ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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32話

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「……分かりました。今回だけですからね。でも明日ちゃんと返してくださいね」
「えっ、良いの。ありがとう。明日絶対返すから」

 このまま清美と押し問答をするよりもさっさと貸した方が時間を浪費をしなくて済むだろう。
 だから真希の方が折れることにした。
 やっとお金を貸してもらえると喜んだ清美は嬉しさと感謝のあまり、真希に抱き着く。

「ちょ……離れてください沢田先輩」
「別に良いじゃん。あたしら友達だし」
「……別に友達になった覚えはないんですけど」

 清美に抱きしめられた真希は迷惑そうな表情を浮かべるものの、清美は全然気づいてくれなかった。
 そもそも真希と清美は異性のため、こういうスキンシップはもっと自重して欲しい。
 肩と胸の間に清美の胸が押し付けられる。
 清美も紗那と同じぐらい巨乳のため、制服越しでも分かるぐらい弾力があり柔らかかった。
 真希も男の娘である。女の子に胸を押し付けられると意識するし照れてしまう。
 それに加え香水のせいか、女の子特有の体臭なのか分からないが、清美の体からは良い匂いが漂っていた。
 一通り感謝の気持ちを伝えると、清美は真希の体から離れる。

「どうだった?お姉さんからのサービスは」
「別に、そんなサービスいりません」
「あれれ~、もしかして照れてるの~。可愛い~」
「うざっ。そんなこと言うとお金貸しませんからね」
「あっ、嘘嘘。ごめん。冗談だからそれだけは勘弁して~」

 からかわれて腹が立った真希は、清美を脅すとさっきの威勢はどこに行ったのか速攻で平謝りをしてくる。
 本当に馬鹿な先輩である。
 その後、ジュースを奢り喉を潤した清美は改めて真希にお礼を言う。

「ありがとう北野ー。おかげで助かったわー」
「あとで返してくれるなら別に良いんですけど。一つだけ気になったことがあったんで聞いても良いですか」
「もちろんあたしが答えられるものなら良いよー」
「どうして鈴木先輩や黒木先輩に借りなかったんですか? 普通後輩の私よりも同級生の鈴木先輩や黒木先輩の方が借りやすいでしょ」

 自動販売機の前で財布を忘れたと騒いでいる時から一つ疑問を感じていることがあった。
 それはどうして同級生でもあり友達である紗那や麗奈にお金を借りなかったという疑問だ。
 普通後輩に借りるよりも同級生に借りた方がハードルは低いだろう。
 その疑問は真希の心に沈殿し、真希では理解できなかったから清美に直接聞いてみた。

「えーっと……それはね……紗那にお金を借りたら一生そのネタで馬鹿にされるし、麗奈に言ったら『あなたはそれでも高校三年生なんですか。ズボラすぎです。良いですかこれから大学生、社会人になるんですから財布と携帯ぐらい持ち歩くのは当たり前です。これから社会に出た時苦労するのは清美ですよ』って永遠に説教されるじゃん。借りれるわけないじゃん」

 清美から理由を聞いた真希は思わず納得してしまった。
 確かに煽ることが上手い紗那ならやりかねないし、真面目な怜奈だからこそズボラな清美のことを思い説教する姿が目に浮かぶ。
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