柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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5話

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「全員とは言ってないわよ。まだあやふやな人もいるわ。けど柊さんはすぐに覚えられたわ。結構珍しい苗字だし、みんなニコニコしたり、緊張しながら自己紹介をしているのに対して、柊さんはとても冷たく、面倒そうな表情をしながら自己紹介していたもの。忘れろと言う方が無理だわ。それにいつも一人だし」

 撫子はなにか含みのある笑みを浮かべて説明する。
 最後の一言は余計じゃないか。
 確かに瑞希はいつもクラスで一人でいるけど、別にそれで寂しいとも思わないし、むしろ一人でずっといられて瑞希的は充実している。
 人は、一人でいることを悪いことだと言い、みんなでいることを良いとする。
 一人でいる人間は寂しい、哀れだ、可哀そうな奴だと見下すが、それこそ傲慢である。
 一人でいることがなぜ悪だと決めつけるのだろうか。
 一人でいても不便はないし、むしろ人間関係に悩むことがないのでストレスフリーで生きることができる。
 だからと言って、群れる人間を悪だとは瑞希は思わない。
 友達と過ごす日常はそれだけで楽しいのだろう。
 毎日、馬鹿なことを言い合ったり、他愛もないことで盛り上がったり、好きな子のことで盛り上がったり、一人ではできないことはたくさんある。
 これを人は青春と呼ぶのだろう。

「それは白鳥も同じだろ」
「そうね。だからなのかしら。柊さんの名前はすぐに覚えたわ」
「それはどうも」

 皮肉を込めて瑞希は撫子にお礼を言うものの、きっと伝わっていないだろう。

「それで柊さんは本当に部活動を作るの?」
「そうだな。本当は心外だけど作るしかないよな……。既存の部活は先輩や顧問がいるからさぼったら怒られそうだし、適当に部活を作って黒川先生を顧問にして適当に活動報告すれば良いだけだからな。白鳥も部活をやりたくないクチだろ。もちろん入るでしょ」
「確かに既存の部活は先輩や顧問がいるからさぼったらかなり面倒よね。だから本当は私も部活には入りたくないけど、入らないと永遠に先生に説教を食らうことになるし、柊さんが作った部活に入るわ。一番楽そうだもの」

 いくら活動をあまりしていない部活だからと言って、全く活動していないわけではない。
 瑞希も撫子も、部活に価値を見出せない側の人間である。
 部活は人生の無駄である。
 それに、既存の部活に入部したら活動がある時は必ず参加しなければならない。
 なぜかって。
 それは暗黙の了解だからだ。
 入ったからにはやりたくなくてもやらなければならない。
 これを人は暗黙の了解と言う。
 それに部活をさぼったら先輩や顧問に怒られるのは目に見える。
 そんなことでストレスを感じたくはない。
 人のストレスの大半は人間関係だとも言われるぐらい、人間関係はストレスになりやすい。

「ありがとう白鳥」
「むしろお礼を言うのは私の方よ。これでやりたくもない部活に入らなくて済むわ」

 確かにやりたくもないことに時間を割く行為は、人生において無駄でしかない。
 人間の命は有限である。
 有限である以上、やりたくないことに費やすよりやりたいことに費やす方が有意義である。
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