにだが感じた
『今のは・・父さん其れに母さん・・・それに
キャサリンさんも・・』
他にも大勢の思念を感じるが坂巻だけは
微塵も感じず
それで真耶は何気なく言った
<おかしいな・・どうして坂巻さんの
精神が此処にないの?ベルテリオンの力が
効力を発揮したのは私達で証明済みだし>
誠矢が其の考えに至ったのは、この時だった
<確かに真耶の言う通りだな、
じゃあ・・坂巻は何処だ?>
シン・ファノサイスと星雲時計軸との間に
プレスされたカラメティドラゴンは
あの瞬間、欠片も残さず消滅した、そう見えた・・
ギルザート18世が受けた屈辱的な誤解も
遠目で観た光景から生じた誤解が発端で・・
真実は違っていた
今更何もかもをひっくり返す気は無いが
心の中で坂巻の{生存}があり得ると言う
考えになり僅かな希望に元気が出る、我ながら
単純だと思う誠矢だったが
此の物語は此処で一端終わる
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だが銀河英雄戦艦
アトランテスノヴァの活躍は
此処から始まるのだ。
______________________
★付箋文★
これは一隻の宇宙戦艦がやがて銀河英雄戦艦
と呼ばれる迄の戦いの物語である
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━2998年12月が終わり
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2999年が始まる
銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ
___THE/END________
彼等は銀河からその光景を観測した
その誰もがまるで現実味のない
その光景に息を呑む
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天体級大円盤ムー
直径40万km 全高3~6万km
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この宇宙史上稀に見る巨大人工物が
其れこそ一瞬にして、まるで陽炎の如く消滅した
何か大きな爆発や巨大な天体ショーに
発展する事もなく、いとも容易く簡単に
其処に端から何も無かった様に
全てが消滅してしまったのだ
そしてその天文学級の破壊現象を引き起こした
神の秒針と言う実に長さが5光年
幅が0,005光年の実体を伴うエネルギーの
塊も又・・観測者達の前から瞬く間に消滅し
忽然と消え失せる
銀河連邦とガルスグレーサー帝国による
宇宙史上稀に見る大激突は
最も衝撃的な結末を迎えるに至った
━━━━━━━━━━━━━━━━
━━★付箋文★
アトランテスノヴァの中では物議が起こった
春吉進一郎(トト)博士が誠矢に対し
「天体級大円盤内部を調べたんだが
生命反応が一切検出されなかったんだ・・
もしかしたら中は無人だった可能性が
あるかも知れない」
其れを聞いたアトランテスノヴァの
ウオーリアメンバーは静まり返っていた
空気が一変し安堵の溜息が漏れる
「そうか・・それじゃあ殆どの住民は
人間サイズ化して難民船団に紛れ込んで
逃げ延びてやがったのかーっ」
そして悔しそうにして見せる主要メンバー
「此はリンクスにしてやられたぜ・・」
「そうか~上手く逃げられたかやられたな」
春吉が理論的に考えて
「リンクス宰相が彼処まで道化を演じていたのも
巨人族の行く末を案じての一芝居だったんだろうね」
と言う結論を出すと誠矢も
「そうか・・生命反応が無かったか・・」
誠矢は心の中の同様を見せず
「まあ本当の事はリンクスだけが知っていて
それを詮索するのは俺達の仕事じゃない
だから此処は黙って引き上げるとしよう」
「賛成」「了解ですキャプテン」
キャプテンアストラの鶴の一声で
アトランテスノヴァは尽きない物議を止めて
一路地球に向け帰還する進路を取るのだった
━━━━━━━━━━━━
━━━━━━
地球ー日本エリア犬吠岬
{クリスタルアーマーステーション}
ハヤテメインメンバー専用テラス
(メンテ中のハヤテを観れる特別室)
誠矢が響にリンクスとの
秘められた遣り取りを打ち明けた直ぐ後の事
「実はお前に真耶の兄として
頼みたい事があるんだ」
響は誠矢が改めて真耶の事を持ち出したので
何事かと身構えた
『まさか早く婚約しろとか?
そりゃ喜んで応じるけどさ・・』響は本気だ
「模し・・此を聞いて応じられないと思うなら
悪いが・・真耶の事は諦めてくれ」
響が思ってもいない返事を誠矢が返してきた
「いきなり何を言い出すんだ誠矢!冗談でも
言って良い事と悪い事があるぞ」
響の剣幕に誠矢は其れでも静かな口調で
「真耶は長く生きられない・・」
其れは響にとって余りに唐突で絶望的な告白
「・・ま・・待ってくれ・・
いきなりそんな・・」
「いきなりじゃない・・
前から前兆はあった
強力な超能力を使う度に何度も倒れ
冥王星では自滅し掛けた程だった
今生きているのが不思議な位だ」
解っていた、響にも其れは解っていた事だった
だが其れを認めず見て見ない振りをしていた
「・・けど・・俺は・・
例えそうだとしても・・・
最期まで真耶の側に居たいんだ」
誠矢は響の肩に手を置き
「お前の気持ちは解っているつもりだ
・・だがな・・新な事実があるんだ」
「何だよ其れ」
恐らく此処までが誠矢の想定内の流れで
此処から先は響の反応次第なのだ
「どうやら俺と真耶は
巨人族の先祖帰りみたいなんだ」
「巨人・・って」
「アトランテス人も元は巨人だった・・だから
その子孫の俺と真耶の遺伝子には巨人の力が
眠っていた、それが覚醒遺伝してしまったのが
俺と真耶の異常な力の正体だ」
「そんなバカな二人とも普通じゃないか!」
誠矢は首を振り
「俺には巨人スケールの魔導力が多すぎて
其の出口が人間スケールで余りにも小さく
今まで魔導力が出せなかったんだ」
誠矢がアトランテスノヴァと言う大きな
受け皿と出会う事で、今は力と技を自由に
使えているのは周知の事実である
「真耶も又、巨人スケールの超能力を持つが故に
人間の体では耐え切れず命を縮めていたんだ・・」
響は真耶のような破壊型超能力者と呼ばれる
エスパーが何故そんな異常な力を持つのか
その答えが解った気がした
「そう言うことか・・・」
「其れで真耶も俺と同じで
アトランテスノヴァに乗れば強すぎる
超能力の負担を軽くし延命出来る事が解った」
此処まで聞けば誠矢が何を言いたいか
大体察しが付く、
響は心の中でその答えと誠矢の言葉が
一門一句違わずに重なる
「真耶はアトランテスノヴァから離れて
普通に暮らす事が出来ない」
「やっぱりそうか・・」
響の落ち着いた様子に誠矢は更に先を切り出す
「そしてもう一つ・・お前に
アトランテスノヴァに乗り続けるリスクを
話さなければならない」
「・・まだ何かあるのか?」
響は既に答えが出ているのに
その上まだ何か言おうとする誠矢に
思わずそう言ってしまった
誠矢はまあ良いから聞いてくれと
言うと、常識では考えられない事を切り出した
「実は・・アトランテスノヴァで
あの厄介な星雲時計を管理する事になった」
アトランテスノヴァが星雲時計の
管理係りと言う話は響も初耳だ
「まあアトランテスノヴァが面倒を見るのが
確かに妥当だとは思うな」
響でも他に任せられる奴は居ないのは解る
「で、何時までやるんだ?」
普通に考えて二~三十年位か?
「二千年だ」
誠矢の話が怪しくなったのは此処からだ
「は?」
星雲時計の半減期が来るのが二千年で
その間アトランテスノヴァが其の
管理を続けると言う事だ
「引継はどうするんだ?」
誠矢の回答は更に可笑しくなる
「引継はない」
「いや引継なしでどうやって二千年も
管理を続けるんだ?言ってる事が無茶苦茶だぞ」
「アレの責任を最期まで取る為に
アトランテスノヴァに乗り続け
2千年間生き続けるのが俺と真耶の運命だ」
響の聞き間違いではない
確かに2千年生き続けると聞いた
「何を・・言って・・」
「神の秒針の副産物だ・・アトランテスノヴァ
内部の時間の流れが今、10万分の1になった」
誠矢が嘘を言っていない事は直ぐに解った
そしてその言葉の意味さえも、其れはつまり
時の流れが止まった船が真耶の終の住処に
なるのだと言う事を
此の話が冗談ではない事が
誠矢の様子を見れば解る
「本当なんだな」
「ああ・・」
「つまり真耶を選ぶと言う事は・・
当たり前の人としての人生を捨て
最低二千年もの間アトランテスノヴァに乗り
修羅の戦いを続けるって話だ」
誠矢は続ける
「天涯孤独な奴でさえ誘いにくい条件だ
こんな条件を出す方も引き受ける方も
とてもまともとは言えない」
確かに・・誠矢がそう言うのも解る
それでも怒りが沸いてきた
「二千年も戦い続ける運命にこの俺が
真耶だけを行かせると本気で思ったのか誠矢」
誠矢は苦笑いで両手を揚げ
「悪かったよ・・試すような事を言って
だけど真耶の方がお前を止めると思うぜ
自分なんかの為に人生を犠牲にするなってな」
響は頭を掻きながら
「其れは言われそうだな、まあ悪いけど
真耶の為だけに乗る訳じゃない
アトランテスノヴァのパイロットを
他の奴に任せられないのも本音だ」
誠矢はムッとした顔で
「良く言うぜ嘘吐きめ」
フフンと言う顔で二人は睨めっこに成り
途中で笑いがこみ上げて思わず中断した
「まあお前は特別だろうが・・・他の
奴等はこうはいかないよな」
誠矢が此から他のメンバーに同じ
換喩をする気だと響は知り
「どうだかな・・お前だと
そのカリスマだけでオッケーする馬鹿が増えるから
後は他に任せた方が良いと俺は思うぞ」
正直、大城誠矢に誘われれば、勢いで
人生を投げうつ者は後を絶たないだろう
「そうだ・・な・俺は止めといた方が無難か」
誠矢も流石に其処は自覚していた
「勢いじゃなく確実に考えてから選択して貰いたい」
と言う結論は正しい判断だった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
ガルスグレーサー滅亡の日━━━━━━━━━━━━
地球アルプス山脈内部
ムーの末裔・統合寺院施設
その日ムーの末裔は自分達が長きに渡り信仰した
巨人の帝国が神の秒針により砂上の城の如く
敢え無く一瞬で消し去られたのを観測した
余りにも呆気ない最後だった
二万年も信仰し崇め続けてきた存在が
神の秒針によって文字道おり虚空に消滅したのだ
絶望の中で狂信者達に突然{天啓}が降りる
「神だと思っていた巨人は実は神の道具であり
真の神は神の秒針を創られた創造主で有られる
旧支配者様達だったのだ」と言い出した
「そうだ・・旧支配者様方々こそが
我等が信じるべき真成る神」
おお!「旧支配者様万歳」
結果として自分達の崇める信仰対象が
オールド・ルーラーだと言う結論に至り
ムーの末裔は{崇める神}を変えただけで
その危険性と暴力性はその侭に活動は
継続してしまうのだから人の業とは
度し難いものだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━★付箋文★
勝流水がアトランテスノヴァに
残る選択肢は最初から無い
彼は悪までハヤテの艦長であり
大城誠矢が覚醒するまで見守り育て
