柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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56話

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「……なにそれ……あたし、別に無理して椿ちゃんたちと話してたわけじゃないよっ」

 瑞希の推論を聞いた舞は涙を流しながら怒っていた。
 あれ?
 瑞希は自分の推測が間違っていることに気づき、内心首を傾げていた。

「……?」

 撫子も言葉は発していないが、瑞希同様自分の推論が間違っていたことに戸惑っている。

「なんで椿ちゃんたちがあたしを無理して合わしていると思ったのか分からないけど、無理なんてしてないよっ。あたしは椿ちゃんと話していて楽しかったし。でもあたし中学の頃までは本当に喪女で暗くて友達もいなくて……だから高校生になったら明るくイメチェンして友達たくさん作るんだって意気込んで。でも今まで友達とかいなかったからどう話せば良いか分からなくて。だから嫌われないように笑ったりして……。多分それがいけなかったのか? 別に無理して椿ちゃんと付き合ってたんじゃなくて、どうコミュニケーションを取っていけば良いか分からなかっただけなのに……」

 今の舞しか知らない瑞希は、中学校時代に喪女の舞を知らない……はずである。
 つまり舞は椿と無理して合わしていたわけではなく、ただ今まで人とコミュニケーションをしてこなかったから、不器用なだけだったらしい。
 なるほど、これは瑞希も分からなかった。
 言葉というものは発する側ではなく、受け取る側によって意味を変える。
 椿の発した言葉が舞の中で意味が変わったように、舞の言葉もまた椿の中で意味を変えていたのだ。
 やっぱり人間という生き物は難しい生き物である。
 言葉というツールを得てもなお、自分の思いを百パーセント伝えることができないのだから。

「すまない。私も勘違いをしていた。てっきり金森は無理して一色たちに合わせているものとばかり思っていた」
「ごめんなさい。私も柊さんと同じ意見よ。私も勘違いしていたわ」
「えぇー。みんな勘違いしてたのー。うっそー。だから椿ちゃんはあたしのために悪役になろうとしたんだね。全く大きなお世話だよ。ガツンと言ってやらなきゃ。友達ってどういうものか分からないけど、こういう時言い合えるのが友達でしょ。ありがとう瑞希ちゃん、撫子ちゃん、教えてくれて。早速椿ちゃんたちと本当の意味で和解してくるから~」

 瑞希と撫子は自分たちが勘違いしていたことを恥じていた。
 舞はやっと喉につっかえていた魚の骨が取れたかのように爽やかな表情を浮かべ、椿たちの元へと向かった。
 教室に残される瑞希と撫子。
 どうやら勘違いしていたのはお互い様だったらしい。
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