ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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60話

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「……」

 それに気のせいかもしれないが、愛理の頬がどんどん赤く染まっていくような気がする。
 夕焼けのせいでそう見えるだけだろうか。

「……なのね」
「? 悪い、声が小さくて聞き取れなかった」
「あんたも陽子のことが好きなのねって聞いたのよっ」
「はっ」

 最初の愛理の声は周りの雑音のせいでかき消されてしまい聞こえなかったので聞き返したら、今度は大声で言って来た。
 言っている意味が分からなかった真希は、素で驚く。
 どうして真希が陽子のことを好きになっているのだろうか。全然分からない。

「どうして私が陽子のことを好きになってるんだ」
「だっていつも教室で話してるじゃない。それに北野って陽子以外のクラスメイトと話さないじゃない。だから陽子のことが好きなんでしょ」

 鈍感な真希も少しずつ紗那たちが言っていたことや、愛理の勘違いが分かって来たかもしれない。
 まず愛理は真希が陽子のことを好きだと勘違いしている。
 そして、紗那の予想通り愛理は陽子のことが好きである。
 つまり、真希は愛理にとって恋敵になっていたのだ。もちろん、愛理の誤解だけど。
 そう考えると、今までのことにも辻褄が合う。

「いや、私は牧野のことは好きじゃないぞ。勘違いだ」
「えっ……」

 真希は愛理の誤解を解くと、愛理は素っ頓狂な表情を浮かべる。
 その表情はこんな笑ってはいけない場面でなかったら笑ってしまうほど傑作だった。

「……そう……良かった」

 真希が陽子のことが好きではないということが分かった愛理は安堵の表情を浮かべる。
 誤解が溶けてなによりだ。

「これで分かっただろ。別に私は牧野のことが好きじゃないって」
「そうね。……って陽子のことが嫌いなのね。あたしの好きで大切な幼馴染の悪口を言うなんてやっぱり許せないわ」

 愛理の誤解も解けて一件落着かと思われたがそう上手くはいかないらしい。
 今度は真希が陽子のことが好きではないということが気に入らなかったらしく、そこに噛みつく。
 本当に面倒な女である。

「別にそういう意味じゃない。好きでも嫌いでもないだけだ」

 これは本当だった。
 別に真希は陽子のことを好きでもなければ嫌いでもない。
 ただのクラスメイトである。
 それは紗那や清美、麗奈にも言える。
 あの三人も優しくて後輩思いのただの先輩である。

「……馬鹿みたいあたし。また周りが見えなくなってたし」

 ここでようやく愛理も自分の勘違いに気づいたらしく、独白する。

「私は別に牧野に恋愛感情はないから大丈夫だ。後は桐島の好きにしてくれ」

 これで愛理に真希が陽子に恋愛感情はないということは伝わっただろう。
 そもそも今回の事件は愛理が真希は陽子に恋愛感情を抱いているという謎の勘違いから始まった事件だ。
 それが解決された今、愛理が真希に突っかかる意味はない。
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