その役目を終えた今
ハヤテの艦長を引退し後発に任せるのが
引き際を弁える行動だった
だが其れを小田総司令が止めた、
{ハヤテF}の艦長を任せられるのが
全ての事情を知る勝流水のみと言う
理由からだ
日本エリア東京湾
太陽系防衛軍総司令本部基地・司令室
「確かにFの秘密はアトランテスノヴァに
直結するから仕方ない事とは言え・・」
勝艦長は小田総司令の苦しい胸の内を察し
「まあ暫くFが影武者を務めるしかない
・・アトランテスノヴァに関する事情を知る者は
少ないに越したことは無いでしょうからな」
「その通りだ・・済まない勝・・君に
損な役回りばかりさせて」
勝はシルバーソーサーがハヤテに化ける事で
名声を上げたと言う設定により随分と評価を
下げていた、今では所詮は虎の威を借る狐だ
等と陰口を叩かれる始末である。
「Fの評価が低いほどアトランテスノヴァの活動は
しやすくなる、全くやり甲斐のある仕事です」
本来なら希代の名艦長として宇宙艦隊に
足跡を残し誉め称えられるべき彼が
自分の評価を度外視してでも
アトランテスノヴァの秘密を守りたい
其れが勝流水の矜持なのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ー地球ー クリスタルアーマーステーション
二千年の修羅の道・・・
此を受け入れられる人間はそうは居ない
「途中で止めたくなっても
500年後とか・・中途半端な時間じゃ
誰も自分を知る者もなく天涯孤独な
人生を送るだけ・・」※正に浦島太郎である
「結局アトランテスノヴァの仲間の所に
戻る羽目になるか・・そのまま自分の
誤った選択にもがき苦しみながら
孤独死するしかなくなる」
「大体人間って2千年も戦い続けて
正気で生きられる物なのか?」
ハヤテのブリッジで小原(戦闘班副隊長)と
岩川(航行班副隊長)が話し合っていた
「残る者と去る者、そのどちらに入るか
悩み何処だよな」
「俺は最初からFのパイロットだ、あの
駆逐艦は響さんには悪いけどもう俺のもんだ」
「其れを言うなら駆逐艦の戦闘班隊長の座も
魅力的だぜ、大城総隊長はアトランテスノヴァの
キャプテンになるしFの方は俺が面倒みなきゃ」
この二人はどうやらFの方を選ぶ流れだ
「でもさ鋼ちゃんはどっちを選ぶのかな?」
「そんなの決まってるだろ俺の乗るFだよ」
小原の戯れ言に岩川は一歩も引かず
「{俺の}の聞き違いだよな?」と言うと
「あんだと?」「何だよ?」
二人の睨み合いは暫く続いた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
宇宙巡洋艦雷光の陣代艦長は
鋼欄にとって親代わりであり
勝艦長の要請でハヤテに送り出した
張本人でもある
※欄の両親はガルスグレーサーとの戦争で
彼女の幼少期に死亡している
その彼に鋼欄は一つの決意を伝えに
雷電へ輸送機で訪れ
「そうか・・ハヤテに残る事を選ぶか」
少し寂しそうではあるが有る程度
予想していた事に陣代艦長は
娘のような欄を花嫁として
送り出すような妙な寂しさに襲われていた
「済みません艦長、此から先ハヤテには
この私が必要だと解ってしまったものですから」
昔から何故かそう言うことは勘の良い娘だった
欄がそう言うのなら間違いないのだろう
だが寂しい彼は嫁に行く娘に掛ける父と同じ
台詞が口をついて出てしまう
「頑張れよ欄・・・だが模しも辛くなったら
何時でも雷光に帰ってこい」
「・・はいお父さん」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ジョン・スミスは悩んでいた
スミス財閥の御曹司の立場を捨て
アトランテスノヴァに乗り続けたいのは
山々だが、問題は山積である
妹のイザベルもアトランテスノヴァに
残ると言うのに自分は火星に居る
アリーヌ・ロイ・シュライザ王女との
ロマンスも諦めきれずにいる
彼女は恐らく火星に置ける第一代目の
女性大統領になるだろう
自分としてはそんな彼女を財政面と経済面の
両方で支える仕事に就きたいと考えている
つまり火星の財務大臣という地位を目指す
其れには地球から火星在住の大使館勤務に
就くのが何よりの早道となる
大学院卒業まで
(イギリス名門のスタンフォード大学)
後3年の猶予期間がある・・・
ギリギリまで誠矢を助ける為に
アトランテスノヴァに乗り続けながら
受験の準備を続け3年後に
国家試験を受けるのが最も理想的な形だ
火星にはガルスグレーサーの難民100万人と
3将軍、そしてアリーヌが居る
遠からず地球は火星の自治権を認め
火星も又銀河の盾の一員となるに違いない
そうなったら自分がアトランテスノヴァを
財政の面で支える柱になる名目で将来的に
{ノヴァ財団}を立ち上げ
2000年位は誠矢達が活動費で困らないように
支援出来る組織を用意したい
「慈善活動をするにも先立つもの
と言うか・・巨額の資金が必要だ
特定の国から融資を受け入られない以上
アトランテスノヴァ専用の財団でも
創設するしかないだろうなぁ」
宇宙戦艦1隻があらゆる柵から逃れ自由に
活動するには其れだけの努力と尽力が
必要なのだとジョン・スミスは熱弁を振るうが
此を誠矢に伝えたら誠矢は
「それは本当に助かる
感謝するぞジョン・スミス」
そして改めて訪ねる
「それでどうやって肝心の資金を集めるんだ?」
誠矢の質問にジョンは虚空をみつめ
「エ~まずは募金を募るのと同時に
アトランテスノヴァのファンクラブを
立ち上げるだろ・・其れから」
此を側で聞いていたイザベルは
兄の構想の行き当たりばったりさに呆れた
「仕方ないわね、私が兄さんを
サポートしてあげる」
そう・・ジョンの無茶な計画を実現するには
天才である彼女の存在が欠かせないのだ
やる気だけではどうしても乗り越えられない
限界という壁がある、其れを突破するのが
優秀なブレインの存在だ。
こうしてジョンとイザベルも{3年後}には
アトランテスノヴァを降りる事が決定的となった
━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
去る者が有れば来る者も居る
クリスタルアーマーステーションに
一機の戦闘機が接近した
その機体には白い虎が乗っている
アキレス・F・ハルトマン
ドイツの白虎(ホワイト・タイガー)
戦闘機の操縦技術が神業で
彼に言わせると戦闘空域内にいる
敵味方が一瞬止まって見えるらしい
動体視力がどうかしている怪物。
地球で唯一、坂巻進吾に匹敵する腕を持つ
超天才パイロットである
基地滑走路に着くと彼は足早に
クリスタルアーマーステーションに居る
大城誠矢の元に向かう
誠矢は正式に神風型宇宙駆逐艦ハヤテの
艦長代行となったのだ
※(当然アトランテスノヴァでは艦長である)
クリスタルアーマーステーション内部にある
専用の作戦室でハルトマンを迎えると
「この俺をドイツから引き抜き
アトランテスノヴァにスカウト
するとはお前も偉くなったもんだな」
誠矢はハルトマンに席を勧め飲み物を渡す
「ドイツ防衛空軍には悪いが・・
ノヴァには坂巻に代わる魔導戦闘機隊の
総隊長が必要だからな」
誠矢は鋭い目でハルトマンを見た
「其れを任せられるのはお前だけだ
アキレスFハルトマン戦闘機隊・総隊長」
恐らくと言う予感はしていた坂巻亡き今、
怪物だらけの戦闘機部隊を纏めるには
それに匹敵する怪物が必要だろうと
「だが俺は魔導戦闘機とか言う化け物を
扱った事がないぞ」
カラメティドラゴンの噂は聞いている
凡そ人知を超えた性能らしいが
「心配ない・・坂巻以外まだ誰も
乗ったことのない未知の機体だ」
「心配ないか・・・どの口が言ってる?」
怒った訳ではない、誠矢が自分に
多大に期待している事は解る
「魔導戦闘機計画はアトランテスノヴァの肝だ
必ず必要になる戦力だと言い切れる」
「解ったよ任せてくれ」
人機一体の戦闘機の魔導エンジンは
コアの魔導石が燃え尽きるまで飛び続ける
オマケに光線魔導武器に転用し
槍や刀、果ては戦闘機の防御にも使える
何とも恐るべき性能だが
「それで悪いんだが魔導力を扱うのに
坂巻流真魔導拳を学ぶ必要があるんだ」
ハルトマンが目を剥いた
「お前・・計ったな誠矢!」
後出しにも程がある、この歳から
まさか日本武道を学ぶ羽目に成るとは
「実はアトランテスノヴァは魔導戦艦なんで
乗組員は例外なく坂巻流の門下に入る
決まりになったんだ」
つまり坂巻流は門下生の数を
一気に1540人に増やした事になる
アキレスfハルトマンは余りの事に
開いた口が塞がらなかった。
『まあ併し・・誠矢が坂巻にしてやれることを
少しでも見つけられたなら良しとするか・・』
アキレスは坂巻に代わり
戦闘機隊の総隊長に成る事で
そして誠矢は師範として坂巻流の普及に貢献する
その程度の事しか親友にしてやれることは
最早ないのだ
「俺達達の前から奴が居なくなるなんて
考えた事もなかった魂だけでも良いから
帰ってこい・・進吾」アキレスは心の底から
そう願わずにいられなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
北本太郎は地球の医師として医学界に
革命をもたらした偉大なる人物である
ほぼ治療不可能と診断された患者
特にガルスグレーサー戦役で負傷した
多くの兵士達を人知を超えた再生医学で
社会復帰させた事に関しては
ノーベル平和賞を受賞するほどの功績を
称えられている
何れは医学会の頂点に立ち医療関係者全てを
導いていく事を期待されていた
だがそんな彼が今一番気がかりなのは
アトランテスノヴァに乗る若者達の
健康面についてである
全銀河の平和を守る仕事は過酷で
どんなに戦いが強くても自分達の健康を
守るの事は難しい
特に大城真耶の健康状態は
片時も目が離せない状態が続いた、彼女を
2000年も戦わせるなど一人の医者として
絶対に看過出来ない
「アトランテスノヴァに医者が必要なら
私が手を貸そう」
北本医師がそう言い出したとき
医学界が騒然となる事は承知の上で
彼の覚悟を大城誠矢は心の底から感謝した
「先生、有り難う御座います
この御恩は一生忘れません」
「医者として当然の義務だ・・
只し私がアトランテスノヴァの専属医として
乗るからには、君達の健康を徹底管理するから
覚悟したまえ」
そう言って笑う北本医師の笑顔が誠矢には
鬼に見えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
大城真耶が巨人族の先祖帰りのせいで
破壊型超能力に目覚めた事実を知ったのは
かえって良かった、悪魔に
{呪われ}ている訳でなく科学的に
説明の付く原因だと解ったのだから
『私の中に{悪魔}が居て冥王星の時みたいに
自分じゃない何かになる心配はもう無いんだ』
「巨人の力を制御出来ずに苦し紛れに
暴発したのなら・・アトランテスノヴァで
全てが解決した今なら私が竜一さんと
結ばれる未来があっても彼が不幸に成る心配はない」
そう考えるだけで真耶の気持ちは明るくなる
「ただ・・破壊型超能力者は等しく
短命らしく私もその例に漏れないと
誠矢兄さんに言われた」
「アトランテスノヴァに乗り続ければ
寿命だけは延ばせるそうだけど・・』
だが何よりも響竜一はアトランテスノヴァに
{操縦士としての使命感}で残ると決めたと聞き
