柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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55話

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「……そうだったんだ……友達だと思っていたのはあたしだけだったんだ」

 ついに涙を我慢することができなかった舞の目から涙がこぼれる。
 友達だと思っていた友達が実は自分のことを友達だとは思っていなかったと言われたら、かなり精神的にくるだろう。

「だから真に受けるなって言っただろ」

 泣き出す女を面倒くさいと思っている瑞希は、面倒くさそうに舞に話す。

「私は別に一色たちが金森のことを友達だとは思ってなかったと完全否定はしてないだろ。むしろ、金森のことはそれなりに大事だと思っていたと思う。じゃなかったらあんな優しく金森を拒否ることはしないだろ」

 これはあくまでも瑞希の推論で、瑞希も別に椿が舞のことを友達ではないと完全否定はしていない。
 むしろ、椿は舞に優しいぐらいだ。
 ただそのやり方が不器用なだけ。

「……全然意味が分からない」

 弱々しい舞の声が教室の中に吸い込まれていく。
 言葉というものは難しい。
 相手に自分の思いを伝える時、使われるツールが言葉である。
 だけど言葉を使い、相手に百パーセント自分の思いを伝えられるかと言われれば、それはできない。
 なぜなら言葉の意味は発する側ではなく受け取る側が決めるものだからである。
 例えば相手に『ありがとう』と感謝の気持ちを伝えても、相手が社交辞令で言ったんだなと受け取れば相手に感謝の気持ちは伝わらない。
 だからこそ思いを言葉で相手に伝えるのは難しいのだ。

「それじゃー一つ聞くが金森。金森って一色のグループにいる時、無理してるだろ。わざと明るく振舞ったりして」
「えっ……」

 瑞希が舞に質問すると図星だったのか、動揺している。
 やはり、舞は椿のグループにいる時無理をしていたらしい。
 無理して笑い、無理して繕う。
 それに気づいた椿は舞のことを慮って、わざと冷たく舞を突き放した。
 舞に無理をさせないように。
 それは椿もまた舞のことが好きだったからだ。
 でなかったら、あんなに優しく突き放すことはしないだろう。わざわざ違うグループを勧めることなんてしない。
 椿もまた、不器用で馬鹿で優しい男の娘だった。

「一色も金森が無理してるって気づいたんだろう。それで金森を冷たく突き放した。自分たちのグループに無理して合わしている金森を見てられなかったんだろ」

 椿たちの陽キャというキャラに無理やり合わしている舞。
 そして無理矢理陽キャというキャラに合わしている舞に合わしている椿。
 これでは無理してお互いがお互いに合わせている状態であり誰も幸せにはなれない。
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