ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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57話

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「なんでそんなに言いづらそうなんですか。分かっているなら教えてください」

 今まで真希は愛理に苦しめられてきたのだ。
 その原因を早く知りたいと思うのは当然の欲求だった。

「それはだな、桐島後輩が牧野後輩に恋をしているからだ」
「……えっ」
「桐島後輩は牧野後輩が好き。だが、牧野後輩が北野後輩とばかり話しているのが面白くなかった。それだけのことなんだ」

 最初、紗那がなんて言ったのか分からなかった真希は思わず聞き返してしまった。
 もちろん、どういう言葉を言っているのかは分かる。
 でも瞬時に意味を理解することができなかったのだ。
 紗那はそう反応すると予想していたのか、二回目はもっと分かりやすく真希に説明した。
 愛理が陽子のことが好き。
 それだけで真希が愛理からきつく当たられていたのだ。
 納得いくわけがない。
 少しずつ言葉が呑み込めていくと、徐々に怒りが湧き上がって来た。

「なんで桐島が牧野が好きなだけで私がきつく当たられるんですか。意味が分かりません」
「それは牧野後輩が北野後輩ばかり話しかけて面白くなかったからだ。つまり桐島後輩は北野後輩に嫉妬していたわけだ」
「……なんですかそれ。……私、別に悪くないじゃないですか」
「そうだ。だから君は悪くない。誰も悪くない」
「それに男同士ですよ。なんで嫉妬するんですか」
「あたしは桐島後輩じゃないから分からないが、好きすぎて周りが見えていないのだと思う」

 陽子と愛理が仲が良い幼馴染ということは知っていたが、まさか愛理が陽子のことを好きだったとは知らなかった。
 そのせいで、真希は愛理からきつく当たられていたらしい。
 原因が分かってもなお、むしろ原因が分かったからこそ意味が分からない。
 どうして陽子が真希に話しかけるだけで嫉妬するのか、全然意味が分からなかった。

「って悪いのは桐島でしょ。誰も悪くないわけないじゃないですか」

 今の紗那の話を聞く限り、悪いのは完全に愛理の方だ。
 愛理が勝手に嫉妬し、その鬱憤を晴らすために真希に当たる。
 あまりにも愛理が我がまま過ぎてイライラしてくる。

「だから桐島後輩を完全擁護するつもりはない。でも人間って理屈じゃどうにもならないことがあるんだよ。北野後輩もいずれ分かる時が来るさ。頭では分かっているのに、感情が追い付かないことがあるって」

 紗那は愛理を完全擁護しないと言いつつも、愛理を責めることは言わなかった。
 いずれ分かる時が来ると言われても、分からないものは分からないし、自分の気持ちを抑えることができない。
 それってただの愛理の嫉妬であり、真希からすればとんだとばっちりである。

「それで私はどうすれば良いんですか。それって二人の問題というか桐島の問題ですよね」

 愛理が陽子のことが好きで、それが原因で陽子が真希に話しかけるのが嫌だったということまでは理解した。
 でもそれは愛理の勝手であり、真希は関係ない。
 真希が陽子に話しかけてこなくても陽子が真希に話しかけてくるたびに嫉妬してたら一生解決することなんてできない。
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