真耶は自分だけが理由でないと知って安堵した
自分の為じゃなくても良い・・只一緒に
響と居られるだけで真耶は幸せなのである。
※(此処の所、響も誠矢からU星人製の
サイコウオールを借りてテレパシーを
遮断できる様になった) 従って
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大城誠矢と話した事を響竜一は真耶に
秘密にする事にした
「真耶には内緒だが、実は
ギルザート18世の例の真相は皆に話さないで
このままにしておこうかと思うんだ」
響は歴史を作るのは勝者の特権と誠矢に言われ
その不誠実な態度は誠矢らしくないと責めたが
更に天体級大円盤で起きた巨人狂戦士化の
真相まで聞いて、最早沈黙せざるを得なくなる
「驚いたな・・まさか・・あの国で
そんな事が起こっていたなんて」
「此の事実を真耶が知れば
俺を止められなかった事を
彼奴は一生後悔するだろう」
まさか真耶の為に口を閉ざせと迄
誠矢が言い出すとは流石に思わなかった響は
「解った此の事実は墓場まで持って行く」
と言うしかなかったのである
「誠矢・・併しお前、変わったよな」
「結局ギルザート18世は俺達の間では
坂巻を卑怯な手段で殺した外道だし、
リンクスに至っては最後まで虚栄心を張り通し
部下を巻き添えに死んだ無能な指導者って事になる」
「酷い話だな」響にそう言われ、誠矢は寂しげに
遠くの空を眺めるしか出来なかった
「俺だって悪いとは思っているんだ」
誠矢は真耶を理由に真実を隠す
こうして真相は永遠に藪の中と成る
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━━★付箋文★
ジャック・ゴルドーと下田明が
戦車ハンガーで話し合っている・・
「俺は坂巻の分まで最期までキャプテンを
守る為にアトランテスノヴァに残る事にした」
ジャックゴルドーは噛む様に笑い
「キャプテンのタメ残ル気持チハ同ジダ
防衛軍ヲ引退シタラ、テキサスに農場ヲ買イ
牧場ヲ経営スル予定ダッタガ、ソレハ
2000年後ニ実現サセル」
「2000年後か・・気の長い話だ」
下田は自分より背の高い相手との会話は滅多になく
頭を上に向けて話す事態が珍しい
「でも俺と違いアンタにはファミリーが
アメリカに居るが、ソッチはどうするんだ?」
「ワイフハ子供達ト一緒ニ火星ニ入植スル
ミーハ地球ニ残ルカラ別居スルガ
離婚スル訳ジャナイ、家族ソレゾレガ
自分ノ望ム、ロードを歩むノダ」
「ジャックらしいと言えばジャックらしいな」
戦車隊の独身の殆どはジャックと同じく
{銀河英雄}の人生を歩む道を目指す
幸いというか不運と言うか・・
妻帯者が少ない事が原因でほぼ全ての戦車乗りは
アトランテスノヴァに残る運びとなった
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━━━━★付箋文★
ハヤテ副艦長室にて
滝川鏡子はサイバドック隊の為に残ると
キャプテンアストラ(誠矢)に告げた
「別にキャプテンの為に残るんじゃ
無いんですから気にしないで下さい」
とか苦しい言い訳をして出て行く
7号は鏡子が退出した後、扉の影からスッと
姿を現し『流石忍犬』と大城誠矢を驚かせる
「個人的にチーフがキャプテンを好きで
アトランテスノヴァに残ると言い出したとは~
口が裂けても告げ口はしませんけど・・」
誠矢はキャプテンアストラとして
冷静に返事を返す「何が言いたい」
だが心中は穏やかではなかった
『やはりそうなのか?鏡子は俺の為に』
「別に責任何がしとは言いたくありませんが
キャプテンもそろそろ年貢の納め時が来たかと・・」
「果実は一番美味しい時に食べるのが
礼儀なんです芳醇な果汁を存分に味わって
良く咀嚼してからお召し上がり下さい」
何というか・・言い方が叡智で
思わず生唾が出てくる誠矢だったが
その時ドドドドと大きな足音が聞こえてきて
突然艦長代行室のドアが開き
鬼の形相の鏡子が入ってきて7号の
頭を拳骨でシバくとそのまま尻尾を掴み
「失礼しました!」とだけ言い残し、
足早にドアから出て行ってしまった
ソレハ電光石火の早業で誠矢でさえも
「ああ・・」としか返事が返せなかった程だ
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━━━━━━★付箋文★
大城誠矢の女問題と言えばもう一人
どうしても忘れて成らないのが
小田総司令の一人娘、小田令子嬢である
当初は亡き兄への想いと誠矢を重ね
恋心を抱いていたに過ぎなかった彼女が
時を経て次第にその恋心が本物の愛情に
変わり、次第に二人の関係は
友人以上恋人未満と言う形に育っていた
小田令子は果たして自分に大城誠矢への
愛を貫き通し成就できるのか
その覚悟を自問自答していた
『彼に着いていくのなら全てを捨てる覚悟と
共に戦う二つの覚悟がいる、果たして私に其れが
出来るの?』
戦うなら戦闘訓練も必要だし
彼の足手まといにだけは成りたくない
せめて側にいて健康面だけでも支えられたら
彼女の大学での専攻は法学部だが
もう一つ目指してみたいと想いながらも
政治家の娘として諦めた道がある
此が神の啓示というものか
『お父様に・・直談判しよう』
信じられない事に誠矢の為だと思うと
その勇気が溢れ出てきた
小田吉宗は愛娘が家の事寄りも
自分の愛を優先し全てを掛ける
決意に驚きが隠せない
「法学部ではなく医学部を目指すだと・・」
決意の満ちた顔、『令子は本気だ』
小田総司令は腕組みをし天井を見上げると
目線を愛娘に戻す
「令子が決めた事ならそうしたらいい
お前の人生だ、但し後悔しない様に
全力を尽くすんだよ」
「其れで出来れば彼に似た孫の顔を
見せてくれれば申し分なしだ」
令子は此以上ないくらい満面の笑みで
「はいお父様お約束致します」と
満面の笑みで答えた後
「それで・・実はお父様に折り入って
紹介して頂きたい人物がハヤテに
乗っておいでなんです」
小田司令は話の流れでその人物の顔が浮かんだ
「それは北本先生の事だね」
どうやら令子は北本医師に師事を受けるため
ハヤテに常駐しながら医療を現場で学ぶ気らしい
『随分思い切った事を考えたものだ・・』
小田司令はこの事を北村医師に伝えると
アトランテスノヴァについての説明を
同時に令子に伝えた
「そうだったんですか・・でも私の気持ちは
変わりません、必ず誠矢さんの心を掴み
アトランテスノヴァのお医者様に成って見せます」
「我が娘ながら、欲張りな奴だな」
「申し訳有りません、でも令子は
必ず夢を叶えて見せます」
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★付箋文★
其れからの日程は多忙だった
だがやっと、終戦記念式典と
坂巻進吾の{国葬}が終了し
大城誠矢達に日常が戻ってきた
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クリスタルアーマーステーション
次の週明けに誠矢が真耶と二人で
北本医師の所に身体検査を受けに
医療ブロックに来ると
多くの隊員達が順番に並んでいた
「身体検査だなんて学生じゃ有るまいし
木っ端恥ずかしいよな」
隣の今里隊員にそうチャラける清水隊員が
「はい次の方どうぞ」
若い女性の声で呼ばれ中に入っていった
そして再び出てきた時彼の顔は
幸せそうな笑顔に満ちていた
「おい今度医療班に入った娘がさ
物凄い美人さんだぞ」
「此なら毎日通いたくなるぜ」
そんな評判が耳に入り誠矢が気にしているのを
見た真耶は兄の脇を肘でコンとつつく
「何気にしてるの誠矢兄さん?ヤラシい」
誠矢はタジタジしながら
「いや新しい仲間が増えたと言うなら
気になるだろ?」
「それだけ~」 「そりゃそうだよ」
「本当に~?」
「次の順番の方どうぞ」
その呼び声に誠矢は真耶の目を気にしながらも
身なりを整えそそくさと
診察室に『何だか聞き覚えのある声だな』と
思いながら入っていく
すると其処にいたのは
白衣を着た小田令子だったのだ
「令子さん?」誠矢は思わず
素っ頓狂な声を上げる
「お早う御座います大城誠矢さん
診察を始めますので上着を脱いで下さい」
戸惑いながら指示に従う誠矢
令子は誠矢の眩しい裸体を目を細め見つめて
頬を桃色に染めながら聴診器を胸に当てる
胸に大きな十文字の傷があるのが何とも
勇ましく艶めいて叡智な感じだ
惚れた男の裸に遠慮なしに触れ
『何だか役得ね』
そんな事を思いながら令子は
高ぶる気持ちを抑え黙々と検査を進めた
『綺麗な乳首ね・・消毒っだって言って
舐めたらどうなるかしら』ドキドキ
「貴女が此処にいる事を全く知らなかった
どうしたんです令子さん」
誠矢の戸惑う声が
令子には少し小気味よく感じる
初めて{驚かされるだけでなくやり返せた}
そう思えて何だか照れながらも
「知りませんでしたか私って思った事を
後先考えず取り敢えずやってみてから後悔する
タイプなんですよ」
「そんな思いつきで人生が掛かった大事な事を
決めてしまうなんて貴女らしくもない・・・」
誠矢がそう言うと令子は
「背中を向けて下さい肺の音を聴診します」
と言いながら有無を言わせず
誠矢に背中を向けさせる
「令子さん!」
背中に冷たい聴診器をあてながら
令子は頬を誠矢の背中にあて
「私の何を知ってるんですか?」
頬をピンクに染めながら少し拗ねたように囁いた
「いや・・俺は君が大人しいお嬢様だとしか」
「其れは・・表面上だけの私で本当は
もっと冒険好きのお転婆だったんです
こんな私じゃ嫌ですか?」と拗ねる様に
囁きかける
誠矢は慌てて「い・・嫌所かタイプだけど」
其れを聞いた令子は満足げな笑みを浮かべ
誠矢の背中から離れると、背中をペチリと
一つ叩き 「はい!お疲れさまです」
恥ずかしそうに
そそくさと服を着る誠矢に
「今日は此くらいで解放して上げます、
でも貴方は定期的に検診を受けて下さい
この船のキャプテンなんですから
人一倍健康には気を配る義務があります
宜しいですわね?」と強い口調で言われた
誠矢はハイと返事だけ返して次の隊員に
順番を代わる、そして「北本先生ーっ」と
小走りでその名を呼びながら、その所在を
コンピューターに訪ねた
<ドクター北本の所には
キャプテンアストラの現在位置から
直行で行けます>
「何っ!」
其れを聞いた誠矢はその場に立ち止まり
辺りを見回した
すると足元に丸い円光が現れ
その上に乗るようにナビから指示が出る
<サークル内に乗って下さい
緊急搬送室に御案内いたします>
「ああ緊急搬送システムが完成したのか」
アトランテスノヴァでは怪我をした
隊員を転移ゲートを使わず運ぶ手段として
重力カタパルト方式の物資輸送装置を改造する
計画が春吉率いる技術班が密かに遂行していた
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「敵が{転移阻害}をしてきた時の予防策が
必要だと感じて用意したんだよ」
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「とか春好さん言ってたよな」
コンピューターの指示に従いサークルに
足を乗せると、誠矢は一気に床に吸い込まれた
「うわぁ!」
そして意外なほど快適な重力カタパルト移動で
