柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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57話

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「やっぱり人間関係って難しいわね」
「そうだな。あんなに本音をぶつけても完璧に相手に自分の気持ちを伝えられないなんて」
「……だからみんな嘘ついて偽って、傷つかないようにするのよね」
「? なんか言ったか白鳥?」
「いえ、なんでもないわ。それよりも私たちも帰りましょう。金森さんが行ってしまった今、私たちが教室にいる理由なんてないもの」

 さっき小声で撫子はなにか言ったような気もするが、小さすぎて瑞希は聞き取ることができなかった。
 聞き取れなかったから聞き返すと撫子にはぐらかされてしまった。
 これも瑞希の推測でしかないが、誰にも聞かれたくない本音が漏れてしまったのだろう。
 その真意は撫子しか知るよしもなく、それを聞き出すことは瑞希にはできなかった。

「そうだな。帰るか」

 相手が言いたくないことを聞き出そうとしても相手は絶対に答えてはくれない。
 別に瑞希もそこまで知りたいわけではなかったので、追求を止めた。
 瑞希は椅子から立ち上がり教室の外に出る。
 撫子と一緒に帰る理由もないが、一緒に帰らない理由もない。
 その後、瑞希は他愛もない会話をしながら、家に帰った。
 放課後、男女二人で歩く二人は大人たちがイメージしているステレオタイプの青春を過ごしていることに気づいていなかった。



 廊下は走ってはいけない。
 誰がそんな校則を作ったのだろうか。
 舞はそんな校則は全力で無視するかのように、全力で廊下を走り野球部が練習しているグラウンドまで走った。

「休憩。各自、汗と水分補給をするように」
「「「はいっ」」」

 舞が野球部が練習しているグラウンドに着いた時、ちょうど休憩に入ったらしく部員は休憩していた。
 本当にラッキーだ。

「椿ちゃん……早織ちゃん……帆波ちゃん……」

 息を切らしながら休憩していた三人に話しかける舞。
 久しぶりに全力疾走したからわき腹が痛いし、体全体が酸素を求めていて息苦しい。

「どうしたの舞。部活中にやって来てっ」

 いきなり舞が現れて椿は驚いた声を上げる。
 驚いたのは椿だけではなく、早織も帆波も驚いているように不思議そうな表情を浮かべている。

「……椿ちゃんに伝えたい……ことがあって」
「大丈夫舞。一回深呼吸した方が良いよ」

 息を切らしている舞を慮って帆波は舞に助言する。
 帆波の優しさに嬉しさを覚えるが、今はそれよりも椿に伝えなければならないことがある。

「椿ちゃんの、馬鹿ー」
「「「えっ……」」」

 感情が先走り、舞は脈絡もなく椿を罵倒する。
 さすがのリア充三人組も、いきなり罵倒されて目が点になっている。

「えっ、なになに」
「喧嘩?」

 他の野球部員も荒ぶっている舞の声を聴いて、ヒソヒソと噂話をしている。
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