ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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56話

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「……あれ絶対両想いだよね?」
「……本人たちは気づいていないようなので、私たちは静かに見守ってましょう」

 向かい側で清美と麗奈がなにか話しているが、店内がうるさいので聞き取ることができなかった。

「冗談はさておき、牧野後輩と桐島後輩は仲が良いのかい?」
「幼馴染らしいので結構仲が良いとは思います。いつも二人一緒にいるので」
「ふむふむ。ちなみに牧野後輩と桐島後輩って付き合ってるかい?」
「いや、付き合ってはいないとは思います。仲の良い幼馴染って牧野は言ってました」

 愛理のことで悩んでいるのに、麗奈に続き紗那も陽子のことを聞くようになってきた。
 これになんの意味があるのだろうか。
 今まで友達がいなかった真希には推し量ることができなかった。

「桐島後輩は牧野後輩のことをなんて思っているのか聞いたことはあるか?」
「桐島とは話さないので分かりません。あんな奴とは話したいどころか、見たくもありません」

 陽子が愛理のことを仲の良い幼馴染ということは本人から聞いたことはあるが、その逆はない。
 そもそも愛理なんて話したいどころか見たくもないし、一緒の空間にもいたくない。
 それほど真希は愛理のことを嫌っていた。

「あれ、そう言えば牧野が北野に話しかけるといつも桐島の機嫌が悪くなるんだよね?」
「はい、そうですが」
「あっ、あたし分かっちゃったかも」
「今の話を聞くとあたしも分かったかもしれません」
「私もです。桐島さんが不機嫌な理由はあれだと思います」
「? どういうことですか。全然話が見えないんですけど」

 最後の清美の質問で、先輩たち三人はなぜ愛理が真希に対してきつく当たるのか分かったらしい。
 その原因に気づいた三人はなぜか、ため息を吐いている。
 一人だけ話についていけない真希は一人、首を傾げる。

「……北野後輩はかなりのコミュ障かもしれん」
「……まさかここまで来ると、笑えないわね。っていうかこれってかなり単純じゃない?」
「……私の予想が当たっていれば、すぐに解決できますね」
「ちょっと三人してヒソヒソ話は止めてください。凄く気になるじゃないですか」

 三人がヒソヒソ話を始めたので、蚊帳の外に出された真希は抗議の声を上げる。
 三人はすぐに分かったのに、いまだにその原因が分からない真希からすれば歯がゆかった。
 これも高校三年生と一年生の人生経験の差だろうか。

「すまない北野後輩。桐島後輩がなぜ北野後輩にきつく当たるのかだいたいは分かった」
「はい。ぜひ教えてください。どうして桐島は私に強く当たるんですか?やはり私がなにかしたんですか?」
「う~ん、なんとも難しいところだが、結論から言えば誰も悪くない。もちろん北野後輩もだ」

 やはり三人はなぜ愛理が真希にきつく当たるのか分かったらしい。
 それを知りたかった真希は紗那にその原因を聞こうとすると、一旦クッションを入れられて言葉を濁した。
 どうしてこんなに言いづらそうにしているのだろう。真希には分からなかった。
 言いづらそうにしているのは紗那だけではなく、清美も麗奈も同じだった。
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