ドクター北本のいる緊急搬送室に到着した
「どうだった重力カタパルトの使い心地は
中々快適だっただろ?」
誠矢は自分の体を触りながら
異常がないのを確認し終えると
「確かに使えますねコレは、白兵戦に成ったとき
効力を発揮しそうです」
その感想にドクター北本は溜息をつき
「君って奴は~本当に根っから交戦的なんだね
もう少し平和な発想は浮かばんのか?」
重力カタパルトが元の場所に戻るのを眺め
「こいつは患者の搬送に便利とかね」
そんな事を言われても今日はそんな話を
する目的で北本先生に会いに来た訳じゃ・・と
思っていたら令子の件を思い出した
「そうだ・・令子さんですよ、
彼女どうしてハヤテに乗ってんですか?」
ドクター北本はニヤリと笑うと
「其れは彼女がこの私の後継者に成る為に
助手として弟子入りしたからだよ
まあ彼女の才能なら私に匹敵する医者に
必ずなれるだろう」
誠矢は驚いた
「え?令子さんは俺のために
来たんじゃないんですか?」
其れを聞いた北本先生はムスっとした表情で
「自惚れるんじゃないよ誠矢君・・
令子君は大変な才女でね医学界は実に
素晴らしい{至宝}を手に入れたのだよ」
「ハア・・」誠矢は見るからに残念そうである
「彼女の家が有名な政治一家であるため
一時は医者になる事を諦めたそうだが
アトランテスノヴァで医療に貢献できるならと
思い切って一歩を踏み出してくれたんだ」
「アトランテスノヴァの事も承知で・・
それじゃあ2000年問題も」
ドクター北本は度や顔で
「君と違い人の命を2000年も
{救い続けられる}事に喜び勇んで
参加するそうだ」
誠矢も頷きながら
「成る程、確かに理由が其れなら・・・」
誠矢は同じ戦いでも人の命を救う戦いが出来る
令子に羨ましさを感じた、
だがドクター北本はもっと別の方面で
将来のドクター令子に期待を寄せている
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━━━━
「先生の再生医療の先に
ベルテリオンによる肉体再生と
病気根絶の可能性があるのでは
ないかと思いこの論文を書きました」
彼女の論文を読みながら思わず彼は唸った
ドクター北本の医学常識からしてみれば
そんな非常識な発想がまず浮かばない
『万能粒子で肉体再生を具体的に
示唆しているし・・可能性は
無いとは言えないが此は私には
無理な研究テーマだ』
それが令子君に
アトランテスノヴァに乗船し私の
弟子に成る事を許諾した主な動機だ
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━━
ドクター北本が誠矢に直に伝えたのは
令子の動機だった
「アトランテスノヴァに乗れば確かに
肉体年齢を極端に抑えられるだろうが・・
其れでも別に不老不死になる訳ではない」
「怪我もすれば病気もする・・
君達のように無茶な戦いばかりしていれば
肉体と精神に多大な負担が掛かるのは
戦士として避けようのないリスクだ」
返す言葉もない、其れを2千年も続けよう
と言うのは元々正気の沙汰じゃない事は
十分承知しているつもりだ
だがドクター北本は「だからこそ
ドクターという存在は必要不可欠なのだ」と言う
何故なら同じ2千年の過ごし方でも、
人を救う仕事を生業とする医者は
常に精神的に安定し均衡を保てるのだ、
誠矢達の様な戦闘職の人間を補佐する
役職としては最適なのだ、其れは確かに
実に的を得た意見だった。
「解ったら早い内に令子君に
感謝を伝えた方が良いぞ、彼女が一番支えたい
想い人が、そもそも彼女が女医を目指す
切っ掛けだったらしいからな」
其れを聞いた誠矢は令子に時間が出来たら
一度食事に誘う決意をした
その時に感謝の言葉と共に此から先の二人の
関係について真剣に語り合う必要性を感じたから。
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ハヤテのエンジン中枢部には
魔導コアと呼ばれるアトランテス文字の
書かれたモノリスが存在する
此が時折ハヤテに摩訶不思議な力を与える
原動力だった。
「元は普通の熱核反応エンジンを
反物質エンジンに魔改造した上に
魔導力で瞬間的に爆発的なパワーを
発揮何ぞさせるからこいつの
耐久力の維持をするのも大変だよ」
そう愚痴をコボしつつハヤテのエンジンを
大切そうに撫でるのはハヤテ総機関班長の岩表久だ
「戦闘艦の機械寿命は決して長くはない
頻繁にメンテナンスしなければ成らないし
凄く手が掛かるんだ、まあ世話を焼いていれば
可愛くも成ってくるもんだが」
岩表機関班長の言葉を聞きながら春吉は
「今やこのハヤテのエンジンは銀河随一の
超高性能動力となったからね
ベルテリオンエンジンなんて前人未踏の
代物を任せられるのは君ぐらいのモンさ」
岩表は自分の手で最後までこの怪物の世話を
焼き続ける決意を固めていた
「こいつの世話を他の奴に押し付けるなんて
とても出来ないさ・・最後まで面倒を見るのが
俺の責任だよ」
後期スペック
機関グランディディエライト号艦本式缶4基(改)
艦本式グランディディエライト2基2軸(改)
(第1世代型・反物質プラズマスパークエンジン)
春吉進一郎はこの解析不能のシステムを
ハヤテの原動力として利用している。
{魔導に関しては人の根元たる力と碑文には有る}
速力 光速の50~80%
(リープ1~4ハイパーリープ5~10)
航続距離 ∞
燃料 水素:∞ (魔導力)
此がアトランテスノヴァにチェンジすると
エンジンの構成物質その物がオリハルコンへと
物質変化してベルテリオンを動力とする
{ベルテリオンエンジン}に変わる
「ベルテリオンって奴は・・
人の意志であらゆる事象に千変万化し
{全ての行程をいきなり飛び越えて}
推進力が生まれるんだぞ!!アリャ
まともに考えたら頭が可笑しくなる」
岩表・機関班長の言うとおり此のシステムは
科学的に絶対あり得ない仕組みだ
「端から物体を10分の1に小さくする石碑を
核に使う時点で人知が及ばない世界だ」
だが行程が解らなくても其れを利用するだけで
アトランテスノヴァは常識の枠を飛び越え
その推進力は最大8億トン以上にもなるのだ。
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━━━━━━━★付箋文★
クリスタルアーマーステーション
ーハヤテ作戦会議室ー
其処に主だった隊長クラスの面々や
岩表・機関班長と春吉・科学班長
ドクター北本とインターンの小田令子
そしてキャプテンアストラ
{大城誠矢}率いるブリッジ
主要メンバーが結集した。
「今日は此からアトランテスノヴァとして
長期任務に就く前に説明がある」
多くの隊員の目が一人の青年に注がれる
其れはマイクを握る大城誠矢だ
<まず通常の任務は地球防衛軍所属の
駆逐艦ハヤテとして太陽系防衛を遂行する、
だが銀河系内で大きなトラブルが発生した場合>
<ハヤテの正体を隠しアトランテスノヴァ
として現場に駆けつけるのが特別任務となる>
今里が挙手をし質問する
「正体を隠すとは
銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ
として活動するからでしょうか?」
マイクで誠矢が明確に答える
<そうだ、俺達は地球とは関係なく
あらゆる利害関係を超越した存在として
銀河に起きる諸問題を解決するんだ!>
「それは独立愚連隊ではないんですか?」
今里の返しに何人かは賛同した
だが大城誠矢の答えは違う
<銀河の盾の目的は銀河系の平和維持活動が
基本で真の活動目的は星雲時計の管理にある>
今里がもう一度挙手し
「星雲時計って・・何故アトランテスノヴァが
アレを管理するんですか?」
誠矢が回答する
<確かにアレはガルスグレーサーが
造った物だが、(神の秒針)を
アトランテスノヴァが所持する限り
他の如何なる組織も関与出来ないからだ>
「そりゃアトランテスノヴァを敵に回したら
最悪だからですか?」
今里も自分達が銀河連邦にとって
脅威だとは自覚している
其処で清水が「イヤ怖いのは神の秒針だろ?」
誠矢が説明を始める
<見てくれ艦内では実感が無いだろうが
全長5光年という途轍もない
大きさの時計の針を想像して見て欲しい>
作戦室の巨大モニターに銀河連邦から提供された
神の秒針のスチール写真が映し出される
近くにある恒星と比較して
初めて其れを目にした者は、その有り得ない
巨大さに驚嘆の溜め息をついた
「信じられない、此をアトランテスノヴァが
武器として使ったのか?」
その場の全員が息を呑んだ
<見ての通りだ、神の秒針を持つ限り
アトランテスノヴァは無敵と言える>
<話の本筋は此処からだ>
誠矢は映像を星雲時計に戻し
<星雲時計を悪用しようと企んだり
何とか破壊しようと考えるバカもいる・・
星雲時計が力ずくで破壊されると
銀河そのものが崩壊するのにな>
<もし万が一にも破壊されたら
銀河文明の破滅にも繋がる>
「流石に規模が大き過ぎてそんな事が出来る
輩が現れるとは思えませんが、どうなんです
春吉{科学班長}」
西沢の質問に誠矢からマイクを受け取り
<名前を出されたので次は私が質問に答えよう>
そう言うと今度はパネルの写真が星雲時計となる
<正に惚れ惚れする程の光景だが・・
こんな星雲が目立たない訳が無く
{他の銀河}の注目を浴びるのは必死だ>
コンピューター・シュミレーションで
10億光年先からの観測でも
現在の天の川銀河は{時計}に見えた
<この時計を狙う外敵宇宙勢力が
銀河に襲来してもガルスグレーサー侵略戦争を
経験した我々にとって、さして驚きはないだろう>
「其れは・・」あり得ると言わずとも
西沢も此処は着席するしかない
<この時計の半減期が2000年だと仮に
推定するとする、その根拠が
ガルスグレーサー星帝の言葉だけで
正直心許ないが・・U星人に寄れば虚偽では
ないと言うので信じる他はない>
そして春吉はマイクを再び隣の誠矢に戻し
マイクを受け取った誠矢が更に発言を進める
<銀河の盾が必要な理由はまだまだある
ガルスグレーサー人が銀河系全体に大量に
入植した今・・銀河が激動の時代に
突入するのは、まず間違いないからだ>
其れはそうだろう、銀河系が如何に
広大なスペースがあるとは言え
いきなりガルスグレーサー人口
1300億人以上の人口増加は
それだけで十分な火種になる
<紛争の火種を消すのも勿論だが
国家間の争いを調停する必要まである
銀河の盾の仕事は多岐に渡るだろう>
<いよいよとなった時、最後の切り札として
絶大な威力を発揮するのがアトランテスノヴァ
と言う存在だ>
<正体不明の正義の無敵戦艦が何処からともなく
突然現れ問答妙で悪事を未然に潰す>
<そりゃ無用な争いを起こそうとする輩にとって
此以上ない抑止力となるのは間違いないな>
「悪事をする奴等の恨みや憎しみは全て
正体不明のアトランテスノヴァが
全て引き受けると言った寸法{作戦}か」
西沢の横で下田が筋肉隆々の二の腕を見せつけ
「確かに其れは・・神出鬼没で何処からとも無く
現れる方が悪党共にもより一層の恐怖を
与えられるって訳だ、思ったより断然面白い
任務じゃないか」
「まさしく俺達向きの仕事{英雄}だな・・」
長崎がそう言うと血気盛んな戦車隊の男達は
其れこそ全員乗り気で、其処に口を出したのが
