柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

文字の大きさ
11 / 103

11話

しおりを挟む
「どうせブラコンの亜美のことだから、瑞希を――」
「黒川先生。ここは学校ですよ」
「いったっ。だからって肘打ちすることはないだろう」

 いつもの感じで話しかける尚美に喝を入れるために、瑞希は尚美のわき腹を肘で突く。
 尚美が不平不満を言っているが、無視しよう。

「……別に私はそこまで距離を取らなくても良いと思うんだけど」
「……黒川先生には分からないと思うけど、学生の私は大変なんですよ。特定の先生と仲が良すぎると『好きなのか』ってからかわれたり、嫌味とか言われたり」

 尚美は別にいつも通りの関係でも気にしないらしいが、瑞希の方が気にするのだ。
 学校という閉塞的な空間で生活している以上、高校生はそういうゴシップネタが好きな生き物である。

「……お前ボッチだろ――いたっ、足を踏むな、足を」
「ごめんなさい、黒川先生」

 尚美が瑞希はボッチだからそんな噂流されることないだろと言った瞬間、カチンと来た瑞希は謝罪する気ゼロの顔で謝罪する。

「謝罪するなら表情と言葉を一致させろ」
「それよりも黒川先生、私も教室に向かいますので先生ももう職員室に行ったらどうですか。私は黒川先生と違って忙しいんです」

 そもそも瑞希は今、とても忙しいのだ。
 こんなどうでも良いことに時間を使っている暇なんてない。

「どうしてそんなに忙しいんだ」
「それを私に言いますかっ。言うんですかっ。自分で部活に入りたくないなら部活を作れっていったくせに」

 暢気な声で瑞希に忙しい理由を聞いてくる尚美にイラっとした瑞希は、嫌味ったらしく大声で説明する。

「……お前、まだ三人集まってなかったのか」
「だからそろそろ失礼します。今日中に三人目を見つけないといけないので」
「……そっか、分かった。今日中に私に入部届出しに来いよ」

 瑞希には今日中にやらなければならないことがあったし、それにこれ以上尚美と話している姿を見られるのは、瑞希的不利益だ。
 軽く会釈して瑞希が尚美の横を通り抜けると幼馴染として瑞希のことが心配だったのが、最後にお節介な言葉を投げかける。
 本当に姉の亜美と言い、尚美と言い過保護である。
 亜美や尚美には口が裂けも言えないが、別に悪い気はしていなかった。
 その後教室に入り、自分の席に向かう。
 もちろん、友達がいない瑞希に話しかけてくる気狂いはいない。
 瑞希が教室に入っても誰も瑞希に注目してくる人はいない。
 まるで透明人間である。
 瑞希という人間は確かにここに存在しているのに、誰も瑞希を気にしていない。
 そこには彼ら、彼女たちの日常があり、瑞希のことは意識の範囲外の存在でしかない。
 それが苦痛かと聞かれれば、別に苦痛ではない。
 むしろ、むやみに他人となれ合うことが苦手な瑞希にとっては心地が良い環境だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美
恋愛
この世の中には、勝者と敗者がいる。 ――恋人がいて、青春を謳歌し、学校生活をカラフルに染める勝者。 そしてその反対側、モブのように生きる俺・高一賢聖(たかいちけんせい)。 高校入学初日、ぼっちを貫くつもりだった俺の前に、 “二人の女王”が現れた。 ひとりは――雪のように白い髪を持つ、文芸部の女神・瀬良由良(せらゆら)。 もうひとりは――バスケ部の全国エースにして完璧超人、不知火優花(しらぬいゆうか)。 陰キャ代表の俺が、なんでこの二人に関わることになるんだ!? 「文芸部、入らない?」 「由良先輩、また新入生をたぶらかしてる〜!」 平凡で静かな高校生活を夢見ていたのに―― 気づけば俺の毎日は、ラブコメと混乱で埋め尽くされていた。 青春なんて関係ないと思ってた。 だけど、この春だけは違うらしい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

処理中です...