柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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12話

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「おはよう柊さん。少し良いかしら」
「おはよう白鳥。別に良いが、一回自分の席に荷物置いてきて良いか」
「別に良いわよ。ごめんなさい、少し気が利かなかったわね」

 そんな友達がいない瑞希にも最近、瑞希にあいさつをかけてくる人間が現れた。
 言わずもがな、白鳥撫子である。
 撫子と部活作りという利害関係が一致してから、あいさつを交わすぐらいの仲にはなった。
 逆を言えば、撫子とはそれぐらいの関係でしかない。
 でもこれは、クラスメイトにさえもあいさつをされない瑞希からすれば大きな変化だった。
 その後、荷物を下ろし撫子の席に向かう。

「それで部員は集まりそう?」
「いいや。残念ながら私のところには集まってないな。白鳥の方はどうなんだ」
「私の方も今のところ脈なしね。今日中なのに全然集まる気がしないわ。たった一人なのに」

 女の子とあいさつを交わし、話すようになったからと言って大人たちが想像しているような甘い関係ではない。
 むしろ、ドライすぎるほどドライな関係だろう。
 二人が話す声音はまるで会社のホウレンソウのように事務的で淡々だった。

「あと一人見つかれば良いだけなのに……」

 撫子同様、瑞希もそこに頭を悩ませていた。
 あと一人で良いのだ。
 あと一人見つければ部を立ち上げることができるし、適当に活動報告をしていれば面倒な部活に自分の貴重な時間を奪われなくすむ。
 人生は有限だ。
 有限だからこそ、人生において無駄なことをしている暇なんてないのだ。
 瑞希にとって部活はまさに人生の無駄だった。

「まさかたった一人を集めることがこんなに難しいなんて。誤算だわ」
「確かに白鳥の言うとおりだな。一人の壁がこんなにも高いなんて」

 そして二人は盛大にため息をこぼす。

「……お、おはよう」

 暗礁に乗り上げ、尚美に直談判をし部員を水増しさせてもらうかと考えていた時急に声をかけられた。
 それには瑞希だけではなく撫子も驚いた表情を隠しきることはできなかった。
 自慢ではないが、あいさつをかけられるほど親しいクラスメイトはいないからだ。

「「……」」

 そのせいで二人は反応を返すということを忘れてしまった。

「ちょっと二人ともどうして放心状態になってるのっ」

 瑞希たちに声をかけてきた少女は一人で狼狽している。

「……確か金森舞だったっけ」
「そうー。あたしは金森舞。おはようー」

 瑞希が必死に名前を思い出して、彼女の名前を呼ぶと、舞はなぜか嬉しそうに自分の名前を復唱し、もう一度あいさつをする。
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