「そうなると何処にも援軍を頼めないけど
同時に何カ所も問題が起きたらどうする気です?」
そう指摘したのは紅一点の鋼欄だった
「誰だアレ?」「凄い迫力だな」「滅茶美人だぞ」
「あれが今噂の坂巻景子隊員の後継だ」
鋼欄隊員の質問に大城副艦長は
<鋼隊員の言うとおりだ、残念ながら
アトランテスノヴァは1隻だけだ、だがな
銀河の盾の加盟国が協力してくれるし
有り難い事にあの3将軍まで動いてくれる>
其れは本当に嬉しい朗報だった
ハヤテと互角以上に戦えた3将軍なら
必ず大きな力になってくれる
「確かに銀河の盾の所有する宇宙戦艦は
このアトランテスノヴァだけだが・・
決して孤独ではない、多くの戦友が力を
貸してくれるからだ」
誠矢のその言葉は隊員達に勇気と希望を与えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
<此処で医療班から話があるそうだ>
ドクター北本がマイクを手に取ると
会場がざわつく
<静粛に>
<今から話すのは
君達の2000年健康問題に付いてだ>
「俺達の身体の事か」 「2000歳って」
「人はそんなに生きられるのか?」
<アトランテスノヴァでは
10万分の1しか年を取らないらしいが・・>
北本は白いボードに時間表と
健康的な生活の理想グラフを見せた
<防衛軍任務中のハヤテでは年を普通に取るし
船のメンテや特殊任務など諸々を考えると>
「おい、あのグラフ」「夜9時消灯って」「起床が」
「6時で、朝のラジオ体操」「勘弁してくれよ」
<計算では100年に1年のペースで
年齢を重ねる計算となる>
「100年に一歳って・・」
「それじゃ、任務が終わる2000年頃には
俺達20歳も歳食ってんのか?」
「いや2千年経ってて見た目が38歳って
任務が終わった後の俺の人生長すぎるぜ」
「太く短くの人生とは真逆だな」
<この前検査した君達の審査結果が
そうした事も考慮して今現在の
ベストコンディションだ>
<君達には、今の健康状態を2000年間
出来るだけ維持する方向で我々医療班も
{全力を尽くす}から安心してくれたまえ>
その言葉は戦士達の胸に深く響いた
「俺達の仕事は身体が資本だから」
「北本先生お世話になります」
素直に有り難がる健康優良児はさておき
心で感謝しながらも普段から不摂生している
隊員達は複雑そうな面持ちをしていた
『禁酒か?禁酒なんか?』
『禁煙か?禁煙なんか?』
『此から甘いものを控えろと?』
『急いで嗜好品を隠さねば』
<さて此処で諸君等の生活習慣を取り締まる
医療班特別隠密捜査部隊長を紹介する>
「ゲエッ!彼奴は!!」
「そんな嘘だろ!!」
見間違えようのない尻尾の生えたシルエット
二足歩行で立ち上がり、厳つい黒のサングラスと
肩にトゲの付いた世紀末な黒の警察官衣装に
身を包んだ取り締まり犬、サイバドック7号だ
その後方にコンガラクがいて照明で
華麗なる登場シーンを演出している
真耶がコンガラクを見て{心の中}で
『家の子に何やらせてるのよ!』と
プンプンお怒りの様子だ
最悪の取り締まり官の登場に
絶望の悲鳴が一部の隊員から漏れ出した
<只今ドクター北本に紹介されたボクが
皆さんの健康をお助けする
健康管理犬7号であります、どうぞ宜しく!>
そう言って敬礼をし犬歯をキラリと光らせる
<ドクターの言いつけを守らない悪い子には
此からビシビシ取り締まるから覚悟しといてよね>
「フザケるなーっ!」とか「酒かえせーっ!」
とか「泥棒に警官やらせるなんて非常識だー」
等の罵声雑言が聞こえるが7号は一切気にせず
何処吹く風と、その場からドロンと消えた
毒を盛って毒を制す
7号の存在は医者の言うことを
聞かない者達には大変な脅威である。
誠矢が心配そうに
「北本先生アイツに任せて良かったんですか
今からでも考え直した方が・・」と言うと
「まあアイツも言うなれば抑止力じゃよ
神出鬼没で問答無用な所がな」
『あ・・アレとアトランテスノヴァを
同一視されちゃ適わないな~』
戦々恐々とする作戦会議場
<以上で緊急会議を終了する
皆ご苦労だった任務に戻ってくれ>
そう言って大城誠矢が会議室を出ると
以前から7号に酒類を盗み飲みされてた
連中が一斉に文句を言ってきた
「いや7号の件を決めたのは北本先生なんだから
先生に文句を言えば良いじゃないか」
「先生には言いにくいんですよ」とか
「逆に叱られるのが落ちです」とか
「この前診断書で大目に見て貰ったから言い難い」
と泣き言を言われる始末
仕方なく誠矢は「7号の性格から考えて
暫くは先生の指示に従い取り締まるネタを
無くして」
「奴のやる気を削いでしまえば、
彼奴の事だからその内詰まらなくなって
取り締まり犬を自ら辞退する筈だから」と
助言した
「成る程流石はキャプテン」と納得する者
「我慢かー俺に出来るかな」と自信ない者
「最悪彼奴を酒で買収する事は・・
かえって図に乗るだろうなバカだし」
そんな反応が返ってきた
『仕方ないな・・暫く様子を見て
北本先生と話をしてみるか』
誠矢だってイキナリ生活の規律を
厳しくしたら逆効果だとは思っているのだ
「まあ先生にしてみれば
不摂生が原因で病気になれば
{任務の性質上}普通より
ズット長く病気に苦しむ事になる
俺達の事を思っての配慮だし}
「そもそも不老不死の不死身の戦士など
この世に存在しない訳で、只の長生きの病人には
成りたくあるまい」と言う事らしいのだ
(本当は、有り難い話だよな)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
こうして紆余曲折あり乍も何とか・・
アトランテスノヴァが活躍する準備は整った、
もう何時何時出動要請が来ても問題がない位には・・・
2998年12月24日 クリスマス早朝、
坂巻の武家屋敷にその日
大城誠矢が車に乗り一人で現れた
其れを迎えた坂巻景子は
誠矢が此から一人で親友坂巻の墓参りを
するので途中で寄ったのだと聞く
「あの人に戦争が終わった事を
報告に行くのですね?」
そう景子に言われ誠矢は
「景子さんはもう防衛軍から除隊し
一般人に成られたのだから
本来なら明かす訳にいかないんですが
実は・・お腹の子の将来にも関わる
大切な話があるんです」
「其れは・・・」
誠矢の緊張が伝わってくる
相当な話だろうと景子は息を呑んだ
「何処でお聞きすれば?」
「道場でお願いします」
「では夫の胴着をお貸しします」
坂巻家の道場は静寂に包まれていた
胴着に着替えた二人が対峙すると
景子がまず話しかけた
「そう言えば坂巻流の門下生が
一度に1500人以上に増やして下されたと
お義父様から御聞きしました」
「道場の者として坂巻流を盛り立てて頂き
大変感謝しております」
そう言い頭を下げる景子を制止して
誠矢はその理由を話し始める
まず坂巻進吾が星雲時計で
シン・ファノサイスの
時計との合体を身を挺し阻止したこと
その行動がなければ銀河が破滅した
事実を明かす
「本当なのですか・・そんな事は・・誰も」
景子は夫のした偉業の余りの大きさに
感動と誇らしさで身が震えた
「此を知るのはノヴァ・ブリッジの俺達と
Uゼロツーと言うU星人だけです」
「なぜ秘密に?」
景子の言葉に誠矢は当然の質問だと思う
「ガルスグレーサーが敗北したのは
坂巻進吾という一人の英雄の功績だと
公表すれば・・」
景子は其処で気が付いた
「確かに恐ろしい事になります」
ガルスグレーサーと巨人信仰を掲げる
ムーの末裔の憎しみと恨みの行き先が
坂巻の関係者に全て降りかかるだろう
「来週行われる終戦式典は
坂巻の国葬と同時に2日に渡り開催される」
「其の式典に辞退せず参列して欲しい・・
お腹の子の安全の為にも」
「其れはどうして・・」
「将来その子が{英雄}坂巻進吾の
子供として注目を浴びた時に
一人でも多くの有力な味方を得るために」
「何故そんな事を!?」
誠矢は其処で最高軍事機密級の情報を伝えた
「信じられないかも知れないが・・
神の秒針を俺以外で扱える可能性が今の時点で
一番あるのがその子なんだ・・」
「こ・・この子がどうして?」
其れが本当ならこの子の将来は大変な事になる
「俺の責任だと思う・・
神の秒針の所有者として選ばれた時、
其の子を第二の所有者に望んでしまった」
「進吾の顔がどうしても頭から離れず・・
神の秒針の奴が勝手に一番近い君達の子を
選んでしまったんだ」
「神の秒針に!」
「申し訳ない」
そう言って頭を下げる誠矢
「言い訳にも成らない話だが・・
生まれる前から呪われた運命を
この子に背負わせてしまった」
「本当に巻き込んですまない」
だが景子は微笑みながら
「いいえ良くぞこの子を選んでくれました
・・坂巻進吾の子供です・・並の人生など
端から有り得ないと解っていました」
「獅子の子は獅子なのですね・・」と
景子は小さく呟き
「解りました、この子を坂巻流の達人に育て上げ
アトランテスノヴァの新たな力にして見せましょう」
「景子さん・・」
坂巻屋敷を出て坂巻家所有の裏山に登り
坂巻家代々の御霊が眠る墓地に誠矢は向かう
其処に坂巻進吾の墓石がある、
大城誠矢の手には
一本のウイスキーが握られていた
誠矢は墓の前に座り
「俺は取り返しの付かないことを
景子さんに強いてしまった
だが・・どうしても
必要なんだ・・許してくれ坂巻」
そう言ってウイスキーの栓を抜き
「どうか一緒に呑んでくれ」
ウイスキーの中味を墓に掛けると
残りを誠矢はラッパ飲みしだした
「御前ももう一杯飲め」
そう言って酒を墓に掛ける誠矢はまるで
其処に坂巻が居るように酒を飲み交わしやがて
酔いが回ると・・
「此処だけの話だが・・実は恐ろしい
想像をしている」
その想像は怖ろし過ぎて誰にも話せない内容だ
「本当の戦いは今から始まる予感がするんだ」
喉を焼くウイスキーが誠矢の臓腑を暖める
「もしギルザート18世が・・星雲時計を
銀河に造ったのが旧支配者と言う奴等の策略で」
※「旧支配者」とは巨人族の創造主である
オールド・ルーラーと呼ばれる存在だ
ウイスキーが掛かった坂巻の墓に
空から降ってきた雪の結晶が降り積もる
「実は旧支配者の真の目的は星雲時計を使い
この銀河系に大きな災いを送り込む為の入り口
{ゲート}だとしたら・・何てさ」
「何の根拠もない只の妄想・・笑えない冗談
こんな戯言をまともに言えるのはお前だけだ」
此ばかりは誰にも相談できない最悪の推測だった。
「お前が生きててくれれば・・
こんなバカな妄想で苦しむ必要もない・・
・・解ってる・・俺は無意識に
・・・お前に縋っているんだ」
「その挙げ句・・お前の子供まで巻き込んで
こんな事態に・・最悪だな」
「俺みたいな奴は死んでも死にきれず
アトランテスノヴァに魂まで呑込まれ
未来永劫地獄の業火で焼かれたながら
戦い続けるんだろうな・・きっと」
そして雪の降る道を誠矢は静かに
足跡を残し乍、立ち去っていった。
時に2998年の12月24日の
午後3時、天候は雪、摂氏0°
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★付箋文★
エピローグ
地球の衛生軌道上に銀河連邦の
U星人専用の{万能}観測船が
飛来していた、遮蔽能力もさる事ながら
{雪雲}など物ともせず対象者を監視し
その精神を観察出来る
