柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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19話

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「えっ、これで分からないのっ」
「そんなに悪いのか、このポスター?」
「必要最低限のことは書いてるからこれで大丈夫なはずだけど」

 瑞希も撫子ももう一度自分たちが作ったポスターを確認したが、どこが悪いのか見当もつかなかった。
 A四の紙に部活名未定と活動内容と、部員の名前を黒の油性ペンで書き、それを廊下の掲示板に貼っていたのだ。
 イラストは二人とも書けなかったので割愛した。

「確かに必要最低限のことは書いているけど……。それじゃーダメなんだよ。まずイラストがないから、パッと見どんなポスターなのか分からない。それに色も一色でしかも黒だから目立たないし、印象にも残らない。ポスターってインパクトが大事で、まるで報告書みたいポスターなんて誰の印象にも残らないよ」
「「……」」

 舞のダメ出しを聞いて、その発想はなかったと瑞希は反省する。
 舞の言う通り必要最低限のことは書いていたがそれだけだった。
 それさえ書いてあれは十分だと思っていた瑞希だったがそれは違うらしい。
 ポスターはインパクトが大事だ。
 そもそもポスターを貼っても見てもらえなければ意味がない。
 見てもらうにはどうすれば良いのか。
 そんなの簡単である。
 人々の意識に残るような、目立つポスターを作れば良い。
 そうすると、イラスト無し、黒一色のポスターでは全然インパクトはないし、誰の記憶にも残らない。

「あっ……ごめん。少し言い過ぎたかな」
「別に大丈夫。むしろその通りだなと思って感心してた」
「確かに金森さんの言う通りだわ。よくよく考えてみればこんなポスターでは誰の印象にも残らないし誰にも読まれないわね。一つ勉強になったわ」

 撫子も瑞希同様図星を突かれて、ポカーンとして反応を忘れていたらしい。
 舞が指摘してくれたおかげで、撫子だけではなく瑞希も勉強になった。
 今まで瑞希はポスターを作ったことがなかった。
 それは撫子も同じようだった。
 それに中学や高校でも部活勧誘ポスターを見てきたが、自分には関係ないものだと思い真剣には見ていなかった。
 今回だってそうだ。
 自分たちのことしか頭になかった二人は、他のポスターの良いところを真似るという基本中の基本を押さえていなかった。
 この時、改めて瑞希は視野が狭くなっていたことに気づく。

「ありがとう金森。一つ勉強になったよ」
「柊さんの言う通りね。金森さんが私たちの部活に入ってくれて良かったわ」

 大事なことを教えてくれた舞に対して瑞希と撫子は感謝の気持ちを伝える。
 お金も大事だが知識だって人生の資産である。
 そんな大事なものをくれた舞には感謝の念しかない。

「そ、そんなことないよ~。あたしだって分からないことだってたくさんあるし~」

 二人に褒められた舞は照れながら謙遜する。
 やっぱり落ち込んでいる表情よりも笑っている方が人間、美しく感じる。
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