脳粒子波測定技術は驚愕の限りであり
旧支配者(神)レベルに達している
彼等{U星人}も又・・{旧支配者}
オールド・ルーラーの落とし子として
その力で銀河を統率しているのだ
<以上が現在{銀河の盾代表アストラ}
大城誠矢が抱える精神問題だ>
Uゼロツーの1万人の意志達は
それぞれ意見を出し合う
<余り良い状態とは言えないな>
<軽いパラノイヤを抱えているじゃないか
やはり拘束した方が安全ではないか?>
<確かに神の秒針の所有者としては
危険な感じだが・・>
<少し待ってくれ
此を只の妄想と切り捨てて良いかは話は別だぞ>
<我々の先史文明{解析の結果}でも
オールド・ルーラーの存在は明らかだし
星雲時計の目的も時間操作だけとは限らない>
<最悪の場合、大城誠矢の推測通り何らかの
ゲートだった場合は敵への対処が間に合わなくなる>
<確かに・・仮に星雲時計がゲートなら
1万光年もある広大な大穴から出てくる驚異を
問題なく阻止出来るのは神の秒針だけだ>
<其の{何か}が這い出て来たとしても
5000光年ある神の秒針が60秒で
一周すれば未曾有の脅威も殆ど問題なく
消し去ってくれるだろうしな>
<まあ・・大雑把に掃除をしても
規模が規模だけに・・どうしても
取りこぼしが出てしまうだろうが・・>
Uゼロツーには精神科医や信教に通じた
学者肌のメンバーが多い、その統合意志が
Uゼロツーの人格を形成していた
此を可能にするのも又、旧支配者の
未知なる科学力に他成らない
U星人も恐らくオールドルーラーの
落とし子と考えれば{辻褄}は合うのだ。
こうしてUゼロツーは大城誠矢には内緒で
秘密裏に行動していた
何か少しでも星雲時計に異常が有れば賺さず
アトランテスノヴァの出撃を要請する
その体制が時を経ず整ったのは
Uゼロツーも又、誠矢と同じく・・
嫌な予感が働いたせいでもあった
其れがなければ此処まで迅速に
話は進まなかっただろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付
箋文★
太陽系第4惑星、火星
地球政府はこの火星にある全コロニーに
ガルスグレーサー避難民の入植を認め
1000万人と言う植民を受け入れた
そしてこの政府決定を火星の元入植者達が
反発しない訳がなかった
案の定、火星の元入植者100万人が
抗議デモを起こしてマスコミの注目を集める
そしてこの抗議デモはやがて大きな
反ガルスグレーサー闘争に発展した
この騒動の裏には、{ムーの末裔}が暗躍し
反ガルスグレーサー団体に力を与える
100万の元火星入植者の支持を得て
{反ガル運動}は
全国で抗議活動のデモを活発化させ
地球政府に揺さぶりを加えるのだった
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━━━★付箋文★
クリスタルアーマーステーション
ハヤテ第一艦橋司令室
「ガルスグレーサー大戦が集結し
やっと平和になったと思ったら此だ」
そう言って愚痴をこぼすのは小原隊員だ
「火星で問題が起きたから出撃らしいけど
一体何が起こったんですかね?」
小原隊員の横に座る大城誠矢は
駆逐艦モードのハヤテでは今まで通り
総戦闘隊長の席に座っている
当然艦長席に座るのは勝艦長で
イザという時までこの配置が通常だ。
「火星に向かってデモ目的に向かった
{反ガル運動}の船団が問題を起こしたそうだ・・
それが地球に飛び火しかねないので
火星に援軍を出す要請が来たそうだぞ」
「其れで俺達にも白羽の矢が立った訳か・・
やれやれですね」
誠矢は小原ほど楽観視してない
「どうも嫌な予感がする・・
気を抜かない方が良いな」
「嫌だな~総隊長がそう言うと
大概当たるんだから」
地球から火星に派遣する艦隊編成は
本来の編成に戻し宇宙戦艦を旗艦とする
12隻で艦隊を組んだ
そして火星とアステロイドベルトの
中間地点に問題の反ガル運動船団が陣取っている
火星の軌道上では既に3将軍の艦隊が
其れを見張る形で陣を張っていた
「何だありゃ?どういう状況だ」
小原の言うことも尤もなのだが・・
此は直接当事者に事情を聞いた方が早いだろう
勝艦長は3将軍の一人である狼将軍
ウルフシューターの乗るスペースヴォルフに
通信を送るようジョン通信班長に命じた
<こちら地球防衛艦隊所属
宇宙駆逐艦ハヤテ
スペースヴァルフ2世返信願います>
ジョンの通信に答えスペースヴォルフ2世から
映像通信が届いた
<久しぶりです勝艦長、ウルフシューターです
此度はわざわざ御足労いただき申し訳ない>
将軍の丁寧な挨拶に勝艦長も礼を返し
取り敢えずの事情を聞いた
何でも反ガル運動の船団がいきなり
ガルスグレーサー臨時政府に
{火星からの立ち退き}を一方的に
要求したかと思えば、そのまま
アステロイドベルトに向かい
ああして籠城を始めたらしい
<そして何より問題なのが、あの船団が
実はムーの末裔の工作船であり
反ガル運動の(元)火星入植者達が
人質にされた状態で手出しが出来ない事だ>
此には勝艦長も苦虫を噛み潰した顔になる
<其れは厄介ですな・・・今地球では
火星入植者達に同情的だ・・彼等の身に
何か有れば反ガルスグレーサー運動が
活発化するのは間違いない>
ウルフシューター将軍は本当に参った様子で
<(元)火星の入植者達を一人も傷付けず
救出出来るとすれば、其れが可能なのは・・>
言うまでもない、転移ゲートで白兵戦を行える
ハヤテだけだろう・・・
<問題は人質の人数と囚われた場所だな>
見ただけでは
誰が人質でどの船に囚われているのか
見当も付かないのだ <私が透視する>
そう言いだしたのは大城真耶だ
春吉科学班長が
「彼女がハヤテの機械と同化し
センサーを目の代わりにすれば可能だろう」
誠矢の不安としては
「その場合、真耶の負担は?」
春吉は大丈夫だと太鼓判を押した
「真耶隊員の身体への負担は
機械が全て負ってくれる」
そしてウルフシューターが更に情報を付け足す
<動くなら急いで欲しい、奴等は
此方が手を出せないことを良い事に
アステロイドベルトに爆発物を仕掛け
火星を狙ってのメテオシュートを狙っている>
<何て奴等だ・・> 其れを聞いた勝は
その作戦の危険度がどれほどの物か察した
隕石群を大量に降らせば間違いなく
火星にいるガルスグレーサー移民
1000万人は壊滅的な被害を受けるだろう
隕石など少しの重力衝撃で軌道を変え
惑星に雨霰と降らせる事が出来る
此こそまさに安価で天然の天災を引き起こす
貧者の武器、隕石爆弾なのだ
『腐れ外道のムーの末裔共・・
一人も生かして帰さんぞ』
大城誠矢は本能的にガルスグレーサーまで
標的にし始めたムーの末裔が、より凶悪に
成ったと感じた・・
信奉する神を乗り換えたか・・
恐らく巨人よりももっと凶悪な神に。
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「やめてくれ!話が違うぞ只の脅しだから
心配ないと言ったのに、どうして火星に
隕石群をぶつけるんだ!?」
(元)火星入植者リーダーであるヨーゼフは
手に手錠を掛けられた状態で自分達の運動を
肯定し全面的に協力していたクラウド財団の
エージェントを名乗るその{支援者}に
涙ながらに訴えた
「何も間違ってはいない、君達の
火星を奪った寄生虫共を此で
一掃出来るのだからな」
「狂っている!こんな事・・・此では我等の
火星コロニーも丸ごと無くなってしまう」
「其れも又オールド・ルーラーの御意志
破壊から創世は始まるのです、全て無くなれば
又造れば良い其れだけです」
テロリストは目が完全に{イッ}ている
其れを見て彼は自分が狂信者に
騙された事に気づき、やっと後悔した
だが全てはもう手遅れなのだ
自分達が0から造り上げた大切なコロニーが
今テロリストに隕石で破壊されようとしている
その上に彼等はテロに手を貸した{戦犯}となるのだ
後悔と絶望感が苛み哀れな火星の(元)入植者を
情け容赦なく襲う
「止めてくれ・・頼むから・・壊さないでくれ」
テロリストは勝ち誇りながら
「もう止めることは不可能だ・・隕石に
仕掛けた重力爆弾は全て時限式・・
その数も1000を超えるのだから
解除など不可能だよ」
1000を超える隕石群を消滅させる事は
宇宙艦隊の火力では到底不可能だ
だが・・高笑いしていたテロリストの前に
空間から転移ゲートが現れ、その中から
巨大な戦士の拳が飛び出しそのテロリストの
頭蓋骨をグシャリト音をたて破裂させた事で
空気が一変した、転移ゲートの中から
姿を現したのはジャックゴルドーだった
彼はその場にいたテロリスト達が
反応するより遙かに早く動き
銃を構えようとしたテロリストを
前蹴りで太股からへし折りながら
もう一人のテロリストも顔面を掴み
船の床に叩きつけバウンドした
テロリストの眼球と脳髄が飛び散った
他に獲物はいないかと、ジャックは
周りを見回すがもう戦えるテロリストは
残っていない
此と同じ事が他の船団でも同時に起こり
人質は一人の犠牲者を出す事もなく
解放されたのだが・・
解放されたヨーゼフ氏が
「隕石に重力爆弾が!!」
そう叫びながらジャックゴルドーに
いきなり泣きついた
だが彼がそう叫んだ直後に
アステロイドベルトで眩しい閃光が
何カ所も光ながら次々に連鎖的に爆発していく
そして次々に隕石が軌道を外れ
猛スピードで火星軌道に乗り飛んで行った
「しまった此奴等やりやがった!!」
その壊滅的な光景を見ながら
狂った様に笑い声をあげる半死半生のテロリストは
さっき太股を粉砕骨折され足が変な方向に折れ曲がり
床に転がされ尚も悪態を付き醜悪さを披露する
「此で火星が一掃されれば
銀河とガルスグレーサーの同盟関係は
一瞬で崩壊し再び戦争が起こる
互いに殺し合いオールドルーラー神
{光臨招来}の贄と成るが良い!」
どうやらムーの末裔の新しい神の名は
オールドルーラーと言うらしい
奴等はその古い神をこの銀河に
{御招待}する目的でこんな馬鹿げた真似を
している事が解った
誠矢は転移ゲートで送り込んだ隊員達の
集音マイクで今の話を聞き
一番知りたかったムーの末裔教団の今の
信仰対象と目的を知ったのだ
その内容が自分が近頃悩まされていた
妄想と厭な感じで{重なる事}が気持ち悪い
人の口から改めて聞かされると
益々パラノイヤとしか思えなくなってきた
とは言え・・このバカな妄想を本気にして
テロを起こすのだからカルトは怖い
妄想盲信の結果、この大量虐殺
合計1000を超える隕石が
重力爆弾の影響により火星に向け飛翔していく
「まずいぞ此は、完全に
衝突コースを進んでいる!」
ウルフシューターがミサイル戦艦
スペースヴォルフの
対艦ミサイルを全弾発射するが
速度が乗り大質量を持つ巨大隕石は
ミサイルの威力で砕けながらも
その砕けた破片までもが散弾と化して
火星に向けて飛んでいく、此ではかえって
被害が増すばかりだ
「駄目だ戦艦の火力ぐらいではビクともしない」
「諦めるな!我等の後ろにはガルスグレーサー
1000万の命が掛かっているんだぞ!」
戦艦の火力では隕石は砕けるばかりで
一度火星軌道の衝突コースに乗った
隕石群を止める事は到底不可能だった
地球の防衛軍艦隊も3将軍の艦隊に加勢し
全力射撃を砲身が焼け付くまで行うも
その結果は芳しいものではなく
「駄目だ!ユニオンに緊急救難を養成しろ!
火星が災害により壊滅状態になったら
地球の支援だけでは追いつかなくなる」
地球防衛軍艦隊・旗艦長門の艦長は
最悪の事態を予測しギャラクシーユニオンに
救助要請の通信を送り助けを求めた
だが今更、助けを求めた所で遅い
既に火星が滅亡するのは避けようがない事態だ
「こうなる前にテロリスト共を
一掃出来ていたら・・」
だが既にハヤテの転移ゲート作戦で
問題のテロリストは全員無力化
出来ていたのだが、地球防衛軍の
艦隊で其れを知る者は一部だけで
ガルスグレーサーでも3将軍以外に
ハヤテの真の実力を知らない。
其のハヤテに秘密通信が届く
<ギャラクシーユニオンより緊急連絡です
勇者戦艦に赤い星を流星群から守って欲しいと
要請が届きました>
この依頼は地球防衛軍艦隊からGユニオンに
緊急要請が入った為U星人が信号を送ったのだ
「隕石群が火星に到達する時間を割り出せ」
コンピューターで分析した結果
隕石の衝突予測時間は残り6時間半と判明した
勝艦長は大城艦長代行に命じた
「1時間以内に全ての肯定を済ませ
アトランテスノヴァを出撃させよ!」
「了解、直ちに発進準備に入ります」
アトランテスノヴァに乗る全ての隊員が
ウオーリアのスーツに着替え全艦が配置に付くと
ハヤテ内部からハヤテと瓜二つの駆逐艦が
空間転移ゲートを通って表に搬出される
此がコードハヤテFと呼ばれる影武者艦である
そしてこの影武者艦の艦長が勝艦長なのだから
情報隠蔽秘密工作が徹底している
オリハルコン・アーマーと呼ばれる
金のダブルアタッチメントと合体し
ハヤテはアトランテスノヴァに
チェンジする肯定を終え、いよいよ発進準備が
整った 「アトランテスノヴァ発進準備完了」
そしてキャプテンアストラとなった
大城誠矢が命じる
「アトランテスノヴァ発進」と
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
宇宙運送事業で大成功を納めたヘルターナーは
事業の成功で儲けた財を惜しげもなく使い
多くの事業に投資を行っていた
「まさか・・こんな形で投資が生きてくるとはな」
ヘルターナーの傍らには組織のナンバーツーである
グラダーが控えていた
「火星の件では驚かされましたな・・
隕石群の衝突を回避する方法として
あの様な手で解決するなどとは
流石に思いも寄りませんでした」
二人は火星に新たに出来た{月}を見ている
「隕石を一つに纏めて握り潰す様に
圧縮して小惑星を造るとはな・・流石に
思いつくわけがない・・此はもう
人知を超えた領域だ」
「ですがその御陰でガルスグレーサー1000万の
人命が救われたのですから、ターナー様の投資は
まさに大成功でした」
「まあな・・此からもアトランテスノヴァには
精々い活躍してもらい、俺がつぎ込んだ投資分を
倍にして返して貰うさ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
崎勢十郎はアストラ大使の影武者として
矛盾がないように振る舞う必要がある
「暫くはお役御免だな・・」
彼は次の出番が来るまで歴史の表舞台から消え
ある少年の成長を手助けする道に進む事にした
其れは英雄、坂巻進吾の一粒種
彼にとっては甥子を英雄として育成する
大仕事であった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
グリフォンを生かすためにハヤテに
特攻した宇宙の勇者達
{・・セキレイ少尉・・オウム少尉・・
スワロウ少尉・・ヒヨドリ少尉・・モズ中尉だ}
特にヒヨドリは愛らしい女性パイロットだった
この3人が大鷲将軍{グリフォン}を変え
ガルスグレーサーを裏切らせた切っ掛けである
彼は自分の宇宙空母を解体し造った
火星のコロニーに彼等の名を与え
スワロウコロニーにオウム・スワロウ・ヒヨドリ
モズとそれぞれのコロニー名とした
「そうか・・アトランテスノヴァに
火星は救われたか」グリフォン将軍は
英雄達の名を関するコロニーにその思いを馳せる
鷲の頭に人間の体、其れはガルスグレーサー
3将軍の有名の中でも一際明晰な頭脳で知られる
大鷲将軍グリフォンである
彼はユニオンとの取引で一つの使命を託されていた
即ち、{星雲時計の解析}と{旧支配者」の
関係性を探って其れをU星人のゼロツーに
随時報告するというものだった
精神攻撃を専門とするグリフォンが
ハヤテとの戦いを通してユニオンに
目を付けられるのは至極当然の事だった
何よりUゼロツーからしてみれば自分の中の
1万人メンバーの一人に是非迎えたい人材でもある
ガルスグレーサーから一人を選ぶとしたら
彼以外の適任者はいないだろう
そんなグリフォンに火星の速報を届けたのが
Uゼロツーである
<脳粒子波通信にも、かなり慣れた様だね
Mr.グリフォン>
<元々ガルスグレーサーのESP研究は
進んでいたからな・・テレパシー通信は
何度か実験で経験済みだ>
<其れにしても隕石群を真耶の超能力で
握り潰して一つに纏めあげ{星を造る}とは
此はアトランテスノヴァにより、真耶が
本来の力を使えるように成った明かしだな>
大城真耶の超能力レベルは神の領域
{超破壊型}スーパーデストロイヤー
クラスだと言うグリフォンの推察にUゼロツーも
<其れに関しては同意見だ・補足して言うと
{超能力の手}をベルテリオンが物質化して
隕石群の塊を重力圧縮で押し潰し一塊にしたって
所かな?>
グリフォンは頷きながら
<ヒントとしてはシン・ファノサイスの
能力の一つにNo.2ファノクロス
魔導兵器・液体重金属砲というものがある>
<掌状に形成し隕石群をひとまとめにして
液体金属で熱を加えて岩を溶かして固めれば・・
今回と同じ事も出来るだろう>
そうすると今回の偉業をやったのは真耶だとして
アイディアを出したのは液体金属兵器と何度も
やりあった大城誠矢に違いなかった
<成る程、彼が・・神の手の発想源か・・>
Uゼロツーの言い方に大鷲将軍は何かを感じ
<何かあるのか・・その新しく出来た
火星の衛星に・・>
<火星には此と言った資源が
此まで無かったそうだが・・もしかしたら
その心配はもう無いかも知れないよ>
<どう言うことだ?>
<ベルテリオンで握りつぶした影響だろうね
新しい衛星を開発したらとんでもない
資源が発掘される可能性がある>
グリフォンは息を呑む
<ま・・まさかとは思うが・・
ベルテリオン粒子が鉱石に含まれていると・・
言う事か?>
Uゼロツーは少し興奮気味に
<その可能性は大いにあると思うね>
<其れが事実なら・・火星は銀河随一の
エネルギー資源を予期せず・・
偶然得た幸運の星と言う事になるな>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★付箋文★
火星の2衛星の名は
フォボスとディモス、
其処に新たに増えた衛星の名はノヴァ
その名はガルスグレーサー1000万の命を
救った英雄戦艦の一部から名付けられた
この火星に10万人規模の居住可能コロニーが
地球からの移民達の手で10個建設され
100万人の地球人が入植したのが140年前
そして過酷な火星の環境に耐えられず
遂に地球に半数が帰還し、残った50万人も
ガルスグレーサー侵攻が切っ掛けとなり
20万もの市民が火星から逃げ出した
そして最後に残った30万の市民達は皆
火星を故郷と決め死ぬ覚悟までしていた
「火星の大地には先祖達の
血と骨が埋まっている」
「もう俺達は地球人じゃなく火星人だ」
「今更地球には馴染めやしない」
そんな彼等が火星から
外敵侵略者の軍事力で無理矢理、
故郷から追い立てられ
其れでも戦争さえ終われば故郷に帰れると
信じ我慢した、だがその挙げ句が
{火星コロニーにガルスグレーサー人を
一時受け入れ、入植を許可する}と言う
地球政府の信じられない裏切り行為を
受けたのである
穏和な彼等も怒り心頭に達し、
とうとう火星コロニーを奪還すべく
ガルスグレーサーに対して立ち退き運動を
始めたのは致し方ない話である
やっと訪れた平和な時代に対する無益な挑戦とか
嵐が治まった海に波風を立てる行為だと非難され
四面楚歌の状態ながら其れでも彼等は抵抗運動に
身を投じ、その必死の思いに付け入ったのが
新たな神、旧支配者を信仰する凶悪なカルト集団
ムーの末裔だった。
「その過去には確かに同情するが・・
火星に重大な危機を招いた者達を
無罪放免と言う訳にもいくまい」
同じ地球人であるからこそ勝艦長は
そう言うしかない
そして責められる反ガルスグレーサー運動の
リーダーであるヨーゼフ氏は反論出来なかった
「もう少しで{私}は取り返しの付かない過ちを
犯す所でした・・全ての罪はリーダーである
この私にあります・・何卒・・裁くなら
{私}だけを、どうか宜しくお願いします」
その潔良い姿にアリーヌ・ロイ・シュライザは
感銘を受ける
『私達とは言わず自分一人だけ裁かれようと
するなんて、この方を見て無情に裁くなんて
とんでもない事だわ!』
そう思ったアリーヌはウルフシューターと
小声で話し合い、「いや其れは」「幾ら何でも」と
ヒソヒソと勝艦長の耳にも遣り取りは届いたが
どうやらこの場で最高意志決定権を持つのは
ウルフシューター将軍のようだった
その狼将軍ウルフシューターが
「解りました代表の御意志に従いましょう」
と言うとアリーヌの手を取りエスコートする
アリーヌ代表は神妙に床に伏せる
ヨーゼフ氏に歩みよりその手を取ると
「どうか頭を上げて下さい、此度のことは
不幸な行き違いで起きた{事故}でした・・
あなた方に罪はありません」
「え・・・」 ヨーゼフ氏は思っても居なかった
展開に目を白黒させる
勝艦長は自分に向かって状況を伺う氏に
「この場を取り仕切る権利が有るのは
アリーヌ代表と将軍閣下だ私に資格はない」
詰まりは・・
この二人が無罪だと判断するなら
其れに従うと言うのが勝の意志だ
ヨーゼフ氏は涙ながらに
アリーヌ代表の温情に感謝した
それからヨーゼフ氏はアリーヌ達に案内され
火星コロニーの建設現場を視察した
其れは氏が夢にも思わなかった程の
規模と完成度で、氏は驚きすぎて
声も出せずにいた
「只今これと同規模のコロニーが200個
建設中で半年後には400個が完成します」
ヨーゼフ氏は震えながら
「そんな・・一体どうやって?
こんな数のコロニーを一度に」
『100年以上掛けても火星の過酷な環境下に
人類は適応出来なかったのに』
その疑問にアリーヌはあっさり種明かしをする
「宇宙戦艦を分解し材料としてコロニーに
使ったんです」
「ふあ?」
思わずアリーヌの顔を見るヨーゼフ氏
それ位信じられない一言だった
「宇宙戦艦には生命維持装置があって
バリアーを張るだけで惑星環境を防いで
コロニーを建設出来るんですよ」
ヨーゼフ氏がアリーヌから聞かされたのは
一人の老兵の昔語だった
「此の知識は今は無き私の恩師とも言うべき
ガロスダ教育官から少女時代に教わったものです」
アリーヌ姫は幼少の頃、母である王妃を亡くし
寂しさで塞ぎ込んでいた、そんな時
ガロスダが姫の教育係として着任し
其れからは影日向になり姫を支えていたのだ
「爺や今日もお話を聞かせて」
未だ幼く丸く円らな瞳でガロスダに
寝物語を縋る幼女姫にいたわりと献身の
想いを抱く老いた教育官は、まるで
孫娘に優しく語りかけるように
自らが経験した体験談を語り出した
どうやらアリーヌ姫は
普通の女の子が好きな童話や物語には
全く興味がないらしく、彼が兵士時代の
冒険談等を好んで聞きたがる傾向がある様だった
ガロスダは自分の詰まらない昔話を
目を輝かせ聞いてくれる姫を愛おしく想い
「其れでは今日は私が仲間達と共に
宇宙で遭難した時の話をお聞かせ致しましょう」
そうして天蓋ベットで寝ころび足をパタパタ
させながら聞き入る姫に語り出した
其の話と言うのは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ガロスダ教育
官がまだ宇宙戦艦乗りだった頃
乗っていた宇宙戦艦が事故で未開発の惑星に
遭難し其の惑星環境が劣悪だった為
サバイバルで生き延びる為に
考え抜いた末、彼等は宇宙戦艦のバリアーを
利用する事で局地的に食料を生産可能な
環境を疑似的に造り出す事に成功し
其のおかげで十数年もの遭難生活を生き延びた
という話だった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「私は爺から学んだ知恵を少しばかりアレンジして
此の方法を試したに過ぎません、ですから本当に
凄いのはガロスダ教育官なんです」
アリーヌは胸に手を置きながらしみじみと語った
その様子にヨーゼフ氏は
「宇宙戦艦の平和利用など思いも寄らなかった
素晴らしい発想をされる方ですね
その方は今はどちらに?是非お話を伺いたい」
だけどアリーヌは少し寂しげな表情となり
「残念ですが・・戦争で既に亡くなりました
・・ですが・・」
太陽系防衛軍から勝艦長の名で伝えられた
恩師の壮絶な死に泣き崩れた痛みを今も
忘れないアリーヌ・ロイシュライザ
「爺の教えてくれた教えは今も私の中に
生きづいているのです」
そんなアリーヌの言葉を聞きヨーゼフ氏も
「そうですが其れは本当に残念です、
ですがガロスダ教育官の名は、この
テラホーミング技術の公式な名前として
是非使わせて頂きたい」
アリーヌはそのヨーゼフ氏の申し出に
心から喜び、その後も
ガロスダ式惑星改造方の説明を続けた
「後は宇宙戦艦を分解しその資材を材料にして
バリアー内部でコロニーを組み立てて行けば
人が居住するコロニーの完成と成るのです」
「そんなやり方があったのか・・」
ヨーゼフ氏は
ガルスグレーサーの建築技術よりも
自分達とのサバイバル経験の差に慄然とした
太陽系の地球と言う温室で育ってきた
地球人類からは絶対に出て来ない発想だ
此は科学力の差ではなく宇宙を旅する
移動民族との発想力の差だった
「宜しければ此を見て下さい・・」
感動するヨーゼフ氏を連れてアリーヌは
完成してから半年経過したコロニーに
案内した、其処にはヨーゼフ氏が
夢にまで見た光景が広がっていたのだ
氏の目に黄金に輝く麦畑の穂が映る
「火星に・・黄金のコンドルが舞い降りた」
ヨーゼフ氏の両眼からは
知らず知らずのうちに
止めどない涙が溢れ出ている
「地球の方々が倉庫に保管しておられた種子を
少し分けて頂き遺伝子改良して撒いたら
こんなに元気な芽が出ました
ガルスグレーサーの遺伝子改良技術は
宇宙空間で農業を行うのが一般なのです」
アリーヌは泣いているヨーゼフ氏の肩に
そっと手を添える
「この麦は火星に芽生えた初めての実り・・
我々地球人だけでは到底実現することが
出来なかった奇跡です」
自分の目で此の光景を見ることが一生叶わないと
思っていた氏は心の底からアリーヌに感謝した
そしてアリーヌはヨーゼフ氏に一つ提案する
「火星全体をこの種子で覆い尽くし
惑星全体を地球型環境に改造すれば
全ての種族が共存共栄する理想郷を実現
出来るかも知れません」
そしてアリーヌは手を差し伸べ
「どうか一緒に其の夢を目指してみませんか?」
「全ての種族の・・共存共栄社会・・」
ヨーゼフ氏は夢見るように呟いた
「ガルスグレーサーは多くの種族が集められた
多種族混合社会形成を実現しています、ですから
地球の方々とも共存共栄出来る地盤があるのです」
アリーヌ代表の言葉を補強するように
代表の傍らに立つ狼将軍が目に映る
その二人を見るだけでも信用に足る言葉だった
「今回、火星に来られたヨーゼフ氏達だけでも
このまま火星に残って一緒に開発をしませんか?」
「え・・ですが我々はあなた方を
滅ぼそうとした連中に協力した前科者ですよ」
アリーヌはきっぱりと其処は否定した
「いいえ協力じゃなく利用されたのです
あなた方とテロリストを一緒くたにするような
愚か者はこの星にいるガルスグレーサー人には
一人もおりません」
アリーヌの力強い言葉にヨーゼフ氏は
心から感銘を受けその申し出に
有り難く縋る事にした
「いずれ、コロニーの供給が整ったら
地球人の元入植者の方々を全て呼び戻しましょう」
おお!「そうなれば夢のようです、此から
宜しくお願いしますアリーヌ代表」
そうして二人の代表は立場と権限を越えて
未来の火星繁栄を目指し友好の握手を交わした
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━★付箋文★
今現在━━━━━━━━━━
━━━━━━━━銀河中心部には
星雲時計と呼ばれる虚無の宇宙域が存在する
其の穴は底無し穴であり漆黒の
{ディープホール}と呼ばれ始めた
ガルスグレーサーの星帝
ギルザート18世がシン・ファノサイスの
超常の能力を用い創造した、
所謂・・大戦の置き土産だった。
銀河中枢部・星雲時計近郊
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シン・ファノサイスの第四脳幹シリンダー
ファノアマトの能力で銀河中心部にある
ブラックホールに特殊な魔導力を用いて
5000光年程の宇宙域を
時計状に再構成し固定化してしまう
その際5000光年内は完全な虚無(ボイド)空間
と化す、その影響は2千年に及ぶとされる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(ボイドスペース)
虚無の領域と呼ばれる1万光年の宇宙域は
銀河系に置ける新たな交易航路をもたらした
※(ディープホールに落ちないよう
表面部分だけを航路上に設定して)
此まで銀河中心部は巨大なブラックホールと
致死性のある有害な光線が満ちた
巨大恒星の溜まり場だったが
今はエネルギーも重力も存在しない
絶好の航路と成ったからだ
此ばかりはガルスグレーサー大戦に置ける
唯一の功績とも天の恵みだと歓喜する
各星系の声も多数あったのだが
困った事に招かれざる客も現れた
其れは宇宙の海を我が物顔で荒らす
{宇宙海賊}の台頭である
そして今、数隻の貿易宇宙船を追撃する
武装船団、それは間違いなく今問題の
宇宙海賊が海賊行為を行っているその真っ最中だ
<メーデーメーデー此は緊急通信です
我々の貿易船が凶悪な宇宙海賊に
襲われています付近にもし
戦艦があれば救援願います我が船団は現在
海賊船に襲われています>
この救難信号を受け取った1隻の船があった
其れは漆黒の装甲を持つ
デストロイ・カタストロフγと呼ばれる
元ガルスグレーサー最強の宇宙戦艦である
この艦はハヤテとの模擬戦で唯一
生き残った艦であり、今は
猛将ワイルダーの愛艦となっている
このデストロイ・カタストロフγは
天才的な戦艦設計者である
ウルフシューター将軍が心血を注ぎ
製造された超戦艦であり
その能力はファノシリーズを参考にし
其の性能をコピーした言わば
ファノの小型版の能力を有していた
γの能力は
魔導ガス星雲レプリカ兵器
出力規模はファノシリーズの
30パーセント程度で全力稼働すれば
魔導エンジンが暴走する危険があった
※(其れが原因でαとβは自滅した)
だがその性能はウルフシューター折り紙付き
化け物級戦艦であることは間違いない
1隻で数万隻の戦闘力に匹敵するのだから
正しくファノシリーズ艦の落とし子である
其れが来たのだから宇宙海賊に勝ち目など
微塵もなく
<畜生化け物過ぎるぞ!この戦艦>
<こっちの攻撃がまるで通用しない!>
<こいつが近頃噂になっている
海賊殺しの黒い悪魔だ!!>
デストロイ・カタストロフγは宇宙海賊の
艦隊を軽く一掃し貿易船団を守った
見た目の怖さから貿易船団の船長は恐る恐る
感謝を述べながら黒い怪物の様子を伺った
<助かりました何かお礼をさせて下さい>
デストロイ・カタストロフγからは
<何か美味い酒があれば所望したい
あとそちらの特産品を摘みに戴ければ
なお有り難い>と言う返信がある
貿易船団の船長はその頼みに快く応じ
特産の酒と食料を大量にプレゼントした
貿易船団と分かれた後
デストロイ・カタストロフγ船内では
貰った酒を開け早速宴会が始まる
「お頭~お頭~良い事はするもんですよね~」
艦長席に座る長身長髪の男
その傍らには絶世の美女がドレス姿で立っている
その手は男の肩に乗せられて只仲でないことを
匂わせる。
「ワイルダー様宜しいのですか
任務中にお酒をあんなに呑んで」
その言葉にワイルダーは
「別に構わないさ、この船では
いつが仕事時間と決まっちゃ居ない
呑みたい時に呑み寝たい時寝て
戦う時だけ死ぬ気で戦う、其れだけだ」
元王女は其れを聞いて笑いながら
「呆れました、まるで無法者の集まりね
此がガルスグレーサーの鎖から解き放たれた
貴方達本来の姿なのですね大好き」
そう言って彼女自身ワイングラスに
貿易船から貰った酒を注いで呑んで
ワイルダーの首筋に腕を回した
もうかなり酔いが回ったのか
{ヒック}とシャックリをし
頬をピンクに染めていた
「もう酔ったのかエリーナ」
彼女の名はエリーナ・ロイ・シュライザ
ガルスグレーサーの{元}第二王女
国を捨て名を捨ててワイルダーと共に
自由な宇宙に飛び出し、今はもう
ワイルダーの{女}として生きる道を
手にした有る意味{一番幸せな女性}である
そしてそんなエリーナの為にワイルダーは
自分の艦隊を友ウルフシューターに預け、
今はギルザート18世が残した遺産
星雲時計を見張っている、海賊退治は
悪までその序でであった。
「ご免なさいワイルダー、私のお父様が
残した遺産が銀河の皆さんを害する事が
無い様にしたいと言う、私の我が儘を
聞いて貰って」
ワイルダーは何も言わず星雲時計を覗き乍
漆黒のディープホールの奥底を見つめる
「其れについては気にする事はない
何かあって手遅れと言うのが
俺は一番気に食わないからな」
デストロイ・カタストロフγの火力なれば
星雲時計で何が起きても力づくで解決出来る
ワイルダーはこの自由の海で好きに生きる
生き方を大いに気に入っているのである
「そうですよエリーヌの姐さん
俺達だって思いは船長と同じです」
「此処はもう俺達の縄張りだ
門番に断り無く暴れる奴等は許せねえ」
「大人しく出来ねえ奴は力ずくで
解らせるってのがワイルダー流ですんで」
『姐さん・・って』
船長婦人と言う呼び方がどうにもシックリ来ず
船員達はエリーヌを姐さんと呼び始めた
ワイルダーもエリーヌが{悪い気が}
しないらしいので許している
この船で様付けで呼ぶのは最高の侮辱だと
エリーヌ自身が言い出した事なので
有る意味正解と言えるだろう。
こうしてデストロイ・カタストロフγは
海賊退治しながら星雲時計で門番の役目を
果たしつつ自由な航海を回遊し楽しんでいた
━━━━━━━━━━━━
━━━━━━★付箋文★
新しいGユニオンの依頼でハヤテは
アトランテスノヴァにチェンジし
事件現場にリープで向かう
アトランテスノヴァ・キャプテンルーム
瞑想━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大城誠矢は自分がもし死ねば
アトランテスノヴァと魂を融合し
最後の最後まで仲間達と共に戦いたい
そうベルテリオンの力に願った
そして、もしかしたら自分は坂巻進吾と
脳粒子波交信で話し合えるかもと期待し
幾度も試したのだが・・結果は・・
『馬鹿みたいだよな・・そんなこと
あるわけ無いのに』
人間が機械と一体に成る感覚は
人に寄っては経験した事があるだろう
バイクで風を切るマシンとの一体感
ゲームのコントローラーを握り
のめり込み過ぎて気が付けば
夜が明けていた没入感
坂巻進吾がカラメティドラゴンと
人機一体となり自分の身体の延長とまで
感じたと言う奇跡の融合も
全てはこの俺がアトランテスノヴァと
人機一体と成り魂が定着すれば
決して気のせいではない証明となる
そう思ったが・・甘かった
<そんな・・諦めないで誠矢兄さん>
<・・この声は真耶か?>
真耶が誠矢の瞑想に紛れ込んだ
<違うわよ・・兄さんが魂を
アトランテスノヴァに融合するから
幽体離脱して石碑に取り込まれたのよ>
どうやら原因は自分のせいだと解り
誠矢は真耶に謝る
<良いわよ、誠矢兄さんが坂巻さんの死を
全く受け入れてい無いのは知ってたから>
誠矢は本当の事を指摘されグウの根も出ない
<そんな事はない>と言いたい所だが
真耶が奇妙なことを言う
<其れにしても坂巻さんの
気配が全くしないのね>
誠矢は寂しそうに
<そうなんだ・・もしかしたらと思ったんだが>
精神を集中すると誠矢の知る幾人もの
残留思念の様なエネルギーの流れを
真耶でさえも僅かにだが感じた
『今のは・・父さん其れに母さん・・・それに
キャサリンさんも・・』
他にも大勢の思念を感じるが坂巻だけは
微塵も感じず
それで真耶は何気なく言った
<おかしいな・・どうして坂巻さんの
精神が此処にないの?ベルテリオンの力が
効力を発揮したのは私達で証明済みだし>
誠矢が其の考えに至ったのは、この時だった
<確かに真耶の言う通りだな、
じゃあ・・坂巻は何処だ?>
シン・ファノサイスと星雲時計軸との間に
プレスされたカラメティドラゴンは
あの瞬間、欠片も残さず消滅した、そう見えた・・
ギルザート18世が受けた屈辱的な誤解も
遠目で観た光景から生じた誤解が発端で・・
真実は違っていた
今更何もかもをひっくり返す気は無いが
心の中で坂巻の{生存}があり得ると言う
考えになり僅かな希望に元気が出る、我ながら
単純だと思う誠矢だったが
此の物語は此処で一端終わる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
だが銀河英雄戦艦
アトランテスノヴァの活躍は
此処から始まるのだ。
______________________
★付箋文★
これは一隻の宇宙戦艦がやがて銀河英雄戦艦
と呼ばれる迄の戦いの物語である
━━━━━━━━━━━━━━━━━
━2998年12月が終わり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2999年が始まる
銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ
___THE/END________
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